天元の花、零の先へ   作:新川翔

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鬱になるとは飛んだホラ吹いたな!自分!


ソノ2

28話

 

 

クーデター当日、俺と武蔵ちゃんは殆ど言葉を交わすことなく部屋を出た。互いに準備を完了させてプラトンの部屋に行く。

 

「どうだい、調子は?」

 

俺達はその質問に答えずただ黙っている。

 

「つれねぇな…まぁいいか」

 

 

 

 

 

地下の通路からこの都市の中央にあるあの城に向かっている。

俺達の仲はこの数日でかなり悪くなっている。別に口論したという訳ではなく、ただ殆ど会話をせずずに時が経ってしまったのだが。

 

俺はこの事を後悔する。

 

薄暗い地下道を数十人の武装した人達の足音が少しうるさく響いている。

この道は城からの避難経路として作られたものらしく、今では殆ど使われていないらしい。何度も紆曲して丁度、大きな螺旋階段がある広場に行き着いた。どうやら、この上があの城に繋がっているらしい。どうにか出来るとも思えない。

恐らく、俺は諦めているのだろう。根源接続者にはどうやっても勝てる訳がないし、戦う理由も無い。正直言って、遠い並行世界が続こうが、終わってしまおうが関係ないと思っている節がある。

 

武蔵ちゃんを横目で見る。

やはり、気まずい。こちらから打ち明けないのが悪いのだが、そもそも彼女がこの話を理解出来るか心配だ。大変失礼だが、彼女はそこら辺の事については無知なのである。

目を向けてる事を気づかれない様にすぐに視線を戻して螺旋階段を眺める。

非常階段とは思えないくらい優雅で、まるで天国に向かう為の物であると脳裏に浮かんだ。まぁ、実際、あの世に行く様な自殺行為をする訳だが。

 

そもそも、自殺をしたら、地獄に行くのではないのか?というか、人を殺している時点でいうまでもない。そういえば、人を殺した分生きるという信条があった。いや、根源接続者相手に逃げるとか不可能だろう。

舌打ちをして自分に失望する。俺は結局約束を守れないらしい。

 

プラトンは時計を見て部下の一人に言う。

 

「クラディウス、上はどうなっている?」

 

すると、金髪隻眼の青年が答える。

 

「はい、あと15分ほどで火を放ちます」

 

作戦はまず地上で火を放ち、混乱させてそれに乗じてこの精鋭で暗殺をするらしい。

 

15分程、暇がある。

俺は何をしたいのだろう。気持ちが淀んで濁って何も考えられない。

だけど、これは言っておこう。

 

「武蔵ちゃん」

 

久しぶりに彼女の名を呼ぶ。

 

「どうしたの?繰君?」

 

彼女はいつもの様に少し微笑んで返してくれた。

 

「この戦いが終わったらさ、少し、相談に乗ってくれないか?」

 

「ええ、君とは違って沢山悩みも経験してきましたし、いい助言を与えてあげましょう」

 

彼女はそれ程悩みもないくせにそんな事を言って胸を張っている。

そんな風景を暖かく、微笑ましく思って頬が緩む。暖かくて、温かくて心が満たされる感じがする。こんな偽物の心でも、暖められる(温められる)のならば、

 

彼女は肩からバッサリと、

 

「え?」

 

彼女の血が体に飛びつく。

彼女の後ろでフードを被った何者かがこちらを嘲笑う。

 

「クラディウス!ミヤマを連れて逃げろ!」

 

「はい!」

 

彼女は俺に声の無い声で伝える。

 

(に……げ……………て)

 

「 あ」

 

声なき声をしっかり聞き、動こうとしても動かない。こんな恐怖を目の当たりにして動ける方が異常だろう。

 

武蔵ちゃんは何処かに消えその犯人の姿を目に焼き付ける。

王の様な赤いマント、いかつい金の甲冑、森林の様に蓄えられたヒゲ、そして全てを見下す邪悪な目。

 

「どうだ?」

 

それは俺を見下してそう言った。

その行動に俺は反応さえ出来ない。ただ、立ち尽くし地獄をただ待つ悪人の様に、植物となった人間の様に立ち尽くす。

 

「ちっ!」

 

プラトンは俺とそれの間に入って俺を蹴飛ばした。その先でクラディウスという人が受け止めてくれた。

 

「何故分かった、アトラス!」

 

「何を言っているプラトン。貴様は我の正義の側面。であれば、どんなに隠そうと近くに寄れば居場所は分かる」

 

「ミヤマ、行きますよ」

 

俺は促されるまま、ろくな思考も回らないまま、数十人と共に撤退する。

 

思わず後ろを見るととんでもない攻防戦が繰り広げられている。

火、水、風、地、空がぶつかり合って一種の地獄絵図と化している。というか、虚や無もなのではないか?

 

もう、脳がオーバーヒートしそうな俺は全てを投げ出して目を閉じタ。

 

 

 

ベッドに寝かされている様だ。

飛び起きて辺りを確認する。どうやら、別のアジトに移ったらしく内装も違って壁も天井も鉄でできている様な部屋だった。

 

情報量が余りにも多過ぎて頭が痛む。

ここまでをまとめよう。

まず、あのプラトンという男についてだ。

つまり、あいつはアトラスという根源接続者の側面。

きっとアトラスは自制心などを切り離して何処かに捨てたのだろう。そんな科学で出来ない事をやってくれるのは魔法使いか根源接続者しかいないだろう、とは言っても推測の域を出ないが。

それ故に並行世界への移動並びに意味の分からない武器の提供も出来るのも頷ける。

さらに、ここだが、『プラトン』、『アトラス』と聞いたらあの幻の大陸アトランティスとしか思えない。というかプラトンもそう言っていたが。

 

そして、彼女のことだが。

 

逃げよう。もうこんな都市からは。彼女の言った通り。それが得策だ。

 

荷物をまとめ始める。

あんなものに勝てるはずが無い。何処かに逃げて一人でひっそりと死のう。大蜘蛛に食われるとかあの夢魔のクズは言っていたが、きっと逃げた先で妖怪にでも会って死ぬんだろう。もう、それでいい。

 

俺が扉から出ようとすると、扉をノックする音が聞こえる。

 

「ミヤマ、起きましたか?」

 

あのクラディウスとやららしい。

 

「なんだ?」

 

「今後の作戦会議があるのできて欲しいのです」

 

参加はしよう、あとで消えればいい話だ。

作戦会議では、今後このレジスタンスはどう王を倒すか、という事について話し合われた。プラトンは良く出来た大将でこういう部下の育成に抜かりもない。

 

どうでもいいが。

 

その日、俺は海から外の世界に出た。

近くにあった無人島に今はいる。

餓死は苦しいのでしたくない。結果、自炊をすることとなる。

 

 

 

1日目、

 

何処かで大きな音が聞こえた。

彼らが戦いを始めたのだろう。きっと負けて終わる。

 

こちらは拠点作りを始めている。食べ物は適当に取って毒がないか調べてから食べて、もしダメだったら直して、というリズムで生活しよう。

 

2日目、

 

もう、拠点が完成してしまった。

やることがない。そうだ。本でも読もう。

 

3日目、

 

読み終わってしまった。まぁ、本一冊なのだからこんなもんだろう。

やることがない。そうだ。この拠点を大きくしよう。

 

4日目、

それも大体終わってしまった。

やることがない。そうだ。探検でもしよう。

 

5日目、

この島の地図が出来た。

やることがない。寝よう。

 

6日目、

寝た。寝よう。

 

7日目、

寝すぎた。やる事もない。寝よう。

 

 

 

「随分と変わったな。ミヤマのせがれ」

 

もう8日目に突入しようとしている日の夜だった。

このジジイは俺の眠りを邪魔したいらしい。

 

「何ですか?急に顔を出して」

 

「ふん、貴様が気に食わなくてな。殺しに来た」

 

「そうですか、魔法使いに殺されるなんて結構名誉な事ですよ」

 

俺は自作のベッドに横たわって適当に返す。

 

「貴様、これでいいと本当に思っているのか?」

 

「…………」

 

答えない。その質問にはもう逃げている。

 

「違うだろう。貴様はこう思っている筈じゃ。『逃げた自分が妬ましい。殺したい程に。』とな」

 

「でも、奴には勝てないんです」

 

そうだ。あんな奴になんて勝てる筈がないんだかラ。これは正しい選択なんダ。

俺は正しい。

ーオレは正しい。

ーーオレハ正しい。

ーーーオレハタダしい。

ーーーーオレハタダシイ。

 

「違う。貴様は間違っている。そして、勝てる見込みはあるぞ」

 

「根源接続者になんて決死でも勝てる筈がないでしょう」

 

「貴様、自身の起源が何か分かるか?貴様の起源は恐らく『繰糸』、

貴様は沢山の運命を手繰り寄せてきた。

女の宮本武蔵も、己の言葉も決断も行動も。

それを覚醒させれば、貴様は世界のあらゆる概念をその眼で手繰り寄せることが出来る」

 

「……それでも動機がない」

 

そう、勝ち目があっても理由がない。

 

「ほう、では先程見させてもらったが、一週間前に貴様があの剣士に感じたあの感情は何だ?あんな物を貴様は偽物と定義するのか?」

 

……そうだッタ。

あれは偽物であってないもの。偽物紛いの本物紛いだ。

あのあたたかさを只の偽物と俺は定義できない。

俺はあのあたたかさが欲しい。人ばかり見て、後ろ向きで冷たい俺にはとっても尊く、どんな文化財よりも、どんな宝石よりも、どんなものよりも大切な宝物なのだ。

 

「俺はあたたかさが欲しい。あんな旅をまだしたい。俺は彼女が必要だ。けど……」

 

そう、彼女はもう、居ない。サーヴァントとしては存在しているだろうが、彼女と同じ彼女はもう居ない。

 

「気づいてないのか?まだ、生きているぞあの剣士は」

 

え?

咄嗟に念話を試みる。

 

ーーーー

 

勿論、彼女は応答しない。

目から涙が溢れ出る。彼女との今までの思い出が走馬灯として駆け巡り、身体中を熱くする。

 

まだ、()()()()()()()()()

 

こちらから念話をかけられるということはまだ、『鎧』の繋がりが残っていている証拠だ。

分かりやすく言うと、今の念話は電話をかけて留守電に切り替わったということ。まだ電話先の電話番号は残っている。

 

「ありがとう、ゼルレッチ爺さん」

 

俺は年相応でなく大人気ない、涙ながらの声で震えながらそう言った。

俺はあの温もりを取り戻す。

俺は無意識に定められたfate(運命)を否定する。




鬱になるどころか逆に筆が進んでいる模様。
展開が早すぎる気がする……。

起源覚醒如きで勝てる訳ないんだよなぁ
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