今現在進行中の小説があるのですが、行き詰ってしまったので息抜きに何も考えずに書ける物語を書きたかったんです。
第1話 「地底育ちのサイヤ人カカロット」
「戦闘力たったの2か…クズめ…!」
バーダックは保育器の中で眠る自らの息子、カカロットを見てそう吐き捨てた。片目には対象の生体エネルギーを測定するスカウターと呼ばれる装置があり、そこには数字が表示されていた。
(アイツの息子はカカロットと同じ日に生まれたというのに、生まれながらにして1万もある…何故だ、何故ここまで差が…)
バーダックは腕を組んでイライラと指で肘を叩いた。カカロットの隣には、同じ日に生まれた別の赤子が保育器の中で眠っていた。同じチームの同僚だった男の息子だ。
その時、突然カカロットが泣き出した。バーダックの怒りをなんとなく感じたのか、それともカカロット自身に何か癪に障ることがあったのか…。
あまりの大声に、その隣の赤子までもがつられて泣きだした。
「おい、戦闘力がたった2のバーダックのせがれが、戦闘力1万のパラガスのせがれを泣かしたぞ」
近くに居た仲間がそばのバーダックに聞こえるようにそう呟いた。バーダックは小さく舌打ちをすると、その場から立ち去った。
こんな最低レベルの戦闘力の息子を授かってしまったとなれば、それはとんだ笑いものになるだろう。彼は下級戦士の生まれであるが幾多もの命がけの戦いを経て上級戦士と同等かそれ以上の戦闘力を手に入れた。しかし、”下級戦士の生まれ”はどうやら遺伝してしまうらしい。
…バーダックは戦闘民族サイヤ人だ。我々から見ればいわゆる宇宙人である。そして、その戦闘能力は計り知れず、宇宙ではかなり怖れられる獰猛な戦士たちの集まりとして悪名高い。
「よう」
その時、歩くバーダックの前に一人のサイヤ人が立ちふさがった。その姿は、髪型や背格好、更には顔に至るまでがバーダックとよく似ており、違うと言えば肌の色くらいだが、そんな男がニヤニヤ笑いながら腕を組んでいる。
「なんだ、誰かと思えば下級戦士。何の用だ?」
バーダックは苛立ちのままに少し挑発の色を込めてそう言った。
「まあそうカッカするなよ…。お前にニュースだ、カカロットの送られる星が決まったようだぞ」
「なんだと?」
「地球という惑星だ。調査では、環境は豊かだが住んでいる連中はザコばかりだそうだ。いくらカカロットでも、多少大きくなればそんな星程度なら制圧できるだろう?」
「そうか…あのクズに相応しい星だろうな」
バーダックは顔をしかめ、そう呟いた。
しばらくして、ポッドに乗せられたカカロットは地球目がけて射出された。やがてポッドは地球に落ち、孫悟飯という老人に発見される。そしてカカロットは「空」から落ちてきたことから孫悟空と名付けられ、無限の冒険へと旅立つこととなる
…はずだった。
宇宙を飛んでいる間、惑星ベジータは巨大隕石の衝突により滅び去ってしまった。サイヤ人も運よく母星から離れていた者たちを除いて全てが消滅し、絶滅の道をたどった。
結果として、カカロットの事を覚えている者は誰一人としていなくなってしまったのだ。さて、もちろん皆は知っているであろうが、地球には人間に忘れ去られた摩訶不思議な者たちが集う世界、”幻想郷”が存在しているのだ。
カカロットも例外ではなく、どんな因果か、着陸地点はその不思議な世界へと向かっていたのである。
─地底世界・旧都─
幻想郷のすぐ真下に存在する地底世界、その一角である旧都と呼ばれる都では、謎の大きな力が上空から向かってきていると大騒ぎだった。騒いだり暴れることが好きな荒くれの妖たちですらそれが何なのかが気になり、いつ落ちて来るのかとそわそわしている。
「まだなのかい?その大きな力ってのは」
旧都に住む鬼の一人、星熊勇儀は上を見上げながらそう言った。見つめる先には地上へと通じる真っ暗な穴がぽっかりと口を開けている。
「もう少しなはずじゃないかねぇ」
横に居た小柄な少女がそう言った。彼女は同じく鬼の伊吹萃香といい、頭にはその体格に見合わない程大きな一対の角が生えている。その実力は、勇儀と同様に計り知れないものだった。
「何だろうねぇ?地上からの攻撃か?」
勇儀がそう言った時、その鋭い目はとらえた。暗い穴の遥か奥で、真っ赤に燃える小さな光を。
「来たよ!」
ついに大きな力はその全貌を現した。赤熱しながら隕石のように落下してくる物体は、咄嗟に両手を上にかかげた勇儀の真上へ向かってくる。
そして勇儀はその物体を両腕で受け止めた。物凄い熱と衝撃が放たれ、周囲の地面が凹みクレーターのようなものが形成される。
「ぐぎぎぎ…!」
勇儀も負けじと妖気を赤いオーラのように全身に纏わせ、その足腰と両腕に力をこめる。腕の筋肉が膨れ上がり、太い血管が浮き出た。
妖怪の中でトップクラス、誰にも負けないという怪力を持つ鬼、その中でも更に最強クラスの膂力を誇る勇儀でさえも簡単には止められぬほどの威力を持つ落下物。
「ぃよいしょおおお!!」
自身が耐えられなくなる寸前、勇儀はその身体を横へ傾けた。そして、まるで滑らせるように落下物を自身から逸らし、大きくカーブさせて投げ飛ばした。
著しく勢いを失った落下物は空中をヒュウと舞い、遠く離れたどこかに落ちる。急いで勇儀や萃香たちがその場に向かうと、何もない空き地に小さなクレーターが出来上がっていた。その中央には、例の物体があった。シューと煙をあげながら赤熱が薄くなっていくそれは白い球体で、勇儀が力いっぱい掴んだためについた手の跡や黒い焦げ目、へこみが無数にできている。紫色のガラスのような窓があるが、ひび割れてしまっていてここからは中を確認することができない。
「一体なんだいあれは?」
流石の勇儀も、思わずそう声を出した。生まれてこのかた、あんなものは見たことが無い。それは周りに居る野次馬たちも同様だった。
ガシャン プシュー…
その瞬間、不思議な球体からわずかに蒸気が吹き出し、一部が扉のように開いた。周りの者が少し驚き、後ろへ後ずさった。しかし、勇儀だけは物怖じせずに開いた球体の元へ歩み寄り、その中を見た。その後を萃香が続く。
「これは…!」
「な、何だったんだ?」
「見てみなよ、赤ん坊だ」
勇儀が掴んだまま皆に見せた物は、赤ん坊だった。
「赤ん坊!?」
萃香が驚いた声を上げる。
「しかし、これは…」
そして、一見すると人間の赤ん坊に見えるそれが、よく見ると違う部分があることに気付いた。
「その赤子、人間かい?髪の毛だってもう生えそろってるし、ほら…猿みたいな尻尾だってある」
「本当だ」
それが人間ではないと気付いた周りの者たちが、途端に興味を示し、勇儀の元へ寄っていく。そしてその不思議な赤ん坊をまじまじと見つめる。
「コイツ、妖怪なのか?」
勇儀がそう呟いた。
「妖気はおろか何のパワーも感じない。でも、明らかに人間じゃないのは確かだ」
萃香はそう言うと、赤ん坊が入っていた球体の中から、変な眼鏡のような機械と、そこに書かれた「カカロット」という文字を発見した。
「カカロット…」
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─────
ある日の幻想郷。その日は、なんだかとても落ち着かなかった。
博麗神社の巫女である博麗霊夢は、昨晩起こった事件の現場へ向かっていた。
その事件というのは、こんな事らしい。昨夜、幻想郷の北部を謎の巨大猿が襲ったというのだ。霊夢はその時ぐっすりと寝ており、しかも彼女にそれが伝わったのは今朝の事である。どうやらその巨大猿は八雲紫に退治されたようだが、その跡の調査をしなければならない。その巨大猿がどんな奴だったのかすら知らない上に、それが妖怪だったとしたらその妖気に触発されて有象無象の怪物たちが活発に動き回り出すかもしれないからだ。
つまり霊夢の勘が、そんな場合を想定して調査をせよ、と言っていたのだ。
「ひどいわね」
なぎ倒され、燃やされて黒く焦げた木々に、大きな足跡や拳を打ち付けた跡。確かに、何か大きな怪物が暴れたようだ。
しかし、辺りには何か微量な焦げた臭いや戦いにより発生した物理的なエネルギーの残滓のようなものこそ感じられるが、妖気が感じられない。つまり、例の巨大猿は妖怪の類ではなかったという事だ。
「だったら何なのかしら?」
霊夢は自問自答しながらその微かなエネルギーを辿り、歩いていった。どうやらこれは目の前に聳える妖怪の山へと向かっているようである。
しばらく探索していると、いつの間にか岩が積み重なった斜面を沿うように歩いていた。たいして組み合う事もなく、適当に積まれたような岩だ。
「いやねぇ、崩れたらどうするの」
恐らく、例の巨大猿が暴れたせいで斜面が崩れたようだが…これではまたいつ崩落してしまうか分からない。
「俺を…ここから出せ…」
「え…?」
その時、霊夢の耳に小さな声が聞こえた。
「誰?どこに居るの?」
「俺を…出せ…」
始めは自分の耳を疑ったが、声はどうやらこの崩れた岩山の中から聞こえる。霊夢は大きな岩を一つ一つ慎重に、山を崩さないように退かしていく。次第に助けを求める声はハッキリと聞こえるようになった。
「アンタ大丈夫!?」
岩に下敷きになるように、その隙間からわずかに指が出ている。指は力なく岩と地面を掻いている。霊夢はさらにその岩を退かすと、そこには案の定、人が岩に潰されていた。
黒いツンツンした頭をした少年が今にも死にそうな顔で岩の下敷きになっている。霊夢はそれがとりあえず妖怪ではないことを何となくではあるが察すると、岩を退かそうと力を込めた。がしかし、その岩は不思議な事にビクともしなかった。
「これ、どうなってるの?」
「さァな…訳の分からん女だった、地底世界からやっとの思いで地上へ出てきた俺を、変な女がここから動けなくしたんだ…頼む、ここから出してくれ…」
霊夢は目を凝らすと、確かにここら一帯に結界が張り巡らされていることに気付いた。恐らく、その感じは紫の結界だろう。
「なるほど…妖怪の山の重さを結界を通してこの岩に込めてるのね。…まるで五行山の下に封印された孫悟空みたいね」
そう呟く霊夢。
「でも、アンタ何者よ?地底から来たようだけど、妖怪では無さそうね?」
「当たり前だ、俺を妖共と一緒にするな。俺はカカロット!地底育ちのサイヤ人だ!」
「サイヤ人?何よそれ」
霊夢は思わず首を傾げた。
「とにかく、俺をここから出してくれ!」
「いいわよ。でも、その前に聞きたいことがあるわ。昨日の夜にここで暴れまわっていう巨大猿を知らない?そこに居たなら見たんじゃない?」
「巨大猿だと…知らねぇよそんなもの!」
「あらそうなの」
朝、自分に昨夜の事を教えてくれたのは霧雨魔理沙だった。その魔理沙も天狗から聞いたらしいのだが、その暴れた巨大猿は紫たちに”退治された”としか聞かされておらず、猿を殺したのか追い払って鎮めたのかは分からなかったようだ。そんな巨大猿がもしも生きているとすれば、またいつ暴れて里を襲いに来てもおかしくはない。
「じゃあ助けてあげるけど…条件があるの。アンタも一緒に巨大猿探し、手伝いなさいよ」
「…いいだろう、何でもする!」
「よし…」
霊夢はカカロットと名乗った少年を押しつぶしている岩に触れた。まるで人体の中を複雑に流れる血管の血流のように張り巡らされた妖力。
そこに妖怪の山の重さが混ざり、非常に強固な結界を作っている。それも、まるでこの少年がとても恐ろしい存在であるかのように…。
バチッ
ついに岩にかけられた結界は解除された。
──次の瞬間、霊夢の頭部に激痛が走った。
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ちなみに、これはドラゴンボールから見ても東方から見ても完全なるパラレルであり、これから登場する人物たちは多少原作と設定が異なっている場合があります。