もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第153話 「切り裂かれるのは御免被る」

「あ、貴方は…?」

 

「お前は…?」

 

美鈴とバータ、リクームは突然現れて自分らの窮地を救った者に対してそう呟いた。

 

「綿月依姫、昔は月の使者のリーダーにして、今は己を高めるだけの武道家である」

 

依姫は、腕に作り出した長い刀の様なエネルギーを振るい、煙を払いながらそう言い放った。

スカッシュはゆっくりと降下し、地面に降り立った。そしてスカウターに表示された戦闘力数値を見る。

 

「…ふん、そこの3人よりは強いようだけど、このアタイには及ばないね」

 

「か、どうかは…戦ってみればわかると思うけど?」

 

「言ってくれるね」

 

スカッシュと依姫は数秒見つめ合った後、お互い同時にゆっくりと歩き始めた。一歩ずつ、草と土を踏みしめながら確実に接近していく。

美鈴たちが見守る中、ふたりは互いの顔が触れ合うのではという距離まで近づく。そしてその瞬間、同時に拳を繰り出し、顔面に命中させた。

反対方向に吹っ飛ぶが、地面に手を突いて踏ん張る。そして同時に駆けだし、今度は頭突きをたがいに喰らわせた。

 

「やるね、アンタ!」

 

「そっちこそ」

 

スカッシュは右手からエネルギー弾を発射し、依姫を狙う。依姫はすかさず飛び上がって回避する。エネルギー弾は外れて地面に当たり、その箇所を吹っ飛ばした。

依姫は空中を飛び回り、スカッシュはそれを追いかけて次々とエネルギー弾を撃ち出す。間一髪、外れた攻撃は全て地面や湖、後ろの紅魔館に当たってしまう。

その時、依姫は全身から黄色いオーラを出し、それを球体状に変化させる。そして迫るエネルギー弾を打ち消しながらスカッシュに突撃を仕掛ける。スカッシュも同様に紫色のオーラを球状にして全身に纏い、高速で空を飛ぶ。

 

「今度は玉ころがし勝負かい?」

 

空中で素早く飛び回りながらオーラの球を激しくぶつけ合わせる。そのたびに炎がはじけ、金属と金属を打ち合わせた時の様な音があたりに響き渡った。

 

ガキィィン…

 

しかし、その勝負に勝ったのはスカッシュだった。依姫はオーラの球をまるでガラスのように破壊され、その身体を強打されて吹っ飛んでいく。口から血を流し、紅魔館の壁にめり込んで止まった。

スカッシュはすかさずそこへ接近し、依姫の腹に膝蹴りを叩きつけた。

 

「ぐはあっ!!」

 

痛みと腹への衝撃で唾を吐き出す依姫に対し、何度も連続で拳を叩きつける。

 

「大物ぶって出てきた割には大したことないねぇ!」

 

「く…か、界王拳…!」

 

依姫は習得している界王拳を発動すべく、気を高めようとする。しかし、スカッシュは目ざとくその様子に気が付くとニヤリと笑った。

 

「何かしようとしているな…だけど、このアタシの出す本気のスピードとパワーについてこれるかよ?」

 

その瞬間…わずか1秒にも満たなかった。依姫が界王拳を発動する前に、スカッシュは依姫にさらに攻撃を加え、紅魔館の壁を突き破って中に押し込んだ。そしてその中で、右手に気の剣を生成し、それを振り下ろして依姫を肩から胴体へかけて袈裟斬りにするかのように振り下ろしたのだ。

 

ズシャ…

 

「これで終わり!」

 

依姫の斬られた箇所から大量の血が噴き出し、依姫はこのまま動かなくなる。

…筈だった。スカッシュは手の剣を見ると、何と強固なオーラで固めたはずの剣が半分に折れていたのだ。それに疑問を抱いたのもつかの間、今度は依姫の気の剣がスカッシュの顔の目の前に迫っていた。

 

「うおっ!」

 

スカッシュは間一髪、顔を逸らして躱すが、その額に切り傷が付けられた。

 

「キッサマァ!!」

 

距離を取って依姫に向き直ると、先ほどのスカッシュの斬撃で斬られた身体から、裂かれた上着がずり落ち、床の上に落ちた。その瞬間、床はまるで何トンもの重りを落とされたようにひび割れ、崩れていった。

 

「感謝する。この激戦の最中、いつ脱ごうかと考えていた…界王星特製のとても重たい上着を斬ってくれたことに」

 

「な、何だとォ…?」

 

「そしてお前は、この私が10倍の『界王拳』を使用するスキを与えてしまったのだよ」

 

その時、依姫の身体が赤色に光り輝き、オーラを纏った。

 

「ふん、何を言ってるのさ!重いのを脱いだからってどうなるってんだい?逆に、鎧を脱いだ今度こそ次の一撃で仕留められるのさ!」

 

スカッシュはそう言いながら再び剣を振り下ろした。一閃は容易にもう一度依姫の身体を切り裂いた。

しかし、手ごたえは全く感じられず、依姫の姿はぼやけて消えた。

 

「まさか…残像か!」

 

その瞬間だった。頭上に出現した依姫のパンチが、スカッシュの頬にめり込んだ。

 

ドゴ

 

殴られたスカッシュはよろめいて倒れそうになるが、反撃の斬撃を放つ。だが、またも依姫は残像を残して素早く消え、逆にスカッシュの顔面を殴り、続いて顎にアッパーを喰らわせる。

 

「ア…アタイより速い…だって…?」

 

スカッシュは信じられないと言った表情で剣を振るい続ける。しかし、そのたびに依姫は攻撃をかわし、的確なカウンターをヒットさせてくる。そのダメージとも相まって、スカッシュはすぐに息を切らし始めた。

 

(なんでだ!?なんでアタイの剣がコイツに当たらないんだ?なぜアタイのオーラの剣のするどい切っ先が、コイツの喉元に届かないんだ?)

 

スカッシュは攻撃を繰り出しながらそう思った。

 

(アタイはコイツの一挙手一投足まで完璧に捉えているってのに!コイツの髪を結ぶ、黄色い布の縫い目のひとつひとつまで数えられるくらいに!!)

 

くそ!当たれ!当たれ!コイツを斬るんだ!!

 

当たれ!当たれ!

 

当 た れ ぇ ぇ !!

 

 

 

 

「あれ…?」

 

その時だった。フッ、と依姫の姿が消えた。それは今までのように、残像を残す程のスピードで移動したのではない。文字通り、スカッシュの視界から消え失せてしまったのだ。依姫の髪を結んでいた。黄色いスカーフだけを残して。

 

(なんだ…あの黄色い布だけが、空中にふわふわと浮かんでいる…。アイツは何処へ行った?あの布だけがひらひら、ひらひら…漂っている…アタイは、何をしていたんだったか?)

 

自分が何をしていた最中なのかも忘れ、その場に立ちどまって剣を解除するスカッシュ。

その瞬間に、依姫の膝蹴りが顔面に命中した。

 

「もう切り裂かれるのは御免被る」

 

「なん…なんだ…コイツ…」

 

スカッシュは吹っ飛ばされ、紅魔館の壁を破って再び外へと投げ出された。そして柔らかい草原の上に落下すると、そのまま気を失って動かなくなった。

 

「やっと出てきやがったな!」

 

そこへすかさずにリクームとバータがずかずかと現れ、気絶しているスカッシュを蹴り飛ばそうと足を上げた。

 

「俺たちのファイティングポーズを馬鹿にしやがって!」

 

「ぶっ殺してやんぜ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

それを美鈴が後ろから呼び止める。ふたりはピタリと足を止めて振り返った。

 

「ああ!?なんで止めるんだよ?」

 

「いえ…ただ、殺す必要はないと思っただけです。さっき、このスカッシュという人は私に対して『スゲェ』って言ったんです。嘲りの意味など込めずに、ただ純粋に褒めたんですよ。だから根っからの悪人ではないハズなんです。貴方たちふたりのようにね」

 

 

 

 

 

12時40分 迷いの竹林及び永遠亭

 

自らの命と引き換えに、永遠亭とそこに匿われる子供たちの命を救ったザーボンの遺体を安置した慧音。彼女が永琳や子供らのいる場所へ戻ろうとした瞬間、何かが焼けるような煙の匂いを感じて振り返った。

外へ飛び出すと、竹林の奥が炎に包まれているのが目に入ったではないか。

 

「竹林が燃えてる…!」

 

その火災の元は、カーボネド四天王がひとり、鉄壁の肉体を誇る巨漢戦士・ダイザーであった。

ダイザーは口をすぼめるとそこから火を噴き、辺りを火の海へと変えながら進行してくる。

 

「ブウウウウウウ!!」

 

自らの吐く炎が身体にかかっているが、炎に晒されてもその銀色の光沢を放つボディは少しも焼けていない。そのまま燃える竹林の中を、わざと足を踏み鳴らして地響きを起こしながら悠々と歩いてくる。

 

「ワハハハハハ!!炎に追い立てられ姿を見せるがいい!」

 

「ま、まずいぞ…!」

 

慧音は慌てて永遠亭の中へ入っていった。

 

 

一方、その永遠亭の中。ザーボンの出撃によって少しは余裕が保たれていた子供たちであったが、再び訪れた地響きと部屋にまで到達した黒煙に晒されて恐怖に取り乱していた。

その中に混ざっている蓬莱山史奈は激しい頭痛を感じ、シロナに寄り添われていた。

 

「うう…」

 

「大丈夫?」

 

その時、もう一度大きな地響きが襲った。子供たちが床に伏せ、それと同時に燃えた竹が破裂するすさまじい爆音が轟いた。

シロナも思わず目をつむってしまい、揺れが収まると目を開けた。すると、目の前で史奈が倒れ込んでしまったではないか。

これは流石にまずいと思い、シロナは史奈をおぶって永琳のいる部屋へと連れて行った。

 

「永琳さん…史奈ちゃんが…!」

 

「ど、どうしたの?」

 

永琳は史奈を抱きかかえ、ベッドに寝かせた。そして額に手を当てると、そのあまりの熱さにビックリして手をひっこめた。

 

「凄い熱…!明らかに40度以上あるわ…。でも風邪ではないようだし、これは一体?」

 

 

ダイザーによる永遠亭の襲撃、そして史奈を襲った原因不明の熱病。これが意味する事とは…?彼女らはこの窮地を脱することができるのだろうか。

 

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