もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第158話 「死ぬのは誰だって恐ろしい」

ガジュニアはコルド大王とラーゴンの乗る宇宙船にグングン接近していく。それを外部カメラに繋いだモニターでラーゴンは見ていた。

 

「正体不明の大きな戦闘力反応が接近中!」

 

「何だと!?ではお前が行け!迎え撃つ準備をしろ!」

 

コルド大王はラーゴンにそう命令した。

しかし、モニターの目の前で、ガジュニアは突然姿を消してしまう。一瞬彼の身体が黒くなり、まるで闇に飲み込まれてしまったかのようだった。

 

「き、消えた!?」

 

「では、ヤツはどこへ…!?」

 

その時だった。驚いてそう呟いたコルド大王の真横から太い深緑色の手がぬるりと伸び、自分の腕を掴んだ。そちらを見ると、空間にぽっかりと空いた暗黒の穴の中からガジュニアが半身だけを出していた。

 

「キ、キサマ…どうやって…!」

 

「タイマンを張らせてもらうぞ、大王とやら!」

 

ガジュニアは一瞬だけ全身を現し、コルド大王を掴んだまま、反対側に現れた黒い穴の中に姿を消した。

 

「わ、わしをどうするつもりだ!」

 

「ふん、本来ならばこのデッドゾーンの中に閉じ込めてやってもいいが、お前のパワーなら簡単に抜け出せてしまうだろう…だから正当な勝負で貴様を葬ってやる」

 

ふたりは暗いデッドゾーンを抜け、地面の上に飛び出した。コルド大王はよろめきながらも立ち上がり、腕を組むガジュニアを睨みつけた。

ここは幻想郷のどこかにある、草原の上だった。

 

「ここが貴様の墓場になるのだ。さァ、このガジュニアが相手になろう!」

 

そう高らかに言い放つガジュニア…だが、コルド大王は不敵に肩を震わせながら笑った。

 

「ふっふっふ…」

 

「何がおかしい?」

 

「完璧だ…宇宙船内にわずかに残っている兵士に向き合わず、空間同士をつなげてボクを攫い、1対1の勝負をしかけるとは、完璧で見事な策だ。だが…」

 

コルド大王の姿が、まるで水のように揺らいで形を変える。大型な体は細身になり、青い髪の毛に眼鏡をかけ、両腕には電子機器が装着されている。

 

「ボクがコルド大王なら満点と言ったところか。おっと、申し遅れた…ボクは隠形のラーゴン。カーボネド四天王のひとりだよ」

 

「…ぬう、替え玉というわけか」

 

「その通り。だけどボクは強いよ、やられることが前提の影武者じゃない…君を完全に倒す」

 

「ふん、それはこちらの台詞よ!私はお前の様な三下にかまっている暇などないからな!」

 

ガジュニアは地面を踏みしめて飛び出し、ラーゴンに向かって巨体を生かしたタックルを繰り出した。それはもろにラーゴンに命中する…が、違和感を感じた。

 

「君のパワー、完全に分析した。今のが本気だとしても手加減していたとしても、今の僕じゃちょっと敵わないようだ…」

 

ラーゴンはタックルの軌道を逸らして回避していた。

 

「いくよ!『フォームチェンジ』!!」

 

「なに…?」

 

すると、ラーゴンが腕に装着していた機械からコードの様なものが伸び、彼の全身を包み込んでいく。コードは薄いスーツの様な戦闘服に変わり、体を覆う。そして目の大きな仮面をかぶり。強いオーラを放ちながらガジュニアの前に降り立った。

 

「これがボクの戦闘形態さ」

 

「ほほう、面白い…サーカスの芸人にでも向いてるんじゃないか?」

 

「言っていられるのも今のうちだよ!」

 

変身したラーゴンは一瞬でガジュニアとの距離を詰め、その太い腕を掴んだ。

 

(はやい…!)

 

そしてガジュニアが考える暇もなく、その巨体を楽々と持ち上げ、地面に叩きつけた。ガジュニアが痛みに顔をしかめると、ラーゴンはジャンプし、その腹へ追撃のパンチを叩きこんだ。

 

「ぐば…あ…!」

 

「ほら立てよ!」

 

ラーゴンはガジュニアの首を掴んで無理やり起き上がらせる。そして両手を左右に伸ばし、全身から光の束を放出して何度もその身体を撃った。

ガジュニアの身体に数々の血が滲んだ傷跡ができていく。

 

「チイ…!」

 

ラーゴンが次なる一手を放とうと走り出した隙を見て、ガジュニアは目から強烈な閃光を放った。ラーゴンは動きを止め、思わず手で顔を覆う。その隙にガジュニアは空中に浮かび上がり、気を溜めた右腕を後ろへ大きく振りかぶった。

 

「喰らえい、『デスインパクト』!!」

 

紫色の大砲のような気功波がラーゴンに向かって伸びる。しかし、ラーゴンはにやりと笑うと、背中から中が空洞になったコードを伸ばし、ガジュニアのデスインパクトの前にかかげた。

 

「吸い取れ!」

 

コードはデスインパクトのエネルギーを吸い取っていき、そのすべてを取り込んでしまう。取り込み終えると、コードはエネルギーと同じ紫色に光り出す。

 

「返してやる」

 

そして、コードの先端がポツポツと輝き、そこから一気に吸収したエネルギーを放出した。四方から浴びせられるエネルギー波のまえに、ガジュニアは成す術なくそれを正面から受けた。

エネルギーが通過し終えると、ガジュニアは地面に落下し、ガクリと倒れ込んだ。

 

「ぬ…ぐ…!」

 

「…ふん、弱いね。まるで、ボクの星にいたたくさんの悪者みたいだ」

 

「当たり前…だ…この私は魔族なのだからな…」

 

ガジュニアは起き上がろうとしながらそう言った。

 

「へぇ、そうなんだ。それを教えてくれたかわりに、ボクの事も教えてあげるよ。ボクはね…カピタリノという惑星の選ばれし勇者だったんだよ」

 

「選ばれし…勇者だと?」

 

「そうさ。ボクは生まれた時から勇者だったんだ。それと同時に、生まれた時から不幸でもあった」

 

 

──両親はボクが生まれたすぐのころに、悪党に殺されてしまった…それからボクは親戚の家をたらい回しにされながら育った。友だちはもちろんいない…寂しかったなぁ。ボクはそんな寂しさを紛らわすために何でも調べ尽くして勉強するのが好きになった。勉強に夢中になっている間だけは、寂しさや悲しさを忘れることができたからね。

そんな時だった…ある日ボクの前に不思議な人たちが現れて、言われたんだ。「君こそ現代の選ばれし勇者だ」と。どうやらボクの星では勇者の伝説があって、その勇者は転生を繰り返しながら星の平和を守るんだと。

ボクはその日からヒーローになった。悪くなかった…ボクは戦い方まで自分で勉強し尽くしたし、人を助けるのはね。でもね…ボクはヒーローを辞められないんだよ。ボクだって年頃の青年になっていた…当然、普通の人と同じことをして生きてみたい。でも、勇者に選ばれてしまったボクは絶対に普通の人生を送れないんだ。

悪党と戦い続ける毎日…ボクはいつでもひとりで飯を食べ、ひとりで眠る。普通の人はよく言うな、「孤独の中にこそ心理を見いだせる、孤独こそが自らを鍛える絶対の師である」などと。

 

 

「ふざけるな!!!」

 

ラーゴンは突然怒鳴ると、ガジュニアの顔面を蹴り上げる。

 

「お前らは本当の孤独を知っているのか!?生まれた時から誰にも相手にされないこの不幸を…味わった事があるのか!?」

 

そして連続でパンチを繰り出し、そのすべてを命中させた。

ガジュニアは吹っ飛ばされ、再び倒れ込む。

 

「…ふう、感情的になってしまったね。そうさ、ボクは今までずっと不幸だったんだ…人間には誰にでも平等な権利がある。だったら、もう幸せになってもいいよなァ!?何の苦労もしてないゴミ共の分まで幸せになってもさァ!だからコルド大王の部下になったんだ!少なくともそこに居れば、ボクは幸せでいられるからね」

 

「…くっくっく」

 

その時、ガジュニアの微かな笑い声がこだまする。

 

「なんだい、ボクが今…何か面白い事言ったかい?」

 

「はっはっは…確かに、人間はよく、平等さを主張し幸せになりたがるな…だがね、私は暗黒のデッドゾーンの中で気が付いたのだよ。他者を踏み台にして幸せを得てはいけないという、当たり前の事にな」

 

「…何だって?ボクが幸せになっちゃいけない…って?」

 

「いいや、そうじゃない…ただお前は幸せになる方法を間違えただけだ。それすら分からぬ貴様は、お前が戦い続けてきた悪党と同じ私よりも程度が低いという事さ」

 

その言葉を聞いたラーゴンはみるみる怒りが込み上げ、歯を噛み締めた。

 

「うるさい!!何でも勉強してきた、選ばれたボクが程度が低いだと?ボクは選ばれた勇者なんだ!だから誰よりも幸せになっていいんだ!!」

 

「ピーピー喚くな三下め!!」

 

ガジュニアの大きな手が一瞬でラーゴンの顔面を掴み、そのまま地面にぶつけて押し付けた。

 

「言ったなァ~~!!」

 

ラーゴンはガジュニアの指の隙間から覗く目から光線を放つ。気付いたガジュニアは間一髪それを躱そうと顔を横へ動かすが、耳にかすってしまい鮮血が飛んだ。

しかし、ガジュニアはラーゴンを地面に押し付けたまま走り出し、遠くにあった岩に激突した。その衝撃にもろに晒されたラーゴンは吹っ飛び、まるで陸に打ち上げられた魚のようにその場をのたうち回った。

 

「が…か…は…!」

 

その身体を覆うスーツは消え、ラーゴンは元の姿に戻る。

 

「う、動けない…このまま…では、トドメを刺されてしまう…!し、死ぬのは嫌だ…何も良い事が無かった人生のまま、死ぬなんて…」

 

「…死ぬのは誰だって恐ろしい…この私だってそうさ」

 

ガジュニアは手刀を作った腕を上げ、それを一思いに振り下ろした。ズパンと音を立ててラーゴンの首が切断され、頭部が草の上を転がった。

 

「そして人を蹴落として自分の得を掴もうとするのは、お前と一緒かもな」

 

そう言いながらラーゴンの亡骸を見下ろすと、今度は次に上を見た。空には2隻の宇宙船があり、先ほどコルド大王だと思って連れ出したのは替え玉だった…ということはまだコルド大王は宇宙船かその近くにいるかもしれない。

ガジュニアは宇宙船にまで高速で飛んで移動した。

 

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