(なんだ…これは…!体が言うことを聞かん!一体、何をされたんだ…!?意識が…遠のいて…)
リクームはガクガクと震えながら後ろへ倒れ込み、そのまま気を失った。
戦いに勝利した美鈴は、流石に今度こそ限界が迫っていた。
「やった…!リクームを倒した…!でも、私もここまでか…」
美鈴がそう呟いた瞬間、すぐそばでまた何者かの足音が聞こえた。おそるおそる振り返った美鈴は、思わず笑うほか無かった。
「嘘でしょ…勘弁してくださいよ」
「テメェ…リクームをやったのか…」
ギニュー特戦隊の生き残り、バータが姿を現した。
─正午12時10分 外の世界 神の神殿
一方そのころ、自分の実力を短時間で高めるため、霊夢が向かった場所は外の世界であった。幻想郷から正規の方法で外の世界に向かうには、唯一外と通じている神の神殿の一室を経由する必要がある。
「霊夢さん…今言った事本当なの?」
神殿に居たブルマは、霊夢にそう尋ねた。
「当然よ、ブルマさん。1日で1年分の修行ができるっていう”精神と時の部屋”に入らせてもらうわ」
同じく神殿の住人であるミスター・ポポが、前へ進もうとする霊夢を遮って忠告を告げる。
「精神と時の部屋、とても危険で過酷。サイヤ人の襲来に備えてピッコロとブルマが入ろうとしたが、1か月もたなかった…だが、部屋の中での時間で2年以内なら好きな時に出られる」
「2年以内?どういうこと?」
「あの部屋は一生のうち48時間、部屋の中でいう2年間しか入ってられないのよ。その期間を過ぎると外と隔てる扉が消え、永遠に出られなくなるの」
「お前が入りたいなら自由に使っていい」
ポポは霊夢が精神と時の部屋に入ることを許諾した。
「ありがとう、ミスター・ポポさん。今度博麗神社にも来てね」
「ミスター・ポポ、あまりここ離れられないから長居はできないけど。では案内する、ついてこい」
ポポは霊夢を先導し、精神の時の部屋まで連れて行く。長い廊下や階段を移動し、ついに一行は目的の場所まで辿りついた。
精神と時の部屋の入り口のドアは、その横に2本の柱が並んでいる以外は何の変哲もないように見えた。
「ここだ。もう一度念を押すが、中の時間で2年が限度、それ過ぎると出られない」
「分かったわ。それじゃあ」
霊夢は部屋のドアに手をかけた。
その様子を見ていたブルマは、意を決した様子で霊夢の横から声をかけた。
「ちょっと待って、私も一緒に入らせて!」
「え?」
「この部屋は2人までなら同時に入れるのよ…。それに、誰か相手がいたほうが修行がはかどるってもんじゃない?」
「それは確かにそうね…」
「前は1か月が限界だったけど、今ならもっと行ける気がするわ」
「じゃあ一緒に入りましょうか」
そして、霊夢とブルマはドアを開け、精神と時の部屋の中に入った…。
中に入ってドアを閉めた途端、霊夢は急に視界が揺れ目まいを起こし、よろめいた。とてつもなく気温が高く、体が以上に重い。それに何だか息苦しい…。
「く…!」
外とは全く違う環境に、霊夢は苦しげな声を上げて座り込んでしまう。
「驚いたかしら?これがこの部屋なのよ。気温は50℃から-40℃まで変動し、重力は外の10倍、空気は4分の1の薄さ…久しぶりだけどやっぱりつらいわ…」
この部屋を苦痛に感じているのはブルマも同じだった。しかし、前にも経験済みなぶん、霊夢よりは耐えられているようだ。
だが霊夢はしばらくすると少し慣れてきたようで余裕が生まれ、立ち上がって改めて周りを見渡した。ここは屋根のある部屋のようで、2人分のベッドや食糧庫のようなものがある。部屋の外を見れば、真っ白で何もない空間が遥か地平線の先まで広がっている。
「うっし、カカロットや皆が戦ってるんだわ、早速修行を始めましょう!」
「…ねぇ、カカロットくんてどんな人?」
後ろからブルマがそう話しかけた。
「そうね、出会ったころはずる賢くて粗暴な奴だったけど、だんだんと成長してきたって言うか…口じゃ自分本位なこと言ってても根は他人の事をちゃんと考えてるのよ。ただあまりそれが外に出ないだけ…」
そう答えた霊夢の顔を見て、ブルマはフッと息をついた。
「いいなぁ…そんな人が私のところにも居れば、みんな死なずにすんだかもしれないのに…」
「え?」
「ううん、何でもない!さ、やりましょうか」
霊夢とブルマ…ふたりの戦士は精神と時の部屋での修行を開始した。
─午後1時30分 幻想郷 天界 シュネックの御殿
天界の一角に聳える、シュネックがひとりで暮らす大きな御殿。この場所にも、すでにフリーザ軍の魔の手が忍び寄ってしまっていた。
「さぁ、お前がドラゴンボールを持っていることは知っている。さっさと渡してもらおうか」
そうシュネックに対して言い放ったのは、フリーザ軍の参謀を務めるソルベという兵士であった。その後ろにはタゴマというエリート戦士と、先ほど合流したシサミという名の巨漢戦士が付き従っている。そしてそのさらに後ろには、何やら大きな鉄の箱が置かれているのが見える。
彼らは半年ほど前からこの地球の幻想郷に潜伏しており、カカロットたちの情報などを集めフリーザ軍へ伝えていた。
「悪いが貴様ら悪人に渡すものはない…この天界から去るがいい」
しかしシュネックは臆することなくそう言い放った。
「くっくっく…ならば仕方ない、タゴマ、やりなさい」
「はい」
ソルベはそう命じると、タゴマは片腕を大きく振りかぶり、巨大な衝撃波を放った。それはシュネックの真横を通り抜け、背後に聳える御殿を粉々に消し去った。
「タゴマとシサミならばこの天界と呼ばれる場所は、1時間もあれば跡形もなく破壊できる。戦闘力1500、そこそこやるようだがこのふたりには敵わないようだからな。それが嫌なら、ドラゴンボールを渡すんだな」
「ドラゴンボール…?そんなものは知らん…お前らにくれてやれるものは無いと言っておるだろう」
「そんな寸劇は必要ない…キサマが幻想郷のドラゴンボールの創造主で、最も願いのパワーが大きい一つ星のボールを持っていることは聞き出している。なァ、キサマら?」
ソルベはそう言いながら後ろへ目を向けた。
「へへへ…」
すると、シサミの背後から二人組が引きつった笑いを浮かべながら現れた。
「む、お前たちは覚えがあるぞ、確かスカーレットに鬼人正邪だな?お前たちがこやつらにドラゴンボールの事を教えたのか?」
「へへ…すんません…」
「だってこうしないと私らが殺されちまうんで…」
スカーレットと正邪は申し訳なさそうにそう言った。
「むう、ドラゴンボールを欲しがる目的はなんだ?」
「フリーザ様は不老不死になりたがっておられる…そのために私は地球のドラゴンボールを探すように言われたのさ」
「フリーザか…ナメック星で我が同胞をたくさん殺したらしい。…仕方がない、やれるだけやってやろう。ドラゴンボールは渡さんぞ!」
シュネックは全身から激しいオーラを放ち、臨戦態勢に入った。
「やるつもりらしいな…シサミ、相手してやりなさい」
「は!」
牛の様な顔と巨大な角を持つ、赤い肌をした大柄な戦士、シサミがシュネックの前に立ちはだかる。
「ぬう!」
シュネックは目を光らせ、念力を放ちシサミに命中させた。大きな爆発が起き、あたりが土埃と炎に包まれる。
しかし、シサミは対してダメージを受けていない様子で炎の中から飛び出すと、強烈なパワーから繰り出されるタックルをシュネックにぶつけた。
「ぐ…!」
吹っ飛ばされるシュネックは口から血を流しながらも何とか踏みとどまった。続いて指先を向けエネルギー光線を放つが、シサミは腕でそれを弾きもう一度シュネックに接近した。今度は剛腕を振りかぶり、渾身のパワーで殴りつける。
シュネックは勢いよく地面に叩きつけられ、その背中がめり込む。
「もうおしまいだな…あのジジイに勝ち目はない」
ソルベは戦いの様子を眺めながらそう言った。
「そしてごくろうさん、お前たちの情報は役に立ったぞ。いろいろとカカロットたちの事やこの幻想郷、そしてドラゴンボールの事を教えてくれたからな。ま、そうしなければお前らはあの時、あの洞窟でとっくに殺されてたんだがな」
「は、はい~…だから命だけは…!」
「ああ、助けてやるとも。どこにでも行きな。これから幻想郷ではなく地球にもフリーザ軍の猛進撃が始まる…そうなれば地球人共は絶滅。よかったじゃないか、この広い世界でお前たちふたりだけで楽しく暮らせばいい。ほら行きな、生きてる喜びを噛み締めてな」
「たった二撃でダウンか…大口叩いた割に大したことなかったな、じいさん」
シサミはシュネックの襟を掴み、その身体を持ち上げた。と、その時、彼の服の中からコロンと球のようなものが転がり落ちた。シサミがそれを拾い上げると、正しくドラゴンボールそのものであった。
「ソルベ様、ドラゴンボールを発見しました!コイツが大層に自分で持っていたようです」
「おお!でかしたシサミ!ではそれをこちらに渡して、お前はそのジジイを存分にいたぶってから殺してやりなさい!」
「はい!」
シサミはボールをソルベに向かって投げて渡そうとする。
「お、おっと!」
しかし、その力が強すぎたためソルベはキャッチすることができず、ボールを取り落としてしまう。地面を転がったボールは正邪の足元まで移動していく。
「チッ、おいお前、ボールを拾ってこっちに持ってこい」
「は、はい…!」
ソルベは正邪にそう命令すると、正邪はボールを拾う。しかし、その輝くドラゴンボールを手に取って見た瞬間、正邪は何故だか昔の事を思い出していた。
──約10年前
「ノドアメ──ッ!!」
かつてのガーリック三人衆のひとり、ニッキーは掛け声とともに全身に気をみなぎらせ、その肉体の筋肉を膨れ上がらせる。そしてドラゴンボールを持つ賢者である摩多羅隠岐奈を殴り飛ばし、袖から転がった五つ星のドラゴンボールをキャッチした。
「まずひとつめのドラゴンボールをゲットよ!これでガーリック様もお喜びになるわ」
「流石です、ガーリック三人衆がひとりニッキー様」
そのニッキーの後ろに控えていた正邪は彼のご機嫌を取るような声色でそう言った。
「三人衆ですって?何言ってるのよ、アンタを加えたら四人衆でしょ。アンタもはやくガーリック様に実力を認めていただいたらどうなの?」
「…いえ、私は誰かに認められることなどに興味はございません。言ってしまえば、全ては生きるため、ただそれだけの事のためです」
「ふうん、アンタは生きてりゃそれでいいって訳?鬼人正邪…」
「ええ、その通りです」
「アタシはそんなの嫌だわ、ただ生きていればいいなんて。アンタだってそうでしょ、反逆することが生きがいの天邪鬼…ただ生きてるだけじゃ何もできないじゃない?楽しさの無い処には何の得もないのよ」
「ちょっと正邪、なにをボーっとしてんのよ、はやくそのドラゴンボールをソルベさんに渡しなさいよ…!」
スカーレットはボールを見つめたまま黙っている正邪にそう呼びかけた。しかし、正邪はそれでもボールをソルベに渡そうとはしない。
正邪はチラリとシュネックの方を見た。シュネックは果敢にシサミに挑みかかるが、そのたびにシサミのパワーを使った手痛い反撃を受け、もうボロボロだった。
「ほう、そっちのヤツはボールを渡すのが嫌らしいな。なら、死ぬしかないなァ」
ソルベがそう言うと、後ろのタゴマがジリジリと動き始めた。
「ひっ…そんな、正邪離せよって!私たち殺されるの嫌でしょうが!生きたいでしょ?なァ、生きたいでしょうが!」
「生きてるだけじゃ…ダメだろ、スカーレット…。ニッキー様いわく…楽しさのねぇトコにゃ、何の得もない…」
正邪はそう呟くと、何かが吹っ切れたのか、鋭い目つきでソルベとタゴマを睨みつける。そして、胸いっぱいに空気を吸い込み、大声を発した。
「はばかりながらこの天邪鬼の鬼人正邪!自負するほどのへそ曲がりなんだよ!!右を向けと言われたら素直に右を見たくねぇし、ボールを渡せと言われりゃやれねぇなぁ!!」
しかし、それでもその顔は恐怖による鼻水と涙で汚れていた。
「せ、正邪…!」
「私の生き甲斐は下剋上だ!お高くとまってる野郎が屈辱に打ちひしがれるのを見るのが好きだ!だがこの地球から皆がいなくなったら、それが見れなくなっちまうだろ!!」
「だったらその皆と一緒にあの世へ行きな!タゴマ、やれ!」
トン…
ソルベは急に背中に冷たいものを感じ、振り返った。すると、気配を消していつの間にか接近していたスカーレットが、その鋭い爪を伸ばした手を深く突き刺していたのだ。
「バ…バカな…!」
「何をする貴様!!」
その時、タゴマは右手に槍のように鋭く尖った細長いエネルギー弾を瞬時に作り出し、スカーレットに投げつけるとその腹を貫通させた。
しかし、その手ごたえに違和感を覚えるタゴマ。そう、スカーレットの腹にはかつてレミリアを吸収しようとして失敗した際に出来た風穴が空いたままで、槍はそこを突き抜けたのだ。
「なんだと…?しかしまあいい、私は貴方たちを地獄に送るだけです」
タゴマは正邪とスカーレットにもう一度襲い掛かる。ふたりは今度こそダメかと思い、目をつぶった。
だが、次の瞬間…。
ヒュー…
何かが落下してくるような空を斬る音を聞いて、タゴマが動きを止めた。その時、彼の頭上から迫っていた何かが勢いよく着弾し、岩石と砂を爆発のようにまき散らした。
「うわあっ!!」
騒ぎを聞いて、シュネックを痛めつけていたシサミが振り返った。シュネックも朦朧とした意識の中、その方を見る。
爆発が起こった場所は小さなクレーターが形成されており、ところどころ赤く燃えて煙が立ち上っている。その中心で潰されたタゴマが息絶えており、その上には小さな人影が佇んでいた。
「お…お主は…まさか…」
シュネックは、その姿を忘れる筈はなかった。薄い水色の肌、尖った耳、こめかみの赤い模様。
「久しぶりだなシュネック…暗黒の地獄から舞い戻ったぞ…」
「ガーリックの息子…!!」