もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第147話 「みんなで暮らそうね」

正午12時00分 幻想郷上空

 

「…来やがった!!」

 

ちょうど第1軍のフリーザ軍団を倒し終えたころ、カカロットは遠くに感じていたフリーザの気が急激に接近してきたのを感じ取った。そして数秒間だけその気が乱れたあと、ハッキリと頭上にその気を捉えた。

 

「フリーザ…それにもうひとりバカでかい気を持ったヤツがいやがる…」

 

カカロットはコルド大王の気も感じ取っていた。

幻想郷の空、雲よりも上の場所で、突然空間が歪み、雷のようなものが発生すると黒いぽっかりとした穴が開き、そこからもう一隻のフリーザ軍の宇宙船が現れた。その宇宙船こそフリーザとコルド大王の乗る宇宙船である。ついに、親玉であるフリーザが幻想郷へ現れたのだ。

 

「おいカカロット、無事か!?」

 

その時、カカロットのもとへ天龍が現れる。

 

「天龍、お前こそ生きてたようだな」

 

「ああ…それよりも、ついにフリーザのお出ましか」

 

「そうだな。俺はフリーザと1対1で戦ってくる。正直、ここで俺とフリーザが戦えば幻想郷は耐えられないだろう。だから外の世界の安全な場所で戦ってくる」

 

「フリーザがお前の要求を呑むとは思えんぞ」

 

「いいや、呑むね。アイツは余裕のあるうちは意外とフェアな戦いを望む…ナメック星でもそうだった」

 

確かに、言われてみればフリーザはわざとかなり手加減して戦ったり、カカロットに地上戦と空中戦、どちらが得意か選ばせたりもした。

 

「…思えばお前とは10年近くの付き合いだな」

 

「カカロットが居なければ俺は歪んだままだった」

 

「それくらい付き合いの長いお前だから頼める。俺が居ないあいだ、幻想郷は頼んだぞ」

 

カカロットは真剣な目で天龍を見つめた。

 

「…おう、任せてくれ」

 

天龍はそう宣言すると、ふたりは固い握手を交わした。

 

「じゃあな」

 

カカロットはそう言い残すとフリーザの宇宙船へ向けて飛び立っていった。

 

 

 

一方、同時刻の永遠亭。

博麗霊夢は抱いていた生まれたての我が子、サザンカをベッドに寝かせて永琳にしばらくの世話を任せた。

 

「ちょっと、何をするつもり?」

 

永琳の見ている前で霊夢はいつもの巫女服に着替え、立ち上がった。

 

「カカロットが戦いに行った…他のみんなも戦ってる。なのに幻想郷を守る博麗の巫女である私がこんなところで休んでる訳にはいかないでしょ?」

 

「でも無茶よ!貴方はまだ出産に使った体力だって戻ってないし、正直言ってまともに戦える力はない…何よりこの赤ん坊がかわいそうだわ」

 

そう言われた霊夢は、永琳とその横に居るシロナに背を向けたまま口を開いた。

 

「…私はいつかこうなることが分かってた。いずれ、強大な敵を前にして二度と戻って来れないかもしれない戦いに赴かなきゃいけない時が訪れるのを。だから、なるべく私からは子供に接してかないようにしてた。それ以上、サザンカを抱いていたら気持ちが揺らいでしまうから」

 

霊夢は振り返ると、しゃがんでシロナと目線を合わせた。

 

「カカロットから聞いたわ。シロナ、私と会った帰りには必ずアイツに『次はいつお母さんに会える?』って聞いてたらしいわね」

 

そして、そっと、だがそれでも力強く我が子を抱きしめた。

 

「ごめんね…寂しい思いをさせて。これからはずっと一緒よ、私とカカロット、シロナとサザンカ…4人で暮らしましょう」

 

永琳は霊夢の目に涙が浮かんでいるのに気付くと、それ以上何も言えなかった。

 

「うん…みんなで暮らそうね…」

 

シロナがそう言うと、霊夢は立ち上がった。

 

「でも永琳の言った、私にまともに奴らと戦える力が無いってのは分かってる。だからちょっと時間はかかるかもしれないけど、少し力を付けてから戦うわ」

 

霊夢は飛び上がると、窓から出て行き空へと昇っていく。

 

「じゃあね」

 

カカロットと霊夢、それぞれ幻想郷の要たる戦士が戦いに向かおうとしていた。

 

 

 

 

カカロットは空高くに浮かぶフリーザの宇宙船に接近し、大声で叫んだ。

 

「フリーザァ!!出て来い、俺と勝負しろ!!」

 

しばらくの沈黙があたりに流れた。

 

「おい、聞いてんのか!!」

 

「聞こえてるよ」

 

その時、宇宙船の頭頂部のハッチがゆっくりと開き、あの宇宙の帝王…惑星ベジータと共にサイヤ人を絶滅させた…10か月前、ナメック星での戦いで大敗を喫した…ターレス達をいとも簡単に殺して見せた…フリーザが姿を現した。その横にはカカロットにとって初めて見る者、コルド大王が付き添っていた。

 

「出やがったな、フリーザ」

 

「ふっふっふ…ボクの方こそ、君に会うのが楽しみだったんだ」

 

「フリーザよ、コイツが例のサイヤ人か?確かに、その戦闘力は目を見張るものがあるようだが、我が一族にとって脅威になるとは思えん」

 

コルド大王はカカロットにも聞こえるようにフリーザに耳打ちした。

 

「パパ、甘く見ちゃいけないよ…コイツはボクと同じで力をセーブしたり増やしたりできるみたいなんだ」

 

(あのデカいのはフリーザのオヤジなのか)

 

カカロットは心の中でそう思った。

 

「じゃあ、カカロット…さっそく戦おうか。そんなに自信ありげなんだから、ナメック星の時よりももっとボクを楽しませておくれよ」

 

「当り前さ。だけどよ、こっちから頼みがあるんだ」

 

「…何かな」

 

「ここで戦えば、この幻想郷が破壊されかねない。どうだ、もっと広い場所で思う存分戦ってみたいとは思わねぇか?」

 

フリーザはしばらく考えてから口を開いた。

 

「ふうん、まあいいよ。場所はキミに任せるよ、案内してくれ」

 

だがそれを聞いていたコルド大王が口を挟む。

 

「フリーザよ、敵の言うことに耳を貸す必要はない。今すぐにここでもできることだ、手っ取り早く殺してしまえ。もしも何なら、このわしが殺ってもいい…」

 

「うるさいよ、パパ」

 

フリーザはそう呟くと同時に、コルド大王を睨みつけた。父親であるはずのコルド大王はそれに怯み、冷や汗をかきながら退いた。

 

「ボクの楽しみに口を挟まないでよね」

 

「あ、ああ…そうだな…」

 

「それより、パパはここへ残って様子を見ててよ。ボクはケリをつけたらすぐ戻ってくるからさ」

 

「んじゃ決まりだな、ついてこい」

 

カカロットは顎で向こう側を示すと、その方向へ飛んでいく。フリーザもその後を追う。

ふたりは幻想郷を飛び出して外の世界へと移動し、北の方角へ向けて飛んでいく。十数分ほど飛行してたどり着いたのは、辺り一面の氷の大地だった。見渡す限りの単色の大地…晴れているのにも関わらず、超低温の空気が場を支配していた。

 

「ここは『ツルマイツブリ山』。何百万年もかけて完成された永久氷壁の大地はちょっとやそっとじゃ崩れやしない。ちと寒いが戦ってりゃあったかくなる…そうだろ?」

 

「…そうだね、それじゃ早速やろうか」

 

ふたりは氷の大地の上に降り立ち、しばらくにらみ合った。

 

「ハアッ!!」

 

フリーザは両腕をクロスさせて全身に紫色のオーラを迸らせ、次の瞬間に右手の指先からそのオーラを凝縮した強力な光線を発射した。カカロットはそれを空へ飛び上がって躱し、空中で体を回転させながらフリーザへ向けて落下し、蹴りを繰り出した。

が、フリーザも高速で移動することで姿を消し、カカロットの頭上から肘打ちを仕掛ける。カカロットは先ほどの蹴りと同時に反対方向へ打ち出していたもう片足での蹴りでそれを受け止めた。

スパークが発生すると同時に二人ははじかれ、両側へ吹っ飛ばされる。そして二人は同時に手の平から気功波を放ち、それを衝突させた。ふたつの気功波は拮抗し合うが、やがてお互いに消滅してしまう。

 

「やるね」

 

フリーザはぼそりと呟いた。

 

「当然だ、この10か月、俺は遊んで過ごしてたわけじゃない…蹴りの一発、パンチの一突きがお前を倒すためだけに放たれてるんだぜ」

 

そして、カカロットは全身から炎のような気を噴き出させ、フリーザへ突撃する。…が、次の瞬間には赤いオーラは消えていた。

 

「俺はテメェを許さねぇ!ここでぶっ倒してやる、覚悟しやがれ!!」

 

今、地球の命運をかけた戦いが始まった…。

 

 

 

 

 

フリーザが幻想郷に現れたのと同時刻。カーボネドたちの乗る宇宙船内部で待機していた第2軍の兵士たち。しかし、この場所では不穏な空気が流れていた。

 

「ごぎゃ…!」

 

兵士たちが吹っ飛ばされ、その肉体をバラバラに砕かれて絶命する。他の兵士は何かを怖れるような顔で後ずさっていく。

彼らの前には、椅子に足を組んで座るひとりの兵士がいた。その戦闘服は、先ほど天龍や美鈴が相手をしたコルド大王の側近が着ていたものとデザインが同じだった。

 

「さァ…次に、コルド大王の側近たるこのオレの指揮に従うのが気に入らない、といって勝負を挑んでくる愚かなフリーザ兵はいないのか?」

 

その兵士に、それ以上近寄ろうとする者はいなかった。

 

「じゃ、決まりだな…お前たちはたったひとりのこのオレ…マンダリ様にはかなわない」

 

それから、マンダリはあたりを見渡すと壁の方で座っている大柄な兵士が目に入った。そう、あの元ギニュー特戦隊のバータだった。

 

「お前は確か、バータとかいったか?ふっ…哀れなものだ、昔は自分も指揮する立場だったのに今ではこんな雑魚たちより下の境遇…どうだ、感想をきかせてくれないか?」

 

だが、バータは座ったまま口を開かない。

 

「聞こえなかったのかね?えぇ?」

 

マンダリはドレッドヘアーに整えた髪の毛の束を超能力で伸ばし、バータの肩を軽く殴った。

 

「別に…悪い気分じゃないぜ。何せ、この戦いが終わったらやりたいことができたもんでな…」

 

「おかしなことを言うデクノボーだ…ん?」

 

マンダリは自分のドレッドヘアーの1本の先端部分が縮れて焦げているのに気が付いた。

 

「なんだこれは?」

 

その時、マンダリの装着していたスカウターに通信が入った。

 

「こちら司令室のラーゴン。いよいよ君たちの出番だ、出撃したまえ」

 

「…了解」

 




次回、ザーボンが大活躍します
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