「ならば…死ねェ────!!」
カカロットは渾身の必殺技、「華光玉」をフリーザに向けて発射した。七色のエネルギー波は捻じれながら勢いを増していき、そしてついに…フリーザを呑みこんだ。
「ぎやあああああああ…!!」
カカロットの放った攻撃はフリーザを巻き込み、巨大な爆発を起こした。フリーザは超サイヤ人と化したカカロットの膨大なエネルギーの渦に晒されて目を見開きながら叫び声を上げた。氷の大地が削れて吹き飛び、その下の地層の岩石がはじけ飛ぶ。
「や、やられてたまるか…サイヤ人なんぞにィ…!!」
しかし、フリーザもそこで倒されはしなかった。負けたくないという強い執念を持つのは、カカロットだけではなかったということだ。
フリーザは強烈なエネルギーの中で両手を広げて自分の目の前に超能力の壁を作り出し、それでカカロットの華光玉を抑えこみ、押し出した。
「おおお…!オレは宇宙の帝王…フリーザなんだ…!!こんなところで…!」
それを見たカカロットは、この戦いに臨む前までからは考えられないような…邪な笑みを浮かべると、腕に更に力を込め、華光玉を大きく膨れ上がらせた。
「そうかよ…だがテメェはこんなところで死ぬんだよ」
カカロットが本気で放った華光玉は一時は耐えたフリーザを呆気なく、濁流のように押し流した。小枝のように滅茶苦茶に回転するフリーザを見て、カカロットは勝利を称えた息をついた。
「…む?」
しかし、その時だった。カカロットは見つけたのだった。死んでもおかしくないようなダメージを負いながらも、まだ生きているフリーザの姿を。
「まだ生きてやがったか…」
カカロットは虫のように地面を這いずるフリーザに近づき、それを見下ろした。フリーザはそれに気づくと、恐怖を浮かべた目を下へ向けた。
「た…頼む…助けてくれ…」
そして、か細い声で命乞いをした。
「あ?何だって?」
「助けてくれ…頼む…」
それを聞き取ったカカロットはフリーザの顔の前でしゃがみ、ゆっくりとその手を差し伸べ、腕を掴んだ。
「駄目だね!」
次の瞬間、カカロットはフリーザの顔面を殴りつけた。そして立ち上がると、さらにフリーザを蹴り飛ばす。
「テメェは助けも殺しもしない…ただ苦しめて命を消すだけだ」
カカロットは脳裏にフリーザに殺された仲間たちの事を思い出す。ダイーズ、アモンド、カカオ、レズン、ラカセイ、ピッコロ、ナッパ、ターレス…そして、兄のラディッツ、何度も共に戦った仲間だったウスター。
それらの人物の顔を思い浮かべるごとに煮えるような怒りが込み上げ、フリーザに喰らわせる暴力の手を強く握らせる。
だが、この時のカカロットはこの必要以上にフリーザをいたぶるという行為を行った事を、激しく後悔することになるとはまだ知る由もなかった───
カカロットは倒れようとするフリーザの首を後ろから掴んで持ち上げ、その背中を何度も殴る。一撃を食らわせるたびに衝撃でフリーザの足がカエルのように伸び、潰れたようなうめき声が響き渡る。
「どうだ?テメェが殺してきた奴らはもっと苦しんでいたはずだ!もしもテメェが不老不死であったなら、俺はそのすべてを味わわせてやったのに!!」
動けないフリーザを投げ捨て、背中を踏みつけた。腕には気で作った剣を伸ばし、それを首へ突きつける。
「だが残念ながらここまでのようだ、お前はここで死ぬ!あばよフリーザ!!」
カカロットは気の剣を掲げ、フリーザの首を切断しようと振りかかった。
…しかし、カカロットは思わず一瞬だけ手を止めた。それは何故かというと、彼には死に瀕したはずのフリーザが笑みを浮かべていたように見え、それが何かしら気にかかったからだ。
その予感は次の瞬間に的中する。フリーザの全身か淡い紫色に光り出し、その光は無数の光の束となって四方八方へ飛び散った。カカロットは腕を体の前でクロスさせながら慌てて飛びのくが、何本かの光が腕をかすめ、鮮血が散る。
「な、なんだ!?」
「コオオオアアアアア…!!」
フリーザは声を上げながら起き上がり、両腕の拳を空へ掲げる。
その時に訪れた変化こそ、カカロットがフリーザにすぐにトドメを刺さなかったことを後悔することであった。筋肉質なフルパワーから細身な姿へ戻りパワーダウンしていたフリーザであったが、その身体は再び膨らみ始め、今度は筋肉のみならず体格と身長までもいくらか大きくなる。
滑らかな体表には、体の節々や首の後ろから背中にかけてするどい棘のような部位が出現し、長く伸びていく。また丸かった頭部もやや後ろにせり出し、白い棘が突き出す。
「バアアッ!!」
目は青く染まり、足の形状は鳥類や四足獣を思わせるような形状に変わっている。斬られたはずの尻尾は再生したが、その先端はこれまでとは違い丸い球状になっていた。
「一体、ヤツに何が…?」
カカロットは空中を漂いながら変貌したフリーザを見つめた。第三形態以前の姿に戻った…という訳ではなさそうだ。最終形態の姿をベースに、全体的に刺々しく進化したようだ。
当のフリーザは立ち尽くしたままただ目の前の一点を見つめている。
「ただ姿が変化したわけじゃねぇ…気も増えてやがる。だがしかし…俺には及ばないはずだ」
カカロットは全身に黄金のオーラをみなぎらせ、フリーザへ突撃を仕掛ける。
「…ふっ」
だが、フリーザはにやりと笑うと、腕を横に振るって向かってくるカカロットをはじき返した。一撃が頬にヒットしたカカロットは口から血を垂らしながら吹っ飛ばされ、ギリギリ空中で踏みとどまる。
「な…!!」
「カカロット、キサマ程ともあろう者が敵の力量を見誤るとはな」
フリーザはカカロットへそう言葉を投げかけた。
「ど、どうやらそのようだな…超サイヤ人の興奮状態が、俺の判断を鈍らせているようだ…」
そう言うカカロットはにやりと笑った。
「何がおかしい?たった今、キサマの力ではこの進化したフリーザ様をどうにもできないと証明されたばかりではないか」
「いや、ようやくテメェが俺と対等以上に渡り合えるようになったと思うと嬉しくてな。それに、たった一撃同士のやり取りで勝敗を決めつけるとは、人の事を言えないぜ」
「そうだろうか?どんなにやっても同じだと思うがな。例えば、虫けらは大鷲には勝てない。それは何度戦わせても同じことだ」
「よく動くようになったのは口だけか?さっさとテメェからかかって来いよ」
「そうかそうか…そんなに今のオレ様の力を見たいか」
フリーザは地面を蹴って跳躍すると、空中にいるカカロットへ一瞬で近づいた。そして拳を後ろへ振りかぶり、それを放とうと構えた。
「遅い!」
しかし、その大ぶりな動きをすぐに見切ったカカロットはフリーザの後ろへまわり、その後頭部へ膝蹴りを仕掛ける。
だが…カカロットが攻撃を出し終えた時には目の前には誰もいなかった。
「その言葉、そっくり返そう」
自分の後ろに影が出来、フリーザの声が聞こえた。次の瞬間には、フリーザが振り下ろした拳の一撃を喰らい、下へ向けて吹っ飛ばされていた。
それを追いかけ、追撃のパンチを放とうとするフリーザ。カカロットは気を持ちなおすとそれを躱し、回し蹴りを仕掛ける。
だがまたしてもフリーザは自分の後ろへ移動しており、強烈な尻尾による殴打を顔面へ受けた。
「あぐっ…!」
しかし、キッとフリーザを睨み返すと後ろへ飛んで距離を取りながら気弾を撃ち出した。が、突然背後に現れた壁のような何かにぶつかり、止まった。先ほどまでフリーザが居た場所には誰もおらず、自分の後ろにいる者が誰なのかを理解したカカロットは青ざめる。
「キサマの敗因はたったひとつだ。それはこのオレを追い詰めすぎて怒らせてしまったことだ。オレはな…自分で言うのも不思議なのだが、戦闘というものを心から楽しめるようになってきていた。きっかけはナメック星での戦いだったか…とにかく、オレはキサマと最高の戦いを経て決着を付けたかったんだ。だが、超サイヤ人と化しサイヤ人本来の残虐性を手に入れたキサマは戦う事ではなくオレを殺すことに執着するようになった。つまり、キサマはせっかく芽生えていたオレの綺麗な意識を踏みにじった。だからオレは激怒し、怒りによって覚醒…フリーザ一族にとっての究極の境地へと達したのだ」
カカロットは恐る恐る振り返る。
「残念だぞ…キサマが超サイヤ人なんぞにならなければ、オレはお前の強さとサイヤ人の偉大さに感服し、負けを認め、潔く手を引いたかもしれないのに」
「うるせェ────ッ!!!」
カカロットはそう怒鳴ると無数のエネルギー弾を両腕から放ち、至近距離からフリーザに浴びせる。その衝撃と爆風に押されるフリーザはだんだんと地面へ降下していく。
「今度こそここで消してやる!『華光玉』!!」
両腕を腰の横へ引き、そこへ虹色の気弾を作り出す。それを一気に放ち、煙に包まれているフリーザへ命中させた。
「ふん」
しかし、フリーザは軽く笑うと華光玉の光の中を逆に上って突き進んでいき、カカロットの目の前から顔を出した。そして驚愕するカカロットを思いきり殴って吹っ飛ばし、追撃として強烈な飛び蹴りを喰らわせた。
「ぐおおおああああああ…!!」
地面に押し付けられるカカロットは苦しみの悲鳴を上げた。
今回は戦闘力は無しで。
逆にフリーザが、芽生えつつあった穏やかな心と激しい怒りで覚醒する展開にしてみました。