天元の花、零の先へ   作:新川翔

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お久しぶりです。
はい。ほとんど書き直しました。
それと、fgoフェスの武蔵ちゃんがやばいです。へそが見えちゃってますし、相変わらず胸はやばいし、その笑顔向けないでくれって話です。
武 蔵 ち ゃ ん と 旅 し た い 。
行けそうにないんで事後通販に頼ります。え?あるよね?あるでしょ?
水着(空想)もあるしね。武蔵ちゃん待遇されすぎでしょ。



叫喚

39話

 

いざ出発しようとした時だった。

 

俺はアタッシュケースからルビーを出して『竜騎士』を召喚しようとした時だった。

 

地平線の先の目的地を睨みつけた時だった。

 

俺の眼が影を写し取った。

 

しかし、その時には既に胸から何者かの腕がのぞいていて、その手には臓器が握られていた。

心の臓は抜き取られ、流れる場所を無くした血液が風穴から零れ出る。

身体中から血液がなくなっていく。痛みを感じる余裕さえもない。

 

「ーーーーー!」

 

驚きのあまり声も出ない。相手は突っ込んだ手を引っこ抜く。

俺はガーネットの術式を展開して距離を取ろうと思考した瞬間、痛みと共に宙に舞った。治療が間に合わず撒き散らされる血潮、そのまま自由落下運動で地面に叩きつけられ意識が飛びそうになる。

必死にそれを手繰り寄せて何とか気を保った。

俺が降りた草木もない山の頂上は赤色に染まり、やっとその術式が発動して身体が修復されるのを感じたら、正気を取り戻して立ち上がる。

失った物が元に戻る感覚は北京で多少慣れてはいたが、目の前に広がるザクロを潰してぶちまけたものは相当にグロテスクだった。

目の焦点が合わない。相手の像を捉えられない。

俺の生命本能は逃げろと叫んでいる。しかし、俺の脳はこれには逃げられないと理解している。

 

完全に冷静な思考を欠いてしまった。ただ、このままではトドメを刺されてしまうと判断してルビーを握りしめた。手汗が気持ち悪い。

様子を見る間もなく、ぼんやり見える敵に向かって、魔眼が写す影を信じルビーを力一杯投げた。

すぐに半分解放の竜騎士を起動させる。竜騎士のランスによる直接攻撃で土煙を起こして強引に隙を作った。

更に視覚を共有させて、やっと相手の姿を捉えることに成功する。

真っ黒な布に赤い糸の生える如何にも陰陽師が着てそうな装束を身に纏い、長い烏帽子を頭に乗せ、その目は冷酷で冷たく、眉間には深い堀が見受けられた。

すぐに俺はガーネットによる治療を済ませてアタッシュケースを開き『探索者』と『開拓者』を解放した。彼女のところに向かう前にこの敵を退却させるか、逃げなくてはならない。

そして、この敵を倒すには地の利などの外的要因を使うことが不可欠である。

足りない分は他から埋めるとしよう。

 

奴は姿を気配を消し、俺が影を見て避ける前に心臓を抜き取った。

陰陽師としての実力だけでなく、卓越した暗殺技能も持ち合わせていることが伺える。

俺はポケットから宝石を3個取り出して三匹の犬の使い魔を形作る。

それを周りに配置し、視覚も共有させる。出来るだけ多くの視点から観察して弱点を見つけ出すために目を凝らす。

『竜騎士』の連続攻撃は魔法陣のようなものに阻まれていた。

ラチがあかないので一旦『竜騎士』をこちら側に戻す。さて、相手はどう出るだろうか。『探索者』のよる周辺の調査も終わる頃だ。そこまで、ある程度時間を稼ごう。

俺は一匹の犬を一直線に向かわせた。

地を這い迫る閃光を奴はまた魔法陣で防御すると同時に光線で焼き払った。もちろん、核となる宝石は壊されて修復不可能となっている。

 

「脆いな…」

 

そう、奴は呟いた。体は自然体。

光線は地面に着弾した後、そのまま貫通している。

貫通性のある高密度の魔力光線。陰陽道ってこんな感じなのかと少し、戸惑っていると俺の頭の中にこの辺りの地形の情報が入ってきた。どうやら探索は終了したようだ。

 

今すぐここから離れて場所を変えるのも良いが、ここで相手に背を向ける危険性は高すぎる。恐らく、相手はまだ自身の手の内を全て明かしてはいない。何をしてくるのかはあまり予想できないのだ。それに対して、こちらは手の内を明かしすぎている。ガーネットや竜騎士などこちらの切り札を既に見せてしまっている。

 

「なっ、ーーーーー」

 

思考している合間、影が写った。

それを俺は間一髪で躱す。先程の不意打ちは体の準備が整っていなかったことによる負傷だ。今は、しっかりと体の準備は完了している。確実に避けてその攻撃をした者を視界に収めようと振り向く。攻撃は背後から行われているかと思ったからだ。

 

しかし、そこには何もいない。

背後どころではなく、視覚を共有している全ての範囲で、つまるところ俺の左右と前後と上方には暗殺者は映らなかった。普通、攻撃をする時くらいには姿を現わすものだと思っていた。いや、最初の暗殺は現していたのにも関わらず、今回はそれをしなかったのだ。

未だ、奴は寸分違わず同じところで立っている。

ならば、考えられる可能性は、

 

「使い魔か」

 

黒い陰陽師のさらに堀が深くなった。

厳密に言えば、式神なのだろう。

陰陽師の使役する鬼神。『神』と付いているので神霊だと思えるかもしれないが、それは違う。きっと、彼らは精霊種の一種なのだろう。例外で神霊レベルのものはいそうだが。今はそんなこと関係ない。

実は、もう一つ可能性はあるのだ。それは、彼の術である可能性だ。ロンドンの風の魔術師のように不可視の攻撃などいくらでも存在する。まぁ、それにしては影が見えなさすぎるので、暗殺の式神が常に俺の首を狙ってると考える方がいいだろう。

 

立ち止まっていてはただ殺されるだけだ。相手が攻撃を任せて防御に専念しているようでは俺に勝ち目はない。

 

こうなってはここから離れるしかないと判断した。

しかし、迂闊に振り向いたり動作を起こしては殺されかねない。ならば、相手の予想外の所から逃げればいい。

 

俺は『竜騎士』をまた真っ直ぐに奴に向かわせる。

その反動による土煙を起こして、俺はアタッシュケースを拾い、犬たちを宝石に戻して地面から逃げる。

俺はまるで落とし穴に落っこちるように真っ逆さまに落ちていった。

『開拓者』によって地面を掘っていたのだ。これによって、相手からの攻撃方法を一方向に絞ることができる。

 

あの貫通ビームに関しては考慮していない。黒い陰陽師は防御しながら、攻撃できないと仮定した話だ。勝手にそう考えたので根拠はない。

また、穴に落ちた後すぐに影は見えた。

狭い穴の中でも俺が見るのは『未来に取るべき自身の影』なので迷いなく、暗殺を回避することができる。そして、これだけ的が絞れれば数打って攻撃を当てることも可能だ。ポケットから戻したばかりの二匹の犬を解放させる。

その内一体がビンゴ。見事噛みついてくれた。まだ、その式神を黙視することは出来ないが、大きさは大体掴めるようになる。体長は大体1.5人くらいの大きさだ。まぁ、使い魔だから大きさが大きくなったりするかもしれないが、それはそれ。

嚙みつけなかったもう一匹も追い打ちをかける。

 

それを振り払おうとしている隙に山の側面から抜け出す。

ここで『竜騎士』に一つ咆哮をあげさせる。そこにいれば、思わず耳を塞ぎたくなるぐらいの激音で動きを止める。魔力の塊である使い魔達には聴覚は存在しないので影響は受けない。

 

そのまま、『竜騎士』などの使い魔達をこちらまで来させてそ逃げる。

式神が飛べないことを祈りながら、黒い陰陽師の光線を掻い潜る。奴はどうやら、狙いは良く、翼をちょくちょく撃ち抜いたりしている。翼や、胴体に関しては撃ち抜かれても回復するが、核を撃ち抜かれては修復のしようがない。

なので精一杯に逃げさせてもらった。

 

 

地平線の彼方に行った時、やっと逃げ切れたと安堵する。

ゆっくり高度を落として、使い魔達を元の宝石に戻す。

それで、一呼吸置く。俺が着地したのは草木も生えていない平地。何処だか分からないが、師匠のいる場所ははっきりと分かっている。休む間も無く足を動かし始めて先を急いだ。

なんだかんだで彼女との距離は縮まっている。魔力の残りは少ないが、飛んだおかげで本来の徒歩よりも先へ進んでいるのだ。

 

数日歩いた頃、俺はまだ歩いていた。

日が過ぎ行くに連れて疲労はたまり、傷を治せても精神は治せない。

熱気は俺の喉や肺を容赦なくジリジリと炙ってくる。息が、出来、ない。

痛いのならば、治せばいいのだが、そのまま治し続けては俺の魔力が保たない。

明らかにこの先に彼女はいるのだが、挫けそうになる。水も食料もそろそろ尽きようとしていた。このままでは俺が死ぬことは明白だった。

流石に深山の治癒魔術でも空腹や脱水症状に対処はできない。それらは栄養補給であり、俺にはタンパク質を作り出すとかそんなことは出来ないのだ。

 

その時だろうか。まだ続く平地でたった一つ変わった事が起きた。

 

「ーーー生身の人間だ」

 

俗に言う怨念である。

それらは集まり具現化して俺の体を乗っ取るために立ちはだかっていた。

 

「よこせ、よこせ、くれ」

 

珥加理刀を抜いて構えた。

全く、疲れ切っているのに戦闘とかやめてほしい。

それにこの幽霊も何度か殺さなければ死なないのだろう。本当に、勘弁してほしい。

 

 

結果的には勝利できた。

しかし、俺は力尽きてしまった。

ああ、嘘だろ。自分の不甲斐なさを憎みながら、この場所に絶望する。

そもそも、ここは地獄だ。もちろん、希望なんて存在しない。

倒れながら、悔しさの余り拳を握りしめる。確かに、地獄で彼女を助けるなんて不可能に近いことだ。罪に汚れた人間が、そう簡単に行ったり来たりできる甘い場所などではないのだ。

だからといって、向かわない訳にはいかない。俺は彼女を見捨てるような行動は出来るわけがない。

だから、この運命は避けられないものだ。……それでも、納得出来ない。こんな結末で納得してたまるか。

俺は仰向けになって、その拳を天に向かって掲げて、力なく落とす。

目を大きく開いて力を込める。そう、最後の足掻きである。

手繰り寄せるのは『生』。

 

 

 

また、声が聞こえた。

 

「よこせ、よこせ、くれ」

 

また現れた怨念たちが満身創痍の俺にジリジリと近づいている。

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