ゴゴゴゴ…
気を失っていたパラガスは、地面を揺るがす轟音で目を覚ました。ダイザーとスカッシュにやられた箇所が痛む。
火花が散る視界を強引に元に戻し、この騒ぎは何だと辺りを見渡す。
「あれは…!」
パラガスはフリーザと戦っているブロリーを目にした。しかし、ブロリーはもはや我を忘れかけ、狂気じみたような笑い声を轟かせながら周囲を無茶苦茶に破壊しようと攻撃をし続けていた。
その様子を見たパラガスは慌てた様子で腕に装着された制御装置を彼へ向けた。しかし、この惑星へ着く前にブロリー自身から言われた言葉を思い出し、動きを止める。
『いいか親父、もしも俺が暴走しても、今度ばかりはフリーザを完全に倒すまで制御装置は使わないでくれよ』
確かに、このままブロリーとフリーザが衝突し続ければ、ブロリーが勝利できるのは明白だ。しかし、それには周囲の多くの惑星が巻き添えになってしまう。そして真に暴走したブロリーはフリーザを倒した程度では決して止まらないだろう。それこそ、彼自身がフリーザの代わりに宇宙に君臨する破壊者となってしまう事すら大いにあり得る。
「く…」
パラガスは腕を掲げたまま、制御装置を作動するか否か悩み続けた。その腕がプルプルと震えだす。
既にブロリーの眼下では、傷を負ったフリーザをカーボネド四天王たちが抱えて避難させようとしていた。それに気付いたブロリーは、一気に四天王たちのもとへと急降下していく。
(どうする…!どうする…!?息子を選ぶか、宇宙の平穏か…!!)
たった1秒ほどの短い時の中でパラガスの脳内はめまぐるしく回転した。
そして、考えに考え抜いた結果…。
ピロピロピロピロ…
「!!??」
制御装置が緑色の淡い光を発し、ブロリーの頭部に装着されたリングが反応した。ブロリーはピタリと動きを止め、苦しげに頭を押さえた。
「うう…!!」
そして全身に満ち満ちていた黄金のオーラが鎮まり、その身体の筋肉量が減っていく。元の気弱そうな青年の顔に戻り、ハァとため息をついた。
「コノヤロウ!!」
その瞬間、スカッシュがブロリーの顔面を蹴り飛ばした。ブロリーは地面に倒れ込み、痛む顎を押さえた。
「よくも好き勝手してくれたねぇ…」
「いかん!」
パラガスは咄嗟に飛び出し、ブロリーを庇うようにしてスカッシュに背中を見せた。スカッシュは容赦のない威力の突きを繰り出し、パラガスごとブロリーを葬り去ろうとする。
「…ウオオオオオオオ!!」
しかしその瞬間、ブロリーは白目を向いて全身から緑色の気を放った。その気はブロリーを中心に球体状のバリアーを作り出し、スカッシュの攻撃を防いだ。
「なんだとッ!」
ブロリーはそのままパラガスと共に宙へ浮かび上がり、どこかへと移動していく。
「待て!」
四天王たちが追いかけるが、ふたりは宇宙船の発着場にたどり着くや否や自分たちが乗って来た宇宙船に飛び乗り、大急ぎで作動させた。飛び立つ宇宙船を打ち落とそうとエネルギー弾を撃つが、窓から顔を出したブロリーも負けじと攻撃を繰り出しそれを相殺する。
「…クソッ、取り逃がした!!」
スカッシュが悔しそうに足を踏み鳴らした。
「ならば急いで追うのがいい。私たちにも宇宙船を用意したまえ」
「それがリーダー、この惑星にある宇宙船は大型も小型も全部破壊されている。報告によれば、すでに他の惑星フリーザも襲撃に遭い宇宙船を破壊されたようだ」
「なにィ…!!」
カーボネドは大きな鼻に血管を浮かばせて怒った。
一方、飛び立った宇宙船の中ではブロリーがパラガスの胸ぐらを掴んで怒鳴りかかっていた。
「おい!俺が言った事を忘れたか!何故あそこで制御装置を使った!?」
「ぐ…仕方がないだろう、あそこで続けていればお前の暴走は悪化し、フリーザ以上の宇宙の脅威となり得た…!それに、制御装置を付けることを望んでその主導権も私に託したのはお前だろう、ブロリー…」
ブロリーはそう言われると何も言い返すことができず、ただ黙って宇宙船の席に着いた。その目の前のモニターには、行き先は不明だと示されていた。
そのころ、地球の幻想郷。
妖怪の山のどこかにある狭い洞窟の中で、問題児のスカーレットと鬼人正邪が酒と肉をかっ喰らいながら悪態をついていた。
「ったく…カカロット共、もはや私たちなど眼中にないようだ…」
「まあそう言わないでよ鬼人正邪…復讐の機会はまだいくらでもあるさ。次の作戦を考えよう」
そんな事を話していると、洞窟に何者かが踏み入ってくる足音が聞こえた。
「…しめたな、遭難者か動物か…」
「どちらにせよ、殺して食べてしまいましょうか」
正邪とスカーレットはゲスな笑みを浮かべるとゆっくりと洞穴の入り口の方へ移動していく。だがその時、正面から何者かが素早い動きで接近し、ふたりは反応できないまま背後を取られ、その首元にエネルギーで作り出した槍の様なものを突き付けられた。
「動かない方がいい。さもなくばそのタゴマがお前たちの首を落とすだろう」
その声が洞穴の中にこだました。その声の主は後ろに手を組みながらゆっくりと歩いてきて、見下したような笑みを浮かべながら正邪とスカーレットを見た。
「ふん、やってみなさい…!正邪はともかく、私は首を落としたくらいじゃ死なないよ」
「ほう、ではどれぐらいで死ぬのか試してやってもいい。なぁ、タゴマ?」
「はい、ソルベ様」
タゴマはそう言いながらふたりに冷酷な目を向けた。どうやらあの偉そうな青くて小さい生き物はソルベという名前らしい。ハッキリ言ってパワーは自分たちよりも下だが、この後ろにいるタゴマというヤツはそうとうヤバそうだ。
タゴマに睨まれた瞬間、ふたりは金縛りにかかったかのように少しも動けなくなり、冷や汗を流した。
「命が惜しければ、この私の質問にハッキリと正直に答え、かつ言う事を聞くのだ。いいな?」
ふたりは本能的に察した。こいつらには逆らわない方がいい…!
「は…はい…」
それから数か月後。破壊され尽くした惑星フリーザの基地の復興は全く進んでいない。だがフリーザ軍はなんとかして大型宇宙船を2隻、新しく作り出すことに成功していた。
その宇宙船の中で、フリーザとコルド大王を中心とした壮行会が行われていた。玉座にコルド大王が座り、フリーザは不機嫌な顔で腕を組みながら立っている。
「まったく…あのブロリーとかいうサイヤ人の所為で出発がこんなに遅れた!今度という今度は絶対に許さない!!」
「まあ落ち着けフリーザ…。どんなに我々が地球に行くのが遅れようと、どの道地球人は滅びを免れない。違うかね?」
「それはそうだけどさ…」
フリーザは口を尖らせた。
「元はと言えばコイツらが使えないんだ」
続けて、フリーザは横に仕えているカーボネド四天王を見た。4人の顔には、大きな痛々しい傷が斜めに刻まれていた。
「今回は顔に傷つけるだけで許してやったけど、次サイヤ人なぞに後れを取ったら…本当に殺すからね」
「御意!何があろうとも、フリーザ様のお役に立って見せます!!」
四天王たちは恐怖と不安をかき消すように必要以上の大声でそう怒鳴った。その時、周囲に仕えていた兵士の一人がフリーザに報告した。
「フリーザ様!ソルベ様より報告です…」
「…そうか、分かった分かった」
「ではそろそろ行くか…楽しいショーのために、地球へとな…」
そして、ナメック星での戦いから実に10か月の月日が経っていた。ブロリーが居なくなったときはカカロットもあわてて行方を探したが、結局地球のどこにも彼とパラガスの気は感じられなかった。
今日の早朝、カカロットは博麗神社の居間でシロナと一緒に眠っていた。霊夢は一足先に目を覚ましたものの、まだウトウトと目を瞑っていた。そのおなかは既にとても大きくなり、永琳の診察ではそろそろ生まれるだろうと告げられていた。
…誰もが安心しきっていた。結局、ザーボンが見立てた期間が過ぎてもフリーザはやって来ない。戦士たちはそれでも万が一に備えても修行を怠ることは無かったが、もしかすれば戦わずに済むかも…と思って居たりもした。
だが、その考えは砕かれる。
「う…!!」
霊夢の苦し気な声を聴いてカカロットが飛び起きた。
「どうした!?」
「じ、陣痛よ…もう生まれるわ…」
カカロットは急いで霊夢を永遠亭まで連れて行った。永琳はすぐに霊夢をベッドへ寝かせ、いつ子供が産まれてもいいように準備を完了させた。
「さ、頑張って霊夢!」
永琳が言ったその時、カカロットは突然幻想郷上空に無数の邪悪な気を感じた。
「この気はなんだ…?」
慌てて空へ飛び出すと、そこにはフリーザ軍の大型宇宙船がゆっくりと飛行していた。
「そんなバカな…!地球へ接近するのなら分かるはず…!どうやって一瞬にしてこの幻想郷へ来たんだ…!?」
「やりました!成功しましたよフリーザ様!!」
「ふっふっふ…そうかい」
「ソルベという参謀の調査により、地球とその衛星である月との間には『槐安通路』と呼ばれる秘密の通路があるらしい。そこへ途中から侵入し、カカロットがいるという幻想郷という場所を通じて全く存在を悟られずに地球までゆけるんだったな」
「その通りさ」
フリーザ軍が用意した一隻の宇宙船は月の都と幻想郷を結ぶ槐安通路を通って地球へとやってきていた。フリーザとコルド大王の乗るもう一隻の宇宙船は、今から地球へ向かえばいい。
「カカロット!いったいどういうことだ!」
「そうですよ、何故まったく気配を感じさせずにフリーザの宇宙船がこの幻想郷に!」
駆け付けた美鈴と天龍がカカロットにそう言った。ふたりともあれからも死に物狂いの特訓を欠かしておらず、格段に強さを増していた。
「どうやったか知らねぇが、いよいよらしい。俺たちはこれまで自分たちにとって最善で最高のやり方で強くなり続けた。前のようにはいかねぇぜ…いくぞ、最後の戦いだ!!」
今、サイヤ人の行く末…いや、地球の未来をかけた壮絶な戦いが幕を開けようとしていた。