もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第159話 「不思議と後悔はない」

「愚かな奴だ、ラーゴンめ…替え玉を仕掛けたはいいものの、その替え玉であるお前がやられてどうするのだ」

 

コルド大王はモニターに表示されているラーゴンの戦闘力反応が消えたのを見て、イライラしながらそう呟いた。画面を映像に切り替えると、ラーゴンを倒したガジュニアが猛スピードでこちらへ向かってきていた。

 

「まあいい…あいつの相手はこのわし自らがしてやる」

 

コルド大王が宇宙船の外に出ると、もうすでにすぐそばまで接近していたガジュニアは驚いて急ブレーキをかけた。

 

「キサマが本物のコルド大王とやらか?」

 

「ご名答。このわしこそ偉大なる我が一族の王、コルド大王である。一応、念のために聞いてみるが…私のところへ何しに来た?」

 

「殺しに来たのだ」

 

「ふっふっふ…このわしを殺すだと?中途半端な力を身に付けた者は返って早死にする、それを教えてやろう」

 

コルドは右腕から素早く一発のエネルギー光線を撃った。それは一気にガジュニアに迫るが、突然ガジュニアの姿が一瞬にして消え去った。

 

「なに…!?」

 

そして次の瞬間、コルドの真横から出現したガジュニアの飛び蹴りがその肩へ命中した。驚きながら体勢を崩すコルド大王だが、反撃の拳を放つ。

しかし、またしてもガジュニアは姿を消し、今度は彼の背後から現れ、後頭部を殴りつけた。

 

「ぐ…!」

 

「見よ!これこそがデッドゾーンでの9年間の間に編み出した戦い方だ!」

 

「おのれェ!!」

 

コルドは怒り、距離を取って離れていくガジュニアを追いかけるように飛び出した。そして自分の目から怪しい光と共に超能力を飛ばすと、ガジュニアの両足が金縛りにあったように動かなくなった。

 

「足が動かん…!」

 

「ははははは!そこから動くなよ、すぐに始末してくれるわ!」

 

嬉々としてガジュニアにトドメを刺しに攻撃を仕掛けるコルド。だがその瞬間…何もなかったはずの空間からガジュニアの拳が飛び出し、顔面にめり込んだ。

 

(なぜだ…こいつは一歩も動いていないハズ…!)

 

よく見ると、ガジュニアは片腕のみをデッドゾーンの穴の中へ突っ込み、さらに出口となる孔をコルドの横へ作ることでパンチのみを空間を越えて繰り出していたのだ。

狼狽えるコルドに、同じようにして放たれたガジュニアのパンチと蹴りの応酬が次々と命中していく。その一撃一撃はフリーザに匹敵する戦闘力を誇るコルド大王を死に至らしめる事こそ無かったが、得体の知れない攻撃方法と最強の一族の長たる自分が攻撃を喰らい続けているという認識によるショックから目に見えて疲弊していってしまう。

 

「ク…クソ…このわしが…!こんなことはあり得ん、あってはならぬ…!」

 

「どうした?もう終わりか?ではそろそろこちらも追い上げと行くか」

 

ガジュニアはそう言うと腕を前にかかげて気合を込める。目は白目を剥き、その全身から赤黒い禍々しいオーラが立ち込める。まるで周囲の空気が震えているかのように動き出し、2隻の宇宙船がグラグラと揺れる。

 

「『デスディメンジョン』!!」

 

その時、コルドの周囲にポツポツと直径1メートルほどの大きさのデッドゾーンへと通じる穴が開いた。それはコルドを球状に囲うように無数に出現していく。

 

「なんだ…これは…」

 

困惑するコルド大王。そして次の瞬間、同時に全てのデッドゾーンの穴から長い剣や槍が一斉に飛び出した。その全てが真っすぐにコルドを狙っていく。

 

「くっ…!」

 

なんとか避けたり腕で振り払い武器による攻撃を回避しようとするが、何本かの剣がコルドの身体を切り裂いた。傷から真っ赤な血が噴き出していった。

 

「恐れ戦け!それは私がデッドゾーンに閉じ込められている間に暇つぶしにこさえた得物だ」

 

コルド大王を切り裂いた武器たちは直線状にある穴に入って戻り、また別の穴から飛んでくる。コルドは何もすることができず、ただ飛んでくる武器による攻撃を耐え続けていた。その間にもその身体は無数の切り傷に覆われていく。このままいけば、確実に出血多量で死に至るだろう。ガジュニアは勝利を確信した。

 

「本来はカカロットとの戦いの為に使うつもりだったが、周りに他の者がいればこの技は使えなかった…だからウスターなんぞ連れてこなかった。負ける訳にはいかない…さらばだ、コルド大王」

 

「お、おのれ…おのれ…あってはならぬ…常に我が一族が最強でなければならん…!こんな下等な種族が…このわしに勝つことなど…」

 

ズバッ

 

「できんのだ!!」

 

ガジュニアには見えなかった。全ての武器がデッドゾーンに入り込んだ、ほんの一瞬のタイミングを見て、コルドは前へ飛んだ。前方にあった穴から剣が飛び出してくるが、手が切れるのも構わずにその剣を掴み、しっかりと握り直す。

そして穴が取り囲う陣を脱出し、目にもとまらぬ速度でガジュニアに接近したコルドは、その剣を真っすぐに振り下ろしたのだ。

 

「…キサマ」

 

ガジュニアの身体は右肩から左の腰の掛けて切り裂かれ、胴体を真っ二つに切断されていた。

 

「このわしに…こんな素晴らしい武器で誰かを斬らせるとは…恨むぞ」

 

ガジュニアは浮力を失い、ゆっくりと下へ向けて落下していく。それを見送ったコルド大王は宇宙船の方に振り返るが、宇宙船はガジュニアの攻撃の流れ弾を受けて損傷し、黒煙を上げていた。

 

「動くのは無理か…まあいい、わしはフリーザの所へ行って共にサイヤ人の相手でもしてやるか…やはり最強は我が一族でなければならん」

 

コルド大王はガジュニアを斬った血まみれの剣を腰から下げると、幻想郷の出口を目指して飛び立っていった。

 

 

 

 

一方、シュネックの御殿では。

ガジュニアに渡されたアクアの水を呑んだウスターは、新たな力を得るためにその耐え難い激痛に耐えていた。

 

「う…ぐぐ…が…!!」

 

「もうこうして1時間も経った…」

 

それを手出しするなと言われ大人しく横で見ていたシュネックは心配そうにつぶやいた。

しかし、その時、変化が訪れる。ウスターの身体から白い光が薄く漏れ始めたのだ。

 

「お、おお…!」

 

ウスターは苦しみながら肉体の変化を感じていた。月の客の蛇斑にもがれた腕とフリーザにやられたもう片腕が再生していく。また、普段は髪の毛に隠れて見えなくなっている、昔にアルマンドに刃物で斬られた右目と右耳も元に戻った。

最後に眩いばかりの閃光がウスターの体を覆った。シュネックは思わず顔を背けた。

 

「…これは…」

 

立ち上がったウスターは自分の手を見つめながら、自らに訪れた変化を受け入れた。傷だらけで腕や目が欠損していた肉体は健康だったころに戻り、心なしか全身の筋肉もやや少なくなり、背も縮んだ気がする。しかしそれとは裏腹に、その体には今まで全く感じた事もない溢れんばかりの清々しい気で満ちていた。

 

「ウスター…!」

 

「どうやらガジュニアの言ったことは本当だったようだな」

 

ウスターはそう言いながらゆっくりと歩き、御殿の外に出る。

 

「行くのか?」

 

「ああ…今の俺なら誰の足も引っ張りはしない…ようやく俺は役立たずじゃなくなるんだ」

 

そう言うと、全身に白いオーラを纏いながら空の彼方へ消えていった。

天界から抜け出し、幻想郷の空へ到達すると目を閉じ、ガジュニアの気を探る。

 

(アイツはどうなった…?)

 

すると、感じ取った。確かにガジュニアの気は幻想郷の中に感じられる…しかし、かなり減っている。どうやら死にかけているようだ。

 

「何があった…」

 

ウスターはスピードを速め、ガジュニアの気が感じられる地点まで降りていった。

地面に降り、辺りを見渡すと、いた。胴体を斜めに切断されたガジュニアが横たわっている。ウスターはそれにゆっくりと近づき、無表情でそばへしゃがんだ。

 

「ウスター…どうやら、アクアの水をものにしたようだな…私はこのざまだ」

 

「…死ぬ前に教えろ、俺と貴様が兄妹とはどういうことだ?」

 

「ふふ…なぁに、全く大したことではない。ただ、今魔界を治める神綺が私の母親だというだけさ」

 

「神綺、が?」

 

「だから神綺に生み出された魔界に誕生したお前は、いわば兄弟だと言いたかっただけさ…たったそれだけのことだ。さんざん引っ張ってガッカリさせたかな?」

 

「…悪いが俺はもう行くぞ」

 

ウスターはそう言うと立ち上がり、ガジュニアを置いていこうとする。

 

「ま…待て」

 

「なんだ」

 

「確かにお前は強くなった…しかし、コルド大王にはまだ敵わないだろう。そこで提案する…私の全てのパワーをお前に譲ろう…そうすればお前は魔族として最高位のパワーを手に入れることができる…」

 

「…本当か?」

 

「どの道あと数分の命だ…悪くない話なはずだ」

 

「分かった、やれ」

 

ガジュニアはウスターの差し出した手を取り、ほとんど死にかけの体に残った全ての魔力を注ぎ込んだ。量で言えば微々たるもので、足しただけではそこまでの変化はもたらすことができないだろう。しかし、それはアクアの水によって高められた魔族としてのパワーをさらに何倍にも倍増させるきっかけとなった。

 

「不死身…不老不死…父の復讐と復活…全て叶わなかったが、不思議と後悔はない。よく聞けウスター…自分を役立たずだと責めるな…お前に命を譲って死んでいった仲間の遺志を…貶すことになるから…な…」

 

ガジュニアの最後の方の言葉はウスターにはよく聞こえなかった。

彼女が気が付くと、石のように白くなったガジュニアの身体は風が吹くと砂になって散らされ、消えていった。ウスターはそれを見上げると、複雑な顔で空へ舞い上がるのだった。

 

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