もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第107話 「放たれた凶悪殺人鬼!」

カカロットたちがナメック星へ向かう頃、幻想郷では…。

 

 

「お母さん、下まで行って史奈ちゃんと遊んでくるね!」

 

「気を付けてね」

 

カカロットが居ない間、博麗神社で母親である霊夢と一緒に過ごしているシロナ。シロナはそう言うと神社を出て人間の里へと続く道を駆け下りていった。

本来、里と神社とを結ぶ峠道は4歳の子供がひとりで横断できるような安全な道ではない。そこは人こそ通れるものの妖怪が頻繁に出没し、襲われる危険があるからだ。もちろんそこは妖怪が畏れる博麗の巫女の目と鼻の先なので捕って殺されるようなことはないが、それでも危険なことに変わりはない。

シロナはというと、サイヤ人であるカカロットの子供なので既に人間の大人並の力と身体能力を有しており、さらに付近の妖怪は彼女が霊夢の子供でもあることを知っているので決して手を出したりはできず、ひとりで悠々と里まで行くことができる。

今日は永遠亭の史奈と里で遊ぶ約束をしており、シロナは張り切って出かけて行った。

 

「あ、史奈ちゃん!」

 

里へ着いたシロナは、道の向こう側に史奈の姿を見つけ、そこ目指して走り出した。

だが次の瞬間、シロナは道を歩いていた男にぶつかり、両者は後ろへ倒れ込んだ。

 

「う…」

 

「いてて…すごい力だなぁ。ごめんねお嬢ちゃん、でもお嬢ちゃんもちゃんと周りを確認してゆっくり走らなきゃ」

 

男は頭に鉢巻を巻いていて、口元に同じく薄い布を巻いていた。風体は不審だが善良そうな物腰で、危険な雰囲気は感じられない。

 

「ご、ごめんなさい」

 

シロナの謝罪を聞くと、男は立ち上がってにこりと笑い、小走りで向こう側へ行ってしまった。

 

「シロナちゃん大丈夫?」

 

そこへ史奈が駆け寄ってきて声をかけた。

 

「うん」

 

二人が手を繋いでそこから歩いて去ろうとした瞬間、また別の男が背後から声をかけた。

 

「あの、ちょっといいかな」

 

振り返ると、そこにいたのは長い黒髪を後ろで纏めた眉毛の無い人相の悪い男だった。黒い制服を着用し、その腰には短めの刀を携帯していて、まるで何人も人を殺してきた人斬り侍のような風貌を感じさせる。

史奈は警戒し、さりげなくシロナを自分の後ろへやった。

 

「な…なんですか…?」

 

「おおすまないね、驚かせてしまったようだ。私は…」

 

「そこのアナタ、下がりなさい」

 

続いて聞こえたのは女性の声だった。白髪に薄い緑色の上着を羽織った女性が黒髪の男を睨みつけていた。その女性も同じく腰から刀を下げていて、その柄に手をかけている。

 

「む…何者だね君は…」

 

「私の名は魂魄妖夢。不審な輩め、その子供に手を出すというのならば斬り捨てるぞ」

 

彼女はあの魂魄妖夢である。半人半霊の妖夢はその分寿命が普通の人間の倍ほどあり、8年が経過した現在ではそれなりに心身ともに成長し刀使いとしてそれなりの貫録を醸し出していた。

 

「…ん?何か誤解しているようだが…」

 

男は制服のポケットに手を入れ、そこから何かを取り出そうとした。

 

「何をするつもりだ!斬る!!」

 

その瞬間、妖夢は刀を抜き、そのまま男に対して斬りかかった。初めは困惑していた様子だった男も急に真剣な表情になり、腰の短刀を抜き、妖夢の刀の一閃を受け止めた。

ギリギリと刃同士がこすれ合い、二人は力を込める。

その時、男がポケットから取り出しかけていた何かがポトリと地面に落ちた。妖夢がそちらに目を向けると思わず驚いて力を緩めた。

 

「え?警察手帳?」

 

男も力を緩め、すぐに刀を仕舞う。

 

「うむ、私はこの区域を担当する警官の”須藤黒助”である」

 

妖夢は甚だしい誤解をしていたことに気付き、一気に赤面して頭を下げた。

 

「も、申し訳ありません!てっきり、私ったら人違いを…」

 

「いや、良いって事です。そうだ、貴女とお嬢ちゃん二人に聞きたいことがあるんだが」

 

呆気に取られていたシロナと史奈は我に返り、頷いた。

 

「実は先日、監獄から凶悪犯が脱獄しましてな。今行方を追っているのです」

 

「脱獄…?凶悪犯…?」

 

「脱獄犯の名は”松木又郎”。20年前に老若男女問わず40人以上も殺害した無差別殺人鬼です」

 

「40人も…!」

 

「当時まだ新人だった私は松木が逮捕される現場を見ているだけでしたが、警察の指示に素直に従っていたし、後の監獄でも様子を見る限り物腰やわらかで礼儀正しく、とても本当に殺人鬼だとは思えなかった。だが上司に本当の事を聞かされてゾッとしましたよ。…おっと、それでなんですがね、それっぽい男を見ませんでしたかな?何と言いますが…本当に何の変哲もない男ですので特徴も何もないのですが、挙動が怪しいというか…」

 

「すみませんねぇ、見てないです」

 

「そうですか…お嬢ちゃんも見てないかな?」

 

「うん、見てないです」

 

そうシロナが答えた。

 

「そうかい。うん、ありがとう、では私は捜査を続けるのでこれにて…」

 

黒助はそう言うと立ち去っていった。

 

「ねぇ、殺人鬼ってなに?」

 

シロナがふと史奈にそう聞いた。しかし史奈も答えかねていると、妖夢が小さい声で教えた。

 

「人をいっぱい殺す悪い人の事よ」

 

「へぇ…じゃあわたしたちもその悪い人捕まえようよ!」

 

「いいね!犯人探し!」

 

シロナと史奈がそう言い合っているのをオロオロした様子で見ていた妖夢は決心したように発言する。

 

「だ、だったら私も協力するわ!あなた霊夢の子供でしょ?何かあったら私も嫌だし…」

 

3人は脱獄犯・松木又郎らしき人物を探して人間の里を歩き始めた。

しかし、しばらく回ってみてもそれらしき人物は見当たらない。こうしている間にも松木は新たな殺人に手を染めているかもしれない。

 

「やっぱりいないねぇ」

 

「そうだね」

 

3人がふと立ち止まった時、背後で怒声が聞こえた。振り返ると、ふたりの男が言い争っているのが見えた。周りに人は少なく、気付いている者はおそらく妖夢達しかいない。

 

「お前がぶつかったんだろ!?」

 

「違いますよ!よそ見をしていたのはあなたじゃないですか!」

 

ぶつかった後にどっちが悪いかでもめているようだ。

 

「ちょっと、喧嘩はやめてください。小さい子も見てるんですから」

 

妖夢がそう声をかける。

 

「チッ…」

 

「おや、君たちは…」

 

そのうちの一人の男は、さきほどシロナたちとぶつかってしまった男だった。顔の布を外し、笑顔で接する。

もう1人はそそくさと路地裏の方へ隠れるように移動していった。

 

「さっきのおじちゃんだ」

 

「いやぁ、ありがとうございます」

 

「いえいえ…」

 

「何かの縁です、飯でも奢らせてください」

 

「いいんですか?…あっ」

 

妖夢は自分のお腹が減っていることに気付き、思わずそう言ってしまった。

 

「ええもちろんです…あっ、その前に忘れ物をしてしまったので取りに行ってきますね」

 

男はそう言うとひとまず妖夢たちを残してひとり来た道を戻っていく。

妖夢たちの前から姿を消した男が向かった先は…先ほどもめた若い男の背後だった。ひとりでブツブツと悪態をついている男の背後へ音もたてずに素早く忍び込み、懐に隠していた包丁を取り出し、その背中を一突きにした。

 

「…!!?」

 

驚く若い男を尻目にさらに刃物を深く突き刺すと、男は倒れ込み、やがて動かなくなった。

何を隠そうこの男、”松木又郎”は殺しの腕が以前と変わっていないことを確認すると生気のまるでない顔で、刺している包丁をさらに深く被害者の男の体内へ押し込み、持ち手の先まで完全に埋め込んでしまった。

 

 

 

「すみません、お待たせしました」

 

又郎は再び妖夢たちの前へ現れた。何事もないように…。

 

「では僕のおススメのうどん屋でも連れて行きますよ」

 

4人はすぐ近くに有った又郎のおススメだといううどん屋へと入った。

やがて注文した料理が届き、妖夢たちはそれを美味そうに食べ進める。

 

「おいしい!」

 

その様子を見た又郎は微笑んだ。

 

「おかわり!」

 

「お嬢ちゃんよく食べるねぇ」

 

しかし、その胸中では…。

 

(僕がまだ子供の頃…弟が妖怪に喰われてしまった。あの肉を貪っていた妖怪の力強さ、他者など気にも留めず、耽々と周囲を伺う目…今でも忘れられない。僕はそれを恐ろしいと思うと同時に強く憧れた。そして、あの目と同じ人間を見ると…つい殺したくなってしまう)

 

又郎の目が妖夢を見た。

 

(次はこの女性を殺そう)

 

しばらくして一行が店を出ると、すっかり辺りは薄暗く、人通りも少なくなっていた。

 

「今日はどうもありがとうございます」

 

「いえいえ、いいんですよ…それより、あちらの方はどなたですか?先ほどから手を振っていますが…」

 

「え?」

 

妖夢はキョトンとしながら振り返った。もちろん又郎が指差した先には手を振る人物などいない。

次の瞬間、サッと妖夢の背後へ迫った又郎は何度もこなし慣れた手つきで袖の中から縄を出し、それを妖夢の首へ巻き、思い切り締め上げた。

 

「ぐ…ッ…!!?」

 

「え…!?」

 

妖夢は驚愕した顔で首の縄を掴もうとする。しかし、既に縄が気管を締め付けていたため、それと咄嗟のことすぎてうまく対応ができないでいた。

史奈とシロナは驚き、固まっていたが、史奈がふとしたように叫び出す。

 

「誰かー!助けてくださーい!!」

 

しかし次の瞬間、又郎は史奈を蹴り飛ばし、それ以上喋らせまいとした。

 

「う…うう…」

 

「史奈ちゃん…!!」

 

その瞬間、シロナの中で何かがじわじわと押し寄せてくるような気がした。滲むような赤いぼんやりとしたオーラがその体を包み込み、それはどんどんとハッキリ大きくなっていく。

 

「よ、よくも…史奈ちゃんを…!!」

 

次の瞬間、爆発した。

 

「許さないぞーッ!!!」

 

シロナの怒りが最高潮に達すると同時に、勢いよくジェットのように霊力を噴出して前方へ飛び出した。

 

「!?」

 

シロナの渾身の頭突きが又郎の横腹に直撃した!

又郎は口から血を吐き出し、妖夢の首を締めていた手を緩めた。突然の痛みに理解が及ばないまま横へ倒れ込んでいく。

 

(何が起こったんだ…?何がぶつかった…?)

 

朦朧とする意識とぼやける視界の中、その視線をシロナへ向けた。シロナは全身のオーラをほどき、まるで疲れて眠るかのように倒れて目を閉じようとしている。

 

(あのガキ…!)

 

その時だった。又郎のかつての記憶…弟を食い殺した妖怪とシロナの姿が重なった。圧倒的な力を持つ存在…。

 

(そうだ、まずあの子を殺そう。妖怪じみたあの子なら、僕が殺すに相応しい!)

 

又郎は激しく咳き込んでいる妖夢と地面でうずくまっている史奈を捨て置き、ターゲットをシロナに定めた。妖夢の刀を奪い、それで斬り殺そうと歩み始める。

 

…だが次の瞬間。突如として現れた影が短い刀で一撃を受け止めた。

 

「お前は…!」

 

「松木又郎!もちろん俺を覚えているだろう!!」

 

騒ぎを聞いて駆けつけたのは脱獄囚である又郎を追っていた警官の須藤黒助だった。

黒助と又郎はギリギリと力を込め合い、刃同士がこすれる金属音が響き渡る。

 

「俺は警察としてお前をここで殺す!」

 

「それではお前も僕と同じ人殺しだ…!人殺しの血は決して消えない…人を殺すということは『一度だけなら…』は通用しないんだ!」

 

「お前が死に、俺が人殺しとなる…それだけで助かる命と平和を守れるのなら俺は喜んでお前を殺す!」

 

その時、立ち上がった妖夢が又郎の背後へ接近し、その背中を斬りつけた。驚いて振り返った又郎。

そして、それがチャンスだと思った黒助の刀によるひと突きがその胸を貫いた。

 

「う…か…」

 

又郎は倒れこみ、周囲を血に染めていく。

 

「僕は…死ぬのか…?」

 

「…そうだ」

 

「よかった」

 

「なんだと?」

 

「死ぬのって、こんなに気持ちいい…。僕がやってきたことは間違いじゃ無かったんだ」

 

又郎は最後にそう言い残すと、ゆっくりと目を閉じた。

しかし、又郎の命が尽きる寸前、妖夢はその首に刀を突き刺し、上へ引いて頭部を真っ二つに裂くように切断してしまう。

 

「魂魄さん…」

 

「こんなに胸の悪い話がありますか。今まで快楽のために人を殺して来たようなヤツを安らかになんて死なせてはいけないはずです」

 

冷酷に言い放った妖夢は顔に飛んだ血を拭う。

 

「う、うむ…」

 

「あれ?わたしいったい…?」

 

シロナが起き上がる。

 

「ここは私がどうにかするから、魂魄さんたちは立ち去ってください」

 

 

やがて、人間の里に配られた新聞には脱獄した20年前の殺人鬼が警察によって捕まり、死に至ったとのニュースが記載された。

だがそれを読んだものたちも、妖夢も黒助も、シロナと史奈も、松木又郎が何故人を殺すようになったのかを知るはずもなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

ガコン キシシ…

 

「なんの音だ?」

 

ナメック星への道中のカカロットたち。その中でナッパが何かが軋んだりぶつかるような音にいち早く気づいた。

それを聞いたラディッツが飲んでいたドリンクを置き、耳を澄ませる。

 

「確かに。なんの音だ?」

 

「少し調べさせてみるか」

 

ターレスはそういうと部屋を出てどこかへ向かおうとする。

しかしその時、パラガスが少し焦った様子で顔を見せた。

 

「大変だ、どうやら宇宙船のパーツが外れているようなのだ」

 

「なんだと?」

 

「うおっ!」

 

宇宙船が揺れ、ピーと音が鳴る。

 

「どこか、近くにある星に不時着させましょう」

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