ドン ドン ドドン…
「うはははは──ッ！！」
リクームは両腕を振り回しながら細かいエネルギー弾を、ピッコロを追い立てるように、わざと逃がして弄ぶように放ち続ける。
ピッコロはそれを回避し続けるが、止むことのない弾幕の雨にやがて撃たれてしまう。
「ぐ…！」
動きが止まったピッコロへリクームが急接近し、その腹へ強烈なパンチを叩きこむ。押し出されたピッコロの腹がその背中を押し上げるほどの一撃で、ピッコロは目を見開きながらよろよろと後ろへ下がった。
が、負けじと自分の腕を伸ばし、リクームの足に巻き付けるとすぐにそれを持ち上げ、思い切り地面に叩きつけた。
「ぬおおお…！！」
そして片腕を振りかぶり、そこへ魔力を充てんさせる。
「『爆裂魔光砲』！！」
突風のような衝撃波を放ち、リクームに命中させた。あたりに砂煙が舞う。
だが、リクームはピッコロの伸ばした腕をグンと引き寄せると、意図せず近寄って来たピッコロに対して正面からのエネルギー波を浴びせた。
「ぐは…あ…！」
ピッコロの服が破れ、右上半身が露わになる。そのまま大きな傷を負い、地面に倒れ込んでしまい動かなくなった。
「いっぴき上がり～！」
「ピッコロまで…！」
美鈴はこちらに顔を向けたリクームを見てビクッと震えた。
「さ～て、次は嬢ちゃんの番だな。それっ！！」
リクームは瞬時にエネルギー弾を作り出し、美鈴へ向けて投げつけた。それを横へ飛んで回避する美鈴。
しかし、避けた先には向こうにいたはずのリクームが先回りしていた。
「おっとこっちだ！」
そして美鈴を蹴り飛ばし、地面にバウンドして転がっていく。リクームはもう一度その先へ移動し、美鈴が近くに来たタイミングでジャンプし、尻を下に向けたヒップアタックを叩きつける。
「ぐあっ…！！」
美鈴は口から血を吐き、苦しんだ。リクームは軽い身のこなしで距離を取り、腰に手を当てた。
「まだまだこれはほんのウォーミングアップだぜ」
体を震わせながら、ゆっくりと立ち上がる美鈴。やはり実力の差は歴然で、グルドの時のように思い通りに戦いは進まない。
「立つな…美鈴…もういい…！」
天龍がそう言うが、美鈴は腕を下に垂らしながらよろよろとリクームに近づいていく。
「私は…レミリア・スカーレットの治める…紅魔館を…守る者…！その名誉にかけて…」
「ほお～、まだ訳の分からん戯言を言うだけの元気があったのか。どこの星の嬢ちゃんだか知らんがこいつは驚いたよ」
「負けて…たまるかッ！！」
美鈴は気を纏わせた拳を振り上げ、リクームへ殴りかかる。
「はははは！相手が悪かったな！！」
しかし、リクームは軽くジャンプすると、体を地面と水平にし、攻撃をかわした。そして次の瞬間、その太い脚から繰り出される渾身の蹴りを放った。
ボギッ…
ベジータも、天龍も、動けないでいるピッコロも絶句した。リクームの蹴りは美鈴の首の横へ直撃し、嫌な音を立ててその首の骨をへし折ったのだ。
美鈴は力なく吹っ飛ばされ、地面に滑るようにして打ち捨てられる。白目を向いてぴくぴくと痙攣し、もはや虫の息だ。本来であれば、妖怪である美鈴はもっと頑丈であってもおかしくない。しかし、リクームには敵わないと悟ってしまった。精神面に大きく存在が左右される種族である妖怪だからこそ、心が崩れた時に撃たれ弱くなる。
「もう戦闘力はほとんど残っていない、くたばる寸前だ」
「あたりまえだろ、首の骨が折れたんだぜ」
ジースとバータがスカウターを見ながらそう言った。
「美鈴…くっ…！」
「な、情けねぇ女だ…少しはマシになったかと思えば…」
ベジータがそう言いながらフラフラと立ち上がった。
「ちぇ、どいつもこいつもつまらないカス共だぜ…なんでフリーザ様はわざわざ我々ギニュー特戦隊を呼ばれたのかわからねぇぜ…ま、一応全員とどめを刺しておくかな」
キーン…
「ん？なんだ？」
その時だった。空を一筋の光が通過し、少し離れた場所の地面へ降り立った。
「船…？どこの宇宙船だ？」
ピッコロ、ベジータ、天龍、リクーム、ジース、バータ…全員が降りた大き目の宇宙船へ目が釘付けになる。船は足を出し、地面と水平を保つと、プシューと煙を吐き出しながらその扉を開いた。
「や…やった…ターレスさんたちが来てくれた…！」
「やっとついた…ここがナメック星か」
宇宙船の外へ出たターレス一行は、辺りをぐるりと見渡した。ターレス、カカロット、ウスター、ラディッツ、ナッパ。ブロリーとパラガスは宇宙船の中で待機だが、窓から星の様子を眺めている。
「あちこちにバカでかい気がゴロゴロしてやがる」
カカロットはそう言いながら気を探る。
降りた全員はターレス特製のスカウターを装着しており、ターレスはさっそくスカウターを起動させた。
「すぐ近くに何か集まってやがるな…反応は７つ…だがそのうちひとつは死にかけている。そしてやや離れた場所にひとつ…そこからさらに高速で移動中の反応が…これは間違いなくフリーザか。そして動いていないのは恐らくギニュー…！」
「何だと！？ギニュー特戦隊までいやがるのか？」
「聞いていないぞっ！」
ナッパとラディッツがそう喚いた。
「まあ落ち着け。お前たちふたりなら、隊員相手になら十分に勝てるはずの力を身に付けているはずだろう？」
「そ、そうだな…へへへ、俺たちは１か月前とは全く違うんだ…！」
「そしてカカロット。悪いがお前だけ先行して、ひとつだけ動かない大きな反応の元へ行ってくれ」
「別にいいが、誰が居やがるんだ？」
「ギニューって野郎だ。今のお前の戦闘力なら問題なく勝てるはずだ」
「…ああ」
カカロットはそう呟くと、ターレスに言われたギニューのもとまで高速で飛び立っていった。
「さて、俺たちは向こうで奴らの相手をしてやるか…いくぞ！」
ターレスたちは少し離れた場所にいるベジータたちのもとへ向かった。ものの一瞬で戦いの現場へ到着し、特戦隊の目の前に出現した。
「うっ…！なんだテメェらは…！」
驚いたリクームはそう声を漏らした。
「は…ははは…待っていたぞみんな…」
天龍はよろこびに打ちひしがれた。あれほど待っていた仲間が到着し、この場へやってきてくれた。思わず目元が熱くなり、視界がぼやけるのがわかる。
「お前は天龍…！ずいぶんと戦闘力が増したようだな…待っていろ、すぐに元に戻してやる」
ターレスはそう言うと、まず目に入った死にかけの美鈴へ近寄っていく。ポケットの中から赤いごつごつした種のような物を取り出し、その口に押し込む。
「神精樹の種だ。戦闘力増加の作用はないが、体力の回復くらいならできるはずだ。おいナッパ、そこの天龍にも食わせてやれ」
「おう」
「タ、ターレス…？まさか本当にあのターレスか…？」
ベジータもまさか本当にターレスが生きていたとはにわかに信じられない様子だ。
「なんだこの連中は…どうやら仲間のようだな」
「へっへっへ、戦闘力はゴミ同然…何匹来ようが俺たちの敵じゃねえな」
ジースとバータはターレス達の戦闘力をスカウターで測定すると、そう言った。
すると、神精樹の種を食べた美鈴が目を覚まし、何事もなかったかのように起き上がった。
「タ、ターレスさん…！」
「よう、ずいぶんと酷い目にあったようだな。ところでダイーズやアモンド達はどうした？」
「全員…死んでしまいました…」
「…そうか。詳しい事は後で聞く。今はこのギニュー特戦隊を倒すのが先決だ」
「でっ、でもよ！相手はあのギニュー特戦隊だぜ！」
ナッパがそうターレスに言った。
「そうだぜ、いくら俺たちがとんでもなく強くなったからと言って、こいつらには勝てる訳が…」
「いいや、お前たちなら互角以上に渡りあえるはずだ。ナッパとラディッツはふたりで組めばいい。俺ひとりで全部倒してしまってもいいが…ここはお前らにも今自分がどれほど強くなっているのか確認する必要があるからな」
「おいおい今の聞いたか！？どうやらこいつら、俺たちとそれぞれで戦うつもりのようだぜ？」
リクームがターレス達をあざ笑うように叫んだ。ジースとバータも、それを聞くとニヤニヤ笑いだす。
その時、体力を回復し傷を元に戻して起き上がった天龍は言った。
「そ、そうだ…俺にはわかるぞ…ターレスさんの言うことは間違っていない。それほどまでに、彼らは強くなっている…！」
「ターレスの野郎…前はあんなハッタリを言うようなヤツじゃなかった…強い奴に媚びへつらい、敵意を向けられると逃げる…！そんな野郎だったはずだ…つまりあの自信が本当だとしたら、ヤツもコイツらも…！いや…ま、まさか…あんな下級戦士がなれるはずがない！！伝説の超サイヤ人に…！！」
ベジータがそう呟いた。
ターレスはリクームの前にゆっくりと歩いていき、その前に立ちはだかる。
（超サイヤ人は１０００年にひとり現れるという…ど…どんな天才戦士も越えられない壁を越えてしまうサイヤ人…そんな…あれはただのくだらない言い伝えのはずだ…。もし仮に伝説が本当だったとしても、なれる可能性があるのはこのオレだけのはず…！）
「死にたいのはお前からか？サイヤ人！一瞬で永久に眠らせてやるから安心しろよ」
ターレスはリクームにそう言われても、余裕の笑みを崩さない。
「ギニュー特戦隊！！リクーム…マッハパーンチ！！」
リクームは全身に気を纏い、ジェット機のように噴射しながら高速で移動しつつ、ターレスの顔面目がけて大振りのパンチを繰り出す。しかし大振りであってもその一撃は素早い。
そして拳を振り下ろすリクームだが、ターレスはヒョイと体を横へずらし、一撃を躱した。
「おっ…とっと…！」
勢い余って前へよろめくリクームの背中がターレスに対して無防備にさらされた。
（うっ…！？）
その瞬間、リクームは得体の知れない悪寒に全身を包まれた。やばい、背中をさらしたこの状態では、攻撃を喰らってしまう。脳裏にもこのターレスが今にも自分の背に肘打ちをお見舞いしようとしているイメージが鮮明に浮かぶ。
リクームは慌てて前転に切り返し、距離を取ると正面を向いた。
「俺としたことが躓いちまったようだな…。よし、今度はリクーム様のとっておきを見せてやろう。言っておくが、今度ばかりは俺がこけてお前が助かってラッキー！みたいなことは起こらんからな…なぜならばこのリクーム様の周りは広範囲にわたって吹き飛ぶからだ！全員まとめてあの世へ送ってやる！！」
「やっ、やばい…！」
天龍と美鈴が危機を感じる。
「リクーム！！ウルトラ！！ファイティング…」
ドゴ
しかし、リクームがそう技名を叫んでいる途中、ターレスの蹴りがリクームの腹にめり込んでいた。つま先からかかとまで、綺麗に鳩尾に入っている。
「お…おぐ…ぐ…」
「悪いな、スキだらけだったからさ…」
「こ…こ…このヤロ…」
リクームはガタガタと震え、なんとか反撃に転じようとするが、あまりの激痛による苦しみに耐えきれず、前に倒れ込んで動かなくなった。
「な…！」
驚いたのは、美鈴たちも、特戦隊のメンバーも同じだった。
「偶然だ…ただの攻撃で…！」
「ああその通りだ…たった３万の戦闘力でリクームを一撃で倒せることなどあり得ない。俺たちは天下のギニュー特戦隊だぞ…それをわからせてやる」
☆キャラクター戦闘力紹介☆
参考
一般成人男性 ５
一般成人女性 ４
子供（１０歳） ２
ミスター・サタン ６．６６
一般的に超人と呼ばれるレベル ７～８以上
大妖怪クラス ８０以上
ピッコロ大魔王 ２６０
ラディッツ １５００
ベジータ １８０００
ターレス ３万？
ついにナメック星へ到着したターレス一味。カカロットはギニューのもとへ、ターレスやウスターたちはリクームたちのもとへと向かった。
自分よりはるかに劣る下級戦士であるはずだったターレスの戦いぶりを見たベジータは、彼こそが伝説の超サイヤ人であるかもしれないと可能性を抱いた。