もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第101話 「戦慄!月光時々大猿!?」

シロナは真っ赤な霊力を纏う。霊夢とウスターは、シロナの気がどんどんと上がっているのを感じ取った。

やがてその身体が膨れ上がり、真っ赤な体毛に覆われていく。霊夢たちが見ている前で、シロナは赤毛の大猿へと変貌を遂げてしまった!

 

「キャアアアア──!!」

 

甲高い雄叫びが周囲に響き渡る。ターレスの作り出したパワーボールには満月の時と同等の値を持つブルーツ波が含まれており、すなわちパワーボールを作り出す事さえできれば満月時以外でも自在に大猿化できるという、サイヤ人の最終兵器なのである。

それにより、カカロットの娘であり生まれた時から尻尾の生えていたシロナも大猿と化してしまう。しかもそれは普通の大猿ではなく、博麗の巫女としての力も引き継いだ「赤毛の大猿」であった。

 

 

時を同じくして、シロナと同様にパワーボールの光を見てしまったカカロット。彼もまた目を赤く染め、その全身が茶色い体毛に覆われる。

カカロットの大猿化が始まると、ターレスは自身の作ったパワーボールを見ないようにしながら一発の気弾を撃ち、それを破壊した。

 

「ふう、こうしないと俺まで理性の無い大猿になっちまうからな…」

 

「グ…おおおお…!!」

 

カカロットはみるみる巨大化し、完全な大猿の姿と化す。完全に理性を失っているようで、額に血管を浮かばせながら巨大な咆哮を轟かせる。

 

「グオオオアアアア──!!」

 

その時、ほぼ同時に大猿化を終えたカカロットとシロナの目が合った。互いに唸りながら威嚇し合い、じりじりと接近していく。カカロットは野太い叫び声を、シロナはつんざくような金切り声を上げる。

 

「まさか…やめてカカロット!!」

 

最悪のパターンを想像し、思わずそう叫んだ霊夢であったが、そんな彼女の目の前でカカロットは飛び跳ねるとその拳でシロナの顔面を殴りつけ、吹っ飛ばした。

 

「ははははは!いいぞカカロット。子供が親を殺す、それがサイヤ人だが逆もまた然り…我が子を殺めるのもサイヤ人だ!」

 

上空から高みの見物をしているターレスは高笑いしながら冷徹な言葉を投げかける。

シロナは森の中を転がるがすぐに起き上がると、唸りながら再びカカロットへ向かおうとした。

 

「はッ!!」

 

だがその時、シロナの周囲に不思議な八角形の結界が出現し、檻のようになってその動きを止めた。シロナがどんなに暴れてもその結界の檻は揺るがない。

 

「ふう…シロナは大猿になってもまだ子供だからか大したことなくてよかったわ。それよりもカカロット…前に大猿になった時は少しは理性や意識があったのに…!」

 

確かに、以前の月夜見王との戦いでカカロットが大猿と化した時には霊夢のおかげで理性を保ちながら戦えるようになった。しかし、今のカカロットは初めて幻想郷にやってきた時のように、あるいは命蓮寺で大猿になった時のように、自分の子供ですら殴り飛ばすような凶暴性を持つ怪物へと変身してしまった。

 

「どちらにせよ倒せばいい話だ!」

 

ウスターは飛び出し、カカロットの頭部目がけて連続でエネルギー弾を撃ちこむ。煙と炎がカカロットを包み込み、ウスターはトドメの一発としてひときわ大きなエネルギー弾を投げる。

…がしかし、煙の中から現れた巨大な腕がウスターを突き飛ばし、地面へと叩きつけた。

 

「うぐ…!」

 

それを見た霊夢は、大猿となったカカロットは尻尾がなくなれば元に戻ってしまう事を思い出す。以前に命蓮寺で大猿化した際は、聖が尻尾を切断することによって解除していた。

霊夢は上手くカカロットの背後へまわろうと飛ぶが、それに目ざとく気が付いたカカロットは振り返る。

 

「グオオオオ───!!!」

 

カカロットは口を開き、そこから赤い光線を発射して霊夢を狙う。間一髪、霊夢はそれを躱すことに成功するが、その時に一瞬、カカロットと目が合いながらすれ違った。その真っ赤な目を見た霊夢は思わず怯む。

次の瞬間、振るった剛腕が霊夢に直撃し、吹っ飛ばした。

 

「カカ…ロット…」

 

霊夢はなんとか地面に激突する寸前で自身の背後に結界を作ることでダメージを軽減する。

カカロットは再び結界で動きが封じられているシロナに向き直ると、その口元にさらに巨大な炎の塊を作り出す。溶岩の如き熱を放つ炎はどんどん大きくなり、もし放たれれば周囲の大地ごとシロナを完全に焼き払ってしまうだろう。

 

「いいぞカカロット!焼き払ってしまえ!」

 

ターレスが腕を組みながら近づいてきてそう言った。

しかし、次の瞬間カカロットはグルリと顔をターレスへと向け、口に溜めた炎を一気に解き放った。ほぼ真上へ向けて放った炎は幻想郷の大地を破壊することはないはずだ。

ターレスは自分の前へバリアーを張り、それをガードする。

 

「ぐ…!!」

 

なんとかそれを逸らして避けるが、ターレスの真上にまで飛んでいたカカロットが視界いっぱいに迫っていたことに気付かなかった。いや、気付いていたとしても避けられなかった。

カカロットは足でターレスを押し、そのまま地面にぶつけて踏みつけた。

 

「ぐああああああ…!?」

 

「さぁ観念しなさいターレス!」

 

苦しむターレスの顔を霊夢とウスターが覗き込む。

 

「か…貴様ら…!」

 

「カカロットはわざと理性の無いフリをしていたのよ。アンタにそう思わせるためにわざわざシロナを殴ってまでね」

 

「ああ…俺はすぐに感づいたが、霊夢は目が合うまでわからなかったようだがな」

 

ウスターは口の端についた血をぬぐった。

 

「さぁ観念しなさい。このままならアンタは踏みつぶされて死ぬわよ、その前に大猿化を解除しなさい」

 

「く…ふっふっふ…まさかカカロットが下級戦士でありながら大猿化して理性を保てるとは…!俺のパワーボールは消しても効果はしばらく続く…が、半日もすれば元に戻る…。どうやらカカロットは尻尾を失いたくないようだからな…」

 

カカロットは足を退けると、ターレスは足の骨が折れているようで立ち上がってまともに動くことはできなかった。その後、深夜になる頃にはカカロットとシロナの大猿化は解け、元の姿に戻っていた。

 

 

その後、朝になるとカカロットたちは博麗神社にまで移動し、ターレスの話をもっと詳しく聞くことにした。サイヤ人という種族、フリーザという存在…聞きたいことは山ほどあった。

 

「なんだ?結局は俺に協力する気になったのか?」

 

ターレスは足にさん木を当てて縛りつけながらそう言った。

 

「誰が協力するかよ、俺はお前を許しちゃいねぇ。…ところでさっきから気になっていたが、何故俺とお前はそっくりなんだ?まさかサイヤ人は全員同じ顔をしているわけではないだろ?」

 

カカロットはまだ膝の上で眠っているシロナを撫でながらターレスにそう疑問をぶつけた。

 

「俺とお前は下級戦士の生まれだ。別に親子でも兄弟でも、血縁が有る訳でもない。ちなみにお前の父親と俺も、よく似ていると言われた。何故だか分かるか?下級戦士は弱くてすぐ死ぬから、生き残った少数は大量の子供を残すんだ。だから結果的に顔が似通ってばかりになる」

 

「…聞きたくなかったぜ、そんなこと。なぁ、もっとサイヤ人とそのフリーザとかいうヤツについて教えてくれよ」

 

「宇宙の帝王さ。フリーザの軍も強力だがフリーザの野郎自身もとんでもなく強い…。俺達サイヤ人は、もともとは惑星サダラという星に住む民族だった。しかし仲間割れと争いでサダラは消滅し、サイヤ人は宇宙を流離うことになる。そこでプラントという惑星を乗っ取り、そこをサイヤ人の新たな根城としたはいいが、また同族での争いで星が消えることを危惧したサイヤ人は宇宙進出を考えた。他の異星人に戦闘提供することで同族での争いを減らそうとしたんだ。そこで俺達に目を付けたのがフリーザさ」

 

サイヤ人の経歴を聞いたカカロットは少し考え込む。

 

「フリーザは俺達サイヤ人の戦闘力と好戦性をえらく気に入り、奴隷のようにこき使った。それを長年不満に思っていたサイヤ人の王、ベジータ王は仲間と共にフリーザに反旗を翻すもあっけなく敗死…。これが決め手となり、フリーザは団結して強くなっていくサイヤ人を怖れ、プラント改め惑星ベジータごとサイヤ人を絶滅させたのさ」

 

「その生き残りがお前って訳か」

 

「その通り。生き残ったのは俺と、丁度その時他の星に攻め入っていて助かったヤツだ。不満が溜まっていた連中はベジータ王の反逆に参加して殺されたが、それでもフリーザを心酔しよく使って下さると感謝するサイヤ人もいた。まぁソイツらは全

 

員フリーザに星ごと消されたがな」

 

「俺もこの地球に送り込まれたことで助かったという事か…」

 

「だが!ベジータ王とも組まず、フリーザに一縷の疑問も持たず成す術なく死んだマヌケとも違い、たった一人でフリーザに反逆して戦った男がいた!その男の名は”バーダック”!お前の父親だ」

 

「な、何だって…!?」

 

「そしてこの俺はバーダックに生かされ、その遺志と願いを継いでお前に会いに来たのだ」

 

 

 

 

 

☆キャラクター戦闘力紹介☆

参考

一般成人男性 5

一般成人女性 4

子供(10歳) 2

ミスター・サタン 6.66

一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上

大妖怪クラス 80以上

ピッコロ大魔王 260

ラディッツ 1500

ベジータ 18000

 

 

カカロット 3万(基本最大)→30万(大猿)

シロナ 4(平常時)→20(霊力開放)→200(赤毛の大猿)

 

ターレスの作り出したパワーボールにより、カカロットとシロナは親子で大猿化してしまう。カカロットは大猿化すると通常時から10倍の30万。十倍界王拳を使用した時と同じ数値であるが、その分理性が無いため有利になる…とターレスは考えていたようだ。

シロナは通常の大猿とは異なる”赤毛の大猿”に変身を遂げる。博麗の巫女としての霊力の影響を受けたその姿は真っ赤な毛に覆われている。その戦闘力は、まず平常時の4から霊力開放で5倍となり20。そこから大猿化の10倍が働き200。今の時点の霊夢たちにとっては取るに足らない数値だが、この時点で超サイヤ人化(50倍)と同等の強化倍率を得ていることになる。

 

 

 


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