第139話 「ありのまま真実を伝えよう」
「あのゴミ共…!ボクの宇宙船を奪っていきやがって…!!」
カカロットたちが去った後、フリーザは奪われた自分の宇宙船を置いていた場所で怒りに震えていた。そばにはカカロットが乗って来た宇宙船と、遠くにはピッコロたちが乗って来た宇宙船があったがどちらも破壊されており、とてもじゃないがフリーザにはどうしようもなかった。
フリーザは怒りに任せてこの星を破壊してしまおうと右腕にエネルギーを溜めた。
「…いや、星を破壊してはパパたちが座標を特定できずにボクを迎えに来るのが遅くなる…。自分で宇宙を飛んで進んで行ってもいいが、最寄りの惑星フリーザまでは時間がかかり過ぎる…。仕方がない…待つか…」
(…ここは…?)
カカロットは宇宙船内のメディカルマシンの中で目を覚ました。カプセルのそばでは美鈴や天龍が椅子に座って眠っており、カカロットはぼんやりとした頭で何があったか思い出していた。
そして、自分がフリーザを倒しにナメック星へ向かった事…フリーザと戦った事、自分が一撃で負けた事…全てをはっきりと思い出した。
バリーン!
突然カカロットはマシンのカプセルを突き破って外へ出た。美鈴と天龍が驚いて目を覚まし、椅子から転げ落ちた。
「カカロット…!目が覚めたのか!」
「ああ…。それよりも教えてくれ、俺が倒れたあと何があったんだ?フリーザは死んだのか?」
そう言われたふたりは急に黙りこくり、目線を下へ背けた。
「な、何だよ…何で黙ってるんだ?」
そう言いながらカカロットは自分の顎を触ると、違和感を覚えた。顎に深い傷があり、その傷は上へ伸びて口の上を通り頬にまで達していたのだ。
「今隠してもいずれ分かる事だ。君にはありのまま真実を伝えよう」
その時、部屋にパラガスとブロリーが入って来た。パラガスはそう言うと、カカロットがフリーザに敗けてから何があったかを包み隠さずすべて伝えた。
「…というわけで、仲間の中で生き残る事が出来たのはここにいる者だけだ」
「あとは向こうの大部屋に十数人のナメック星人とザーボンというヤツがいる」
それを聞いたカカロットは、信じられないと言った顔で膝をついた。
「…そんな…ターレスや兄貴…ウスターも死んだだと…?」
「気の毒にな…」
しかしカカロットは怒り、立ち上がるとパラガスの胸ぐらを掴み上げた。天龍と美鈴が慌てて止めに入るが、パラガスは狼狽える素振りを見せない。
「落ち着き給え」
「うるせぇ!!テメェら親子は何もしてなかっただろうが!!しかもなんで生き残ったのがコイツらとテメェらだけなんだ!」
カカロットは天龍達を指差して怒鳴った。天龍と美鈴は下を向き、何も言わない。
「ターレスたちは全てをお前に託して、命を懸けてフリーザと戦った…そして今我々が生きているのは彼らのおかげでもある。それを侮辱するな」
パラガスは真っすぐにそう言い返した。カカロットは何も言い返すことができずに、静かにパラガスから手を離した。そして後ろにあった椅子に座り込み、黙りこくった。
「カカロット…君はいくらでも強くなれる。今はただ、強くなることだけを考えればいい。そうすればいずれフリーザに勝てるはずだ」
…─20日後 地球 神の神殿
神の神殿には、パラガスから帰還の連絡を受けたブルマがやって来ていた。幻想郷からは霊夢とシュネックも出迎えに来ていて、神殿に住む神の付き人であるミスター・ポポ、そしてピッコロの世話役の魔族であるピアノまでもが顔をそろえていた。
「カカロットたち、フリーザとやらを倒せたのかしら」
霊夢が不安そうにそう言った。
「きっとそうよ!ピッコロもドラゴンボールの作り方を教えてもらってきてるはずだわ!」
ブルマがそう言った時、空に光が現れた。光はどんどんと接近し、ある程度まで近づくとゆっくりと下降してくる。すでに出発時とは別の宇宙船で帰ると連絡を送っていたので、霊夢たちもこれがカカロットたちが乗っている宇宙船だとすぐにわかった。
宇宙船は無数の足を延ばし、天界の床の上に着陸した。プシューと音を立ててドアが開き、中から戦いに臨んだ戦士たちが勝利を称える笑顔でぞくぞくと降りてくる…。
と、思いきや、ドアが開いてしばらく経っても誰も降りてこない。
「…?変ねぇ…」
その時、ようやくパラガスとブロリーが降り、続いて美鈴、天龍、カカロットが降りてきた。だがその全員の顔は暗く沈んでおり、霊夢たちが望んでいた顔ではなかった。
「ど、どうしたの…?」
と聞いても誰も何も答えない。
「それに…ずいぶんと頭数が少なくない?まだ中にいるの…?」
「いや、俺たち以外はみんな死んだよ」
カカロットが静かにそう言った。
「死んだ…!?嘘でしょ?あんなに大勢で行ったじゃない…これだけなんて…」
霊夢がそれを聞いてそう返した。シュネックやブルマたちもそう告げられると驚愕の表情を浮かべ、信じられないと言った顔で口を開けている。
「嘘なんかじゃねぇさ…みんな死んだよ…」
「なんでよ…ターレスは勝算があるって言ってたじゃない!サイヤ人全員でかかればきっと…」
「黙れ!!戦ってもないテメェに何がわかる!?」
カカロットは霊夢の肩を掴んでそう大声を出した。
「フリーザは俺たちの想像を超えるほど強かった…そしてそのフリーザにみんなやられた!ピッコロも、ターレスもナッパもラディッツも…そしてあのウスターもだぞ!!」
「そ、そんな…大魔王様が…」
「神様…!」
「それじゃあ地球のドラゴンボールは永遠に復活できないじゃないの…」
「テメェらもだ!!俺たちは全力で戦った…だが敵わなかった!アイツの恐ろしさを知らねぇくせに横から言ってんじゃねぇ!!」
「ウッ…!」
その時だった。霊夢は急に口元を手で押さえ、がくりと膝をついて下を向いた。
「…なんだ…どうしたんだ?」
だが霊夢は何も答えず、震えているばかりだ。そして次の瞬間、嘔吐を引き起こして床に散らした。その場の全員が慌てて駆け寄り、背中をさすったり心配の声をかける。カカロットは困惑し立ったままその光景を見ているだけだ。
シュネックが近寄ってその背中に手を置いた時、何かに気付いたようだ。
「これは…。とにかく医者に見せよう、もしかすれば…」
シュネックとカカロット、美鈴や天龍は霊夢を連れて急いで幻想郷へと戻り、永遠亭へと運び込んで医師である永琳に診せた。永琳はすぐに霊夢に訪れた異常の原因を突き止めた。
「霊夢は一体どうしたんだ!?病気か?」
カカロットがそう詰め寄ると、永琳は答えた。
「いいえ…むしろおめでたい事よ。今、霊夢のおなかの中にはカカロットとのふたり目の子供がいるわ」
「何だって!?」
「ああ…やっぱり…。通りで最近調子が悪いと思ったのよね」
「数日は入院して安静にしてなさいな、きっと心配が祟って一気に来ちゃったのね」
そこでカカロットは自分が居ない間、ずっと霊夢や見送ってくれたみんなが戦いの勝利を願って帰りを待ち続けていたことに気付いた。いや、それどころか一緒に戦った美鈴たちも、何故弱い自分たちばかり生き残ってしまったんだろうと自責の念でいっぱいだったはずだ。それなのに自分は敗北した己の弱さを彼らのせいにして…。
カカロットは窓際に移動し、久々に見る幻想郷の青空を見上げた。
「なぁ、俺はこれからもっと強くならなきゃならねぇ…何故ならまたひとつ、フリーザをぶっ倒さなきゃならねぇ理由が増えちまったからだ。地球のため…いや、幻想郷の為…そして霊夢やシロナ、腹の中の子供のためにもだ!」
カカロットの中で暖かな炎が燃え上がった。