もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第144話 「ただのメトロノームに過ぎない」

10月24日、午前9時14分。冷たい秋風が吹く青空に、一隻の円盤型宇宙船が出現した。この宇宙船はフリーザ軍の宇宙船で、中にはカーボネド四天王を筆頭にした大規模師団が編成されていた。

 

「どうだ、着陸に適正した地形はあるか?」

 

カーボネドは宇宙船を操縦していた兵士にそう言った。兵士はモニターを切り替え、幻想郷の風景を映し出す。

 

「素晴らしいよ…!これほどまでに不思議なパワーに満ちた場所は見たことが無い!」

 

四天王のひとり、データ通のラーゴンは幻想郷を見渡してそう感嘆の声を漏らした。そして腕に取り付けられた電子機器のキーボートをカタカタと連打し、何かの情報を入力していく。

 

「おい、今はお前の趣味に付き合っている暇はないんだぞ」

 

鉄壁の戦士ダイザーがラーゴンにそう言った。

 

「おっと、失礼。えーと、ソルベからの連絡によればカカロットというサイヤ人は普段この『幻想郷』と呼ばれる場所で暮らしている…ならばこの地に住む者を皆殺しにし、存分に悔しがらせろとのご命令だったね」

 

「ケッ…パソコンオタクが。なぁ、アタイらはまだ降りてっちゃいけないのかい?」

 

「落ち着き給え。どうやらこの地には大した戦闘力を持つ生き物はいないようだ。ひとつの地点に大きめの気が集中しているけど、僕らには及ばない…よって、僕らの出番はないかもね。そうじゃない?」

 

 

 

 

「だが不味いな…こっちは何の用意もしてねぇぞ」

 

一方、永遠亭のカカロットたち。カカロットらはフリーザが接近すれば気を感知できるし、人間を主とした住民たちを避難させるのはそれからでも間に合うと考えていた。が、甘かった。

まったく気配を感じさせずこの幻想郷で突然現れたフリーザ軍を前に慌てていたのだ。

 

「ああ、特に人間たちを巻き込むわけにはいかないからな…」

 

と、天龍が言った。

 

「仕方が有りませんね、我々で幻想郷を各地に散らばり、防衛するしか…」

 

「そうだな美鈴…。だがどうしても数が足りないな…クソが。ブロリーとパラガスは行方が知れないままだしよ…」

 

「ええ、私と天龍…カカロット…まともに奴らと戦えるのはこれしかいませんよ」

 

幻想郷の各地をそれぞれ防衛すると言っても、幻想郷は思っているよりもずっと広い…この人数ではさすがに厳しいだろう。ブロリーとパラガスがあれきり姿を見せないのも痛かった。

 

「こんな時、ウスターやターレスたちが生きていれば…」

 

(おや、私では不満か?)

 

その時だった。どこかから声が聞こえた。カカロットたちはあたりを見渡すが、誰もいない。

そこでカカロットはこの声に聞き覚えがあると思った。

 

「…まさか、依姫か!?」

 

(その通り!久しぶりねカカロット、今界王さまを通じて頭に直接語りかけてるわ。是非私も戦わせてちょうだい…人手が足りないんでしょ?)

 

「本当か!?それは助かる!」

 

(今からそっちに行くから少し時間がかかるけど…)

 

今の依姫なら、界王星からこっちまで10分ほどで到着するだろう。

 

「これで4人か…。とりあえず東西南北で分担できるが…せめてあとひとりだな…」

 

全員が少しの間考えた。

 

「あ!いるじゃないですか、ほら…」

 

 

「私が?」

 

カカロットは永遠亭の一室でひとりで読書に勤しんでいたザーボンに声をかけた。ザーボンは本を閉じ、キョトンとした顔を上げた。

 

「ああ、もうフリーザ軍が来てるのは気付いてるはずだ。お前にも頑張ってもらうぜ」

 

ザーボンは立ち上がり、カカロットに顔を近寄せた。

 

「な、何だよ?嫌だってのか?」

 

そう言うカカロットの口にはタバコが咥えられており、モクモクと煙を出していた。ザーボンはそれを見て顔をしかめるが、フッと微笑むと手を出した。

 

「カカロット、それを1本くれないか?」

 

「…これをか?珍しいじゃねぇか、俺の吸うのを見ていつも言ってただろ、タバコは非合理的で嫌いだって」

 

「その合理的な生活に飽きたのかもしれない」

 

カカロットは箱からタバコを1本取り出し、ザーボンに渡すとライターで火をつけてやった。

 

「これはブルマから貰った外の世界のタバコだ。気に入ったならくれてやる」

 

カカロットはそのタバコの箱をザーボンに手渡した。箱はまだ開けたばかりで10本以上のタバコが入っていた。ザーボンはそれを受け取るとポケットにしまった。

 

「だが、私を含めて5人だろう?それだけで足りるのか?」

 

「ほんとはもっと欲しいがしょうがねぇ…。できるだけ人間や妖怪を1か所に集めてもらって、敵をそこへ集中させて的を絞るしかねぇ」

 

「…なぁ、お前には子供がいるだろう」

 

「ああ、シロナってんだ」

 

「…子供は、いいものか?」

 

「そうさ、子供はいいもんだ」

 

「そうか…。私も、最初の夢をあきらめていなければ、今ごろ王としてまっとうな人生を歩めていたのかもしれないな」

 

「お前はある星の王子様だったんだっけな?それがなぁんでフリーザ軍なんかに…ってか、お前の夢って何さ」

 

ザーボンは遠い昔の事を思い返した。

 

 

 

 

『ダメだザーボン!!お前の演奏には心がこもっていない!お前がやりたいと言い出したピアノだ、もっとしっかりやれ!』

 

『ごめんなさい、お父様…』

 

『お前は何をやっても駄目だ王子だな、何もできやしない!お前が唯一興味を持った音楽もちっとも良くならない!お前はただ機械のように譜面をなぞっているだけだ、それではお前はただのメトロノームに過ぎないぞ』

 

『はい…』

 

 

『私はフリーザという者です。あなた、どうやら戦闘の才能は素晴らしいものをお持ちのようだ。どうです、わが軍に入りませんか?入っていただけるなら、もれなく好待遇ですよ』

 

─お前は何をやっても駄目だ王子だな、何もできやしない!…

─あなた、どうやら戦闘の才能は素晴らしいものをお持ちのようだ…

 

私は、フリーザにそう言われたのがうれしかった。何せ、生まれてまともに褒められたことのない私を、褒めてくれたのだから。唯一、私を認めてくれた存在だったのだ。

私はフリーザ軍へ入り、その戦闘の才能とやらを開花させ、あの地位にまで登りつめた。

 

 

 

「…ぐふ、ごふげふがふ!!」

 

「あーもう、初めてだったんだろ?いきなり肺に吸い込んじゃダメだぜ」

 

慣れない、というか初めての喫煙に激しくせき込んでしまったザーボンにカカロットがそう声をかける。

 

「こんなものの何がいいのかわからない…!」

 

ザーボンは吸いかけのタバコを指でつまみながら涙目でそう言った。

 

「んで、お前の夢って何だったんだ?」

 

「…ふふふ、今はその道具が無いからな…ある時に教えてやる」

 

「へえ、んじゃ楽しみにしてるぜ」

 

カカロットはそう言うと、ザーボンと別れた。永遠亭の廊下を歩き、霊夢が出産している治療室の前で立ち止まった。

できる事なら、今すぐにでもこの扉を開けてその瞬間に立ち会いたい。生まれてくる二人目の子供を抱いてみたい。しかし、もはや自分にそんな時間は残されていない。

が…

 

「父ちゃん…」

 

その時、柱の影から心配そうな顔をしたシロナが飛び出してきた。

 

「シロナ…どうした?」

 

「頑張ってね…」

 

「へへへ、父ちゃんが負けると思うか?お前はここで待ってな…必ず悪者を全員ぶっ倒して帰ってくる。その時にはお前はお姉ちゃんだ」

 

「…うん!」

 

 

午前10時3分、カカロットは永遠亭を飛び立った。天龍と美鈴も時を同じくして散らばる。

すると、彼らが姿を現したのを待っていたかのように、宇宙船からフリーザ軍兵士の大群が放たれた。兵士たちは装着したスカウターが反応を示した場所へ向かい、その場所の人間や妖怪を殺害しようとする。

しかし、それをカカロットたちは許さない。

カカロットは兵士に向かってエネルギー弾を投げつけ、爆発させて一瞬にして一団を葬った。

 

「なんだアイツは!!」

 

「アイツがカカロットだな!やっちまえェ~~!!」

 

兵士たちはカカロットを目標に変え、一斉に襲い掛かる。

 

「へっ、大勢で来る軍隊を相手にするのは9年前の月夜見王の時に経験済みだ!」

 

圧倒的な力を振るうカカロットの前に兵士は手も足も出ず、とんでもないペースで数を減らされていく。これには流石の兵士たちも狼狽え、立ち止まった。

 

「オラオラ、かかってこい!!」

 

しかし、宇宙船から向かってくる兵士はまるで、空を背景にして黒い雲の塊のように大量にしてこちらへ向かってくる。それを見たカカロットは、いくらなんでもこれじゃ短時間で戦いが終わりそうにないと思い、汗を流した。

 

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