さて、次はどうなるか。(何様)
23話
昼食を済ませて、店をでる。
「危なかったわね」
「ああ、死ぬかと思った」
「疲れたし、一旦帰りましょう」
俺たちは一旦ホテルに帰った後、資金調達の為に直ぐに町を出た。武蔵ちゃんは昼寝をしているので、俺1人で出かけている。
最初の日に行った薄暗い路地に向かう。
この路地は如何にも都市の裏側を如実に写しており、ホームレス達が座り込んで今にも死にそうになっていたり、クスリを売っている商人がいたり、銃火器を取り扱っている場所もある。
そこにある1つの店に俺は向かう。その店は違法に文化的な芸術品を売っているような店で、かの有名な絵の巨匠達の作品の贋作、意味の分からないツボ、無銘の日本刀などが並べられている。
「よう、日本人のにいちゃん」
なんとこの店主、日本語が通じる。
店主は黒いTシャツを着ていてスキンヘッドのおじさんだ。
「よう、一昨日はありがとう」
「へっ、そんなんどうでもいい。ここに来たってことは売りに来たんだろ」
「ああ、この刀だ」
俺は刀を二本差し出す。
「また同じ様なやつ持って来たな」
この店の店主はかなり目が肥えていて品物がどんな物でどれくらいの価値があるのかを見抜けてしまう。なので、初めてこの店に来た時に珥加理刀がどんな物なのかを見抜かれてしまい、どうにか彼の口車に乗らない様に抵抗しながら刀を一本売ったのだ。今日はその口車から逃れる為に珥加理刀は持って来ていない。
「まぁ、素人はこれで騙されちゃうんだけどね」
「で、どの位の額になる?」
「大体、この位か。まあ、ほぼ一昨日の二倍だな」
「わかった」
俺は奪う様に札束を受け取る。
「そう無愛想なことするなよ。今日は持って来てないが、あの刀を売ってくれるのを待ってるんだぜ」
「売るわけないだろ」
「いや、お前は売る。お前は目的の為なら殆どの物を捨てられるからな」
何故、そう人を見透かせる。まあどれも愛着がないから問題ないが。
じゃなくて、あれって国の重要文化財ですから、売るわけにはいきません。
しかし、それほどの品ならばどの位の値段で売れるのか好奇心が働かないといえば嘘になるので、ただの興味本位で尋ねることにした。
「……じゃあ、もし売ったらどれ位になる?」
「そうだな……そのレベルの物だとお前が今日売った刀の100倍で安いくらいだ」
「すげぇな。まぁ、売らないが」
やっぱり高く売れるが、もっと売れるのではないかと疑問に思った。でも、この国には重要文化財という概念が存在しないから、この値段は妥当なのかもしれない。いや、その道の人ではないので詳しくは分からないが。
「そうかそうか」
「それじゃ」
この人と話していると引き込まれそうで怖いので、話を適当に切って歩き出した。
「待ってくれよ。実はな、お前に渡したいものがある」
「は?」
するとおじさんは自身の足元から何か取り出した。無意識的に体が逃げようとしている。
「こいつだ。まぁ開けてみな」
店主は箱を開けて中身を見せた。箱の中身は銃。ぱっと見はレボルバーで既に玉が込められている。その隣に6つの弾丸を添えて。
しかし、こんな厨二アイテムは俺には要らない。
でも、一応情報は聞いておこう。決して、厨二的趣味が働いた訳ではない。決して違う。断じて違う。
「対外敵用リボルバー『コールブランド(Collbrande)』
普通の弾丸だけでなく、特別弾も使える代物だ。
口径は10.9mm、全長165mm、重量は1396g、ここまでは普通だな」
「そして、特別弾『ライフトーレン』1ダース」
訳が分からないが詳細を聞いとくか。
「弾殻は?」
「メアトル製だ」
「弾薬は?」
「ブレスブスター」
「弾頭は?」
「オリハルコン製」
「成る程分からん」
「だろうな」
今、オリハルコン製って言ったのか!?
ゲームでその名前はお馴染みだろう。
伝説の中で、神々の怒りに触れて沈んだ大陸アトランティスにて取れると伝えられる鋼鉄より硬い金属。魔術世界では抑止力に触れてしまったので沈んだというものが通説だ。そして、その大陸が沈んだのは紀元前1万2000年前のことだ。
だから、こんなところにそんなオーパーツがあるはずないのだ。
「オリハルコンなんて存在しないだろ」
「まぁ、今はねぇな。貰っとけ、役に立たない様なもんじゃねぇからな」
無料でというところに惹かれて渋々受け取ることにした。というかなんだその言い回し。
それどころじゃない。この店長やばいどころじゃない。とんでもない。オーパーツ持ち込んできてるし、銃の説明半分以上意味わかんない言葉だったし。
今すぐこの銃貰って逃げた方がいいんじゃないのか?ひとまず、対応している弾について聞いて逃げようと思って口を開く。
「で、普通の弾は何にた対応してるんだ?」
「44マグナム弾だが」
オーパーツその二発見!
44マグナム弾。この代物は1900年にはまだ開発されていないのだ。
ますます、このおじさんが怪しくなってきた。
「それこの時代にないやつだろ」
「そこはどうにか調達してくれ」
「あっそ、じゃ」
俺は必要なことだけ聞いて、逃げる様に駆け出した。
話を聴くうちに引き込まれそうになったがあれは恐らく暗示だろう。気付くのが遅かったのは、彼が引き込むような話術と目を奪う魔術を併用していたからだ。
てっきり魔術には関係ない人だと踏んでいたが、この変な拳銃を提示された時に気付ける筈だろう。
まぁ、その頃には彼の手に平の上だった訳だが。怪しいおじさんに絡まれ、いい気分のしないまま俺はホテルに帰還した。
「ただいま」
「おかえり、繰君」
部屋の扉を開けると刀が飛んできた。
「ひえっ!」
「どこ行ってたのかしら?師匠に何も言わずに」
「…ただ、お金を手に入れに行っただけだ」
「そう、そうならいいんだけど、手紙とか置いてくれても良かったんじゃない?」
「すいません」
俺は壁に刺さった刀を抜きながら部屋に入る。
「繰君って、周りに気を使ってるクセにそういう常識的な所が欠けてるわよね。やっぱり、1つのことにしか目が向いてないのかもね。それで他の方向への配慮を忘れてボロを出すタイプ。
周りのことにしか目がいかなくて自己犠牲しちゃったり、自分のことしか見えなくて他人に迷惑かけちゃったり、そんなこと多いでしょ」
「ううっ、本当にそうなんだよ」
俺は彼女の言葉にまた心を打たれてしまった。
思わず立ち止まって今までの自分の過ちを省みると、確かに言われてみればそれが原因だと思われるものもある。
「そういう時はね、思いっきり肩の力を抜くの。ゆっくり、何も考えないで宇宙に放り投げられた気分になると良いわよ」
ここで宇宙に生身で投げ出されたら人間死にますよ。なんてマジレスしたら殺されてしまうだろう。
ーー肩の力を抜く。か
俺は武蔵ちゃんの乗っていないもう1つのベッドにダイビングする。
クロールをして反転、背泳ぎに移りまた反転、平泳ぎをしてバタフライをしてみる。
数秒、何もせずじっとして、急にトカゲの尻尾みたいに跳ねる。
「何してんの!?大丈夫!?」
「……何も考えないってのも難しいな」
「驚かせないでよ。急に狂ったかと思っちゃったじゃない!」
「オセアニアじゃあ常識なんだよ!」
「本当に大丈夫!?」
「からかっただけだよ。安心してくれ。わたしを迎エいれるノだ!!とか言って窓から飛び降りないから」
なんだか自然に心の底から笑えている気がした。だが、この後は説教タイムだ。さっき心配させるなと言ったばかりでしょうが!と喝を入れられる。
「何故か具体的だけど…そう、なら良かった」
あれ、怒られない?なんでそう顔を枕にめり込ませているんだ彼女は?まさか、何かしでかしたか。
彼女は彼が初めて見せたリラックスした笑顔を見て相当嬉しく、そして安心したらしい。
その後、夜ご飯も外食にし、部屋に帰る。
彼女はシャワーを浴びて、俺はあの店主から貰った拳銃と銃弾を分析している。
「明らかに魔術にかかっているのはわかるけど…」
とんでもなく複雑だ。
拳銃の方はかなり強い強化魔術と特別な改造のみ。問題は弾丸の方にある。これは深山家の超治癒の宝石の何倍もの術式が組み込まれている。仕組みが全くわからないのだ。試し打ちをしてみたいとは思うものの12発を使ってしまうのはなんだか忍ない。
何分か銃弾を見ていると武蔵ちゃんが後ろから俺の持っている銃弾を触ってくる。
「なにこれ?」
「貰ったんだよ。体は無意識に嫌がってたんだけどさ。口車に乗っちゃって」
「繰君って銃は扱えるんだっけ?」
「使えるけど、全然ダメだ。武蔵ちゃんの話に出てくるようなアウトローにはボロ負けだよ」
「じゃあ、なんで貰ったの?」
「タダだったし」
「ならしょうがない」
彼女は奢って貰うとか、無料という言葉に弱い。俺にそれがうつってしまったのだろうか。
「繰君、お風呂入ってきたら?」
「ああ、そうさせてもらいま……」
後ろを振り返ると髪を下ろし大人びいた雰囲気を醸し出し、バスローブというとんでもな宝具を装備してさらには谷間も……いかんいかん、煩悩死ね。
「なにつっ立ってるの?早く早く」
「武蔵ちゃん、他に無かったのか?」
「ああ、この服ね。ええこの服しかなかったわよ。どう?似合ってる?」
「……大人な感じで妖艶で…すごく似合ってます」
なんだこの厨二発言!
……いい加減自虐も飽きてきた。もうやめよう。
「………急に誉めないでよぉ!照れるじゃない、このぉ!」
やめてください小突かないでください。
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