もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第146話 「お前たち人間を脅かすものだ」

「へへへ…流石だぜ豹牙天龍…私は、この戦い…お前らが勝つ方に賭けるぜ…」

 

カノジは最後にそう呟くと、今度こそ完全にこと切れた。

 

「ヒ、ヒイイイ~~~!!」

 

フリーザ軍のギャンブラー・カノジを倒した天龍。残された、神子の指を折っていた兵士はカノジを一撃で倒した天龍を見て恐怖の悲鳴を上げ、後ずさった。

 

「貴様が残っていたな…」

 

それを見た天龍は淀んだオーラを纏い、拳の骨を鳴らしながらその兵士に近づいていく。

 

「カ、カノジ様に頼まれてやっただけなんですゥ~~!だからどうか命だけは~~!!」

 

「ああ、助けてやるとも。そのかわり、一発だけ殴らせてくれ」

 

天龍は兵士を思いきりぶん殴ると、兵士は叫びながら空の彼方へと吹っ飛ばされていき、やがて見えなくなった。

 

「神子様、ご無事ですか!?」

 

解放された神子のもとへ慌てて駆け寄る天龍。

 

「私は大丈夫です…数日もすればこんな怪我すぐに治りますし、もうすぐ屠自古や布都が来てくれます。それよりも、まだ敵はやってくるのでしょう…流石にあの強さの兵士たちの前には私たちは歯が立ちません…。貴方やカカロットたちが何とかするしかないのでしょう、ならば別の場所へ行き戦ってください…!」

 

「…はい、神子様がそう言うならば俺は闘い続けてきます!では!」

 

天龍は北の方角へと飛び去っていった。

 

 

 

 

一方その頃、幻想郷上空に浮かぶフリーザ軍の宇宙船。

 

「どうやらわが軍の兵士共は苦戦しているようだな」

 

その司令室の中でカーボネドは戦いの様子をモニターで見ながらそう言った。

 

「そろそろアタイらの出番じゃないかい?」

 

「いや、もう少し様子を見させよう」

 

「ではもう第2軍を投入するか?」

 

「いやいや…丁度いいデクノボーが居るだろう。本来は2軍に編成されている、例の元特戦隊のアイツをさ…」

 

 

 

 

 

午前11時50分 霧の湖及び紅魔館 門前

 

紅魔館付近は、カカロットを避けてきた兵士たちがたどり着く場所であるため、最も敵が集中している場所でもあった。美鈴はそんな場所で戦闘を繰り広げていた。中国拳法で兵士たちを蹴散らし、倒した敵の山が積み上がる。

 

「アイツが紅美鈴か…強いな」

 

そんな中、少し離れたところから美鈴を見つめている影があった。緑色の戦闘服に身を包んだ髪の長い女戦士だ。その女戦士はビュッと飛び立ち、美鈴に接近する。

 

「む…!?」

 

それに気付いた美鈴が振り返るのと同時に気功波を撃つ。だがその女はそれをはじき返して見せ、美鈴をじっと見つめた。

 

「私の名はプラーム。コルド大王軍のエリート戦士であり、コルド様の側近のひとりだ」

 

「そんなエリート様が何の用です?私を倒したいのなら、さっさと戦いましょうよ」

 

「まあそう血の気の多い事を言うなよ。私は強い”パートナー”が欲しいと常々思っていてね…そこでフリーザ様からお前の事を聞いたのさ。地球人の女戦士、紅美鈴。お前が中々にやるヤツだと知った時、私は思った…君を是非私のパートナーにしたいってね!」

 

プラームは美鈴の顎に指を当てた。

 

「そりゃ嬉しいですね…ですが宇宙人と手を組むつもりはありませんので」

 

そう強気に言い放つ美鈴。だがプラームは食い下がらずに言葉を続ける。

 

「何を言っているんだ?君も私から見れば宇宙人だろう!この宇宙において、”高度な知能を持ち社会的形勢を持つ生命体”を総称して”人間”と呼ぶらしい…ならばものを深く考え、中国拳法という伝統ある武術で戦う君は”人間”だ、人間同士ならば必ず打ち解けあえる…そうは思わないかい?」

 

美鈴はそっと目を閉じ、また開いた。

 

「…貴方はひとつ、誤解をしていますね。そして、私はやはり…フリーザ軍などに下るつもりは毛頭ない」

 

「ふっふっふ…では残念だが、ここで戦って殺してしまうしかないな?」

 

「お好きにどうぞ」

 

次の瞬間、両者は互いの拳をぶつけ合った。周囲に突風が吹きすさび、湖の水面が激しく波立つ。

続いて繰り出されたプラームの回し蹴りを、美鈴は腕で受ける。

 

(くっ…!強い!)

 

しかし、その威力はすさまじく、美鈴の腕はビリビリと痺れ弾かれる。その隙を見て、プラームのパンチが美鈴の顔面にヒットする。それを皮切りに次々とプラームの一撃が的確に美鈴に襲い掛かっていく。

だが美鈴も負けじと掌底による突きを繰り出すが、プラームはそれを見切る。

 

「おそい!」

 

そしてその顔に肘打ちを命中させる。

後ろへ吹っ飛ぶ美鈴は、吹っ飛び様に手から連続で弧を描くような不思議な軌道のエネルギー弾を放つ。そのすべては最初は的外れな場所に飛んでいくと思いきや途中で向きを変え、全てがプラームに集中していく。

 

「読めてるよ、その程度の攻撃、効かないさ」

 

プラームは向かってくるエネルギー弾の全てを殴ってはじき返す。美鈴は地面を滑り、岩にぶつかって止まった。

 

「無様だな、紅美鈴…。私の誘いを断らなければ死ぬこともなかったろうに。非常に非合理的な判断だ…生き残れる道をあえて避け死に向かう…とても人間とは思えない」

 

プラームはゆっくりと美鈴に近づきながらそう言った。美鈴はうつむき、痛めた腕を押さえている。

 

「だがこの私は違う!いつでも生き残れる最善の道を模索し、それを実行してきた。このコルド大王軍に入り、強くなったのも生きるためさ」

 

「…ふ、ふふふ…」

 

美鈴は小さく笑った。

 

「ん?私、何かおかしいこと言ったかい?」

 

「ははははは…やはり貴方は誤解しておられる…」

 

「…さっきも言っていたが、私が一体どんな誤解をしているって?」

 

「いいですよ、教えてあげます。それは…貴方は私のことを”人間”だと思っているという事です」

 

美鈴は両腕を前に出し、そこへ気功を練り始める。

 

「何だと?この星に生きる高度知的生命体、その気功を練るという行為も人間が編み出した技、それを実行するお前もまた人間だろう?」

 

「それが違うんですよ…!宇宙人にはなじみがありませんか?”妖怪”という人間とは異なる種族の事を…」

 

「ヨーカイ?なんだそれは?宇宙のいたる場所に存在する”怪物”や”野獣”のことを地球ではそう呼称するのか?」

 

「怪物、か…それもまた違います。妖怪とは古来より人間を蹂躙してきた者たちのことだ…また、人間が理解の及ばぬもの、力の及ばぬ者を畏敬の念を持って”妖怪”と呼ぶ…この私もその一匹だ!!」

 

美鈴の全身が気功によってまばゆく光り出す。同時に美鈴が座っていた地面が球状にへこんで下がり、美鈴は浮かんだ状態になる。

そう、妖怪。その存在は、宇宙規模から考えても極めて特異な存在であると考えられる。先ほどプラームが言った怪物や野獣は、人間を食べることもある。それは自分以外、または自分が属する種族やグループ以外を捕食対象として認識し、そこに人間が含まれてしまっていたからに過ぎない。

しかし、プラームのような宇宙人、そして地球人たち”人間”は基本的に高度な知能を有しているからこそ、同族たる”人間”を食すことは少なく、それはタブーとして認識される。

しかし妖怪は違う。人間と同様、またはそれ以上の知性を有していながらも、人間を好んで食べる種族も存在する。これは先述の”高度な知性を有する生命体=人間と認識し、かつ人間同士で捕食を目的としての争いを行わない”と認識していたプラームたち地球外の人間に理解できないものである。

 

「ぬっ…!なんだ、足が動かない…!!」

 

「”接地拳”だ。教えてやる、プラーム…。我々妖怪とは古来より、お前たち人間を脅かすものだ…」

 

美鈴は接地拳を発動させると同時に、それをプラーム自身にも仕掛けた。9年前の幻想郷一武道会での対明嵐戦で使用したものと同じ術だ。

相手にも接地拳が発動し、その足が地面に吸着して離れなくなる。そしてそれを解除できる権利は仕掛けた本人である美鈴に

 

しかない。

 

「何だこの技は…!」

 

プラームがもがいている間にも美鈴は高く飛び上がり、そこから見下ろしながら両手を合わせた拳を作る。そして人差し指を伸ばし、そこへ先ほど練った気功を集中させていく。

 

ピピピ…

 

「はっ!?」

 

急にプラームのスカウターに表示されている美鈴の数値が跳ね上がったのに気付き、プラームは上を見上げた。

美鈴は手の形を四角形を描くように変え、その中心にプラームを捉える。

 

「もしも生き残れたなら、私の事を妖怪として仲間に伝えてやりなさい…『気功砲』!!」

 

「ク、クソ…!!」

 

放たれた気功砲はプラームに向かいながらどんどん巨大化していく。そして地面に命中すると、動けないプラームを巻き込んで大爆発を起こした。

周りに転がっていた倒した兵士を巻き上げ、美鈴自身も気功砲とダメージで気力を使い果たし、ゆっくりと落下していく。

 

「はぁ…はぁ…!」

 

美鈴は倒したフリーザ軍の兵士の山の中から這い上がった。その身体は返り血か自分の血かわからないがかなり傷だらけで、気力も相当に消耗し疲弊していた。

それでも美鈴が敵を食い止めている間にレミリア達は敵が集中するこの場所から安全な所へと避難させることができた。美鈴の役目は十分に達成できたと言える。

 

「もう、来ないようね…でも第2軍がやってくるかも…」

 

美鈴は身体を無理に起こしてその場から立ち去ろうとする。しかしその時、目の前に人の気配を感じて顔を上げた。

そこに居たのは、忘れる筈もない…筋肉質な大柄な体格、人相の悪い顔、そしてパイナップルの様なオレンジ色の髪の毛…そう、元ギニュー特戦隊のリクームだった。

 

「リ、リクーム…!」

 

 

 

 

 

午前11時27分 永遠亭

 

シロナは診察室の前に置かれていたソファーのに腰かけて、霊夢の出産が終わるのをじっと待っていた。

 

おぎゃあ、おぎゃあ…

 

とその時、部屋の中から赤ん坊の大声が聞こえてきた。

永琳は診察室から出てくると、そこで待っていたシロナの横に座った。

 

「お母さんと赤ちゃんは…?」

 

「もちろん無事に生まれたわよ、見に行ってきても大丈夫よ」

 

シロナは急いで部屋に入ると、ベッドの上で霊夢が座っていた。そしてその腕の中にはつい先ほど生まれたばかりの赤ん坊、カカロットと霊夢の第二子であるシロナの妹が抱かれていた。

 

「シロナ…あなたの妹、女の子よ」

 

まじまじと妹の顔を見つめるシロナ。

 

「名前は?名前は決めたの?」

 

「ええ、前から考えてた名前があるのよ。花の名前…花言葉は、『困難に打ち勝つ』。この子の名前は…”サザンカ”よ」

 

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