開催された、紫主催の幻想郷一武道会。軽く一回戦を突破するカカロットと霊夢だが、同じく一回戦を勝ち抜いた星熊勇儀と、魔界最強の戦士と名乗るウスターはとんでもない強さの持ち主だった!
果たして、優勝は誰が勝ち取るのだろうか…!?
聖白蓮対ウスターの戦いで、一回戦の試合はすべて終了した。勝ちあがり二回戦の出場を決めたのは…鬼の星熊勇儀。圧倒的なパワーで聖を倒した魔人ウスター。そして、カカロットと博麗霊夢!
「では、大変長らくお待たせいたしました!ただいまより第二回戦を始めさせていただきますっ!」
審判がそうマイクに向かって叫んだ。会場が湧き上がり、控室のいる選手たちが窓から顔を覗かせる。敗北した美鈴や萃香も揃っている。天龍と聖はいまだ医務班の手当てを受けており、ここにはいない。
「では選手の入場です!カカロット選手と博麗霊夢選手、どうぞ!!」
カカロットと霊夢が、同時に歩きながら武舞台上へ上がった。
「さぁ一回戦を勝ち抜いたお二方に、お話を伺ってみたいと思います。カカロット選手!」
審判はカカロットにマイクを渡した。
「俺がこの大会に出た目的はただ一つ。賞品も名誉も興味はない…それは博麗霊夢に勝利すること!そのために俺はこの一年間修行を重ねてきたんだ、絶対にこの場でお前に勝つ!!」
「いいぞー、負かしてやれー!」
観客席の妹紅がそう声をかけた。
それを聞いた霊夢はカカロットからマイクを奪い、勝手にしゃべり始める。
「私もコイツに追い抜かれないように力を付けてきたわ。だから絶対に負けはしないし、つまらない戦いをするつもりもないわ!」
「気合も十分のようですね。ならば私としても、これは期待せざるを得ません!では…」
審判が手を上げると、いつの間にか大きな太鼓を用意していた他の式神が、それをドンドンと鳴らし始める。太鼓のリズムはだんだんと速くなり、会場の緊張感は増していく。
二人は睨み合い、間に火花を散らしている。
「はじめっ!!」
霊夢とカカロットは同時に飛び出し、飛び蹴りを繰り出した。足と足がぶつかり、あまりのエネルギーに風が巻き起こる。
「でやああああ!!」
霊力を解放した霊夢と、滅越拳を発動したカカロット。赤と紫のオーラが互いに尾を引きながら高速で移動し、舞台上で何度もぶつかり合う。そのたびに鈍い音と衝撃が響き渡り、まるで余波で大気そのものが揺れているようだ。
「むん!」
するどい蹴りを放つカカロット。避ける霊夢を追いかけるように、次々と蹴りを繰り出していく。これは修行を始めたばかりのころ、迷いの竹林で竹を斬りながら練習し鍛えた蹴りだ。そのうちの一撃が霊夢の頬を掠った。
霊夢は少しニヤっと笑うと、宙へ飛び跳ねた。この舞台上は飛行することができないので、単純な脚力による跳躍だ。
「喰らうがいいわ!」
空中で気合を込めると、体に纏わる赤色のオーラが分離し、無数のエネルギー弾となって武舞台へ降り注いだ。
「うおっ!」
それを次々とかわしていくカカロット。これは弾幕勝負の際に使う光弾ではない、霊夢が気で作り出した実戦用のエネルギー弾だ。
それが着弾した箇所は大きな爆発が起こり、当たればただでは済まないだろう。雨のような光弾を前に、カカロットは避ける事しかできなかった。だが…
「俺の真の実力を見せてやる!」
カカロットはそう宣言すると、気を溜める。その時、滅越拳を発動している状態の紫色のオーラがさらに大きく膨れ上がり、そのエネルギーの強さで髪の毛がさらに逆立った。
「フルパワー滅越拳だッ!!!」
「何ですって!?」
今までの滅越拳よりもさらに増えた気に、驚く霊夢。
カカロットはジャンプをすると、自分に向かってきているエネルギー弾を踏みつけた。それによりさらにジャンプし、それを繰り返しながら宙に居る霊夢へどんどん接近していく。
「そんな…有りえない!」
観客たちも上を見上げ、戦いに言葉を失っていた。
そして、ついに霊夢と対等な目線の位置まで上り詰めた。
「ようやっと来れたぜ…霊夢、お前と同じところへな!!」
その言葉は、お互いの気分を高揚させた。
…まだ見ぬ地上の凄いモノを求めて、この地へやって来たあの日。カカロットはまだ何も知らない、1人の少年でしかなかった。自分の素性もよくわかっておらず、地底では自分より強い者との戦いを避け続けてきた。しかし、あの日からカカロットは変わったのだ。
満月を見て大猿に変身し、暴れたので封じ込められてしまったカカロット。地上で初めてまともに言葉を交わした者、そして己を封印から解き放った者。それが霊夢。強かった…ただ、途方もなく高い壁の上に、この霊夢は立っていると思っていた。
いや、そこには壁というものすらなかったかもしれない。ただ遥か自分より高みに”浮いて”いた。
だが、それはカカロットの本能を大きく刺激した。一体何の本能だったのか…戦いを好み、更なる強さへの渇望が生まれたのはこの時からだ。それ以来、霊夢へと続く壁を作り、そこを上り、いつしか超える事を目標に修行に打ち込んできた。妹紅、聖…師の力を借りて。
そして今日この瞬間、ついに二人は並んだ。カカロットは修行という名の足場を組み立て、ついに霊夢と対等になったのだ。
それは霊夢も感じていた。あの自分よりも弱かったカカロットが、遥か修業を重ねたつもりの自分に追いついた!
その精神の高揚は、二人が落下するまでの十数秒の間、数百を超える拳と蹴りのやり取りとなって、幻想郷史上最高の打ち合いを繰り広げた。
スタッ
二人は舞台上に着地し、もう一度にらみ合った。
「な…ななな…何という事でしょう!!凄すぎる、凄すぎます!!思わず私も観戦客となったように見惚れてしまいました!!素晴らしいです、この戦い一時たりとも目を離せません!」
「やるわね、まさかあの滅越拳を更に超えているなんて…」
「ああ、普通の滅越拳よりもさらにパワーアップした滅越拳だ。今日ここでお前と戦うために覚えた技だ!」
カカロットが発展させたフルパワー滅越拳は聖が使った滅越拳よりもさらにパワーやスピードをアップすることができるのだ。
「そう。だったら続きをやりましょうか!」
「ああ、やろうぜ霊夢!」
二人はもう一度飛び出した。同時に繰り出した肘打ちと膝蹴りがぶつかり合う。
しかし、霊力を解放し無数のエネルギー弾を放ち体力がやや落ちた霊夢と、フルパワー滅越拳を使った疲れが徐々に見え始めたカカロットは、互いに技のキレが無くなり始めていた。
「おらぁ!」
霊夢のガードをすり抜け、その顎にパンチを食らわす。吹き飛ぶ霊夢に向かって、カカロットも一発のエネルギー波を放った。
「なんの!」
しかし、霊夢も負けじとエネルギー波を放ち、それと激突させた。まばゆい閃光があたりを覆い、鍔迫り合いを繰り広げる。次の瞬間、二つのエネルギー波は互いに相殺し合って爆発した。
その爆発が収まった瞬間、爆風をかき分けて霊夢が現れた。そこから放った蹴りがカカロットの腹にめり込み、前のめりになって腹を抑える。さらに追撃をするようにその後頭部を殴りつけ、もう一度蹴りを放とうと構える。
「終わりよ」
しかし、放った蹴りはカカロットをすり抜けた。
「残像!?」
そう、それは美鈴との戦いで見せた残像だった。背後に回っていたカカロットは霊夢の腕を掴み、思い切り投げ飛ばした。
「どうだ!場外だぞ!」
「しまっ…」
だが霊夢は武舞台の外側に向けてエネルギー波を放ち、その反動で舞台上へ戻って来た。
「そう来なくては…。行くぞ!!」
「くっ…!」
戻ってきて霊夢に向かって、間髪入れずに殴りかかる。霊夢もこれにはたまらずに、もう一度空へ向けて跳躍した。
カカロットも同じくジャンプをする。
「追いついた!」
「何ですって…ハァ、ハァ…」
一跳びで再び目線を同じにしたカカロットを見て、霊夢がそう言った。既に若干息を切らしており、余裕が無さげだ。
二人は空中で取っ組み合いながら落下を始める。
霊夢は、なおも疲れを見せないカカロットに対し、焦りを覚えた。おかしい、自分はこの戦いにおいてもう体力がなくなりかけていた。序盤から霊力を最大限開放し、あれほどのエネルギー波を放ち気を消費してきた。そのツケが今回って来たのだ。
(何故、なんで…!カカロットはこんなにも…強くなった!?既に以前の私を追い抜き、今までマジメにしたことのなかった修行に打ち込んで強くなったはずの私ですら…!私が人間だから…?そうか、カカロットはサイヤ人だと言っていた…それがどんな種族なのかは未だに分からないが…それが、カカロットの強さと伸びしろの所以…とでもいうのかしら!)
カカロットは空中で気を放出し、霊夢よりも先に舞台上へ降りた。
「!?」
「この勝負、もらったーッ!!」
そして、後から降りてきた霊夢の胸に、渾身の蹴りが命中した。霊夢は地面を転がり、ついに…舞台上から落ち、外の芝生の上にドテンと落ちる。
「…かっか、かか…勝った!勝ちましたカカロット選手!!霊夢選手無念の場外負け!!まったく素晴らしい勝負でした!カカロット選手、決勝戦出場決定です!!」
うおおおおーっ!!
会場が一気に沸き上がった。
「やったなカカロット!」
観客席から、妹紅がそう呼びかけた。それに気付いたカカロットはピースサインを出して見せる。
「負けたわ…完全に私の負けよ。優勝するといいわね」
霊夢が、カカロットに手を差し出す。それを握ると、カカロットは少しだけ笑った。
「両選手が退場していきます!拍手でお送りください!」
医務室で審判の声を聴いていた聖と天龍が、カカロットがついに念願の霊夢に勝利をおさめたことを喜んだ。
「カカロット…ついにやったのね…」
戦いを横目だけで見ていたウスターが立ち上がった。次は二回戦第二試合、ウスターの番だ。
「では、この余韻を残したまま第二試合へと移らせていただきます!さて、先ほどと同じようにお二方にお話を伺ってみたいと思います」
審判は入場してきたウスターと勇儀にそう言うと、まず勇儀にマイクを渡した。
「私は強い奴と戦ってソイツのはなっぷしをへし折ってやりたくてこの大会に出た!本当は決勝戦で萃香と戦う予定だったが、他にも凄い奴がいた。ウスター…とかいったか?お前は私が戦うのに最適な相手だ!」
ビシッ、と指を差す。ウスターは腕を組んだまま、目を細めた。
「そ、そうですか…ではウスター選手、対するコメントをどうぞ」
「いらん」
マイクを渡そうとする審判に、そう不愛想に答える。
「は、はい…。では、試合を開始します…」
太鼓の音が鳴り、どんどんとスピードを増す。そして、試合開始の銅鑼の音が鳴り響いた。
「はじめっ!!」
ついに試合が開始された。両者はお互いに睨み合う。
「お前は私を楽しませてくれるん…!」
勇儀が開始直後にそう言いながら構えた瞬間、視界が一瞬で暗くなった。
審判や観客、そして戦いを見ていたカカロットや霊夢は驚いた。あの勇儀の顔面に、ウスターがパンチをめり込ませていたのだ。
「か…!」
さらに、腹を蹴って勇儀を吹き飛ばす。
「ぐはぁ!」
「ハハハハハ、どうした?お前は強いのだろう?」
ウスターは片足だけを使い、無数の蹴りを繰り出した。圧倒的なスピードで繰り出されるその連続の蹴りは勇儀に何かをする暇さえ与えてはくれない。
ついに勇儀の足が浮かび、蹴りによって持ち上げられてしまっている。
「ほれ」
さらに足を引っ込めると、その手で勇儀の頭を掴む。そして一発殴りつけると、再び持ち上げた。
「ダメだダメだ、こんなものでは楽しめんぞ」
囁かれたこの言葉を聞いたとたん、勇儀は心にいがぐりを投げつけられたような鋭い衝撃が走った。
「ククククク、お前はさっきの対戦相手にも同じ事を言っていたな。だがアイツの方が武道の心得があった分、強そうだったぞ。…出直してくるんだな、雑魚め」
ウスターはそう言い放つと、放心したような状態の勇儀を場外へ投げ飛ばした。
「…じょ、じょじょ場外、です…」
「何だと…勇儀をあんな一瞬で、手も足も出させずに…」
戦いを見ていたカカロットは戦慄した。自分が地底に居た頃、あれだけ強大で圧倒的な存在に見えた勇儀が、いとも簡単に痛めつけられた。
「…次はお前がこうなるのだ…ククク、ハーッハッハッハ!ドラゴンボールは俺の物も同然だ!!」
ウスターの不気味な目線が、次の決勝戦の相手であるカカロットへ向けられるのだった。
~次回予告~
よっす、私は霊夢よ。ウスターって奴、とんでもないわね…。そんな奴と決勝戦で戦う事になったカカロットだけど、果たして本当に勝てるのかしら…。
次回、「決勝戦!サイヤ人vs魔人!」、絶対見なさいよね!