もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第160話 「あの一撃さえ無かったら」

ガジュニアを斬り殺したコルド大王は、外の世界で戦っているフリーザに加勢するべく外を目指して幻想郷の空をうろうろしていた。

 

「一体フリーザとあのサイヤ人はどうやってこの世界から出ていったのだ?」

 

そんな事を言っていると、後ろから何者かが飛んでくる音が聞こえた。

 

「カカロットの所へは行かせませんよ」

 

振り返ると、そこには各々の戦いを終えた美鈴、天龍が並んで立っていた。コルド大王はそちらに向き直り、彼らを睨みつけた。

 

「このわしに歯向かうというのなら容赦はせんぞ。だが…我が部下の四天王や多数の兵士たちを打ち倒したその実力…どうだ、我が軍に入らないか?」

 

「…お断りする」

 

天龍がきっぱりとそう言った。

 

「そうか、残念だ。ならばここで殺すしかなくなった!1秒で死ね!!」

 

コルド大王は両手の指先に気を込め、そこから無数のレーザー光線を放った。レーザーは的外れな方向へ飛んでいくが、まるで空中に壁でもあるかのように跳ね返って乱反射を繰り返し、美鈴たちを四方八方から襲った。

 

(よ、避けられない…!)

 

誰もがそう思った。

 

「串刺しになってしまえぇ!」

 

しかし、その時だった。横から吹いてきた突風のような衝撃波が細い光線の向きを全て大きく逸らし、消し去った。コルドと美鈴らの間に何者かが舞い降り、腕を組んだ。

 

「よう」

 

「あ、貴方は…ウスター!?生きてたんですか?」

 

「ああ…色々あったがな。だがそんな話は後だ…俺は今からコイツを倒す」

 

ウスターはコルド大王を睨み返す。

 

「ふっふっふ…また威勢のいいのが来おったな。だが安心しろ、すぐにわし自らがまとめて始末してやろう」

 

「なめるなよ!!」

 

ウスターの飛び蹴りがコルド大王に襲い掛かる。が、コルドは上体を横へ逸らしてそれを躱し、ウスターの腕を掴んだ。が、すぐにウスターは自分の腕をひねって裏返し、コルドの手を振り払うと同時に関節を固定する。そして足を振り上げ、膝で固定した関節を逆に折り曲げるかのように打ち付けた。

 

「なるほど、ムエタイとコマンドサンボの混合か」

 

しかし、コルドはしずかにそう言うとウスターの攻撃を彼女ごと衝撃波で跳ね返した。

 

「な…!」

 

「さぁ、自信満々でわしに挑んできたからには秘策とやらがあるのだろう?見せて見よ!」

 

「ふふ…そんなものはない。何故なら策が無くとも貴様を葬れるからだ!」

 

ウスターはもう一度飛び出し、コルド大王に攻撃を仕掛ける。流れるような打撃と蹴りの応酬でコルドを攻め立てるが、コルドはそのすべてを手で防いだ上で反撃のパンチを顔面にぶつけた。

 

「遅いわ」

 

よろけるウスターだが、負けじとさらに突きを繰り出す。

 

「まさに未熟よ」

 

がら空きになった脇腹へコルドの尻尾を振るった一撃がヒットする。口から血が飛び、ウスターは一瞬白目を剥いた。だがすぐに意識を取り戻し、コルドの両腕を掴んでジャンプし顔面に膝蹴りを喰らわせようとする。

 

「コマンドサンボは破壊の格闘技として有名だが、本当の破壊というものはこうやるのだ」

 

コルドは掴まれている両腕を思いきり開いた。それによりウスターの両腕も開かれ、その上半身が前方へ突き出される。膝蹴りははずれ、逆にコルドが放った膝蹴りが肩に当たり、何かが砕けるような音が響き渡った。

 

「ぐあああああ…ッ!!」

 

ウスターは空中でバランスを崩し、地面へ落下していく。

 

「逃がすか!」

 

コルドもそれを追いかけ、追撃のエネルギー弾を両手から放ち命中させる。

 

「わ、私たちも行きましょう!」

 

美鈴たちも下へ降りていく。

落下していく間、ウスターは何もできないままコルド大王の攻撃に撃たれ続けた。頭の中で思い返されるのは、自分のために死んでいったアルマンドやターレスのこと。

 

「そ、そうだ…負けられるか…!」

 

空中で身をひるがえし、両足で着地する。そして間髪入れずにジャンプし、降りてくるコルド大王の顎へ拳を叩きつけた。だが、次の瞬間にはコルド大王の尻尾の反撃が腹へ重く突き刺さっていた。

 

「ぐは…」

 

もう一度地面に激突する。全身が痛むが、何とか震える全身を突き動かして起き上がろうとする。

 

「こんなはずでは…ない…!」

 

そう、自分はアクアの水で強くなり、さらにガジュニアの残った力を注いでもらってもっと強さを増した。だから誰にも負けないと思った…こんなはずではないのだ。

遅れてやってきた美鈴たちは、はやくウスターに加勢してやらねばと思うものの、何故か体を動かせないでいた。

 

「今すぐ助けてやりたいが…」

 

「ええ…私たちの武道家としての魂が、この戦いを最期まで黙って見届けよと言っている…!」

 

コルド大王は何度でも挑みかかって来るウスターをはじき返しながら言った。

 

「もうお前は立ち上がってくるだけのデクノボーではないか。もういい、わしによって屠られてきた数多の弱者と同じところへ行くがいい」

 

そう言いながらウスターに近寄り、頭の上に手を掲げる。…が、何を思ったのか手をひっこめた。

 

「いや、わしを失望させたお前には罰として武道家にとって不名誉な死をくれてやろう。そう、すなわち武器による死だ」

 

コルドは腰に下げていた、ガジュニアから奪い彼を斬り殺した長い剣を持って構えた。

 

「素晴らしい得物だろう…これでお前を顔面から斬り伏せてやる」

 

(得物で…顔面から…斬り…?)

 

 

コルドの言葉を聞いたウスターは、何か遠い記憶を思い起こした。

全てが変わり、自分にとってすべてが始まったあの夜。寝静まったころ、部屋に忍び寄り自分の目と耳を斬って奪ったアルマンド。

あの時の光景…そして、アルマンドの死。親友をやすやすと死なせてしまった不甲斐ない自分。さらに次々と自分のために死んでいった者たちを思い浮かべる。

そうして、ウスターはようやく気が付いた。

 

(そうか…何故、俺はこれほどまで戦いによって傷ついてきたのか…それは自分自身を許せなかったからだ!あの時、戦争でアルマンドを死なせてから、俺は死に場所を求めて闘い続けてきたのかもしれない。そして無意識のうちに死を望んでいたのではないか!?)

 

──俺はその通り、失ってきた物も多い…だがしかし!これまでに得てきたものも多い!

 

 

 

ウスターは目に光を取り戻した。

 

「これでさらばだ!!」

 

コルドは手に握った剣を素早く振り下ろし、ウスターを真っ二つにせんとした。しかし、ウスターは闘志を称えた表情で顔を横へずらし、間一髪剣撃を回避する。

そして地面にくっつくようにしゃがみ込み、足だけを突き出してコルド大王に足払いを仕掛け、バランスを崩した。前のめりに倒れるコルド大王に向かって、背後に作り出した紫色のオーラの拳を命中させた。

 

ドゴォ

 

「ぐば…!な、なんだ…これは!」

 

「ありがとよ!キサマの言葉のおかげで、大切なことに気が付けた!」

 

さらに、作り出したふたつ目のオーラの腕がコルドに追撃を与える。

 

「過去は変えられない…だがしかし、今は変えられる!失った物を嘆きながら戦うではなく、この俺、魔人ウスターがこれまでに得てきた全てを引き出して戦う!!」

 

よろめくコルド大王。ウスターは生身の両腕、そして気で形成した2本のオーラの腕を自在に繰り出して追いつめていく。コルドは成す術なく攻撃を受け続け、ウスターは口を大きく開け、そこに気を込める。

 

「『魔口砲』!!」

 

口から放たれた気功波が真っすぐにコルドを狙い打つ。空中に投げ出されたコルド大王は頭の中で考えた。

 

(そんな…わしが剣で奴を斬ろうとしたことが、奴に逆転のきっかけを与えてしまっただと…!?なら何故、わしはあの武器で攻撃しようとしたのか?わしは自他ともに認める武器コレクター…だから武器を使って人を殺める事だけは今までしてこなかったのに…!)

 

 

『…わしは武器マニアの一面もあってな…自分なりの美学も持っている。それは美しい得物で生き物を殺さぬことだ。血は刃を錆びらせ、殺された者の魂は武器に乗り移り職人が武器に込めた意志を塗りつぶしてしまうと考えるからだ』

 

 

かつてラーゴンに話した自分の言葉と同時に、ある光景も思い出す。それは先ほどの戦いで、ガジュニアを剣で斬った時の事だ。

 

(そうか…!わかったぞ!あの一撃だ!あの剣の一撃であの者を真っ二つにしたとき、わしの中に暗い快感が生まれた…そして、一発で敵をバラバラにして殺す快感を、わしはまた味わおうとしてしまったのだ。なんということだ…あの一発!!)

 

そう考える間にも、ウスターの気の腕が自分に迫る。大きな腕はいとも簡単に自分の身体を掴んで空高く持ち上げる。ウスターはそれに狙いを定め、もう片方の気の腕から大きな気功波を放とうと構えている。

 

(あの時、剣で斬ろうとさえしなければ!!)

 

「これで終わりだ!!」

 

ついにウスターから渾身の気功波が放たれる。

 

「あの一撃さえ無かったらァ~~~!!!」

 

コルド大王は断末魔の叫びと共に巨大な気功波に呑みこまれた。激しい衝撃と熱に曝され、その肉体を粉々に散らしていく。全てが通り過ぎた後には、そこには一片の欠片さえ残っていなかった。

 

「ウスター…!」

 

天龍と美鈴がウスターに駆け寄ってくる。振り返ったウスターの顔が心なしか、滅多に見せない微笑みを浮かべていたかと思えば、透明な涙の粒が頬を伝い、ぽたりと落ちた。

 

「ありがとよ、助かってくれて…ありがとう」

 

彼女らを助けたウスターが感謝を述べた事に困惑するふたりだったが、これ以上深く追求することは無かった。

 

 

 

 

 

時間は戻り、外の世界・ツルマイツブリ山。

カカロットの前で台風の様な邪悪な気を高め続けるフリーザの肉体の筋肉が盛り上がっていき、小柄ながらも筋骨隆々な姿へと変貌する。

 

「これがお待ちかね、フリーザ様のフルパワーだ!!」

 

…今、地獄の機械が動き出した。

 




ようやく物語が最後の最後に突入できます。これからフリーザとの最終決戦が始まります。
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