もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第161話 「超サイヤ人ってやつかもしれんな」

午前10時 外の世界 ツルマイツブリ山

 

「今こそ見せてやるぞ…このフリーザ様の100%フルパワーの実力をな!!」

 

フリーザは拳を握りしめ、不敵に笑いながらそう言い切った。

 

「100%…フルパワーだと?」

 

それに対し、カカロットは冷や汗を流しながらそう言った。

 

「その通りだ…お遊びはもう終いにしようと思ってな。オレの50%のパワーにようやくわずかに勝てる程度のお前がどうにかできるレベルではないということだけは言っておく。そしてもうすでにオレは60%ほどの力を出しているぞ」

 

よく見ると、確かにフリーザの気が増えていた。しかも、それは止まることなくどんどんと膨らみ続けている。同時にフリーザ自身の体の筋肉が盛り上がり始める。

 

「く…ぐ…70%…!75…80…!」

 

「今度こそ終わりか…?もう俺ではヤツに勝てないのか…!?俺の限界はここまでなのか!?」

 

カカロットの頭に絶望の二文字がよぎる。

 

「…いやいや、まだ終わりじゃない。自分の限界は自分で決める…誰かに勝てないからそこが限界なんじゃない!!」

 

カカロットはフリーザが気を込めさらに気を増幅させるのに対抗するように、自分も全身の気を解き放った。20倍界王拳を発動させ、その全身が真っ赤なオーラが覆う。

 

「20倍のその先へ…!!」

 

「90…95…!!」

 

一方、フリーザもフルパワーへ到達する寸前まで来ていた。

 

「30倍だ!!!」

 

「これがお待ちかねの100%だ!!」

 

両者は同時に今持てる最高の状態へと登りつめた。ついに100%の本気を見せたフリーザは、全身の筋肉が隆起し体格が以前の倍以上になった。限界を超えた界王拳を土壇場で身に付けたカカロットは、巨大な焚き木のように揺らめく紅いオーラがその全身を覆っている。

 

「どっちも準備万端らしいな…では、始めようか!」

 

「ああ!望むところだ!!」

 

両者は同時に飛び出した。そんな中、初撃を繰り出したのはフリーザだった。右手から一発のエネルギー弾を放つが、カカロットはそれをスライディングでかわし、その勢いを利用して蹴りを放った。

 

「きえええいィ!!」

 

フリーザはその蹴りを掴んで止め、そのままカカロットを振り回して氷の上に叩きつけた。深く氷にめり込んでいくカカロットだが、フリーザが自分の足を掴んだままなのをいいことに全身からジェットのように赤い気を放出しながら氷の中を突き進んだ。

 

「く…ぐ…!」

 

頭から降りかかる熱いオーラと体に遠慮なしに激突してくる氷塊を耐えていると、カカロットはようやく地上に飛び出した。

フリーザもたまらず手を放すと、そのチャンスを待っていたかのように空中でのカカロットの回し蹴りが迫っていた。案の定それを喰らい吹っ飛ぶフリーザだが、反撃として両手から巨大な衝撃波を撃った。

 

「む!?」

 

流星のような尾を引きながら高速で飛んで回避しようとするカカロットだが、その衝撃波は思ったよりも大きく、避けきれなかった。とてつもない衝撃がカカロットを襲い、口から血が流れる。

 

「まともに喰らったか!」

 

一瞬浮力を失い、フラフラと落下し始めるが、フリーザが攻撃を仕掛けに迫っているのに気が付いて我に返った。フリーザの繰り出したパンチを下へ移動して避け、勢いを付けてジャンプし、顎へ頭突きをかますことに成功した。

 

「どうだ!?」

 

「チッ…!」

 

フリーザの口の端から血が垂れる。怒ったフリーザはラッシュを仕掛け、カカロットとフリーザの熾烈な肉弾戦が繰り広げられる。

フリーザの一発一発の攻撃はこれまでとは比べ物にならない程重く、カカロットはなんとか防ぎきろうとするものの何発かの攻撃を喰らい続けていた。界王拳を30倍にまで引き上げたにも関わらず、パワーは全く及ばない。

 

(ダ、ダメだ…早くも反動が…!)

 

それに合わせて、肉体の限界はすぐに訪れた。身体の節々が痛み始め、肺が酸素を欲してヒューヒューと音を立てる。

これほどまでに負荷がかかる技を使っても、フリーザには勝てない…そう認識したとたんに訪れた敗北感と絶望が、更なる疲弊を感じさせている。

 

「ふはははは、どうした!動きが止まっているぞォ!」

 

フリーザの放った渾身の拳がカカロットの顔面に深くめり込んだ。吹っ飛ぶカカロットは氷の上に激突するが、跳ねるボールのようにすぐに戻ってくる。

 

「何度やっても無駄だ!オレはくどいのは嫌いなんだ!」

 

しかし、カカロットがフリーザに反撃を行う寸前で、その腕がピキリと引き攣って動かなくなった。フリーザの肘打ちが側頭部に当たり、怯んだスキに両腕を合わせて作った拳による殴打がヒットした。

カカロットはもう一度ぶっ飛ばされ、氷の大地に埋め込まれるようにしてはまってしまった。

 

「ぐ…はあ…はあ…!」

 

完璧な敗北だった。もはやカカロットではどうやってもフリーザを倒すことはできない。

 

「終わりだ、サイヤ人!」

 

フリーザは空高く掲げた指先の上に、バチバチと赤黒いスパークを纏った大きなエネルギー弾を作り出した。フリーザの背後で輝く太陽と重なって影になっていて、それが異様に恐ろしげに見える。

 

「死ねエェ!!」

 

そして、フリーザはそれをカカロットへ向けて投げ飛ばした。

死すら覚悟した。これを喰らっては生き延びられないだろう、と。

 

…だがしかし

 

(…え?)

 

それはカカロットでさえも理解ができなかった。諦めたはずの肉体が、諦めた精神に逆らって動いたのだ。自分の身体は極めて合理的な動きを見せる。フリーザの攻撃が当たる寸前で身をひるがえし、回転しながら間一髪でかわす。自分の髪が焦げる匂いがした。

攻撃は後ろの氷の大地に当たると、激しい爆発と熱を放出した。分厚い氷が一瞬にして解け、その波動は周囲の氷山にまで到達し、粉々に砕く。その衝撃からか、地面からは耐え切れずに噴き出したマグマが柱を作っていた。

 

「なに…避けた!?」

 

驚くフリーザに突っ込むカカロットは、空中での回し蹴りを放った。だがそれはフリーザには当たらず、無様に空を斬ってしまい、逆にフリーザのカウンターを顎へ受けた。

これも、カカロットが意図してやったことではなかった。

 

(おかしいな…体が勝手に動く…。もしかして俺は、無意識にまだ負けちゃいないと思ってるのか?)

 

そこでカカロットはようやく理解した。自分はまだ負けちゃいないと。まだ生きていたい、この星を守りたいと無意識に思っていることに。

そう思ったとたん、目まぐるしく脳が回転する。30倍界王拳を使いつつも、反動を軽減するにはどう動けばいいかを考察する。

 

「うおおりゃあ!!」

 

その結果のパンチを放つ。それはフリーザの頬をかすめるだけであったが、これまでとは違い、不思議と自分の身体は反動による痛みを感じなかった。

 

「はあっ!」

 

続いて放つ蹴りも、今までほど反動を受けない。

 

「キサマ…なんだその姿は…!」

 

何故か驚くフリーザなど目にもくれずに、自分が放てる最高の攻撃を繰り出し続ける。初めのうちは何とかさばいていたフリーザだが、ある一発を皮切りに次々とカカロットの攻撃が当たっていく。最後に手の平から衝撃波を撃つと、フリーザは少しだけ吹っ飛んで急ブレーキをかけた。

 

「サ、サイヤ人は大猿にしか変化しないハズ…!キサマのその姿は何なんだ…説明しろ!!」

 

フリーザはそう怒鳴ると、超能力で氷塊を持ち上げてカカロットに向けて放った。カカロットは少しも動かずにそれを受けると、逆に氷塊が砕け散っていく。

その時、鏡のように滑らかになったひとつの氷のつぶてにふと目を向けた時に、自分に訪れている変化に気が付いた。その体は黄金に輝くまぶしいオーラを放ち、髪は逆立ち、オーラと同じ金色に染まっている。目の色までも緑色に変化し、腰から伸びる尻尾も黄金の毛を纏っている。

 

「さァな…俺でもわからん。だが、もしかすれば…これが話に聞く超サイヤ人ってやつかもしれんな」

 

きっかけは、怒りか…いや違う、カカロットの勝ちたいと願う意志が、またはヒートアップする戦いに対応するためにサイヤ人の血が呼び起こしたのか…ここにひとりの超サイヤ人が誕生していた。

 

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