ターレス一味はゆっくり飛びながら宇宙船へと戻ろうとしていた。足が折れたままのターレスに対して、アモンドが心配の言葉をかける。
「ターレス様、ひどい目に遭いましたな。まさかカカロットがあれほどまでに強くなっていたとは」
ターレスが乗って来た宇宙船は妖怪の山の裏側の斜面に停止していた。その形状は球体状で、無数の窓と下部からはタコのような脚が伸びている。実はターレス軍団のレズンとラカセイは「古代ビーンズ族」と呼ばれていて、ターレスが立ち寄った星で化石となっていたのを復元させたのだ。ビーンズ族はテクノロジーに秀でていたとされており、この宇宙船もレズン&ラカセイ製である。
その中の一室にはメディカルマシンと呼ばれる装置が三機ほど並んでいて、これは中に入って特殊な薬液に浸かることで短時間で傷などを治療できるのだ。
その一つにターレスは入り、タイマーをセットする。
「24時間で設定しておくか…ちょうどナッパとベジータ王子が地球にやって来るタイミングだ」
「…という訳なんだ。お前も一緒にどうだ?一人でも多くの戦力が欲しいようだからな」
カカロットは神霊廟にある豹牙天龍の道場にやって来た。天龍が考案し編み出した「豹牙流拳法」はいまや里の格闘家にとっての一大流派となっており、その師範である天龍も日々弟子たちに稽古をつけながら自身も修行を続けていた。
「なんだって?そんな事が…だがしかし、今の俺にはこの道場がある。弟子たちを放っておくことはできない」
天龍はカカロットの誘いに対してそう断りを入れた。
「そうか…」
「いいや兄者、行ってくればいい!」
後ろから野太い声が聞こえた。その主は天龍の弟である昇龍であった。
「昇龍…」
「道場は俺や神子様に任せてくれればいい。兄者の顔に俺も行きたいって書いてあるからよ」
口ではそう言ったものの、やっぱり天龍はカカロットの誘いに胸を躍らせていた。宇宙へ行き、まだ見ぬ強敵と戦う…武道家としてこれに喰いつかぬ者はいない。
「どうやら俺も、お前の性分が移ったらしい…。是非行かせてくれ」
「…って事なんだけど、一口乗らない?」
紅魔館に訪れた霊夢は、これまでと同様に門番の仕事をしていた紅美鈴に例の話を持ち掛けていた。美鈴はそれを聞いて何か言おうとしたが一旦口を紡いだ。
「ええ、もちろんお供したいです…が、お嬢様や咲夜さんが何というか…」
「いいえ、むしろ行ってきなさい!」
後ろから日傘を差したレミリアと咲夜が歩いてきてそう言った。吸血鬼であるレミリアはともかく、咲夜は8年前からそれほど年を取ったようには見えない。
「お嬢様…!」
「宇宙の帝王フリーザ…実に興味深い。行ってソイツらや宇宙へ知らしめて来い、幻想郷のレミリア・スカーレット一味の強さをね!」
「決まりね」
「さて…どうやら命知らずのバカどもが集まったようだな」
メディカルマシンによる治療を終えたターレスは、広い草原へ移動させた巨大な宇宙船の前に集まったカカロットたちへそう言った。カカロットはヒゲを剃り、以前と同じ黒いインナーシャツと灰色の道具を着用し、ウスターは白いマントを羽織ったいつものスタイルだ。美鈴と天龍は大きな荷物を背中に背負っている。
見送りには霊夢とシロナ、そしてシュネックに紫、隠岐奈、神子とレミリアもやってきていた。
「カカロットよ…」
シュネックがカカロットの前に進み出てきて言った。
「お前は本当に物凄い奴じゃ…まさか宇宙にまで行ってしまうとは想像だにしていなかったぞ。今言うのもなんだが、実を言うと…私もお前と同じく地球外の惑星から来た宇宙人なのだ」
「なんだって?」
シュネックから突然のカミングアウトを受けたカカロットは、その言葉に疑問を持つも、現に宇宙人であるターレスたち、それから自分も宇宙人だったという事実を目の当たりにした後だと、すんなりと理解できた。
「ふっふっふ…子供を持ち、そして他の星の文化や様子を見たお前はこれからも成長を続けるだろう。お前が死んだら私も悲しい…なので絶対に死なずに戻ってくると約束してくれ」
「ああ、分かってるさ」
「じゃあね、カカロット」
霊夢がカカロットの手を握った。
「父ちゃん、ヒゲなくなったね」
シロナはつるつるになったカカロットの顎を触りながらそう言った。
「…またチクチク触らせてくれる?」
「もちろんさ。帰る頃にはもじゃもじゃになってるかもな」
「そろそろ行くぞ」
ターレスは宇宙船の入り口の開閉ドアを開け、中に入ろうとしている。カカロットたちは見送られながら宇宙船に乗り込んでいき、入り口の扉は閉じた。
中に入ると、そこにはクラッシャーターレス軍団の面々と、始めて目にする二人組がこちらを見ていた。見た目的に親子のようだが…。
「発進しろ」
宇宙船は浮かび上がると、フッとその場から消えた。急いで窓の外を見ると、そこはもう幻想郷ではなかった。深く青い海が眼下に広がり、窓のスレスレ部分をカモメが飛んでいく。
「おお…!これが外の世界…!」
「ここで紹介しておくか」
ターレスは例の親子を見た。
「このふたりはついこの間、辺境の星に立ち寄った時に発見したはぐれサイヤ人だ。フリーザ一味にはつかずにずっと宇宙を放浪していたらしい」
「私はパラガスという、よろしく頼む。そしてこっちは息子の…」
「ブロリーだ」
パラガスと名乗った中年のサイヤ人は色黒で、顔に少ししわが刻まれ左目に傷が入って潰れている。ターレスが着ているものと似たデザインの戦闘服だが、細部の造形や色合いは大きく異なっている。
そしてその息子のブロリーは、2メートルはあろうかという筋肉質な長身のサイヤ人だ。見た目的にカカロットと歳は近いのだろうか。赤紫色のローブと白いズボンを着用し、首や腕、頭には青い宝石のような物が埋め込まれたアクセサリーを身に付けている。
ブロリーはカカロットに気が付くと、おもむろに近づいて行って顔を見下げた。
「な、なんだよ…?」
「君がカカロットか?オヤジやターレスさんから聞いている、俺と君は誕生日が同じらしい」
と、ブロリーは少しだけ笑みを見せながらそう言った。
カカロットはブロリーの顔を見た時、その黒い瞳の奥に眠る底知れない何かを感じ取り、怯んだ。何かとてつもない濁流のような悲しみを無理に押し込めているようだった。
「そ、そうなのか」
「よし、目的地へ着いたようだ」
いつの間にか宇宙船は目的地までたどり着いた。驚くほど静かだったので、カカロットはこの船が動いているとも気付かなかった。さっきの青い海とは打って変わり、眼下は赤茶けた岩の荒野が広がるのみだった。
その地面の上に、二人の人影が見える。ターレスはそれを発見すると、窓を開けて腕を出し、そこからエネルギー波を撃ちだして空に浮かんでいた白く発光する何かを破壊した。
「危なかった…あのパワーボールはきっとベジータ王子が作り出したものか。さて…お前らはここで待っていろ」
ターレスはそう言うと、新しく用意したスカウターを装備し窓から飛び降りていく。しかし、ベジータ王子と呼ばれたそのサイヤ人はいつの間にか呼び寄せていたポッドに乗り込み、彼方へと消えてしまっていた。
「ち…逃げたか、腰抜け王子め」
「キサマは何者だ…!サイヤ人か…?」
ピッコロ大魔王はターレスに対してそう言った。
「その通り。俺の名はターレス!ベジータ王子はたった今逃げてしまったが…まぁいい、ナッパとラディッツを返してもらう。この俺の計画…フリーザを倒すためにできるだけ多くのサイヤ人が必要だ」
地面に降り立ったターレスはピッコロに対してそう言った。
「ほう、キサマは今の奴の仲間か?どうやらこのピッコロ大魔王様の恐ろしさを味わいたいらしいな」
「いいからナッパとラディッツをこちらに渡せ。まさか…殺したのではあるまい?」
「…デカい方は生きてるかわからんが…ラディッツとかいうサイヤ人は天界に封印してある」
「案内しろ」
「貴様、さっきからこの私に対して無礼だな…一度その口をひっちゃぶいてやればおとなしくなるか?」
ピッコロは殺気を放ち、ターレスを威嚇する。ターレスはマントを脱ぎながらにやりと笑う。
次の瞬間、ピッコロの放つ拳がターレスの腹に当たる。が、攻撃を受けた当の本人は何事もなかったかのように笑みを崩さず、それを見たピッコロは思わず後ろへ下がる。だがターレスは瞬時に距離を詰め、至近距離からの気功波を浴びせた。
「うぐわあああ!!?」
ベジータとの戦いのダメージもあって、一撃で気を失ったピッコロの巨体を担ぐ。すると、スカウターに少しずつ増えていく生命反応の数値が表示される。
「この反応は恐らくナッパ…!生きていたか…よし、見舞いに行ってやる」
ターレスは一旦宇宙船へ戻り、ピッコロを船内に置いた。その姿を見た美鈴は息をのんで驚いている。ターレスはカカロットを連れてナッパの反応の地点まで飛んでいく。
「同じサイヤ人のお前がいた方が、ヤツは俺を信用するだろう」
二人は頭を押さえて地面に座り込んでいる大きな人影を発見した。目を覚ましたはいいものの、ピッコロから受けた強烈な一撃のダメージが残っているようだ。
「よう、ナッパさんよ」
ターレスがそう声をかけながら目の前に降り立つ。するとナッパは亡霊でも見るように驚き、立ち上がる。
「お前は…ターレス!?なんでこんなとこにいやがる…お前は確か惑星ダーパンで戦死したと聞いたぜ!」
「まあそんなことァどうでもいいさ。なぁナッパ、俺と一緒に来る気はないか?俺達サイヤ人の手でフリーザをぶっ倒すんだ…」
「な、なんだと…フリーザの野郎を?…ん、そこの隣にいるのは誰だ?」
ナッパはターレスの横にいるカカロットを発見し、そう尋ねた。
「コイツはカカロットだ。俺の仲間に加わった」
「カ、カカロット…だと…」
ナッパは少し考えてから口を開いた。
「いいだろう、ターレス…乗ってやる、俺も前からフリーザに忠誠を誓ったつもりなんて無ぇからな!」
「それでこそサイヤ人だ」