カカロットが幻想郷へと帰還した日の翌日。神の神殿にはカカロットやパラガス、ブロリーを初めとした仲間たちが揃っていた。霊夢はいまだ永遠亭で入院しているが、ブルマやシュネックなどの重要な役目を担う者たちも揃っていた。
「さてと、まず初めにアンタ達が連れてきたナメック星人さんたちだけど…」
最初にブルマが切り出した。
「しばらく私の家で暮らしてもらうわ。ナメック星と地球はさほど気候や環境に違いは無いし、本人たちもそれでいいって言ってたからね」
「ああ、それがいいだろう。現在ナメック星の周囲にはフリーザ軍が常駐している可能性が高い。フリーザを完全に倒して軍を壊滅させるまでは地球に置いておくべきだろう」
とパラガスが言った。
「それとなんだけど、同じくナメック星から連れて来たっていうこのイケメン…ザーボンとか言ったっけ?彼から話を聞いてみましょうよ」
「ああ…お前には聞いておきたいことが山ほどある」
全員は車椅子に座っているザーボンを見た。ナメック星でカカロットたちがフリーザと戦っている間、パラガスとブロリーは生き残ったナメック星人を宇宙船に回収してまわっていた。その時、偶然にも彷徨っていたザーボンを発見し、敵軍の捕虜として確保したのだ。
「ぶっちゃけ、今後のフリーザの動向とかわかる?」
ザーボンは少し考えてから言った。
「…そうだな、もはや私はフリーザ様の側近であることを辞めた身だ…お前たちに助言してやろう。フリーザ…は、あれほど派手に盾ついたお前たちを決して許しはしないだろう、特にあの美鈴と天龍とかいう者が地球人だということはバレている。必ず地球に来てお前たちを殺しに来る」
「それはいつごろだ?」
「あのナメック星に宇宙船がひとつもないならば、宇宙空間でも活動できるフリーザだが応援の宇宙船を呼ぶだろう。連絡を受けても最寄りの惑星フリーザからナメック星までは10日以上かかる。そしてもしもフリーザが軍を再編制してやってくるならば2か月か…。結論から言うと、奴は早くて3か月から4か月後にこの地球にやって来るだろう」
「だったら、それまで死ぬ気で特訓してさらに強くなるしか勝つ方法はねぇよな」
カカロットがそう言った。
その時、話を聞いていたミスター・ポポが不安げに発言した。
「じゃ、じゃあこの地球、戦いの舞台になるか?数々の一般人、巻き添えになる」
「それについては心配ないわ。ドラゴンボールがあるもの、後で生き返れるわ」
「…神様、ナメック星のドラゴンボール作った最長老と同化してその力保持したまま死んだと聞いた。だったらもう地球とナメック星のドラゴンボールどっちも存在しない。神様生き返れないはずだから」
「大丈夫よ!ねぇシュネックさん、幻想郷にもドラゴンボールがあるんでしょ?ちょっと使わせてちょうだいよ」
そう聞かれたシュネックは、申し訳なさそうな顔で答えた。
「残念だが、使ったとしてもピッコロを初めとしたナメック星で死んだ者を生き返らせることはできないじゃろう」
「え?なんでよ!ドラゴンボールはどんな願いでも叶えられるはずよ!」
「ああ…随分と前に月夜見王と戦った時には、二星球で幻想郷の連中をまとめて生き返らせることができたぞ」
と、ブルマとカカロットが反論した。
「確かに、ガーリックの持っていた二星球かわしの持つ一星球であれば死者をまとめて何人でも蘇らせることが可能じゃ。だが、それは『幻想郷』に限った話だ。幻想郷で死亡した者なら自由に生き返らせられるだろう。つまりわしが作ったドラゴンボールの効力は幻想郷の中限定でしか発揮されないのだ」
「そうだったのか…」
「役に立てずに申し訳ない…。ボールを作った時に結んだ龍神との契約の所為でな…」
「そんな…もしピッコロが生き返ってドラゴンボールも復活すれば、ポポさんの言う通り地球で戦って一般人が巻き添えで死んじゃっても復活させられると思ったのに…」
そう呟いたブルマだが、それに対して少し考えたカカロットは言った。
「おいおい、馬鹿言っちゃいけねぇよ。何も知らねぇ連中に、『生き返れるからいっぺん死ね』なんて酷なこと言えないからな。死んだ者は死んだ者だ…俺がドラゴンボールで死者を生き返らせたのは一度きりだ…もう二度とするつもりはない」
「…確かに…そうね…」
「だが一般人が巻き添えを食ってしまうのは事実だ」
「そこでだ、なるべくこっちの外の世界で死人を出さないために、幻想郷へ敵を誘導するってのはどうだ?幻想郷の住民は、月夜見王と戦った時みたいに別空間に移動させとけばいい」
「そうだな、敵が地球に近づいて来れば、お主の事だ…邪悪な気で察知できるだろう」
「決まったようね…フリーザとの決戦は4か月後に幻想郷で!」
「ああ…俺はそれまでの間にまた特訓して強くなる!今度は誰も死なせやしない…そして敗けもしないほどにな…」
彼らは決戦の日に備えて決意を固めた。ブルマはこの神殿で、シュネック、そしてカカロットは幻想郷へ戻って修行を初め、パラガスとブロリーも一時的に幻想郷へ滞在することとなった。
「私はどうすればいい?」
そこでザーボンがそう言った。
「そうだな…ザーボン、お前を押さえられる者は今やカカロットしかいない。なのでお前も幻想郷へ行き、カカロットの監視のもとそこで暮らすがいい」
とパラガスが答えた。
「もはや暴れようなどという気は毛頭ないが…いいだろう」
それから、約2か月ほどの月日が経った。
場所は変わり、はるか遠くの惑星フリーザNo.11。風が吹きすさぶ荒野の小高い丘の上で、大きな円盤型のフリーザ軍の宇宙船が停まっていた。そこへ向けて歩いていくひとりの影があった…
そう、フリーザだ。
「…む、止まれ!そこの者!」
宇宙船の周囲を警備していた兵士のひとりが近づいてきたフリーザに銃を向けた。だが次の瞬間、フリーザは尻尾を振って兵士の頭を一瞬で吹っ飛ばし、何事もなかったかのように歩き続けた。
「まったく…誰もボクがフリーザだって気付かないんだから」
初期の第一形態のフリーザの姿しか目にしたことが無い者にとっては分かりにくいのだろう。
フリーザは宇宙船に入り、一番大きな部屋に入った。
そこには無数のフリーザ軍の兵士が整列して並んでおり、中にはナメック星で生き残ったギニュー特戦隊メンバーのリクームとバータが静かに混じっていた。その列の奥には階段とその上に巨大な玉座が有り、大柄な人物が座っている。
「我が息子フリーザよ…基地ではよく休めたかな?」
「ああパパ…バッチリさ」
この大柄な人物の名はコルド大王。今の会話の通り、フリーザの父親であり実質的なフリーザ軍の最高権力者である。しかしその存在はフリーザ含めた親族とコルド大王直属の部下しか知らない。
その姿は頭部に一対の角を生やし、戦闘ジャケットと青いマントを着用している。外見的にはフリーザの第一から第二形態の姿とよく似ているが、その気の大きさは今のフリーザ以上だ。
フリーザは列の間を歩いていき、コルド大王の横に立った。
「実はな、お前に紹介したい部下たちがいるのだ」
「へぇ…?」
「ふっふっふ…このワシが秘密裏に育て上げたエリート中の超エリート戦士の集団だ。出でよ、『カーボネド四天王』よ!!」
コルド大王がそう声を上げると、天井から4人の人影が舞い降りてきた。影たちはフリーザとコルド大王の前に着地すると、サッと跪いた。
「「はっ、コルド大王様、我々カーボネド四天王はここにおります」」
「コイツたちがそうなの?」
「ああそうだ。右から、リーダーのカーボネド、ラーゴン、ダイザー、スカッシュ。どいつもお前に匹敵するほどの戦闘力にまで育て上げたのだ」
カーボネドたちは全員特殊なデザインの戦闘服を着用している。リーダーのカーボネドは顎に髭を蓄えた鼻の大きな初老の男だ。ラーゴンは眼鏡をかけた肌の青い青年で、両腕には何かの電子機器が取り付けられている。ダイザーは全身が鋼の様な皮膚に覆われた爬虫類のような巨漢戦士で、その顔もまるで兜をかぶっているかのように分厚い外骨格に覆われている。最後にスカッシュは赤髪を逆立てた目つきのするどい女戦士で、ビキニのように改造した戦闘服を着用している。
「ボクに匹敵する、ねぇ…本当にそうなのかな?」
「もちろんだとも。もし地球へ行ってサイヤ人を始末する際にはお前の指揮の元、与えられた命令は確実にこなすぞ」
「でもボクにとっちゃ初めて見る顔だし、信用ならないね…。そうだ!試しに誰かと戦ってその実力を証明して見せてよ」
フリーザはそう提案した。
「は…仰せのままに。スカッシュ、お前からやってやれ」
「しょうがないねぇ…」
スカッシュは立ち上がり、飛び跳ねて列の間に着地した。兵士たちは列を開け、スカッシュを円で囲うように移動し見物に入った。
「さぁ、アタイはどいつ相手に戦えばいいんだい?」
「そうだね…とりあえず、リクームとバータ、行きなよ」
フリーザはそう言うと、兵士たちの注目は列に何気なく混じっていたリクームとバータに向けられた。
「キミらはナメック星でサイヤ人なんかに負けて、とんでもない失態を犯したよね。その罰としてギニュー特戦隊の称号を捨てさせ、一般戦闘員に格下げしたわけだけど…もしそこのスカッシュとやらと戦って勝つことが出来たら、もう一度階級を戻してあげるよ。どうだい?」
確かに、ふたりの戦闘服は特戦隊専用のVネックでロゴマークが入ったものではなく、肩のアーマーがない旧式の汎用戦闘ジャケットに変わっていた。
リクームとバータは顔を見合わせ、頷いた。
「そういう事ならばやらせていただきますぞ」
「ええ、もう一度俺たちの優秀さをフリーザ様に認めていただくチャンスだ」
「きゃははははは!!いくらなんでも冗談がキツいんじゃないかい、”元”特戦隊のおふたりさん!フリーザ様のお情けで存在を許されてるんでしょ?」
「ふん、いくらでも言っとくれい。天下のギニュー特戦隊が負けるはずはないんだ」
「行くぜ!『バータ』!!」
「『リクーム』!!」
「「ふたり揃って!!ギニュー特戦隊!!」」
ふたりはお馴染のスペシャルファイティングポーズを決めた。が、辺りは静まり返った。
「プッ…なんだありゃ」
ひとりがどこかでそう声を漏らすと、他の者たちも釣られて笑いだす。カーボネド四天王も鼻で笑い、部屋中が嘲笑の笑い声で満たされた。
「あーあ。さ、アンタらふたり同時にかかってきてもいいよ」
「むうう…!とうっ!!」
リクームとバータは額に血管を浮かばせながらスカッシュに飛びかかった。か、スカッシュは一瞬でそれを躱し、ふたりの頭上へ移動した。
「うおおおお!!」
バータは後ろへ飛んで距離を取りながら両手から連続でエネルギー弾を撃ちだすが、スカッシュは空中でまるで虫の飛行のような軽やかな動きでかわし、バータに接近する。そして目にもとまらぬ速さでパンチを繰り出し、バータの腹を撃ち抜いた。
「テメェ!喰らえ、『リクームキック』!!」
倒れるバータに追撃を喰らわせようとするスカッシュに、リクームが飛び膝蹴りを仕掛ける。が、スカッシュはリクームの方へ振り替えることなく腕を後ろに回してそれを防ぎ、前方へ振り回して地面へ叩きつけた。
「きゃははははは!!もうおわりかい!?」
「チィィ、こうなったら容赦しねぇぞ、『リクームイレイザーガン』!!」
リクームは大口を開け、そこにスパークの様な強力なエネルギーを溜め始める。
「おいおいリクームってヤツ、この宇宙船ごとぶっ飛ばす気か!?」
ギャラリーの兵士がそう叫びながら慌てた。だが当のスカッシュはそっぽを向いて耳をほじり、他の四天王の3人はそれに興味なさげに談笑しているばかりだ。
カッ
そして次の瞬間、リクームの一撃が放たれた。エネルギーの光線が真っすぐにスカッシュを狙う。もし避けたとしてもこれが地面に当たれば、ナメック星の地形を変えるほどの一撃だ…周りの連中もただではすまないだろう。
しかし…
「はああああああ!!」
スカッシュは光線に向かって駆けだしながら素早く突きの連打を繰り出した。その攻撃の連打はリクームイレイザーガンを先端から少しずつ消し飛ばして削り、リクームにどんどん接近していた。
「あ、あり得ねぇ…!!」
リクームは信じられないと言ったような顔で驚愕しながら、目の前に飛び出してきたスカッシュの蹴りを顔面に受け、後ろに倒れ込んだ。
「うおおおお、スゲェぜカーボネド四天王!!」
ギャラリーの兵士たちがそう歓声を上げた。
「やるね…あの4人」
「そうだろう。地球を攻める際はあの4人を中心にして軍を編成するか」
フリーザとコルド大王はカーボネド四天王の強さを賞賛し、他の兵士たちもスカッシュの圧倒的強さに見惚れていた。
本当ならば、以前までならばあそこには自分たちギニュー特戦隊が居たはずなんだ。フリーザに賞賛され兵士たちから尊敬のまなざしを受けるのは俺たちのはずだ。
しかし、今やリクームとバータはその場の誰にも相手にされず、ただ静かに座ったまま呆然としていた。