「この湖か」
最長老に教えてもらった方角を進むと、確かに湖があり、そのほとりには1本のみの目立つ樹木が伸びていた。
ピッコロは樹下の水面を覗き込むと、念力で水面を割って見せた。開いたことにより露わになった湖の底に、確かにドラゴンボールがあった。
腕を伸ばし、ボールを片手で掴んで引き寄せる。念力を解き、湖の水を元に戻す。ナメック星のドラゴンボールは美鈴やデンデが持つと不釣り合いなほど大きく見えたが、大柄なピッコロが持てばそれほど違和感はなかった。
「4つ星か。…む」
その時、ピッコロは美鈴のものと思われる強い気を感じた。
「バカが…そんなに気を噴出させて飛んでいれば見つかるぞ…!」
ピッコロはドラゴンボールを持って飛び立とうとした。
「…持っていてはマズいかもな…。呑んでおくか」
この大きなドラゴンボールを飲み込もうと大口を開けるピッコロだが、流石に一瞬戸惑う。地球のサイズのドラゴンボールならば簡単に飲み込んで腹の中に隠しておけたが、これはそうもいかないのではないか。
「いや…卵を吐き出すのだ、これくらい訳ない」
ピッコロはドラゴンボールをゴクンと飲み込んだ。喉がボールサイズに膨れているが、筋肉で腹まで送り込む。幸い、ピッコロ程の巨躯であれば外から見ても腹が膨れたり、不自然な見た目にはならなかった。
「よし」
そして、美鈴が飛んでいる場所へ向かってこちらも全力で飛んでいくのだった。
ザーボンは破壊された壁から外に出て、ベジータを探していた。
「どこだ、どこに逃げおったベジータ…!そんなに速く逃げられるもんじゃない…絶対に近くに隠れている!」
慌てながら辺りを見渡すザーボン。すると、宇宙船の中からフリーザが声をかける。
「見つからないのですかザーボンさん?もしこのままおめおめと逃げられてしまったら、貴方に責任を取って死んでいただきますからね!!」
「くっくっく、馬鹿め…せいぜい外を探し回るが良いぜ」
ドラゴンボールのあるフリーザの部屋の窓から必死に自分を探しているザーボンを嘲笑いながら見つめるベジータは、ボールの数を数える。
「確かに5個あるな。やつらはオレの傷を治しただけでなくドラゴンボールまで奪われてしまうわけだ。しかし…5個すべてを持っては逃げきれん…。よし、ザーボンは反対側を探している…たのむぞ、上手くいってくれ…」
ベジータは部屋の扉から身を乗り出し、顔だけ出して大声で叫んだ。
「おい!!引っ掛かったな!!俺はまだ船の中だ!」
「な…!?」
「なんだと!?」
そして、ベジータは通路の奥へ向けて一発の強力な気功波を放ち、宇宙船の内部を破壊して見せる。
「ち、チクショオ~~~!!」
ザーボンとフリーザは爆発が起こった場所へ行き、そこにベジータが居るかどうか探し始める。
「ベジータはどこだ!?」
「ま、まさかベジータの奴、ドラゴンボールを狙って…!」
一方、そのベジータはしたり顔で笑うと、部屋の窓を割った。そしてその穴からはるか遠くの外へ向けてドラゴンボールを次々と投げ飛ばしていく。
「次はオレだ!」
ドラゴンボールを投げ終わると、ベジータも窓から逃げていく。
嫌な予感を感じドラゴンボールが置いてあったこの部屋まで戻って来たザーボンとフリーザであったが、すでにこの部屋にはボールはおろかベジータの姿すらなかった。
「あ、あのヤロ───ッ!!」
ザーボンもあわてて窓から外へ出て辺りを探すが、やはり見つからない。
「フリーザ様、奴はまた宇宙船の中では…!」
「探しなさい!」
しかし、ベジータは宇宙船の外の岩陰に隠れていた。そして、自分がここで飛べば発見され、さすがにフリーザからは逃げきれないと考えたベジータは気付かれないように湖へ潜り、水中を移動してこの場を離れることにした。
「な…なんたる醜態ですか…!ベジータを逃がしてしまった上にドラゴンボールまで…!!5個ものボールを持って一瞬のうちに逃げられるはずがありません。宇宙船の中は私が探しますから、貴方は徹底的に外を探しなさい!もちろん宇宙船の下もですよ。覚悟は宜しいですね…もし1時間たってもベジータをここに連れてくることができなかったらこの私が貴方を殺しますから」
「は、はいっ!」
そしてベジータは湖の中を移動し、ボールを投げたであろう場所までやってきた。数キロも離れたここならばフリーザたちに見つかる可能性も低いはずだ。
湖から上がったベジータはあたりを見渡す。
「このあたりに投げたはずだが…」
ベジータは転がっている5個のボールを発見する。
「あったぞ…我ながらすばらしいコントロールだ。くっくっく、ザマぁ見やがれフリーザめ!ドラゴンボールは全ていただいてやったぜ」
ベジータは付近にあった岩山の、少しくぼんでいて奥まっている部分にボールを隠した。
「これでオレがさっき水に沈めたのをいれれば、あと1個で7つ揃う…」
その時、ベジータはすぐ近くに高い戦闘力を感じて振り返った。岩陰からこっそりとそれを確認しようとする。
一瞬追って来たザーボンかと思ったが、ザーボンよりは劣ることに気付く。
「アイツは…!?」
「待っててください天龍さん!最長老さんのとこへ行けばもっと強くなれるはずですよ!!」
ベジータがこの辺りにボールを投げ、そしてここに隠したこと。最長老に秘めた力を最大限に引き出してもらい強さを大幅に増したことで浮かれていた美鈴は、うかつにもベジータの気配に気づかなかった。このことはまさに最悪の偶然であった!
美鈴はベジータの見ている前を通り過ぎていく。
「今のは…さっき殺し損ねた地球人!し…しかも最後のドラゴンボールを持ってやがったぜ…!…ふ、ふはははは…何から何までこのオレに運が向いてきやがったぞ──!!」
ベジータは美鈴を追いかけるように飛び立った。スピードはいくらかベジータの方が上のようで、だんだんと差が縮まってきているのが分かる。
「どうやらあの女の目的もドラゴンボールのようだな。だが貴様の持っているその1個をいただけば、ドラゴンボールを7個そろえるのはこのオレというわけだ!!」
一方、未だにベジータを探しているザーボン。
「くそ…ベジータめ、一体どこに…!スカウターさえあれば簡単に見つけられるものを!」
ザーボンのスカウターはキュイとの戦闘中のベジータの戦闘力数値を測定した際に壊れてしまい、残りのスカウターもムーリに全て破壊されてしまっていた。
「このままでは私の命はフリーザ様に…!チクショウ…!!」
しかしその時、ザーボンは視界の隅に光る何かを捉えた。
「ベジータか!?」
キッと目を凝らし、それが何であるかを確かめる。
だがそれはベジータではなく、ドラゴンボールを持った美鈴であった。
「違う…アイツはナメック星人を助けに来やがった女だ!だ、だがドラゴンボールらしきものを…!」
ザーボンがそう言った瞬間、どうやらそれを追いかけているらしいベジータを発見することに成功する。
「ベジータ!!とうとう見つけたぞ、もうこっちのもんだ──っ!!」
ドラゴンボールを持って最長老の元へ天龍を連れていくために彼のいる場所へ戻る美鈴、それを追うベジータ。それをさらに追いかけるザーボン。
「ん…!?デカい戦闘力がついてきやがる、ザーボンに見つかったか。厄介な野郎だぜ…!」
それに気付いたベジータであるが、対して驚くことは無かった。
「しかしいい機会だ、今度こそ片付けてやる!この前の戦闘で奴は自信を付けている…油断してかかるはずだ」
そして、美鈴はさっきよりもずっと時間をかけずに天龍達が隠れている洞窟までたどり着いた。美鈴が降り立つと、天龍は一瞬警戒して構えた。それは美鈴のパワーが桁違いに強くなりすぎていて彼女だと認識できなかったためだ。
「びっくりした…美鈴か!って、それはドラゴンボールか…?」
「お待たせしました、最長老さんから預かって来たんです」
「…それよりも、お前急にどうしたんだ…別人みたいに強くなってるじゃないか」
「それなんですが、天龍さんも最長老さんのところへ来てくれませんか?眠っている強大な力を引き出していただけるんですよ!…ハッ!!?」
しかし、美鈴はそう言ったところで背後に強い気配を感じ、振り向いた。
「気です…ここに向かっている…それもすぐ近くに!」
その時、空を飛んでいた人物はオーラを解き、美鈴たちの目の前にシュタッと降りた。それは紛れもなく美鈴を追っていたベジータであった。
「ベジータ!!!」
(な、なんてこと…強くなったのに浮かれて飛ばし過ぎてしまった…!!)
ここで美鈴は自分の失敗に気付く。
「よう、また会ったな…。てっきり、もうとっくにドドリアあたりにでも殺されたと思っていたぜ…。だがその大事そうに持っているボールを見る限り、目的は同じようだな」
「く、こ、これは…!」
「…来るか。いいかよく聞け、オレはそのボールをいただく前にすることがある。だがそいつを持って逃げようなんておかしな気は起こすんじゃないぞ」
「え?」
「来やがった!」
そして、ベジータに続いてザーボンまでもが美鈴たちの前に姿を現した。