一回戦第一試合はカカロットvs紅美鈴でカカロットが勝利し、第二試合は霊夢vs萃香で霊夢が勝った。
そして、続く第三試合が行われようとしていたのだった。
「豊聡耳神子さんが復活してから一番に取った弟子!その類いまれなる才能は豹牙流拳法にて昇華された!豹牙天龍選手ッ!!」
そのうちの一人、天龍は舞台に上がると、両手を上げて歓声にこたえた。その中には弟の昇龍と豹牙流の元弟子たち、そして神子、布都、屠自古らの姿が見えた。
「対するは…おおっと、これは規格外!萃香選手に続く鬼!選抜試合でも他を圧倒して見せました、怪力乱神…星熊勇儀選手ッ!!」
会場からざわめきと歓声が沸いた。
勇儀は腕を組んだまま舞台へ上がり、天龍の前に立つ。
「天龍…勝てるのだろうか」
控室から試合の様子を見ているカカロットがそう呟く。霊夢もわからない、と呟くと、一緒になって戦いを見守る。
「では試合開始ッ!」
試合スタートを意味する銅鑼の音が響き渡る。天龍はその銅鑼の音の振動がかき消える前に素早く飛び出した。すぐに勇儀の顔面を殴り、さらに腹に蹴りを入れる。僅かによろめくと、その頭を掴み、膝蹴りをお見舞いする。相手は鬼…天龍も容赦はしないつもりでいた。
「キエエエエエエ!!」
さらに、カカロットとの試合で見せたような眼にもとまらぬ突きの連打を放つ。流れるような動作は勇儀に反撃の間を与えず、次々と命中していく。
観客席からは驚きの声が上がった。あの天龍が鬼を圧倒している!
「トドメだ、叩き落としてやる!」
天龍は両足のつま先を軸にし、片手を前へ掲げると高速で体を独楽のように回転させる。
「豹牙旋風脚!!」
そのまま常人離れした跳躍力で飛び、回転の威力を乗せた飛び蹴りを放った。以前よりも威力を上げた天龍自慢の必殺技は、勇儀の顔面に当たった。
勇儀は勢いよく吹き飛び、舞台上をズザーッと音を立てながら倒れ込んだ。天龍が場外へ落とそうと、正真正銘、最後の蹴りを放とうと向かった。
「なにっ…!」
しかし、髪の毛の隙間から除く勇儀の眼光が天龍を睨んだ。瞬間、起き上がった勇儀はそのままの勢いで向かい来る天龍の腹を殴りつけた。
「ぐはぁ!!」
鳩尾を狙った攻撃に、天龍は目を見開きながらしゃがみ込み、苦しみもがく。
「駄目だ駄目だ!こんなんじゃ全然楽しくない」
勇儀は首の骨をポキポキと鳴らした。起き上がろうとする天龍の顔を踏みつけ、押さえつける。
「天龍選手、勇儀選手の反撃にあってしまいました!立ち上がる事すら許されません!!」
「オラッ!」
蹴り飛ばされた天龍は宙を舞い、受け身も取れないまま地面へと叩きつけられる。それを勇儀が見下ろし、髪の毛を掴んで体を持ち上げる。
「また出直してきなよ、弱虫め」
髪の毛から手を放し、落下する天龍を見て、拳を構える。そして、ゆっくりと意識を失っていく天龍の視界に、鬼の拳が迫っていた。
いくら拳法を極め、豊聡耳神子から天才と認められた天龍でも、鬼の中で随一の強さを誇る勇儀に対しては手も足も出すことができなかった。
あまりの展開に唖然としている観客を尻目に、勇儀は控室からこちらを見て恐怖を覚えた顔をしているカカロットたちを見た。
「気を失っています、この勝負…星熊勇儀選手の勝ち!!」
医務係の式神が天龍をタンカに乗せ運んでいく。
「天龍…!くそっ、勇儀…!」
それを見たカカロットは、拳を固く握りしめるのだった。
「えー、コホン…ではいよいよ一回戦も大詰め!第四試合へと移らせていただきます!」
数分後、ついに第四試合が開始されようとしていた。その選手は…
「まずは、あの命蓮寺からの出場です!いつの間にか壊れてしまった寺を直すべく、超人住職自らが戦いに赴いた!聖白蓮選手ッ!!」
入場した聖は、観客席に向かって手を合わせ、軽く挨拶をする。
「対するは…一切素性不明の謎の戦士!一体どんな戦いを魅せてくれるのか、皆目見当もつきません、ウスター選手ッ!!」
ウスターは名前を呼ばれると、羽織っていた白い大きなマントを脱ぎ捨てた。流石にカカロットや霊夢のように、異常に重たい仕様ではなかったようだ。
現れたのは、スラリと身長の高い、程よく鍛えられ引き締まった、やや青白い色の筋肉質な肉体を持つ女格闘家だった。それを強調するかのような極端に露出の多い鎧と、手袋と足には黒いブーツを着用している。
銀色の髪…斜めにカットされた前髪で片目が隠れており、刃物のように鋭い目の周りに赤いメイクが施されていた。
まさに、闘うために洗練されたような外見だった。
「それでは、試合を開始してくださいッ!!」
試合開始の銅鑼が鳴り響いた。誰も見た事のない人物であるウスターに、観客や他の出場者たちが注目している。
そんな中、聖が攻撃を仕掛けた。走り出すと同時に体を浮かせ、ローリングソバットのような蹴りを繰り出した。しかし、ウスターはその攻撃を見切っているかのように目を瞑りながらゆっくりと腕を組むと、足を延ばし、靴のつま先で聖の蹴りを受け止めて見せた。その箇所に猛烈なエネルギーが集中し、電気のようなものが周囲に走った。
「っ!」
思わず聖は後ろへ飛びのき、自身の魔法の力を使い、身体能力を底上げする。
ウスターは一瞬だけ目を開けてそれを確認すると、また閉じる。
「いきますよ!」
パワー、スピード、堅さともに上がった肉体を使い、もう一度連続で攻撃を仕掛ける。無数の手刀やパンチを、ウスターは片足だけですべて捌き切る。
どちらとも、驚異の身体能力と言えるだろう。方やこれだけの激しい攻撃を繰り出しても息切れは愚か、わずかな動きのムラさえ生み出さない。しかし、方やそれを目を瞑ったまま、片足だけで防ぐ。このままでは、埒が明かない事はすぐに聖が気付いた。
「やりますね、貴方ほど強い人は幻想郷で見た事がありません。ですので私も、全力を出させてもらいますよ!」
聖は気を高めるように姿勢を低く構え、全身にオーラをたぎらせる。徐々に肉体を紫色のエネルギーが覆い、それは光り始める。聖本人すらも紫色に発光しているようなその気は、正しくカカロットが美鈴との戦いで使用して見せた「滅越拳」そのものだった。
その気を感じて、ようやくウスターは本格的に目を開いた。
「ハッ!!」
再び攻撃を仕掛けた聖。その進んだ軌道に、流れ星のような紫色のオーラの跡が残っている。
その聖のパンチを、先ほどのように足で受け止めるウスター。
グググ…
しかし、本場の滅越拳の威力は、ウスターの片足だけでは流石に止めきる事が出来なかった。結果、ウスターは足を降ろし組んでいた腕を解き、片腕でパンチを防いだのだ。
「おお!ようやく腕を使わせたぞ!」
さらに続く、聖の猛攻。そのすべてを両腕を使い、躱していく。
聖は後ろへ回転しながら移動すると、その手に光り輝く金色の独鈷を数本形成した。気で作られたそれをナイフのように指で挟むと、思い切り投げつけた。かつて、カカロットが大猿になって暴れた際、尻尾を斬り裂いたあの技だ。
ウスターはそれを避け、あるいは撃ち落として回避する。…が、その投げた独鈷に気を取られたウスターの不意を突くようにサイドから接近していた聖は、その脇腹に渾身の正拳突きを食らわした。
ミシ…
手ごたえはあった。ウスターの硬く鍛え上げられた筋肉に拳がめり込む感触がする。
ドゴ
しかし、一瞬。
聖の視界が大きく揺らいだ。体が意図せず飛び上がり、その視界は白い武舞台と青い空を交互に映し出す。
「がは…!」
観客と控室の選手たちは言葉を失いながら見ていた。聖の本気の突きを受けながらも、それがなんとも無いとでも言うように、冷静に、沈着に聖を蹴り上げたウスターを。
空高く舞い上げられた聖はクルクルと回りながら、地面に激突した。
「聖選手、ダウンで…」
「よく聞け!出場者と見物人共、そして主催者の賢者よ!!!」
審判が聖のダウンを宣言し、カウントを始めようとした瞬間、その言葉がマイクを使っていたにもかかわらずウスターが張り上げた声にかき消される。
カカロットを初めとした選手や、同じく戦いを見ていた紫と藍も驚いた顔でウスターに注目した。本人はそれを確認すると、また声を出した。
「俺は…魔界から来た魔人であり魔界最強を謳う戦士・ウスターだ!!優勝賞品である何でも願いを叶えるというドラゴンボールは俺が貰う!」
大胆にそう宣言するウスター。
「…ちなみに、貴方の願いは何なのかしら?」
紫がウスターにそう尋ねる。
「知れたことだぞ、賢者。俺の望みは、未来永劫に衰えることのない、永遠の強さだ!盛者必衰、いくら強きものであってもその強さはいずれ薄らぐ。だが俺はそれを許さない。魔界最強の称号は、ずっと俺だけで十分だからな!」
そう言いきったウスターは、起き上がろうとしている聖を見た。
「と、言う訳だ。聖白蓮とやら、お前もなかなかの使い手だったが…負けてもらうぞ」
地面を蹴り、空高くジャンプすると、口を大きく開いた。するとそこから強力なエネルギー波が放たれた。
そう、口からのエネルギー波は、腕などから発するよりも便利であると考えている。何故ならば、口を閉じていれば外からはエネルギーを溜めているのかどうかが分からず、不意打ちのように突然放つこともできるからだ。
その一撃が、真っすぐに聖に向かう。
「地を這いつくばる余裕すらもない絶望を味わわせてやる」
「きゃああああ!!」
「聖!!」
観戦していた一輪や村紗がそう叫んだ。
エネルギー波は聖の背中に命中し、爆発を起こした。爆風から観客席の者たちは腕で顔を覆い、光から目を逸らす。
それらが一通りおさまると、ボロボロになった聖が横たわっていた。
「邪魔だ」
ウスターはそれを持ち上げ、軽く場外へと投げ飛ばした。
「ア…えと、聖選手場外!よってウスター選手の勝利です!」
「とんでもない奴だな、ウスター…!」
「ええ、こりゃ優勝も厳しいわね…」
カカロットと霊夢は、自分の師である聖を打ち負かしたウスターを見て、そう言いながら戦慄するのだった…。