もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第154話 「みんなを裏切るのはイヤだけど」

「…ここはどこ?」

 

史奈は、気がつけば目が覚めていた。しかし、その場所は全く見知らぬ場所だった。

自分が今座っているのは、広い部屋の木の床の上。目の前には少し物足りないくらいの量の食事が置かれている。

 

「どうぞ、お召し上がりください」

 

顔はぼんやりとしていてよくわからないが、自分の斜め前に座る女性がそう言った。

言われるがまま、箸を手に取った瞬間、史奈の視界は変化した。

 

 

「大丈夫か?足を痛めたか?」

 

その声を聴いてハッと顔を上げた。自分がいるのは岩と砂ばかりの斜面のど真ん中だった。目の前にいる、大きな荷物を背負った男性が自分に手を差し伸べた。

その手を取り、立ち上がるとまたも視界が変わる。

 

 

今度は、自分は森の中に居た。自分の手や足は擦り傷だらけで血に濡れており、その足元には壺が置かれていた。

その時、自分の意志とは関係なく手が動き、その壺を持ち上げた。

 

(なんだろう、これ…中に何か入ってる?)

 

壺の中にはドロッとした緑色の液体が入っていた。

 

(ダメ…!これを飲んではダメ…!)

 

そう思うも、自分は壺に口をつけ、中の液体を口の中に流していく。

 

(ダメ…!!)

 

 

「…はっ!」

 

次の瞬間には、また史奈は別の場所へ移動していた。しかし、今度の場所は今までとは全く違う。ただ途方もなく、床も壁も天井もない、影すらない真っ白な空間が自分を包んでいた。

 

「ここは…?」

 

史奈はあたりを見渡しながらゆっくりと歩き出した。

 

「ここは、お前の頭の中さ」

 

すると、背後から声が聞こえて立ち止まり、後ろを振り返った。そこに居たのは、顔だけ自分にそっくりな、長い銀色の髪をもつ少女だった。

 

 

 

 

 

12時45分 永遠亭 診察室

 

「永琳、大変だ!また敵がやって来た!」

 

慧音は診察室に居た永琳にそう言った。

 

「そのようね…仕方がない、ザーボンもいない今、食い止められるのは私しかいない。行ってくるわ」

 

立ち上がる永琳を見て、部屋にいた輝夜が言う。

 

「でも永琳、史奈はどうするの?このままじゃ死んじゃうかもしれないわ」

 

「大丈夫、あなたはひとりでここまで史奈を育ててきたんじゃない。だから私がいなくても、あなたがそばにいてあげなさい」

 

「永琳…!」

 

「それと、慧音…子供たちをすぐに別の場所へ…」

 

永琳はひとりで部屋から出て行き、永遠亭に迫るダイザーに挑もうとしていた。もちろん、単純な戦闘力による戦いの勝ち目はないに等しいだろう。しかし、不死身の身体を持つ自分であれば少しでも時間をかけて食い止めることができるかもしれない。

 

 

 

「見つけたぞ…あの建物の中にマンダリを倒した奴がいるようだな」

 

カーボネド四天王がひとり、ダイザーは口から吐く炎で竹林を火の海に変えながら突き進み、ついに永遠亭を発見した。そしてゆっくりと永遠亭へ向かって歩き出す。

 

ビュン

 

その時、永遠亭の方角からまるで三日月のように鋭く輝く矢が目にもとまらぬ速さで飛んできた。矢はダイザーの額に命中し、とてつもない音をあたりに轟かせた。

 

「なんだ、今の…」

 

しかし、当のダイザーの額には穴や傷など全くついていなかった。依然として曇りない光沢を放つ鋼の皮膚が炎に照らされて輝いた。

 

「やっぱり効かないとは思ったけど、それでいい」

 

永琳は門の横の塀の上から一気にジャンプし、空中で加速して50メートルほど離れたダイザーの前にまで移動した。

ダイザーは永琳を見るとスカウターを作動させ、その戦闘力を確認する。

 

「お前は、マンダリを倒した奴じゃないな。それに、その程度の戦闘力でこのダイザー様に太刀打ちできるとでも?」

 

「太刀打ち?」

 

次の瞬間、永琳が素早く放った矢の一撃がダイザーの左目に命中する。

 

「こっちは太刀じゃなくて弓矢なのだけど」

 

「…かっかっか…割と速いな、女。しかし…」

 

粉々に砕けた矢がパラパラと地面に落ちた。

 

「このオレの目を狙ったとしても無駄な事よ。オレは文字通り全身が鋼なのさ!」

 

ダイザーはそう言うと地面に着くかというほど長く、そして何百年と生きた大木のように太い腕を振りかざし、永琳を一発殴りつけた。

剛腕から繰り出されたパンチは細い永琳の身体を目茶目茶に破壊し、見るも無残な姿へと変えた。

 

「口ほどにも無い。さて…」

 

ダイザーは一言そう吐き捨てると、永遠亭に向けて一歩踏み出した。

 

「…む!?」

 

その時だった。自分の片足に先ほど倒したはずの永琳がしがみ付いた。ダイザーは動きを止めて驚いた。何せ、あれほど無残な死体へ変わったはずのこの女が、全身に血が塗られてはいるが、なんと生き返ったかのように動いているのだ。

”蓬莱の薬”。この薬の製作者でもある永琳はそう名付けていた。この薬の効果は、魂と肉体とを融合させ、肉体が無くなろうとも魂を起点に再構築…常に細胞を最高に良好な状態に維持し続ける。つまり、”不死身”にするのである。

 

「なんだ…コイツ…!」

 

永琳はダイザーが見つめる前で、彼の膝の裏、そして脇の下へ続けて気で強化した矢を思い切り突き刺した。

理由として、ダイザーの鋼の皮膚には隙間があったからだ。実際の甲冑や鎧などにも言えるように、肘の内側、脛の裏側、脇の下などは人体の関節の構造上、どうしても堅くして守ることができない。それはダイザーの肉体であっても同じだった。

 

ゴリッ

 

しかし、その常識はダイザーには通用しなかった。銀色の光沢を持つ胸や背中などの皮膚と違い、黒ずんだ関節部分ならばいくらか柔らかそうに見えたが、いざ刃物を通そうとしてみるとその質感はタイヤゴムのようで、強度はほとんど銀色の部分と変わらなかった。よって矢はまたも爪楊枝のように破壊された。

と同時に、ダイザーは足で永琳を蹴り飛ばし、さらにもう片足を振り下ろして彼女を踏みつぶしてしまった。

 

「オレとしたことがさっきは殺し損ねてたらしい…だがこれで死んだだろう」

 

ダイザーが二歩ほど歩くと、またしてもその目の前を何かの影が横切った。そう、今度は永琳がするりとダイザーの背後へまわりその首にしがみ付き、顎の下あたりに矢を突き刺した。

だが、やはり矢は全くと言っていいほど、ダイザーに傷をつけることができない。

 

「むうう、しつこいわ!!」

 

ダイザーはもう一度永琳を殴り飛ばした。しかし、ダイザーがたった数歩だけ足を踏み出すごとに、復活した永琳がそれを邪魔し続ける。

ダイザーと永遠亭の門までの距離は、あと43メートルだった。

 

 

 

 

 

「ここが、私の頭の中…?」

 

史奈は目の前の銀髪の少女の言葉を聞いてそう言った。

 

「どういうことなの?それで、あなたは誰…?」

 

「単刀直入に言うがな、私の名前は藤原妹紅。お前の前世の姿で、お前が生まれ変わる前の人間さ」

 

妹紅は頭をかきながらそう言った。

 

「妹紅…?私の前世…?」

 

「ま、信じられないのも無理はない、か…お前を育てた輝夜は、お前に私の事を一切話さなかったみたいだからな。私はな、今から9年前、ある戦いで自分の命を絶ったんだ。だが、不老不死になってしまい地獄のような人生を送った私を可哀想に思った閻魔大王様が私を今度は普通の人間として生まれ変わらせてくれたのさ」

 

「そう、なんだ…私は信じるよ」

 

「驚いた。今の私はやけに物分かりがいいな」

 

「だって、さっき…あなたの記憶を見ちゃったから…」

 

史奈は先ほど体験した妹紅の記憶を鮮明に覚えていた。

 

「…そうか、私の人生を見てきたのか。…辛かったか?」

 

「うん、とても」

 

その言葉を聞いた妹紅は少し下を向き、また顔を上げた。

 

「今、お前の家族や友だち、先生が危ない。宇宙から来た敵によって酷い目にあわされそうになっている。それを助けたいか?」

 

「…うん!私にできるなら!」

 

「本当に?」

 

「うん」

 

「だったら、私の力をお前に貸してやる!そうすればお前は敵に勝てる破格の妖力を手に入れられる。しかし、だ。そうすれば、お前に普通の人間としての人生を送ってほしいと願っていた輝夜や永琳、みんなの願いを…裏切ることになる。それでもいいか?」

 

「…輝夜お姉ちゃんや、永琳…鈴仙、てゐちゃん…みんなを裏切るのはイヤだけど…みんなが死んじゃうのはもっとイヤだ!」

 

「…そうか。だったら、はやく目を覚ましてやりな」

 

妹紅は史奈の頭をそっと撫でた。

 

 

 

 

 

「史奈ちゃん、起きないね…」

 

シロナはベッドで苦しみながら眠り続ける史奈を見てそう言った。

 

「そうね…」

 

輝夜は史奈の手を握りしめ、その顔を覗き込んだ。

その時だった。史奈の手が急に熱くなった。今までも熱かったが、そんなものではない…もっともっと、まるで炎のように史奈の身体が熱くなってきていたのだ。

 

「こ、これは…!」

 

 

 

一方、永遠亭の裏側から子供たちを連れて別の場所へ逃げている途中の慧音と同伴の鈴仙。しかし、慧音はどうしても永琳たちや史奈の容態が心配になった。

 

「鈴仙、私は戻るから子供たちを頼んだぞ!」

 

「あ、ちょっと…!」

 

慧音は走り出し、永遠亭の正面の門の側へ回り込んだ。すると、そこではダイザーと永琳が門から10メートルほど離れた場所で戦いを繰り広げていた。

 

「永琳…!」

 

だが永琳は不死身による回復力すら追いつかない程に何度も”殺”され、限界が迫ろうとしていた。いくら蓬莱人と言えど、傷を負えば痛みも伴うし、短時間に何度も死の淵から這い上がるほどの回復を行えばその意識は途切れるだろう。しかし、ここまで耐えられたのは永琳が月の民でも最強クラスの実力、そして精神力を持っていたからに他ならない。

 

「ちょこまかと鬱陶しいわ!」

 

ダイザーは右腕を振り、永琳に当てた。永琳は吹っ飛ばされ、地面を滑って転がっていく。

 

「く…流石に、回復速度に限界がやってきた…か…」

 

永琳は三つ編みが解けた髪がかかった血まみれの顔を上げながらそう言った。

 

「はっはっは!ようやく動けなくなったか!よぉし、これで不老不死になったフリーザ様からオレの大好きな極上の溶岩の沸く惑星を提供していただける…」

 

「な、なるほど…フリーザという者は、不老不死になりたがっている…のね…」

 

「ああ?だから何だってんだよ?」

 

永琳の投げかけた言葉に、ダイザーは苛つきながらそう言った。

 

「なりたいならなればいいわ…でも、果たして耐えられるかしらね」

 

「ええい!うるせぇんだよ!」

 

ダイザーは永琳を蹴り飛ばした。ダイザーと永遠亭の間に挟まって時間を稼ぐはずが、永琳は彼の背後へと飛ばされてしまった。

 

「ぐあ…!」

 

「もうあの建物までは10メートルもねぇ…オレが一思いに地面ごと砕いてやる」

 

カン カン

 

「…ああ?」

 

その時、どこからか飛んできた光弾がダイザーの足に当たり、弾かれた。ダイザーがその方へ顔を向けると、慧音がこちらへ手を向けていた。彼女が弾幕を放ち、ダイザーを攻撃したのだ。

 

「ふん、雑魚が…これでも喰らってな!」

 

ダイザーは口を開き、そこから火炎を噴き出した。それは瞬く間に地面の上に燃え広がり、慧音の前方を完全に封鎖してしまう。

 

「くっ…!」

 

 

 

輝夜とシロナは史奈の身体に訪れた異常な変化に戸惑っていた。体温はどんどんと上がり続け、今では周囲に大量の蒸気を発するほどだ。

 

「いったい、どうしたっていうのよ…!」

 

「史奈ちゃん…!」

 

その時だった。史奈の髪の毛がうっすらと白みがかったかと思えば、銀色に変わっていく。

そして史奈は目を覚まし、むくりと起き上がった。

 

「史奈…目が覚め…!?」

 

そう言いかけた輝夜だが、史奈の顔を見て思わず言葉を詰まらせた。銀色の髪、赤くなった瞳…そう、その顔は二度と忘れはしないだろう、あの妹紅とうり二つだったのだ。

 

「ごめんね、心配かけちゃって…でももう大丈夫」

 

「どうしたの…その姿は…!」

 

「…お姉ちゃんが私に普通の生き方をさせたかったのは知ってる。でもみんなを助けるために、一度だけ裏切らせて!」

 

史奈はベッドから立ち上がり、そう言いながら微笑んだ。

 

「…分かってたよ、いつかこういう日が来るって」

 

輝夜は史奈の手を握った。

 

「だって、史奈ったら大きくなるにつれて妹紅にそっくりになっていくんだもん」

 

「…ごめん、輝夜お姉ちゃん。それとシロナちゃん…また、一緒に遊ぼうね!」

 

輝夜、そしてポカンとしているシロナにそう言うと、史奈は高速で部屋から抜け出していった。

 

 

 

「かっかっか、どうした?もうオレの歩く邪魔をしてくれないのかよ?」

 

ダイザーはゆっくりと永遠亭の門に近づいていく。

 

「ほうら、あと一歩でオレの足が、お前らが必死に守ろうとしてるあの建物の敷地に入っちまうぜ!」

 

象のように太い脚を上げ、最後の一歩を踏み出そうとした。つま先が門を越え、その先の地面の上に降りていく。

しかし、その時だった。正面にある永遠亭の入り口が爆発が起きたかのように吹っ飛び、そこから巨大な弾丸の様な炎が飛び出してきた。

 

「…なに!?」

 

ガキィィン…

 

炎の弾丸はダイザーの胸に激突し、ダイザーを後方にまで吹き飛ばした。永琳と慧音は驚き、その弾丸をじっと見つめた。

するとその弾丸は炎を纏った人間であると気が付いた。

 

「ウソ…貴方は、まさか…!!」

 

「お前だけは、許さない!」

 

史奈は炎が燃え滾る拳を握りしめ、倒れ込んだダイザーに向かってそう言い放つのだった。

 




やっぱり、オリキャラたちが登場するだけの回が続くのって面白くないですかね…?
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