もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第151話 「許してやったらどうだ」

リクームを倒し終えた美鈴は、続けて現れたバータとはち会っていた。しかし、いくら起勢呼吸法によって気力が回復しつつあるとはいえ、立て続けに戦って勝てる相手ではない事はよくわかっていた。

 

「お前は…確かナメック星でグルドをやっつけた女だな。まあいい…幻想郷、とか言ったか?ここの住人なんだろ?」

 

バータは美鈴にそう尋ねた。

 

「だったら何だって言うんですか…!?」

 

「何でもないさ…ただ、ドラゴンボールを俺たちに譲ってほしいだけだ」

 

「え?ドラゴンボールを…。目的は一体?貴方らのボスのフリーザに献上するためって訳です?」

 

「確かにフリーザ様は地球…いや、この幻想郷のドラゴンボールを欲している。だが今回はフリーザ様ではなく我々がボールを使う」

 

バータはそれがフリーザに対する裏切り行為であると重々理解しているはずだ。だが、それを行ってでもリクームと共に叶えたい願いがあるらしい。

 

「…その願いというのは?」

 

「俺たちギニュー特戦隊は、ナメック星でサイヤ人に敗北したことでフリーザ様からの信頼と軍での地位を失った…。だがしかし、殺されたギニュー隊長や他の隊員を蘇らせて特戦隊を完全復活させれば、フリーザ様もまた俺たちを信用してくださるに違いない!」

 

(なんて盲目的な…。しかし、どんな理由でもこの方たちにドラゴンボールを渡すわけにはいかない…。)

 

「…申し訳ないですが私じゃドラゴンボールの在り処は分かりません。知っている人物はいますが、この騒動で既に貴方たちのお仲間に殺されてしまっているかも…」

 

美鈴はそう話すと、バータは黙りこくった。これはチャンスだと思った美鈴は、さらに話を続ける。

 

「そんなにフリーザに認められるためにドラゴンボールが欲しいのなら…私がドラゴンボールを持っている人に頼んでボールを貰ってきてもいいですがね」

 

「本当か!?」

 

「ただし、条件があります。今後一切この幻想郷の人たちを傷つけないでください」

 

「…いいだろう。フリーザ様にもう一度認めていただくためなら、オレは何だってやる」

 

ギニュー特戦隊は、基本的にフリーザに対する忠誠心も飛びぬけて高い。フリーザに信頼されるためならば、本来の目的さえ平気で無視するほどだろう。美鈴はそれを見抜き、取引を持ち掛けたのだ。

 

 

 

 

 

─午後2時 幻想郷 天界 シュネックの御殿跡

 

「久しぶりだなシュネック…暗黒の地獄から舞い戻ったぞ…」

 

ソルベの手下であるタゴマを倒しつつこの場に現れたのは、あのガーリックの息子、ガジュニアであった。

ガジュニア…9年前の第二回幻想郷一武道会に出場し、父を殺したカカロットや霊夢たちに復讐を誓った魔族である。大会の準決勝戦でカカロットと戦うも、自らが作り出した暗黒の異次元空間「デッドゾーン」に吸い込まれ、永久に閉じ込められたはずだが…。

 

「お主は…ガーリックの息子…!」

 

シュネックがそう呟いた。

シサミはシュネックを地面に投げ捨て、ガジュニアに向き直る。

 

「何だお前は…邪魔するって言うなら叩き潰すぞ、チビ」

 

ガジュニアはにやりと不敵に笑った。

 

「威勢だけは一丁前のようだな…勝てると思うならかかってくるがいい」

 

「舐めおって…!」

 

シサミは怒り、闘牛のように足で地面をかくと一気に飛び出し、突撃を仕掛けた。あまりの威力に通った場所の地面が歪んでめくれていく。

その突進がぶつかる寸前、ガジュニアはジャンプするとくるりと回転し、シサミの角を掴んだ。そしてグイッと横方向へ向けて力を込めると、シサミはバランスを崩して倒れ込み、顔面が地面にめり込んだ。

ガジュニアは身軽にトンと着地した。

 

「な、なんだぁ今のは…!!」

 

シサミは顔を振って土を払いながら起き上がった。そして、こちらを見てニヤニヤしているガジュニアを見て怒りが頂点に達し、猛牛の様な雄叫びを上げるともう一度走って突進をしかけた。

しかし、ガジュニアはそれに臆する様子もなく、両腕を頭の上にかかげるとそこに小さなエネルギー弾を作り出し、投げ飛ばした。それは向かってくるシサミに命中し、爆発を起こす。その威力でシサミは粉々に消えてなくなった…。

 

「他愛のない奴だ…」

 

ガジュニアはしずかにそう言い放った。

 

「ガーリックの息子よ…お前はデッドゾーンに永久に閉じ込められたはずだ…何故今になって姿を現した?」

 

ボロボロのシュネックがそう聞いた。

 

「フッ、確かに私はあの時の大会でデッドゾーンに閉じ込められ、出られなくなった。苦しく辛い9年間だった…極寒で一条の光も刺さぬ空間は私の精神を侵蝕し、常に気が狂いそうなギリギリの状況であった…何とか空間の中を漂う暗黒のパワーを取り込みながら生き長らえていたが、流石に限界が迫った。だが!死を覚悟し、それを受け入れようとしたその時だった!!」

 

ガジュニアはそう言うと、空を指差した。

 

「見よ!あの天に輝く真っ黒な星、『魔凶星』を!!」

 

シュネックたちも釣られて上を見ると、そこには何故今まで気が付かなかったのだろう、と思うほどの大きさの、赤い光を放つ黒い星が月のようにぽっかりと浮かんでいた。

 

「何だあの星は…いつの間に…」

 

「ふっふっふ…あの魔凶星は、5000年周期で地球に接近する、我々魔族の生まれ故郷だ。我が父は、5000年前に魔凶星から地球へ移住したと聞いたことがある。そして私は父の故郷である魔凶星の接近により大幅にパワーアップしデッドゾーンを自力で抜け出したのだ!!」

 

「…それでパワーアップして復活したお前がここへ何しに来たのだ?父の復讐か?それともドラゴンボールか?」

 

「フッ、どちらもだ。私は貴様からドラゴンボールを奪い、亡き父を完全復活させるのだ!!」

 

その時、ガーリックはドラゴンボールを持っている正邪とスカーレットをじろりと睨みつけた。正邪は少し後ずさり、ボールをシュネックに投げて渡した。

シュネックはそれをキャッチし、服の中に素早くしまい込む。

 

「隠しても無駄だ…私はお前を殺してでもそのドラゴンボールを奪うぞ」

 

「やってみるがいい…わしが死ねばドラゴンボールは石になり使えなくなるぞ」

 

「なに…?」

 

ドラゴンボールは創造主であるシュネックが死ねば使えなくなってしまう。それを知らなかったガーリックは、思わず動きを止めた。

 

ズッ… ズッ…

 

その時だった。その場にいた全員は、どこからか聞こえてきた何かが引きずられるような音を聞いて、その音の発生している場所を探した。すると、少し離れたところでスカーレットに背中を一突きにされたはずのソルベが地面に血の筋を描きながら這って移動していた。

 

「アイツ…生きてたのか!」

 

「ふ…ふふふ…!これほどまでに強い者がいたとは…私の調査不足か…」

 

ソルベがブツブツ呟きながら向かっている先は、タゴマとシサミが運んできた、頑丈そうな大きな鉄の箱だった。ソルベは箱にたどり着くと、最後の力を振り絞って腕を上げ、指はめた指輪からレーザー光線を放つと扉の錠を焼き切って外した。

 

「存分に暴れたまえ…我が軍が捕獲した化け物よ…!!」

 

そう言うと、ソルベは力尽きてズルリと地面に横たわった。

鉄の箱の扉がギイと音を立てて開かれ、中の暗黒の様な真っ黒な空間が露わになる。そこからはどんよりとした負のオーラが漂い、それは重たそうに地面の上を伝ってくる。

 

「なんじゃ…この圧倒的な暗黒の力は…!」

 

シュネックが冷や汗をかきながらそう声を漏らす。あのガジュニアでさえもただ黙って箱の中を凝視している。

すると、箱の中には人の形をしたものが入っているとわかった。その人影がゆっくりと前に歩き出し、真っ暗な闇の中から姿を現す。

 

「グルルルル…!!」

 

白目を剥き、唸り声を上げるその姿。口はマスクのような拘束具で封じられ、両腕は肘から先が無い。全身をベルトの様なギプスで巻かれ動きを制限されており、歩く姿はぎこちない。

ボサボサになった銀色の髪が光り、その背は高いが引き締まった筋肉をもつ女性であると判断できる。

 

「ま、まさか…あの異形の者は…!」

 

「あれは、魔人ウスターじゃないか…!?」

 

「でも様子が変ね…」

 

シュネックとスカーレットがそう呟いた。その通り、闇の中から現れた戦士は変わり果てた魔人ウスター本人であった。

10か月前、ナメック星での戦いで、フリーザから逃走している最中にフリーザの超能力によって吹っ飛ばされ死亡したかに見えたウスターだが、頭を強く打ち我を忘れた状態でナメック星を彷徨っていた。そこでフリーザ軍に確保、拘束され、軍の戦闘マシーンとして調教された。

 

「フウウウウウ…!!」

 

ウスターはシュネックやガジュニアたちを睨みつけると、息を荒げながら走り出し、彼らに襲い掛かった。シュネックと正邪たちは腕を頭の上にあげ、目を背けた。

しかしその瞬間、ガジュニアがピョンと跳躍し、ウスターの顔面に飛び蹴りを喰らわせた。ウスターの口元の拘束具が欠け、彼女自身も後ろへ倒れ込む。

 

「魔人ウスター…お前とはもう一度決着をつけておきたい!」

 

「フウ…フウ…!」

 

ウスターは起き上がると、全身から淀んだ紫色のオーラを放つ。そのオーラは無数に細く伸び、まるで布のように組み合いながらウスターの無くなっている両腕の肘から先を形作っていく。

 

「ガアアッ!」

 

オーラで作り出した両腕を振りかぶり、ガジュニアに飛びかかる。しかし、ガジュニアは体の小ささを活かしてするりと躱し、上空に飛ぶ。

だがウスターは片足を後ろに振り上げ、それを打ちおろしてガジュニアに命中させた。

 

「その程度、効かんわ!」

 

ガジュニアは腕でその一撃を押さえ込んでいた。もう片手にエネルギー弾を作り出し、ウスターの顔面の前で炸裂させた。爆風で吹っ飛ぶウスターは、ギプスで思うように動かない肉体を無理に起き上がらせようとする。が、その隙にもガジュニアはすぐ近くに接近しており、脳天に強烈な蹴りを受けた。

 

「ガウウウ…ッ!!」

 

ウスターは痛がる様子を見せ、ガジュニアは後ろへ飛んでいったん距離を取る。

 

「どうした?9年前の武道会での貴様の方がよほど気迫があり強かったぞ、魔人ウスターよ」

 

「ヌウウ!」

 

ウスターは顔を上げると、腕を体の前に突き出し、両手の間に赤黒い巨大なエネルギー弾を溜めこんだ。そしてそこから素早く極太のエネルギー波を撃ち出す。ガジュニアは両腕をクロスさせて構え、その衝撃に耐えようとする。

暴風の様なエネルギー波は容易にガジュニアの肉体を包み込み、周囲の地面を捲れ上がらせ吹っ飛ばすほどの威力だった。シュネックたちは建物の瓦礫に掴まって飛ばされるのを辛うじて防いでいる。

 

ドォン…

 

やがてエネルギー波が収まると、先ほどまで緑生い茂る庭園だった場所は荒れ地のように変わり果ててしまっていた。砂の中から顔を出したシュネックと、正邪とスカーレットはあたりを見渡す。

 

「ど、どうなった!?」

 

正邪の目線の先では、腕に攻撃の余韻のスパークを纏ったウスターが立っていた。が、スカーレットの見ている先では、煙に包まれた巨大が影があった。

 

「ふん、確かにすさまじい攻撃だ。しかし!魔凶星の接近により遥かにパワーアップした私の前では無力だ」

 

ガジュニアの身体は先ほどの何倍にも大きくなり、筋骨隆々な巨体へと変貌していた。薄い水色だった体色は濃い緑色に変わり、全身に太い血管が浮き出ている。ウスターの攻撃が当たる直前、変身することで耐えきったのだ。

 

「フン!」

 

ウスターはオーラで形作った腕で自らの身体に纏わりつくギプス、そして口の拘束具を引きちぎって外した。その瞬間に封じ込められていたウスターの暴走した気が解き放たれた。

 

「これで私も貴様も本気という訳だな」

 

ガジュニアとウスターは同時に飛び出し、互いの拳をぶつけ合った。そして腕を掴んで取っ組み合い、ジリジリと押し合いを繰り広げる。

 

「ガアアッ!!」

 

だが次の瞬間、ウスターは口を開けるとそこから気功波を撃ち、ガジュニアの顔面に命中させた。そしてその隙を見て胸を蹴りつけ、連続して腹にパンチを浴びせる。

だが、ガジュニアの強靭な体躯の前にはそこまで響いてはいないようだった。

 

「お前の拳にはただならない怒りが込められている。だがそれは私に対するものではないだろう?」

 

ガジュニアは反撃の蹴りをウスターの肩に喰らわせた。

 

「何をそんなに怒っている?何に対してそんなに怒っている!?」

 

彼の問いを聞いて、ウスターは呆然とする頭の中に様々な光景を思い浮かべた。

 

 

 

 

─『…どうか、ウスターという名の女性に…この話を…』

 

 

 

「アルマ…ンド…」

 

 

 

─『あり得ないな…いつだって自分の命が最優先…他人の事なんて二の次だったこの俺が…誰かを庇っちまうとはな』

 

 

 

「ター…レス…!!」

 

ウスターはその目から血のように赤い涙を流しながらガジュニアの胸を殴り続ける。

 

「霊夢…カカロッ…ト…!!俺…俺は…ッ!役立たずッ…!!」

 

ガジュニアの足が滑り、後ろへ通されていく。ウスターはさらに殴る力を強めていく。

 

「あの時も…!あの時も…ッ!俺は役立たずッ!!」

 

その時、ガジュニアはウスターの攻撃の間に生まれた隙を見逃さず、今度はウスターの顔面に巨大な拳をめり込ませた。そのまま押し込んでウスターを地面に押し付け、クレーターが広がっていく。

 

「もう許してやったらどうだ?そんなにボロボロになるまで頑張ってるじゃないか」

 

その瞬間、何かの糸が切れたように倒れ込み、そのまま気絶し動かなくなったウスター。仮の両腕を形作っていた紫色のオーラは消え失せ、そこには傷だらけの戦士が横たわっていただけだった。

 

 

 

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