天元の花、零の先へ   作:新川翔

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セイバーウォーズ周りにくい。飽きる。金フォウを回収できない。


ソの5

18話

 

目を覚まして重い上半身を起こすと朝日が少し空いているカーテンから差し込んでいる。旅の疲れがあってかベッドから出たくなかったがふと、宝石に魔力を込めるのを忘れていたのを気付いて無理矢理体を起こし魔眼殺しのメガネをかける。

ガーネットを一つ取り出して神経を集中させる。息をゆっくり吸ってゆっくり吐く。

 

しかし、暇である。

 

それしかやることがないので至極当然なのだが、辺りを見回すとテーブルの上に武蔵ちゃんの小手やら肘当てが置いてある。

 

この宝石に魔力を込める日課は別に動きながらでも可能だ。立ち上がって宝石を握っていない手でそれらを手に取って見ると至る所に修繕の跡が見られた。これでは長く持たないだろう。何というかほっとけないのでどうにか新調したいと思いアタッシュケースを開けてターコイズを取り出して展開してみる。

 

彼女にはどんな鎧が似合うだろうかと思いを巡らせる。ゴツい鎧は彼女には似合わない。軽装が似合うだろう。彼女の元の防具に似せて展開する。色を赤と青を主に設定して所々に紅葉の模様を入れてみる。

 

「…………」

 

あまり変わっていない。どうせ新調するなら新鮮味を出したい。どうしようかと悩んでいるとそろそろガーネットの1日の魔力供給量の限度を迎えた。

ハンガーに掛けているコートのポケットの中にガーネットを入れる。

 

「コートか」

 

そんなこんなで紆余曲線して赤い羽織りに青い小手、ブーツっぽい脛当て、肘当て。それらに紅葉の刺繍が入っている装備となった。しかし、この『鎧』は分裂させることができないので一本の線でつながっている。

 

「ん?……………」

 

後ろで武蔵ちゃんが体を起こす音が聞こえる。

 

「おはよう武蔵ちゃん」

 

「おはよう繰君」

 

彼女は目をこすってベッドから出て窓から陽射しを浴びゆっくり背伸びをしていた。

 

「繰君?なにそれ」

 

そこで俺の手にある物に興味を示した。

 

「武蔵ちゃんの防具。ボロボロだから新調しようと思って」

 

「へー、ありがとう」

 

彼女はよっこらせとしゃがんで『鎧』を観察する。

 

「軽っ!そして結構綺麗じゃない。紅葉の刺繍とか。付けてみていい?」

 

「ああ、装備したいと念じれば付けられるから」

 

俺は宝石の状態に戻して武蔵ちゃんに渡す。ついでに所有権も半分ほど渡す。彼女は立ち上がってタオコーズを握って胸に当てる。すると、魔力が展開されてサイズピッタリに装着された。

 

「おー」

 

彼女はサイズがピッタリだったのか着心地が良かったのか驚いている。

この『鎧』というのは所有者の魔力を糧に展開するのだが彼女には微量しか魔力がない。そこで、所有権の半分を持っている俺がほぼ全面的に魔力供給を行なっている。

ならば、所有権を渡す必要はないのだが、彼女には何故か高すぎる『対魔力』がある。なので、微量でも彼女の魔力を頂かなければ彼女への魔力干渉として見なされて弾かれてしまう。少しでも彼女に魔力を消費させて彼女による魔力放出にしなければならない。

 

といっても俺が魔力で干渉をしているのである程度防御力は下がっている。が、防御力向上というよりは着替えで心機一転する色が強いので気にしない。

 

「やっぱり軽い……」

 

「まあ、魔力だからな」

 

「で、解除したい時はどうすればいいの?」

 

「付けた時と同じで解除したいと念じれば大丈夫」

 

すると『鎧』は宝石に戻ると見せかけてネックレスになった。

 

「え!?」

 

「宝石のままだと持ち運びにくいだろ。アクセサリーとしてプレゼントするよ」

 

「ありがとう。弟子からの贈り物、有り難く頂きましょう!」

 

すると、彼女はテーブルの上の緑の勾玉のネックレスをこちらへ投げ渡す。

 

「私からはこれをあげましょう。大事にしてね」

 

「ありがとう武蔵ちゃん」

 

俺たちはそんなやりとりの後、ホテルで朝食をとって北京に繰り出した。

 

「やっぱり普通じゃないわね。この北京」

 

「ああ、違いすぎてどこで間違えたのか分からねぇ」

 

「もしかしたら私達が知ってる世界が間違っているのかも…」

 

「やめてくれ。疑心暗鬼になる」

 

本当に俺はそういう物には弱いからやめてほしい。

この世界は間違っていて何処かの離れた並行世界である。そんな確定的な事象に疑問を持ってしまうのだ。きっとこんな奴が都市伝説とかデマとかそういう物に流されてしまうのだろうと自分自身を笑っても不安な俺は朝から気分が沈む。

 

早朝なので昨夜ほど賑わってはいないが屋台がそこらで準備をもう始めている。さらに、看板が掲げている文字が相当物騒だ。

 

「……………第一回世界対戦?」

 

は?

昨夜は余りにも多すぎる人混みで全然見えなかったので『何か凄いことがあるんだな』と認識していたがまさかこんな事になっているだなんて。戦いなんてこんな看板を掲げてお祭みたいに盛り上げようとするモノじゃない。だが、注意すべきは『大戦』ではなく『対戦』であることだ。

 

散歩感覚で北京から出て人気の無いところに到着した。

 

「え?」

 

いつの間にかこんな所に来ていることに疑問を持って武蔵ちゃんの方へ向くと彼女は準備体操を始めていた。

 

「おいおい………」

 

確かに気付かなかった俺が悪いが唐突すぎる。彼女が訳も言わず明確な目的もなく移動した時は稽古が始まる。俺は持ってきたバッグやアタッシュケースをそばに置いてもし盗まれた時に為に俺自身に知らせるためのまじないをかける。屈伸をしてアキレス腱を伸ばして魔眼殺しのメガネを外せば自身のすべき行動をしっかりと把握できる。

 

刀を抜き相手と視線を交わす。武蔵ちゃんもどうやら準備はできたようだ。

 

「それでは、新免武蔵守藤原玄信!」

 

「深山家次期当主深山繰!」

 

大きく声を出して全身に強化魔術をかける。それにしても随分とこの名乗りも慣れてきた。

 

八相の構えでジリジリと間合いを詰める。あちらがニヤニヤしていいるので少し苛立ちを覚えるが、それに耐えてチャンスを伺っている。それでも、どんなタイミングで攻撃しても自身が上手く攻められている影を手繰り寄せられない。

 

苦笑いしながら覚悟を決めた。

 

八相から脇構えに切り替えて蹴り出す。切り上げと同時に土も舞い上がる。影だけを信頼してはならない。この短い期間で少しは身に付いているであろう2、3手先を読む勘を半分くらい信じて思考が真っ黒になる前に攻め立てる。

 

彼女には2本刀があるのでこちらの攻撃を受け止めるのと同時に攻撃をすることが出来る。

俺は攻撃を受け止められると同時に攻撃を避けながら攻略法を模索する。

それで、やはり、焦りが生じてきた。

 

このままではジリ貧で更に彼女は本気を出していない。いつでも俺を吹っ飛ばして勝負を決めることが出来る。彼女に本気を出されたらどうしようか。そもそも彼女に本気を出させる事が出来ないだろうが。だが、このままジリ貧なのは事実。どうにか打開策を出さなければともう思考が黒くなってきている。

 

「ほら、焦ってる!」

 

早速俺の師匠はそれを見抜いて指摘する。だからそういう事を言われると本当に焦るんですよ。

 

俺は攻撃を捌き切れにくくなっている。それが新たな焦りを呼んで冷や汗がじわじわと背筋を通る。もう思考が真っ黒だ。

 

「あぁ!もう!」

 

俺は一旦距離を置いて叫ぶついでに自傷する。

 

「何してんの?」

 

彼女は目を丸くして口をポカンと開けている。

 

「へっ」

 

今日2度目に自分自身を笑いながら左手の甲の血を見る。確かにこうすると思考が吹っ飛ぶが、リスクがでかすぎる。危うく手首を切断仕掛けた。

 

ーーstep :Examination

 

診察をしながら攻撃を再開する。

 

無駄な思考が無くなるのも制限時間があるだろう。きっとどんどん思考が真っ暗になる。それまでに体の全てを使って一心に斬る。北京に着くまでの山道で結構体力がついたようで俺の思考に体がついて来てくれた。

 

ーーstep:repair

 

左手も治って一層スピードを上げる。

これでやっとこちらが攻勢に出られるようになった途端、宮本武蔵の実力の片鱗を見た。

 

「………痛っ」

 

「順調な成長です。まさかこんな短期間でここまで行けるなんて。ほら、立って」

 

「ありがとう」

 

俺は差し伸べられた武蔵ちゃんの手を取って立ち上がる。

 

「さて、今回の稽古の講評です」

 

「はい」

 

俺は師匠としての態度をとる彼女に返事する。

 

「さっき言った通り成長が見られたのはいい事です。このまま頑張りましょう。でもやっぱり中途半端だから要努力。それに流石に自傷は不味いわよ。私の場合驚いて固まっちゃったけど容赦ない人はそれにつけ込んでくるから」

 

「はい。ありがとうございました。っとお疲れ様、武蔵ちゃん」

 

俺は疲れきった身体を確認して異常がないかを確かめながら、整理体操を始める。

 

「お疲れ様、それじゃあ昼御飯(うどん)にしましょう」

 

今昼御飯に変なルビふってなかった?

やっぱり、このうどんloveは付き合いきれない気がしてきた。

たまには蕎麦を食べたいのだが、そんなことを彼女に言ったら、なんて返されるのかが分からないので黙っておく。

 

 




武蔵ちゃんのねんどろいど出るの!?
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