もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第10話 「大苦戦!紅魔館の紅美鈴」

霧の湖という広大な湖のほとりに建つ、紅魔館の門番、紅美鈴。彼女は今日も門の前に立ち、ひたすらに仕事をこなす。仕事をこなす…こなしたいらしい。

 

「zzZZ…」

 

眠り癖のある彼女は、門番の仕事があるのにもかかわらず居眠りに耽ってしまっていた。これだからいつもとある侵入者を許してしまうのだが…。

 

ザッ

 

「ん…」

 

しかし、”気を使う程度の能力”を有する彼女は、地を踏み近寄る者の気配を敏感に察知する。すぐに目を覚まし、そこへ目をやる。

するとそこに立っていたのは、黒い髪を左右に逆立てた少年だった。そう、カカロットだ。

霊夢はというと、1人で技術の向上を目指したいらしく、カカロットとは別行動をして博麗神社へと帰っている。

 

「何か御用でしょうか?」

 

「お前が紅美鈴か?」

 

「いかにも、そうですが」

 

「お前は武術の達人であると聞いた、手合わせを願いたい」

 

美鈴はそれを聞くと目を細め、眉をひそめた。ゆっくりと手を上げ、それを相手へ掲げる。

カカロットは思わず身構える。やはり聞いた通り、タダ者ではない…と。

 

「手合わせを願いたいと!そうでしたか!じゃあ中でやりましょうか」

 

「ありゃ…?」

 

突然表情を崩し、肩をポンと叩いてフランクに接してきた美鈴に驚くカカロット。先ほどの一瞬だけだが、殺気立ったいかにも武道家の雰囲気とは似ても似つかない。

 

「こちらへどうぞ、この館の主人が試合をする際は是非観戦したいと仰っているものでして…」

 

「あ、ああ…」

 

カカロットは美鈴に案内され、館へと向かって行く。そして大きなドアを開き、ロビーのような場所で美鈴は止まった。

 

「ところで、貴方は…?」

 

「俺の名はカカロット。命蓮寺で修行を受けたサイヤ人だ」

 

「ほう、貴方が噂の…」

 

と、その時、2階廊下の手すりの上から何者かがこちらを見ていた。この紅魔館の主であるレミリア・スカーレットとその妹であるフランドール、そして彼女らに従事するメイド長の十六夜咲夜だ。美鈴が挑戦者の相手をすると聞き、それを見に来たに違いない。

 

「美鈴、その者が挑戦者か?」

 

「そうだ!何か文句あるか」

 

それに取ってかかるカカロット。

 

「別に何もないわ」

 

「だったら黙って見ていろ」

 

「なっ、ムカつくわねソイツ!美鈴!ちゃっちゃとやっつけちゃってよ…」

 

「ははは…では、早速始めましょうか」

 

美鈴は拳をもう片手で包むように握り、ゆっくりと頭を下げた。そして中国拳法独特の構えを取る。その表情はまた真剣さを感じさせるものに変わっていた。

 

「しかし、何故命蓮寺の弟子が突然私に勝負を?」

 

ふと疑問に思った事を問いかける美鈴。

 

「『幻想郷一武道会』を知っているか?それに出るんでな…実践を積むのだ」

 

「ほう…奇遇ですね。私も出るんですよ。賞品に何でも願いが叶うアイテムが出ると聞いたら、お嬢様たちが出ろ出ろと言いますんでね」

 

そう話していると、いつの間にか二人の間にメイド長の咲夜が立っていた。彼女の時間を操る能力で時を止め、一瞬でここへ移動したのだろう。

 

「そろそろ始めなさいな」

 

咲夜がそう言うと、二人はもう一度構える。

 

「では…はじめ!」

 

その声が届いたとたん、両者は同時に後ろへ下がった。どうやら二人とも相手の出方を見る作戦へ出たようだ。

ジリジリと横へ動いたり、前へ出たりして相手の攻撃を誘っている。

 

「どうしました?ただ様子を窺っているだけでは、手合わせにはなりませんよ」

 

「そうだな…では俺から行かせてもらう!」

 

カカロットは素早く飛び出し、殴りかかる。思っていたよりも速く動くことに驚く美鈴だが、難なくその拳を掴むようにして受け止めた。

 

「!」

 

しかし、同時に腹に向けて迫っていたもう片方の拳に気付いた。それを間一髪、足を上げてガードする。

カカロットの拳は美鈴の足に当たると、まるで鋼の塊を殴ったかのような反動を受け、衝撃によりはじき返されてしまった。

 

「か、かってぇな…」

 

今度は美鈴が仕掛けてきた。あの天龍よりも鋭い連打と、その鍛えられた肉体から繰り出される一撃。カカロットはそれを受け止めるので精いっぱいだった。

だがその攻撃の合間に見えた、隙。そこを逃す手は無かった。蹴りをしゃがんで躱し、そこからジャンプするようにして顎にアッパーを食らわした。

美鈴はよろめき、後ろでゆらりと体勢を整える。

 

「でりゃああ!!」

 

さらに追撃に出る。美鈴が伸ばした手を掴み、その首にもう片手で手刀を叩きこもうとする。しかし、美鈴は掴まれた手をひっくり返し、カカロットを手首の動きだけで投げ飛ばした。

 

「くっ…」

 

両者はもう一度後退し、互いににらみ合う。

 

「…お前、なんか手抜いてないか?」

 

と、カカロットが言った。

 

「…わかります?」

 

「当たり前だ!それぐらいわかる。手加減無しでかかって来い!」

 

「まあ、いいですが」

 

カカロットは姿勢を低くし、美鈴へ向かう。そして今にも殴りかかる瞬間…美鈴が繰り出した突きを顔面に受け、後ろへ転がるように吹き飛んでしまった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「いちち…問題ない…!」

 

すぐに起き上がると、素早い連続ハンドスプリングで接近する。そのまま宙へ飛ぶと、強烈なドロップキックをお見舞いした。

 

美鈴でさえも、いくら素手で受けたとはいえ後ろへ下がってしまうほどの威力だ。

 

「なるほど…多少は『気』の概念を嗜んでいるようですね」

 

そう、今のカカロットの蹴りには、天龍戦で見せた「気功突き」のような気の集中を足で行っていたのだ。それに美鈴は気付いたのだ。

しかし、今の一撃は美鈴にもダメージが通っていた。と同時に、美鈴はカカロットに対してわずかな恐怖を抱いた。例えるならば「武道を覚えた獣」…その攻撃は的確に美鈴の急所を狙い、確実に相手をしとめる気概で放たれていたのだ。

 

(一体、どんな人にそんな戦い方を覚えさせられたんだか…)

 

「ならば私も、能力の真髄を見せても良いという事でしょう」

 

美鈴はそう言った。

 

「何だと?」

 

息を切らしながらカカロットが呟く。

 

「久しぶりに美鈴の本気が見れるのね」

 

「おー、あのドカーンってやつね!」

 

と、上から見ていたレミリアとフランドール。

美鈴は直立し、呼吸を整える。はたから見れば隙をさらしているだけにしか見えないかもしれないが、ある程度力のある者ならばわかる、これは構えの一種であり、隙など無い、と。

 

「はあああああ…」

 

両腕を前にかかげ、そこへ力を込める。力んだ美鈴の額と腕に血管が浮き出てくる。

すると、両手に黄色い光が電気のように迸り始めたではないか。その手を胸の前で合わせると、自分の体の横に移動させ、姿勢を低く構える。

 

「それは…!」

 

すると、横に回した手に集中した気が集まり、それは眩く光る七色の気の光弾となった。更に大きさを増し、ついにはサッカーボールほどの大きさの光弾に変化する。

 

「これが私の技…『華光玉』!!」

 

一気に気の光弾をカカロットへ向けて放った。薄暗かった紅魔館の中を照らす虹色の気は途中で色ごとに混ざり合い、捻じれながらさらに威力を増してカカロットへ襲い掛かる。

 

「ぐおお!」

 

カカロットも両腕に気を込め、自身に向かってくる華光玉を受け止める。しかし、自身の力をはるかに超えた威力の前には、止めきることはできなかった。

 

「ぎゃあああああ!!」

 

眩い光がカカロットを包み込み、炸裂する。床がめくれ上がり、煙とその破片が飛び壁が割れる。

それらが治まった後には、出来上がった窪みの中にカカロットが仰向けで倒れていた。

 

「…張り切り過ぎちゃいました」

 

普段は弾幕ごっこ用に威力を抑えている技…。それを久しぶりに本気で放ってしまった。

 

「張り切り過ぎちゃったじゃないわ!やり過ぎよ、死んでたらどうするの!」

 

レミリアが上からそう叫んだ。美鈴はやべっというような顔をすると慌ててカカロットへ駆け寄る。

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

「うおおおおお、死ぬかと思った!」

 

ボロボロになったカカロットが急に起き上がる。口から煉瓦の破片のような物を吐き出し、立ち上がった。

 

「無事だったんですね…恐ろしい頑丈さだ」

 

「すげぇな、今のどうやったんだ?」

 

「今のですか?ただ、手に込めた気をぐわっと出しただけの事ですよ。さっきのを見る限り、カカロットさんは気を込める段階は既にマスターしている様子。ならばそれを出すのです」

 

「出す…そうか、難しく考えすぎてたんだな。聖は放出だとか言っていたが、出すと言われれば簡単かもしれん」

 

「ですが、これは私も50年以上かけて習得したものです。1年やそこらの修行では確かに難しいでしょう、どうです、明日から私の指導を受けてみては…」

 

「それっ」

 

カカロットが試しに片手を前にかかげ、美鈴がしていたように気を込めた。そして「出す」という事を念頭に置いて、その様を脳内でイメージする。すると…

 

ボンッ

 

右腕に込められていた揺らぐようなオーラが、ぐにゃりと光弾に変わり、前方へ放たれた。カカロットも美鈴も、それを見てポカンと口を開けている。

 

「おおっ、出たぞ!ついに俺にもできたのだ!」

 

「…むむ、貴方はサイヤ人とか言いましたね…どれだけ素質満点な種族なのでしょう…」

 

 

気の達人…そして紅魔館の門番である紅美鈴。戦いには負けてしまったが、新たな技を覚えることができたカカロット。いざ、幻想郷一武道までは一直線だ!

 

 

☆キャラクター戦闘力紹介☆

参考

一般成人男性 5

一般成人女性 4

子供(10歳) 2

ミスター・サタン 6.66

一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上

大妖怪クラス 80以上

ピッコロ大魔王 260

 

 

カカロット 92~138(通常~気で攻防力増)

紅美鈴 95(手加減)→120~240(通常~気で攻防力増/華光玉)

 

カカロットは天龍との戦いやその後のトレーニングで2アップの92。気の集中により138にまでアップする。アニメでのブルマがウミガメの戦闘力を測定した際、小数点まで表示されていたので、おそらく小数点以下も大丈夫だろう。

美鈴は武術や気の達人である。つまり妖怪であることを考慮しても同じく武道を極めた亀仙人(初登場持で推定120)は固いだろう。気の扱いにより、2倍の240にまで上昇できる。

 

 

レミリア 50~100(通常~妖力で攻防力増/スピア・ザ・グングニル)

フランドール 59.4

十六夜咲夜 20(通常)

 

さて、チラリとしか登場していない彼女らの戦闘力も考えてみよう。まず、レミリアは体術や力の強さも高いことには高いだろうが、それよりも妖術面での強さが強調されていると感じる。バビディが魔術が得意な代わりに肉弾戦闘は(恐らく)からっきしダメであろうことを考えると、妖術を取っ払った力は彼女の年齢である500歳を十分の一とし、50とするのが丁度いい。これでも人間が束になっても敵わない強さだ。妖力による攻防力アップや、それによって生成した武器による戦闘力アップもできるだろう。

フランは、レミリアが500歳から50と推定したのに対し、495を逆さまにして59.4と合わせたい。力関係的にもこのぐらいがちょうどいいだろう。

咲夜はとりあえず、通常時で霊夢と同等の20という値を与えたい。

 

 

 




もう少し戦いの描写を上手く書きたいところです…

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