「う…ち、チクショウ…こんなところで…死んでたまる…か…」
湖から這い上がり、何とか少しずつ移動しようとしたが、5メートルほども進んだところでベジータは限界が迫り、意識を失った。
「む!?な、なんと…」
その時、フリーザからベジータを連れてくるようにと命令されたザーボンがこの場へ戻って来た。ザーボンは死にかけのベジータを発見し、息があることを確かめる。
「生きていたとはな…タフなやつだ…もっともそのおかげで今回は助かったが…。しかしこれではボールの在り処を喋れそうもない、仕方がない…治療してやろう。その後はどうなるか知らんがな」
ザーボンはベジータの腕を掴み、フリーザの元へ戻り始めるのだった。
ナメック星は太陽が3つあり、それが交互に星を照らすことで日が暮れることはない。なので実感は少ないが、既に美鈴や天龍がやってきてから1日あまりが過ぎていた。
一方、最長老の家へたどり着いた美鈴。最長老は既に悪の一味がこの星に踏み入ったことを知っており、数多くの子供らが殺されたことを嘆いていた。
「あの悪党たちの所為でもうこの星の我が子たちはほとんど殺されてしまいました…残念です。どうやらその犯人どもはドラゴンボールを狙っているようですね…ナメック星の住む者の知恵と勇気の証、希望の球がまさかこんなことになろうとは…」
「た、単刀直入に言いますが貴方の椅子の上にあるドラゴンボールを私に貸していただけませんか。あいつらには絶対に渡しません…約束しますから!」
「ほう…」
「もう5日ほどすれば強い仲間がこの星に到着して悪党をやっつけてくれるはずなんです!その時まで、どうか…」
その時、そう話している最長老と美鈴たちを、ドアの外からこっそりと見ている人影があった。そう、美鈴と時を同じくして最長老のもとを目指して飛び立ったピッコロだ。
「…あれが最長老…」
そう小さくつぶやいた。
「そこにいるお方…お入りなさい」
「!?」
「え?」
しかし最長老に簡単に見つかり声をかけられたピッコロは驚いた。ドアから姿を現し、身をかがませて部屋に入ってくる。
「ピ、ピッコロ…!!」
「…私は完全に気配を消していたはず…どうやって気付いた?」
「何も気がすべてではないのです。私はこの星にいる全ての存在を感知することができます。それにしても驚きだ…まさか別の星にもナメック星人が居たとは…」
「ソイツは地球から私と一緒にやってきたんです…訳あって別行動していました」
「地球から…?まさか、カタッツの子か!?」
「なんだと?」
「いや、そうに違いあるまい…あの幼子ふたりが無事に地球へたどり着けていたとは…兄のシュネックは?いや、質問をするよりも見た方が早い…こっちに来てくれるか」
そう言われたピッコロは前に進み、最長老の横に膝を立てて構えた。最長老はピッコロの頭に手を乗せ、特有の超能力でその過去を探った。
「ほう…記憶喪失か…ある時期から昔、そう、この星から宇宙船内においての記憶が無い。だがその先は…神と成るため入り込んだ悪と分離し…またサイヤ人と戦うためにひとつになったというのか…!大方の貴方たちの事は理解できました」
最長老は椅子の上にあるドラゴンボールに手を伸ばす。
「まあいいでしょう…これまでの勇気と行動は大きく評価されるものです。このドラゴンボールを貴女に差し上げましょう」
「ほ、本当ですか!」
「ですが、残念ながら私の命はあと数日しか持たないでしょう。それまでにあの恐ろしい悪者から他のボールを奪え返せますか?おそらくとても無理でしょう…わたしが消えてしまえばドラゴンボールも消えてしまう」
「勘違いしないでください。私たちは貴方がたのドラゴンボールを使いにこの星に来たんじゃありません。あの恐ろしい一味から守るために来たんです。私はとりあえずこのボールを命懸けで守ります、そうしたら絶対にお返しします」
「…それは申し訳ない、大変失礼いたしました。わたしはもうここを動けないしあのフリーザという者が来ればいくらネイルであろうとも私を守り切れないでしょうから…。さて、貴女を軽んじたお詫びと言っては何ですが、ちょっとこちらへ来ていただけますか」
「え?は、はい」
そばへ寄った美鈴の頭に手を乗せる最長老。
「貴女は地球人なのに飛びぬけた力を持ってらっしゃる…しかももったいない事にまだ眠っている力がお有りになる、その力を起こしてあげましょう」
次の瞬間、美鈴は自分の肉体が捻じれて伸ばされるような感覚に陥った。しかし次の瞬間には元に戻ると同時に、前以上のとんでもないパワーが備わったのを感じた。
「あ、あわわ…す、すごい!!物凄いパワーが溢れてきますっ!!」
「そのお力でどうか逃げ切ってください」
「はい!信じられない!ありがとうございます!!…あ、そうだ、今のって誰にでもできるのですか?それとも、やりすぎると最長老さんの寿命が減るとか…」
「眠っている力があれば誰でもできます。私はそれを呼び起こすきっかけを与えるにすぎません…なので寿命は関係ないのです」
「もうひとりの仲間を連れてきてもいいですか?私と同じくらい…いや、それ以上に潜在パワーが眠っていると思うんです!」
「連れてきなさい。強い正義はひとりでも多い方がいい」
「ふん、あの男にそれほどの能力があるとは思えん」
ピッコロが美鈴に憎まれ口をたたく。
「天龍さんは天才です。もしも拳法を始めた頃から正しい心でいれば今よりもっと強くなっていたはずですから」
美鈴は家を出ると、全身の以前よりも遥かにするどいオーラを放ちながら全速力でその場を後にした。飛んでいる途中で目の前に現れる岩山を勢いで粉砕しながら一直線に。
「さて…ピッコロさんはどうしますか?」
最長老の問いにピッコロは答える。
「…私と同じ
目を大きくしながら言ったピッコロに対して、最長老とネイルは黙った。
「私はこの星に来て、初めてナメック星人たちに囲まれた時は、彼らを見て何も思わなかった。だが最長老…お前に会って私の遠い昔の何かが刺激されたのか…」
ピッコロはがくりと膝を落とし、頭を押さえる。
「大丈夫ですか?」
「私が地球の者でないと知った時、どおりで…と思った。さて募る話を…といきたいところだが…何故だ、あ、頭が混乱して、言葉が出てこない…!」
「良いのです。貴方はひとりの時間が長すぎた。ずっと、ひとりで頑張って来られたのでしょう。では私から何か言いましょう、そうすれば出す言葉を絞れて話しやすい。兄のシュネックは生きていますか?彼は私の当時の友人です」
「シュネック…どうやら私の兄らしい。地球には幻想郷という異世界があって、そこで暮らしていた」
「そうですか。生きているのならば結構…」
一方、フリーザの宇宙船。
ザーボンが拾って来たベジータは、ドラゴンボールの在り処を吐かせるためにすぐに治療カプセルに入れられ、ちゃくちゃくとその体力とダメージを回復させていた。
「ふん…裏切者の治療をしてやることになるとはな」
ザーボンは治療カプセルの様子を見ながらそう言った。横にはアプールが立っている。
「どうだ、コイツが話せるようになるまであとどれぐらいかかる?」
「相当のダメージを受けてましたからね…意識を取り戻すまでならば、そうですね、あと30分はかかるでしょう」
「そのようにフリーザ様に伝えてくる」
ザーボンはそう言うと部屋を後にした。ひとり残されたアプールはベジータのカプセルを覗き込む。
「流石のベジータもフリーザ様が相手では素直にドラゴンボールの隠し場所を喋るしかなかろうぜ…」
しかしその瞬間、カプセルの中のベジータがカッと目を見開いた。アプールは驚き、あっと声を出す。
ベジータは口にはめられていたマスクを強引に外し、右手からエネルギー波を撃ち、カプセルを内側から破壊すると同時にアプールに命中させ絶命させる。
「ありがたいぜ、このオレの回復力を見くびっていたようだな!!」
ドォン…
「な、なんだ今の音は!?」
フリーザと話をしていたザーボンは大きな爆発の音を聞いた。
「まっ、まさかベジータが!」
ふたりは音のした方へ行くと、治療室の壁が破壊されており外へと通じていた。見張っていたアプールの黒こげの死体があるだけでベジータの姿はない。
「し、しまった──!外に逃げられた!!」
だがベジータは外へは出ていなかった。気を極力抑え、まだ宇宙船内にいたのだ。壁の影からフリーザたちの様子を伺っている。
「はやく…はやく追うんですよっ!!」
「おのれ~…!!!」
焦るザーボンたちを尻目に、ベジータは宇宙船内を駆け回る。そしてフリーザの部屋であろう場所にたどり着くと、やはりそこにはドラゴンボールが置いてあった。
(あったぞ、ドラゴンボールだ!フリーザの野郎め、オレを拷問にかけようと生かしたのが失敗だったな!)
「何ですと…もう一度地球でドラゴンボールで作りたい?」
最長老はピッコロがナメック星での戦いに同行した理由を聞いて、驚いてそう聞き返した。
「そうだ…恥ずかしながら、ドラゴンボールの作り方を覚えていたのは私じゃない…片割れの方だ。私をベースに融合したので、その記憶だけは引き継がれなかったのだ」
「確かに、貴方とシュネックの兄弟はドラゴンボールを作れる天才だった…。貴方がもう一度教わりたいというのならば、ひとつ、私の頼みを聞いて下さらないか」
「何だと?」
「私にはこの星のドラゴンボールがどこにあるのか分かります。ひとつはさっきの地球の方が持って行き、5つはフリーザという者が持っています。そして残りひとつは、ここから離れた場所に隠されています…そのボールも守っていただきたい」
「…どこにあるんだ?」
「お教えします。そのボールは一本の樹木を目印にした湖の中にあります…方角は…」
「…なるほど。では行って来る…戻ってきたら絶対に教えろ」
「お待ちください。どうやら貴方にもまだまだ眠っている力がある…それを引き出して差し上げます」
ピッコロが最長老に寄ると、最長老は美鈴の時にもそうしたように手を頭の上に乗せた。次の瞬間、ピッコロの全身から今まで感じた事もないパワーが噴き出してきた。
「これは…!」
「その目覚めた力で頑張ってきなさい」