天元の花、零の先へ   作:新川翔

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明治維新ギリギリ周回終わったぁ!
と思ったらハンティングクエスト開催。忙しい。
1400万ダウンロード記念で水着ピックアップ来ますね。今年は水着武蔵ちゃん来い!


其の五

35話

 

……

 

話の食い違いで全員が静まり返る。

視覚において明らかに、隔たりがある。

 

「話ってのは…何ですか?」

 

どうにか喉から声を絞り出して言葉を紡ぐ。

それと同時に『鎧』の彼女との繋がりを何度も何度も何度も何度も何度も確認して確認する。

彼女との繋がりと彼女自身の存在は確実にある。

この目には彼女の姿が写っているし、耳で彼女の声を聞いた。彼女はここに存在するはずなのだ。

 

「なに、あと数刻経過したら貴様を地上に送ることが出来ると伝えに来ただけだ。準備しておいてくれ」

 

「……あの」

 

何故なんだ?何故彼女は武蔵ちゃんを認識できない。

この地獄のシステムを知っている彼女にどうにか聞き出したいのだが、どう質問すればいいのか分からない。

『どうして師匠が見えないんですか?』

なんて言っても相手に伝わるわけがない。認識されていない時点で詰みなのかもしれない。

 

「何でもないならもう行くぞ」

 

「……はい」

 

結果、何も思いつかなかった。

ゆっくり戸を閉めて武蔵ちゃんの方に目をやる。

 

「どうしたの?」

 

彼女はいつも通りの表情でそう返していたが声は寂しそうだった。

この空気は流石に気まずい。地獄の蒸し暑さと相乗効果を果たして嫌な汗が頬を伝う。このままだと何の解決にもならないと一つため息をつき、気分を強引に前向きにした。片方が落ち込んでいるのならともかく、両方落ち込んでいるのはもう沈んで行くだけだ。

 

「大丈夫。気にしてないわよ」

 

やめてくれ。其の作り物の笑顔が師匠の表情の中で一番嫌いだ。

 

「分かった…さて、朝ごはんにしよう」

 

そんな重いムードは朝食を済ましても続く。

 

「そういえば、武蔵ちゃん」

 

「何?」

 

「……いや」

 

気分を戻す為にいつもの調子で雑談でもしようとしたが、そんな空気じゃなかった。きっと彼女もそれほど気にしてはいないのだろうが、胸の中の何処かでつっかえているのだろう。どこか憂鬱そうな顔をする彼女をどうにかしてあげたいのだが、今の自分にはどうにもできない。

…なんて言い訳をしているのはダメだ。

 

「本当に大丈夫なのか」

 

それにしてもこの質問はとんでもなく失礼だった。他人の入ってはいけないプライベートゾーンの様なものにズカズカと侵入している。こんな時に『会話の時に焦って何も考えずに喋る』というコミュ障が発動してしまった。

 

「う〜ん、流石に悲しかったな」

 

しかし、彼女はそんなことを気にも留めずに返してくれた。俺の彼女の助けになりたいという気持ちが伝わったのだろうか。

 

「今まで認められないって事はあったけど、認識されないって事はなかったから」

 

「でも、どうして武蔵ちゃんだけ見えないんだろうな」

 

「確かに君が見えて私が見えないっておかしいものね」

 

俺と彼女の違い。

サーヴァントと人間である事。即ち霊体か生身かという違いだがこの違いである可能性が低い。何故なら獄角さんはあの霊体である残留思念の塊を認識していたからだ。

そのほかには剣の腕などがあるがそれは関係ないだろう。

この地獄のシステムが何かしら関係しているの事は分かるがそれ以外はサッパリだった。

 

「もう、いいか。分かんない事をいつまで考えても分からないままだし。きっと成り行きでどうにかなるでしょう!」

 

「ああ、そうだな」

 

俺たちは回答権を何処かに放り投げた。こんな重い事を考えて気分が沈む前に逃げて考え込まない。

それも一つの解答だ。ベストであると言い張れる自信はないが。

 

「それにしても、獄角ちゃん可愛すぎ!あの戸が開いた時ピクってしたじゃない!何あれ!可愛がりたい!頭撫でたい!」

 

「ああ、しっかりとした人が時々見せるあんな表情って魅力的だよな」

 

「繰君ってどんな子が可愛いって思うの?」

 

おい、誰がそんな事を聞けと言った。

それ俺みたいなコミュ障全員にしてはいけない質問だぞ。焦るからホント。

ここで恥ずかしながら答える自分なんて想像するだけで気持ち悪い。それだけはなんとしても避けねばならない。そんな時はどうするか、

 

「ハハハハハハハハハハハハッハハハハハ」(棒読み)

 

「えっ、どうしたの…」

 

「灼熱の代理人が国境を飛び潜り、森羅万象彼方までnjcbaqllxgqsfxhxqo」

 

「は……」

 

まず、即興のナンセンス文学とか意味の分からない事を言って場を混乱させよう。

こうやって場の空気をぶち壊すことによって友情や信頼関係を犠牲にして会話を強制終了できる。

 

「それで、武蔵ちゃ「で、どんな子が可愛いの?」

 

テメェ、俺の心の内を読んだな。

ただし、一度手の内を知られていたり、完全に読まれていたら効果がなくなるので注意しよう。

 

「えっ……あっ……それは……」

 

すると戸の方から声が聞こえる。

 

「いるか」

 

ありがとうございます。助かりました。

獄角さんがまたこちらを尋ねてきた。

 

「準備が出来たぞ」

 

「はい」

 

(行くぞ、武蔵ちゃん)

 

(……くそっ。まぁいいわそれじゃあ行きましょう)

 

閻魔大王のいる山の山頂まで案内された。その道中も来た時と変わらず囚人の呻き声で満たされていた。

頂上にはやはり、閻魔大王がいる。この前と違うのはしっかりと品定めでもするようにこちらを見ている。何も脅されていないのにも関わらず足が震えてくる。流石、地獄の鬼達をまとめ上げていると言えるだろう。彼は組んでいる手を解いて口を開く。

 

「話は聞いている」

 

灼熱の空間の温度がさらに上がる。まるで太古から存在している大樹の様な重く太い声が心臓に響き身体中に反響する。これが地獄の主の威厳、オーラだろう。ただいるだけで気圧されて今にも潰されそうだ。いや、もう潰れている。

 

「こちらを出たいのだな」

 

返答をしようとこちらも口を開けようとする。しかし、声にならない。威圧感だけで人はこうなるのかと戦慄しながらやっとの思いで声が出る。

 

「は、はい」

 

「そうか、それでは送るぞ」

 

「はい?」

 

閻魔大王が太い筋肉質な腕を上げて何の感情も込めず、言った。

灼熱の風が俺の周りを吹き荒れる。生温い空気が俺を包んだ。大気が段々と冷たくなっていく。赤い空は青く変わっていく。呻き声もやがて聞こえなくなり、静かな静寂な白い世界に変わっている。明らかに空間転移が行われている。詠唱なく空間転移なんていう高等技術を使えるのはやはり…と関心している暇はない。

俺は後ろにいる武蔵ちゃんの方へ振り返る。認識されていないということはこのままだと彼女はあちらに取り残されてしまう。

すぐに振り向いてその手を伸ばす。

 

(武蔵ちゃん!)

 

あと少しで届く。あと少し。あと少し。もう少し持ってくれ。

 

ーーーーーー届け。

ーーーーーー届け。

ーーーーーー届け。

 

しかし、その思いは届かなかった。目の前から彼女は消え俺は一人、白い雪の上、つまり元の地上に戻っている。

 

「ここどこだよ」

 

一面銀世界。俺は一人飛ばされた。

 

 

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