天元の花、零の先へ   作:新川翔

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変遷事象 アトランティス
ソノ1


27話

 

この世界は不思議で、嘘が真実になり、真実が嘘となる時がある。

 

 

 

夜にネオンの光に目を細めながら、ビルの屋上から都市を見渡す。

摩天楼は何処までも、地平線の先まで果てしなく続いている。

紫を基調とした近未来的な世界で、車が宙を泳いでおり、街灯には魔術の火が灯っている。

魔術と科学が完全に混合している世界。所々に水路が蜘蛛の巣の様に敷いてあり、中央に場違いな大きな洋風の城が建てられている。確かにこれは在るべきでない世界だ。

まず、魔術と科学の混合したものが公に使われているところで大きく外れている。

 

「これは北京とはまたちょっと違う趣の綺麗な夜景ね」

 

「ああ、なんじゃこりゃあ」

 

俺の住んでいた時代と比べると、文明レベルは明らかにこの都市が勝っている。

それにしても何故、魔術が漏洩してしまったのだろうか。魔術とは、基本は秘密にされ、自分の一族だけに伝え、それを独自のやり方で昇華させるもの。まず、漏れることが殆ど無いし、漏れたら漏れたで魔術協会が動いてどうにか対策をするはずダ。

 

「さて、情報収集から入りたいところだが、まず話が通じるか」

 

すると、城から何かが5つ程飛んで来ている。

目を強化して凝らして見ると、獅子の頭、蛇の尻尾、ヤギの胴体、鷹の羽、合成獣(キメラ)だ。それらが物凄いスピードでこちらに線を描きながら迫って来ている。

もう1匹、何かが出てきて……

 

「武蔵ちゃん……逃げるぞ」

 

「え?どうし「早く!」

 

何故、あのレベルの幻想種を従えている!?

その獣の容姿はペガサス。まだ、そこで止まっているなら『魔獣』クラスでどうにか処理出来るだろウ。しかし、あれは間違いなく神が地上にいた時代、神代から生きているとんでもない馬だ。この状況で対処できるとは到底思えない。

 

直ぐにアタッシュケースからルビーを取り出して『竜騎士』を召喚する。魔力消費を考えている暇はない。出来るだけ俺が死なない程度に飛ばす。

 

「繰君っ、どこ行くの!?」

 

「何処かに逃げるんだヨ!あんなバケモンと戦っていられるか!」

 

「あの馬?別にそうでもなさそうだけど……」

 

「だったら振り返ってみろ!とんでもないスピードだぞ。それにあのレベルだと並みのサーヴァントとタメを張るどころか倒せる!」

 

「本当!?ていうかここ何処なの!?」

 

「さぁ、さっぱりだよ」

 

数分飛んでいると、なんと海に出タ。

港はなく、ただ境界線できっぱりと都市は終わり、そこからは一面に海が広がっている。

海に逃げたい気持ちはあるが、もしかすると戻れなくなってのたれ死んでしまう可能性もある。俺は彼女に捕まっているように指示をして「竜騎士』を旋回させた。

その時、戦闘機もこちらに向かっているのも見えた。

本当に厄介すぎる。

 

「武蔵ちゃん、賭け事は好きか?」

 

「え?う〜ん、まぁ」

 

「じゃあ、行くぞ」

 

俺は腹をくくって竜騎士に戦闘機に向かって全速力で思いっきり突っ込むよう指示した。

彼女を後ろで制止しろと言っているが構うつもりはない。すかさず、戦闘機からはミサイルが数発発射される。

それに何でもない使い魔を至近距離でぶつけて起きる爆煙に紛れて逃げる算段だ。

ここでルビーが壊れてしまう可能性もあるが、そんなことを考えている余裕もなかった。

 

 

結果、それは成功し、ルビーも回収したのだが……

魔力消費量が多大で今にも倒れそうな俺である。そこで、建物の間に隠れて安静にしているのだが、都市中にサイレンが響き渡り、警官らしき人たちが慌ただしく駆け回っている。見つかってしまうのも時間の問題だろう。

 

「お困りの様だね……にいちゃん」

 

突然、声をかけられた。この声は、あの北京にいた店主の物だ。

振り返って姿を確認すると、やはり、スキンヘッドの黒いTシャツに短パンを着たおじさんだ。いかにも怪しいおじさんが何故ここにいるのだろうか。

俺は動かない体で警戒心を最大にまで上げた。

 

「一体何者なんだお前は?」

 

俺は力なく刀を向けて無理をして声を荒げる。

 

「おいおい、落ち着いてくれよ。お前達を助けに来てやってくれたんだぜ。どうだ?あの拳銃は大事にしてくれてるかい?それに……あまり声を出さない方が良い」

 

彼は人差し指を手に当てて静かにするように促している。

それには従うが、相手に会話の主導権を握られてはならない。このおじさんは話術と魔術を巧みに使って暗示をかける。だから、安心できな、

 

「繰君。こういう人はひとまず信頼しなさい。怪しくなったら殺せばいいんだし」

 

おっかねぇ、それは貴方が強者だから出来ることでしょうが、と言葉で言えない代わりに心の中でツッコミする。

 

「いいからこっちに来な。安全な場所に案内してやる」

 

「ほら、危ないときは私に任せて」

 

俺は彼女に肩を貸してもらって路地の奥に移動する。何度か角を曲がった後、男は急に止まって壁に手をかけると、その反対側の壁から扉が出現した。男はそこを気にも止めずまた歩き出す。

 

「着いたぞ」

 

「「いや、行き止まりなんですけど」」

 

「そう見えるだろう」

 

男は壁の中に消えていった。

 

「え!?どういうこと?妖術?」

 

「いいから、入るぞ武蔵ちゃん」

 

俺は彼女に促して恐る恐る壁に手をかける。すると、壁の先に空間があるようだった。

光の屈折、いや違う。そもそも暗い路地なわけだし、ならば、ゲート、瞬間移動の類か。

このおじさんは何者なのか疑問は深まりばかりだ。

その中にはまるで軍隊の基地の様な質素で張り付いた空気の漂う場所が広がっている。

 

「こっちだ」

 

俺達は応接室の様な場所に連れられてソファに座らされる。道中で何人かとすれ違ったが、珍しくものを見る様な目でこちらを見て来ていた。まぁ、当たり前か。

 

「ようやく話が出来るな」

 

「さて、お前は何者なんだ?」

 

道中で自分自身をある程度回復させた俺は直ぐに話を振る。

 

「ああ、そうだな。名乗らせてもらおう。俺の名前は『プラトン』だ」

 

プラトン、それってギリシアの哲学者の。

いや、この間違った世界で突っ込んでいてはキリがない。

 

「ここのレジスタンスのリーダーをやっている」

 

「レジスタンスってどういう「おいおい、人の話は遮るもんじゃねぇよ、にいちゃん」

 

軽い口調に対して重いトーンでプラトンと名乗る男は言う。

俺のセリフを遮った時、彼に目はとても、黒く、暗く、底がなかった。

 

「僕らはここ、『アトラス朝』を倒すために結成された組織だ。剪定事象を正している君達に協力してもらいたい」

 

「何故、それを知っている?」

 

今、直感だが思いついたことがある。

もしかしたら、彼は俺が狙うべき根源接続者なのではないのだろうか。

ならば、俺が抑止力であることを知っており、時点と時点を繋ぐゲートや、世界線間の移動など馬鹿げたことが可能だということに説明がつく。

 

「なに、事情があってな」

 

「繰君、せんていじしょう?なにそれ?」

 

武蔵ちゃんは話について行けず置いてけぼりになっているが、今は置きざりにしよう。

 

「その事情って何だよ」

 

「事情は事情だ」

 

どうやら、喋るつもりはないらしい。普通なら、ここで交渉は決裂するのだが、ここ以外に居場所がない。もし、目の前のプラトンが目標である根源接続者だとしても、ここにいさせてくれるのならば、回復するまで休憩させてもらおう。

 

「ッ、じゃあ、ここについて教えてくれ」

 

「ああ、ここはアトランティス。お前達の世界では世界に沈められた大陸だな」

 

もし、プラトンが敵だとしたら、余程のダメ人間なのかどれだけ余裕ぶっているのだろうか。しかし、あの無意識が言うには俺で10人目、つまり、9回失敗しているのだ。もう、つまんなくなってこちらの手助けをし始めたか。それにしても肩を入れすぎだ。武器までこちらにあげて何がしたいのだろうか?

いや、そもそもこの武器が罠である可能性もある。例えば自爆するとか。

 

「ここの王はとても秩序正しく良い政治をしていた。しかし、突然乱心してしまったのだ。9人の大臣も吊るされ、経済は破綻、それでいて何の策もとらないのだ。それには民衆も怒っていてな。皆、この事態を修正しようと結束している」

 

 

他にも色々な話を聞いた結果、一応協力することにした。奴が遊んでるつもりなら、それを十二分に利用させてもらおう。

その後、生活する為の部屋に案内された。その部屋は普通の生活をするくらいには設備が整っている。

 

「繰君、私話が一切分からないんだけど……」

 

「そんなことはいい。ただ武蔵ちゃん、あのおじさんは警戒した方が良い」

 

「…………そうね……繰君、なんか一杯一杯になってない?」

 

「いやなっていない」

 

俺はきっぱり答えると彼女に押し倒される。

 

「答えなさい……何があったの」

 

答えられない。自分の気持ちが嘘だなんて、俺なんかに言えるわけがないだろう。

余りにも気まずすぎるのだ。俺だってこんなはずじゃないのに。こんなこと考えたくない。

もういっそ、この地で幻の大陸と共に沈みたい。そんな心情だ。だから、自分のことでいっぱいなのだ。それは間違っていることくらい理解している。けれど、この気持ちの全てが嘘だという虚無感をどうすればいいのだろうか。

背徳感で心拍が早くなり、冷や汗が背中をつたって、考えることを放棄する。

 

「答える気は無いみたいね………」

 

「あぁ、すまない」

 

「いいわ、そういう悩み時にはあるし」

 

その時から、俺達の調子は崩れ始めてしまった。

俺たちの歯車は何処かで噛み合わなくなってしまい、互いのリズムは外れてしまって何処か通じなくなった。話す相手はお互いしかいないので話すしかないのだが、いまいち会話が弾まない。

しかし、作り物だからどうしたとこの感情を振り切れないオレの弱さはなんだ。いや、そもそも、切り替えるのは無理ではないのだろうか。

この気持ちは切り替えられるほど安っぽいものではない。だからと言って彼女を突き放す理由にはならない。

今回もオレハマタマチガエタ。

 

 

 

 




武蔵ちゃんと深山繰の関係がこんな感じでコメディが挟めない為、この章は早く終わります。

こんな話の展開をを書いていると作者が鬱になりかける(この程度でw)ので、評価や感想など頂けると嬉しいです。

コンナハズジャナイノニィ!(byxxハンター)
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