ストーリーのfateというよりアクションのfateという今までと違う方針を採ってたんだなというのが感想です。
マテリアル5買いました!武蔵ちゃんの設定がかなり濃くてかなり参考にしてます。
43話
武蔵ちゃんの旅の話は終わる気配がなく、何かしらの制止がなければいつまでも話し続けそうな勢いだ。別段そのこと自体は嫌ではないのだが、獄角さんに迷惑をかけててしまう可能性があるのでそろそろ借家に戻らなければならない。そのことを話すと彼女は不満そうな顔をしたが渋々承諾した。どうやら、帰りながらその言の葉を紡ぐらしい。ゆっくりと立ってから汚れを軽くはたき落とすと、催促するように手を招いていた。それ程喋るのが楽しいのかと少し驚きながら足を進め始める。
その道程にて、俺たちはある違和感を覚えた。地獄が淀んでいるのだ。息を吸えば息苦しさを感じる。元々、ここの温度は高いので息を吸うとそれなりに息苦しいが、それとは話が違う。恨みとか妬みなどの負の空気に満ちているのだ。この怨念は何度も出会ったことはある。けれど、それで辺りを包むほどの力を持つものは今まで経験したことがない。
武蔵ちゃんもこの違和感に気づいているようで目を鋭くさせて辺りを見回している。俺も目に強化魔術を施して辺りを見回した。するとそり立つ岩の間、その先にある少し開いた場所に怨念の塊を見た。
それがどんな感情であるか、忿怒であるか、暴食であるか、嫉妬であるか、それが察せないほどに混じりあっている。全ての色を闇鍋のごとく放り込んだ結果黒になったような感じだ。ドライアイスの蒸気のように辺りに漂って岩にこべりついて辺りをを汚染している。また、その塊の上には漏斗状に同じ黒いものが渦巻いている。俺は武蔵ちゃんの肩を叩いて指でその方向を示す。彼女は俺と真逆の方向を探していたので分からなかったそうだ。こんな目立つものを逆に向いていただけで認識できなかったのも、大気にこんな汚いものがあふれていたからだろう。
その姿は恐らく人型であった。本体が黒い感情が発して辺りに漂わせているので詳しい容姿は分からない。それでも、何故それが人型であると断定できたのか。それは出で立ちが、黒い感情の他に発するものが、相当な剣士の放つ威圧感そのものであったからである。この距離でしかも、睨みつけられていないのにも関わらず身の毛がよだつ感覚に見舞われる。
「逃げるわよ、繰君」
武蔵ちゃんは俺の横でひっそりとそう言った。俺は顔を縦に振って同意する。
俺では傷つけることさえ出来ず、戦うことは失礼になるほどの差があるのは明確だ。そして、本気の彼女で勝てるかどうかは判らない。実際に彼女の本気を見たことない自分が言えることではないが、彼女が真っ先に逃げることを宣言しているということはそういうことなのかも知れない。
「もしかしたら、気づかれてるのかな?」
「気づいてはいるけど、雌雄は決さないって感じかしら。多分、こっちから向かわなければ大丈夫だと思う。取り敢えず、この事は報告しましょう」
「わかった」
俺たちは気づかなかったふりをして歩き出した。それを見た恐怖からか少し歩くペースが早くなってしまう。数分歩く頃にはその瘴気とも言える悪いモノは薄れ感じられないものとなった。追われているわけでもないのにやっと逃げ切れたと安堵して息をゆっくり吸って吐く。それを三度繰り返して彼女の方へ向いた。
そして、考察を始める。何だあれ。俺はその疑問を視線でぶつけてしまっていたようだ。
「よく分からないけど情けない話、私では勝てなさそうね。うん、ロンドンのエオンさんよりも、中国で出会った拳法家よりも強い。やっぱり、上には上がいるものね。あれは人間どころか化け物を超えてるわ」
彼女の口からそんな評価が出るとは驚いた。それは俺にとって過大評価し過ぎなのではと首をかしげる程だった。しかし、そこに俺が意見できる余地など存在しないのでそれを飲み込んだ上で正体を考える。
まず浮かぶのは卜伝さんではあるが、その可能性は即座に否定された。彼がここに来れるはずがないのだ。何かしらの魔術の徒であるとも思えないし、かなり失礼ではあるが、俺たちが地獄で過ごしている間にポックリ逝ってしまって地獄に落ちたとしても、ここにはおらず、刑罰を受ける場所に居るはずだ。
そして、これは希望というか押し付けだが、一晩泊めてくれただけでも分かる礼儀正しさと優しさを持つ剣聖が『負』に負けて欲しくないと強く思った。俺たちは報告するためにもすぐに歩き始めた。ここに慣れてきたのか、心なしか気温が下がってきている気がする。
数分後には借家に到着し荷物を置いたら、すぐに外出してその事を獄角さんに報告した。獄角さんもその『剣士の怨念の塊』については知らないようで首をかしげ、手を顎に当てている。そもそも、地獄のどこかでそれ程の怨念が集まる事自体かなり稀有な事だそうだ。地獄には何万人もの罪人がいる。彼らがこの刑場で刑を受け続け時、最初だけ嘆きやどうしようもない絶望などの感情が発せられるらしい。それは地獄に四方八方に離散して、何百年か漂流と合流をを続けた後にやっと最初に俺たちの前に立ちはばかったような怨念になるそうだ。そして、ある程度大きくなって危険視されるようなものは獄角さんたちが排除するらしい。だから、誰かが故意に集めない限りそんなものは生まれないそうだ。しかも獄角さん達に気づかれる前にそれ程の力を集めたということは術者は相当な魔術の腕を持っているとしか思えない。恐らく、黒い陰陽師のグループだと結論を出して、獄角さんから『少ししたら現世にて調査をする』という指示を受け借家に戻った。
「さて、どうしましょう」
武蔵ちゃんは借家に戻ると居間でストンとあぐらに座ってあの剣士に対する策を考えている。俺は温めのお茶を二杯こしらえて片方を彼女に差し出す。彼女の向かい側に移動してあぐらで座ると目の前の空になった茶碗が差し出された。どうやら、一瞬で飲み干したらしい。自分の茶碗をこぼさないように床に置いてまた新しいものを淹れた。ところで、どこからか咳き込む声が聞こえてくるが大丈夫だろうか。
また台所との往復にならないか少し億劫になりながらも二杯目を彼女に渡すと、彼女は普通に受け取ってそのまま地面に置いた。なぜか顔が赤いが大丈夫だろうか。
「でも、相手の戦い方も分からないのに作戦なんて立てられるのか?」
素朴な疑問だった。相手がどんな敵なのか知らない以上、どんな作戦立案もあまり意味がないと思えてしまう。
「作戦っていうか自分に何が足りないか考えるのよね。今の自分では勝てないことは分かった。じゃあ、どうするかってこと」
俺は何故彼女が独学で零まで至れたのか。その理由の一つを見つけた気がする。彼女は世に言う『努力の鬼才』なのだ。彼女の剣の道にはスランプというものが存在しない。確かに元の剣の才能もあっただろう。生き残る才能もあっただろう。戦いを楽しむ剣客としての才能もあっただろう。だが、この努力をするという才能がなければ彼女をここまで成し得なかった。一度剣を交えるか、戦いを観察するか、どうにかして相手の力量を測る。もし、相手が自分より強かったら努力して強くなり相手の前に現れ、華麗に颯爽と勝利していく。それが彼女の必勝法だ。だから、彼女はどんな敵にも勝ってきた。結果的には全員に勝っているので全勝。ものは言いようである。
方便は置いておいて、俺は彼女の成長を助けたくなった。彼女が負けるところなんて想像したくもないからだ。このまま連勝記録を伸ばしてほしい。
弟子が師匠を助けるなんて構図はらしくはないが、実際弟子に何かしらの刺激を貰ったという例はあるはずだ。…多分。
さて、武蔵ちゃんに足りない部分とは何だろう。剣の腕は圧倒的に彼女が上なので口を出すことは出来ない。ならば、魔術的なことだろうか。例えば、何かしらのジャミングをあの良くないものの塊の剣士にかけて弱体化させるとか。しかし、それは強くなることではない。確かに現世の陰陽師の人達に頼んで魔除けなどをして貰えば可能だろうが、それは彼女のパワーアップには繋がらない。そもそも彼女はサーヴァントだから、ここで鍛えても消滅した際には元のパラメータに戻ってしまうのではないか。いや、そんなことはどうでもいい。彼女が成長できるならそれでいいのだと思考している自分が武蔵ちゃん好きすぎて嫌悪してしまった。
そうか、彼女はサーヴァントだった。その事実を確認した時に俺はある見落としを見つけた。それは決定的な見落としで簡単な見落としだった。『筆算を間違える』レベルの根本的なうっかりミスである。
「武蔵ちゃん」
俺は真剣な表情で彼女の名を呼んだ。
「何?」
武蔵ちゃんはきょとんとこちらを見ている。そうだ。彼女はサーヴァントとかその辺りの知識はほとんどないのである。『サーヴァント』という単語を知ってるくらいだったし、俺の魔術の説明もほとんど聞き流して寝ていた。じゃあ、何で彼女はAランクというとんでも高ランクの対魔力を有しているだろうか。まあ、それは今考えることではない。
俺は正座になって真剣な眼差しで彼女を見た。これは彼女にとっても大切なものだし、こっちが勝手に迫るものでもない。
彼女も真剣な表情のこちらを見て話の深刻さを理解してくれたようだ。それにしても俺の貧弱な語彙力では言い出し文句が見つからない。そもそも、いきなり本題というのも失礼すぎるだろう。やはり、根本的には隠キャでコミュ障なのでこういうのは苦手だ。というか1日に2度同じ間違えをしてしまった。でも、この雰囲気ではもう切り出すしかない。だから、聞き取れる声でしっかりと。
「俺と…」
何この初心者感、気持ち悪いことこの上ない。
いや、そんなことより今はこの話題だ。え?人にお願いする時ってこんなに緊張するものだったっけ。いや、これは普段するお願いとは規模が違う。だから、たまには男らしく覚悟を決めて言うべきだ。
「契約してください」
「は?」
ああ、彼女はサーヴァントであることに無知識であることから無自覚的だ。だからこの事について知らないのも不思議ではない。さらに、俺自体が彼女のことをサーヴァントだと認識していなかったのにもある。
「契約ってどゆこと?まさか怪しいものじゃないでしょうね」
彼女は目を細めあからさまに怪しがり、勘ぐりながらこちらを見ている。何か契約でやらかしてしまったことがあるのだろうか。
「ああ、ホワイトな契約だ。魂が宝石に移動したりとかそんなことはない。やがて化け物になっちゃうとかそんなものじゃないから」
「何?具体例とか挙げちゃってるあたり怪しいけど」
本当に『契約』で何か苦い思い出を持っているらしい。彼女が持つ深い不安を解くためにも精一杯説明させて貰った。どうやら説明は上手くいったらしく納得してくれたようだ。
「つまり、契約すれば強くなると…」
「うん、そういうこと」
「それでどうすればいいの?」
彼女は半信半疑でこちらに疑問を投げかけた。
俺はあぐらに戻って手順を確認する。サーヴァントは区分的にはつまりは使い魔だ。なら、使い魔と契約する方法と同じでいいだろう。やり方は至極簡単で接触し感覚を繋げる。『感覚を繋げる』という抽象的な表現だが、本当にそんな感じだから困る。俺は手を差し出した。
「握って」
言った後に気づいた。
アレェ?この発言おかしくね?
恥ずかしい。
「えっ、いっいや。そういうのは……良い間柄というか…あっ、でも、君が嫌いって訳じゃなくて」
「あっ、っ、そういう。ことじゃない、よ?」
うわぁ互いに恥ずかしくなって凄いことになってるし。
武蔵ちゃんはプルプル震えながらその手を差し出してくる。今すぐに自分の手を引っ込みたい。
ゆっくりと彼女が俺の手を握る。差し出された手にそっと女性らしい柔らかい手を乗せる。その手は魔力で構成されているにも関わらず、人の熱を持っていた。
ここで俺はサーヴァントのシステムを作った者に物申したくなる。何故サーヴァントがそこまでリアルなのか。元の用途としては使い魔であるはずだ。そこにリアリティを求めて何がしたいんだ開発者は。いや、そもそもリアリティとかの話は女性の手に触れたことのない俺が言えるものじゃない。
魔力を介して俺と彼女が繋がる。それはどこか暖かく、力が抜けてくる。思いの外、魔力を持っていかれいるらしい。しかし何だろう、この安心感は。心の底からほっとする。繋がっている。もう孤独じゃないという安堵が身体に広がっていく。
こうして、正式な契約は結ばれた。
宮本武蔵(マスターが深山繰の時)
筋力:B+ 耐久:B+ 俊敏:A 魔力:E 幸運:C 宝具:A
なんだかんだで魔力の余裕がある深山繰との契約。
『彼女自身が弟子の前で見栄を張る+『鎧』による強化』でステータスが上昇した。
ネガティヴな弟子のせいで幸運がワンランク下がっている。
ガーネットを使用した場合、もっと能力が上がる。通称『マジかよブシドー武蔵ちゃん』
追加スキル、追加宝具は無し。
ーーー番外篇ーーー
夏だ!バカンスだ!サバ☆フェスだ!
ギャグだから大きいことも気にすんな!!…マジで。
〜武蔵ちゃんのルルハワ紀行〜
〜一節 沖にて〜
「何奴」
「ヒエッ」
「え!?繰君!?何してんの!?」
訳を説明しよう。俺はハワイに来たはずだった。来たはずだったのだ。
うん、なんか史実とは違うよね。島が合体してるし。
これは剪定事象訂正という俺の仕事ではないだろうかと調査のため張り切って沖に出て来たところ、とんでもない速度で水面を走るボートを発見した。興味が出てそれを眺めていたところ、突然渋くて明らかに俺なんかより断然に強いダイビングスーツのおじさんに刀を背中に当てられたのだ。死ぬかもしれない。この世界に来た直後に死んじゃうのかと自身の運に呆れ出したその時、その超絶スピードで走るヨットがこちらに突っ込んで来て恐ろしいスピードのまま沖に到着。
舟は止まるはずもないのでそのまま砂を巻き上げて何処かへ行ってしまった。操縦主は俺たちの位置で綺麗に飛び降りていた。で、その操縦主はなんと武蔵ちゃんであったのだ。
「まさか貴様が弟子をとっているとはな」
「えへへ、まぁ、本来の武蔵ではないとはいえ一応剣豪ですから。門下生1人くらいはいますよ」
「…………」
どうやら、俺は助かったらしい。
そんなことより、まずい。武蔵ちゃんの水着やばい。
ビキニスタイルの暴力というのは余りにも恐ろしい。彼女はカラフルなハイビスカスをあしらった水着を着用している。俺は普段の彼女を『紅葉』と形容している。ヒラヒラと風に流され気ままにさまよう様、さらに染まった赤から匂わせる上品さ。我ながら彼女を表したいい例えだと思う。
さて、今の彼女だが、例えるなら……うん、植物の知識が足りねぇや。そして語彙力も足りねぇや。圧倒的にまで攻撃的で圧倒的に可憐である。彼女の肉体は鍛えられていることから、無駄のない(一部を除く)洗練された肉体は健康的で魅力的だ。もう少し恥じろよと言いたくなる。
まずは、その足。スラリと伸びて引き締まっている。だが、それは細いというわけではない。美しいのだ。そして、その無駄かもしれないほど大きその部分。旅で慣れてしまったが、彼女は普通にそこがでかい。本当に慣れるということは恐ろしい事で、普段の服装からも結構そこをさらけ出しているのにも関わらず俺はもう『慣れてしまった』のだ。だからこそ日常とは異なる非日常、特異的な服装でしかも水着となるとその威力は天変地異の如しである。
そして、彼女はその頭にハイビスカスの花を添えている。この装飾品によって彼女の笑顔の破壊力が増やされているのは言うまでもない。どの位の破壊力を持つかというと、具体的には一秒間で俺が6回ほど死没と輪廻転生を繰り返す。(普段だったら3回なので実質バイキルト)
もう一つ特質すべき点は俺が水着の彼女に出会ったタイミングである。漫画でよくある状況といえば、まず海に入る前にヒロインらの水着を見て赤面するというのがある。ラブコメ漫画でなくてもある王道的な場面。一緒に来ているなら水に入る前に見るのはそれが当然だろう。しかし、それとはシチュエーションがまるで違うのだ。
水 が 滴 っ て い る
彼女はヨットに乗っていたので決して泳いでいたわけではないが多少は水がかかるのでその水が彼女の髪や肌について雫を作っている。ああ、刺激的だ。全くもってその雫になりたいとか変態的思考には移らないものの、ある程度自身の目にその水着に慣れさせずに濡れさせてしまったことにより、始めて見る武蔵ちゃんの水着+水に濡れている=計測不能のチカラと化したのだ。さて、これに拮抗するほどのモノなど容易にあろうか。考えた瞬間にすぐに浮かんだ。
綺麗な着物+ほろ酔い、うん…………はぁ。ため息が出た。
ふと俺は我に帰る。俺って何考えてんだろ。変態的な思考に移らないとかほざいていたが、そもそもそんなこと考えているのが変態的だと何故気づかない。
「深山繰です。よろしくお願いします」
「ふむ、見た限り剣の腕はなさそうだが」
この爺さんは出会い頭に今までの努力をへし折ってきた。確かに俺には剣の才は無いし、目の前の達人に勝てる気などしないが、そういうことは言わないでほしい。プライドの低さ故に衝撃的な自分の正体とかその類いには強くなっているが、傷つかない訳じゃない。
「えっと、こちらは柳生但馬守宗矩さん」
「柳生最強の剣客の1人じゃん武蔵ちゃん!どゆこと?」
「へー、知ってるんだ?」
「言わなかったっけ?俺、大学では歴史を専攻してるんだけど。そんなことより、ここどこ?どゆこと?」
俺の質問に武蔵ちゃんは淡々とその単語を発した。しかし、その単語に俺は違和感を覚えた。というか違和感しかなかった。ホノルル島とハワイ島でルルハワって何だよと言いたい。さらにここではサバ☆フェスという夏のビッグなイベントが開催されるらしく、サーヴァント達が集まっているようだ。抑止の輪からの直接出動だろうか。アラヤと違ってかなりホワイトだと言える。
勝手にやっている点からすると完全にこちらの仕事案件なのですぐに原因を究明して修正すべきだ。どうやら彼女はここに順応しているようなので聴き出せる限りの情報を後でもいいから聞き出すとしよう。
「じゃあ繰君一緒に遊ぶ?」
「え、はい?」
〜二節 うどんの店 に続く〜