第三再臨でサラシみたいなやつ着てるんだ。
剣と銃だと王と被るしね。出来ればね…ウヘァ!(←実装が確定したわけでもないのに楽しくなってるヤベー奴)
36話
「……」
俺は寒い雪の上で呆然と立ち尽くす。全く笑えない。
「武蔵ちゃんは?」
流れが唐突すぎる。
理解能力が追いつかない。脳の思考回路が完全にショートして熱くなって焦げてきた。
取り敢えず、『鎧』の繋がりで彼女を確認する。
ーーーーー
いない!いやもう一度、
ーーーーー
いない!どこだ!
ーーーーー
彼女の無事を祈り念じて彼女の反応を手繰り寄せる。目に激痛が走って思わず抑えてしまう。その稲妻が脳に至って全身を走る。いくら起源を封印したとしても一度到達してしまったらその世界に引っ張られやすくなってしまうようだ。思わず無理をしてしまったと後悔する。
だが、その程度でやめるとでも?
いくら無理をしたとしても見つけ出す。でも、死なない程度に。
そんな雲を掴んで掻き分けている作業の中でぼんやりと反応を感じた。ほぼ別世界である場所に存在していると微かに認識できた。それに胸をなで下ろすと同時にもう1つのことに気づく。
「マズイ」
これはマズイ。彼女は今俺以外から誰にも認識されない。その状態で地獄に放り投げられたら、どうなってしまうだろう。他人という支えがなく、誰からも知られず過ごすのはどんな気分だろうか。
想像するまでもなく、絶望だ。
彼女にとっての目の保養があったとしてもそれを触れることさえままならない。誰からも存在を確認されない。
これは地獄の灼熱に精神が炙られ焦がされ、燃え尽きるのも時間の問題だ。
それまでに彼女を見つけなければ。トラウマ抱えてボロボロになっている彼女なんて認めない。
「だけど」
行き方が思いつかない。単純な話、死んだら行くことができるだろうが、死んで地獄に至ってしまったら捕まって人を殺した罪を償わせるための罰を受けてしまう。そうなってしまっては本末転倒だ。
手も足も出せない状況に大きなため息ををついてあたりを回すとこの場所が見覚えのある場所だと感じる。
ここは卜伝さんの庵の前だ。
後ろに振り返るとそれが確定した。
「嘘でしょ」
私はこの灼熱の大地にただ一人取り残されてしまった。余りにも唐突だったので体の反応が遅れてしまった。
これで私はまた独りぼっち。
ーーいや、元々流浪にひとり旅だったので気にはしませんけど。
と感情を押し殺してどうにかここから出る方法を考える。
そういえばあの世とこの世の境に三途の河というものがある。そこを越えれば彼のいる地上に戻れるのではないかと考えられた。
思いついたなら、即行動。
幸運にもこの地獄では誰も私を認識できない。ならどんな事をしても怪しまれることはないでしょう。
目の前の閻魔大王様は私の事など認識せず仕事を始めている。そばにいる獄角ちゃんも然りだ。
この地獄のという世界はなぜか私を受け入れない。
私がそんな大罪を犯したか。
いや、そうじゃない。地獄は本来、罪に罰を与える場所。
悪人、善人関わらず殺した事を罪とすれば私のことは見えるはずだ。
確か観音様の盃でうどんを食べたことがあるが、きっとそれは関係ないだろう。たぶん。
私は踵を返して山を下山し始めた。一体、三途の河がどこにあるのか分からないけれど、話を聞けない以上しらみつぶしに彷徨って探すしかない。
長く感じる旅のなるだろうと覚悟を決めた。
それにしても、地獄でやってる事はどれも恐ろしく流石に同情してしまうほど恐ろしい。皮を剥がれたり、針の山に登らされたり、解体されたり、今まで沢山の死体を見てきたが、拷問の類は見たことがないので思わず目線を下に送る。
やっぱり、ここは望んで落ちて来るところじゃない。
地獄というのは等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、阿鼻の八つに別れている。
勘だが、この世に一番近い三途の河は等活地獄の近くにありそうだ。
私は少しでも早く一番弟子に再会するために歩く速さを早めた。
「卜伝さん、失礼します」
俺は戸の前に立って卜伝さんの名を呼んで戸を開けて一礼して庵に入る。
「帰ってきましたか。朝起きたらいなくなってしまったので何処にいたのかと心配しました……そういえば新免武蔵殿は?」
「ええ、実は」
俺は卜伝さんに誘導されて前に夕食をご馳走になった鍋に座らさせてもらい、体験した余りにも目紛しい地獄での出来事を説明した。
「成る程……」
何か思うことがあるのか、それとも情報量に耐えきれないのか、卜伝さんは言葉を失っている。まぁ、残留思念の塊と戦って、麗しい鬼に会って、地獄を歩いて、閻魔大王の会って、うどん食べて、実は俺以外誰も武蔵ちゃんを認識できないで、そのまま帰ってきた。なんて話は現実的じゃなさすぎて信じられないだろうか。
「あの、卜伝さんって物の怪を斬ったことありますか?」
俺はこの行き詰まった空気をどうにかする為に話題を少し変える。
「それは先程の話にあった様々な悍ましい化け物のことでしょうか。…確かに何度か成敗しております」
いや、貴方も化け物ですよ。
あんな物を殺しきれる剣聖に戦慄し、少し恐怖を覚えた。
「本当ですか…」
「ええ、何度も復活してくれるので助かりました」
助かるなよ!
だめだ。絶対口に出してはダメだ。だって卜伝さん真面目にそんなこと言ってるし。
そんなこと言ったら何言ってんだこの人みたいな目される。
「それで、地獄はどんなところでしたか?」
「地獄についての知識はあったのですが、やはり実際見てみると恐ろしさしかない場所でしたね」
それから、卜伝さんから促されて地獄について詳しく聞き出された後、朝食をご馳走になってしまった。
この恩は何とかして返さねばと思いながら有り難く噛み締めて頂く。
「それは大層大変でしたな。それで、どうなさるおつもりで?」
「勿論、彼女のところに行きたいのですが…行き方も帰り方も分からず途方に暮れているのです」
なんだか、彼女の丁寧語がうつっているような気がする。そんなことお思いながらご飯を頬張った。
「ふむ、京の六道珍皇寺などはどうでしょうか?」
少し間が空き、卜伝さんがそう言った。
「…えっと、あのすいません。どこでしょうか?
「ああ、ご存じないのですか。京にあるその寺はあの世とこの世の境といわれる場所でございます。そこの井戸が冥界に通じると噂されており、とある役人が自分を助けてくれた恩人を生き返らせる為に使い、実際に生き返らせ閻魔大王に仕えたいう記録もございます。あの井戸ならばきっと自由に地獄とこの世を行き来できるでしょう」
「成る程、ならば、すぐに出発します。短い間でしたがありがとうございした」
俺はすぐに出立の準備をする。
「待たれよ」
太い声が庵の中に響き渡る。その音の波長が身体中に響く、さっき体に電撃が流れたのでさらに骨身に沁みた。
「なんでしょうか?」
怒気を放ちあの地獄で見た閻魔大王程の気迫を感じた俺はその動作を反射でやめてその場に畏まった。
その俺の姿を見て卜伝さんはいつもの仙人のような幽玄な雰囲気を纏って口を開く。
「いえ、ただお願いがございまして」
「なんでしょうか」
逆らったら殺される気がした。
「いえ、ただのお使いですよ。この歳になると足腰も弱く買い出しも辛いのです」
「お安いご用です。何を買いに行けばよろしいのですか」
俺は卜伝さんに買い出すものと村への下り方を聞いてお金を貰い庵を出る準備をした。
「卜伝さん、ここってどこの国なんですか?」
ちょうど戸を開けた時聞きそびれたことを聞く。
「常陸国ですが、何か?」
「いえなんでもないです。それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」
茨城から京都を徒歩ってキツくね?まぁ、九州や東北よりはましか。