もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第165話 「俺はお前にとっての悪魔になる」

「だがしかし!」

 

カカロットとブロリーが引き起こした大爆発の衝撃は、フリーザへ大ダメージを与えたかに見えた。が、当のフリーザはその直後に全身から気の突風を発生させ、煙と炎を吹き飛ばした。その姿は、やや煤がつき傷ついたものの、大したダメージを受けた様子はないように見えた。

 

「化け物め…」

 

カカロットがそう声を漏らし、ブロリーも予想外なほどタフなフリーザを見て顔をしかめ、額に汗を浮かばせた。

フリーザが地面へ降り立つと、ふたりも地面へ降りる。

 

「素晴らしいぞ…ふたりの超サイヤ人のパワーは、正直言ってオレ様の想像を超えていた。だがな…オレ様自身も貴様らの想像を超えることは容易だ」

 

「…何が言いたい?」

 

「先ほどのオレ様とカカロットとの戦いの中でヒントはあった。キサマが超サイヤ人になる前の事だ…このフリーザ様は徐々に戦闘力を上げ、フルパワーへと近づいていったよな?」

 

それを聞いたカカロットは青ざめる。

 

「ま、まさか…!」

 

「その通りだ!つまりこのオレ様も、この姿における全力の50%ほどのパワーしか出していなかったという事だ!」

 

フリーザの全身から鋭い青色のオーラが立ち昇り、その気がこれまでよりも大きく膨れ上がる。それは今までカカロットが感じてきたどんな気よりも冷たく、マグマの大地へと変わったこの一帯が再び永久凍土へと変わってしまったかのようだ。

 

「俺たちじゃ…勝てねぇ…!」

 

カカロットが震えながらそう弱音を吐いた。だが、ブロリーだけは歯を食いしばって唸ったままフリーザをじっと睨みつけていた。

 

「ウルラアァッ!!」

 

そして地面を蹴って飛び出し、フリーザに殴りかかった。だが放った拳は虚しく空を斬り、拳圧による衝撃波が遠くの山にぶつかり、次々とクレーターを作る。

 

「ふははは、当たらないぞそんな遅い攻撃は!」

 

フリーザはブロリーの攻撃をかわしつつ、その顎へパンチを喰らわせる。フラつくブロリーだが、気合で踏みとどまると片腕からエネルギー弾を無数に撃ち出しつつ距離を取る。しかし、フリーザは雨のような攻撃にさらされつつもやはり何のダメージも受けておらず、一瞬にしてブロリーとの距離を詰めるとお返しのエネルギー波を放とうと腕を構えた。

 

「ちぇりゃあッ!」

 

その時、迫っていたカカロットが拳を振りかぶっているのを視界の端に捉えた。

 

「その手はもう食わんぞ!」

 

フリーザはすかさずカカロットを蹴りつける…と同時に、長い足の指を駆使してそのまま顔面を握るようにして掴んだ。そのまま地面へ押し付け、衝撃でクレーターができるほど強く踏みつける。

ブロリーはカカロットを助けようとラリアットを仕掛ける。それはフリーザに命中するが、フリーザはそのまま身体を一回転させて態勢を立て直し、反撃のサマーソルトを喰らわせた。さらにフリーザは怯むブロリーに背を向けると、なんと背中に2列に聳える棘を一気に伸ばし、串刺しにせんと襲い掛かった。

寸前で気付いたブロリーは上手く棘を躱し、そのうちの1本を噛みついて止め、最も太い棘を両脇に挟んで固定した。

 

「グ…!」

 

だがブロリーにはそれが手一杯であった。フリーザはそれを見抜くと、今度は両肘にある白い棘を操作し、後方へ目いっぱい伸ばした。

またもブロリーは回避しようとするが間に合わず、腕と脇腹を深く斬られてしまう。致命傷にはいたらないが、鮮血が飛び、ダメージはかなり受けただろう。

 

「ははははは!次でトドメだ!」

 

フリーザは棘を縮めて元に戻し、痛みで思わず座り込んだブロリーに向けてもう一度棘を伸ばそうと構えた。

 

「俺を忘れるなよフリーザァ!!」

 

カカロットはブロリーを突き飛ばして棘の軌道上から退かし、自らがそこへ立って全身から球体状のバリアーを張った。フリーザの棘はバリアーにぶつかって止まるが、それでも先端は今にもバリアーを突き破りそうだ。

 

「ふっ、その程度では止まらないぞ」

 

しかし、棘はまるで触腕のように動き、カカロットのバリアーを四方から同時に破壊しようと圧をかけた。フリーザがさらに力を込めると、バリアーはガラス玉のように砕け散り、カカロットは全身を棘で切り裂かれた。

 

 

「そんなバカな…ブロリーとカカロットがふたり掛かりでも全く敵わんとは…!今のフリーザはそれほどまでに化け物だというのか…」

 

それを遠くの氷山の上から見ていたパラガスはわなわなと震えながらそう呟いた。

 

「ぐお…!」

 

その視界の先では、カカロットは倒れ込み、ブロリーの横にまで吹っ飛ばされた。フリーザは苦しみながら立ち上がろうとする二人に向き直り、ゆっくりと近づきながら言った。

 

「…せっかくふたりの超サイヤ人が手を組み、限界状況を脱したは良いものの、キサマらには新たなる限界状況が迫っているようにも見えるな。仲間との繋がりが限界状況を突破できるということはさっき証明された…そしてそれをもう一度やられては面倒だ。どぉれ、芽は早いうちに抓んでおくとするか?」

 

そしてフリーザは腕のみを首の後ろへ回し、自分の背後を指差した。その後に体ごと後ろへ向き、全身にみなぎっているエネルギーを腕、そして指先に移動させ、3発のエネルギー光線を連続で放った。

 

「!?」

 

その攻撃はすばやくその方向へ飛んでいき、目的の場所へ命中した。そう、氷山の上に居たパラガスであった。

フリーザの3発のビーム全てが的確にパラガスの胸を撃ち抜いた。パラガスは血を吐きながらよろよろと倒れ込む。その時、腕にはめていたブロリー用の制御装置がはずれ、パラガスの目の前を転がっていった。

 

「サイヤ人は誰であろうと皆殺しだ」

 

カカロットとブロリーは唖然とその光景を見つめた。フリーザが的確な連撃でパラガスを仕留めた事に驚いたのではない、呆気なく外野の者を攻撃したその所作に驚いたのだ。

 

「キサマとの楽しかった戦いもここまで…どんな遊びも終わりが来るものだ」

 

続いて、フリーザはもう一度指先から光線を発射した。今度はもう片腕で光線を撃った方の腕の手首を掴み、両手分のエネルギーを込めた高威力のものだった。それはビュウと空気を圧縮しながら飛んでいき、カカロットの左胸を正確に抉った。

 

「ナメック星で、ターレスというサイヤ人が、このオレ様が徒党を組んだサイヤ人を怖れている、と看破したらしいな。今気付いた…サイヤ人が徒党を組むことこそ、自分らが陥った限界状況を打破する唯一の方法であり、ターレスは既にそのことに気付いていたらしい。だが、煩わしくオレ様に付きまとってきたサイヤ人も、今日この時をもって絶滅する!」

 

フリーザは指先を真上へ掲げ、そこへ燃える太陽のような黄金の巨大なエネルギーの球を作り出す。

その間に、胸を抉られたカカロットは口と胸から血を流し、フラフラと後ずさり、岩にぐったりと寄りかかるようにして倒れた。ブロリーは瞳孔の開いた目でフリーザと横たわるパラガスがいる場所、そしてカカロットを交互に見るばかりだ。

 

 

胸に3つの風穴が空いたパラガスは、信じられないと言った様子で傷口を見ると、ばたりと倒れた。ビームで心臓ごと射抜かれており、パラガスの周囲は血の海となっていく。

だが、そんな中でも、老いてこそいるがサイヤ人の生命力は健在であるパラガスは気力を振り絞り、前へと這うように進み出した。

 

「ぐ…はぁ…はぁ…!」

 

自分がすぐに死ぬことは分かっている。むしろ自分は今日死ぬつもりでブロリーと共にこの場所へやって来た。死への恐怖と後悔はほとんどなかった。

しかし、これだけは今やらなければならないという事が出来た。

 

「ぶ…ブロリー…!俺は復讐に囚われて生き、お前には…何一つとして、父親らしいことはできなかった…やったことと言えば、お前に装置を取り付け力をコントロールできるようにしたことか…」

 

パラガスは這いながら、少し離れた場所へ飛ばされた制御装置の方へと進んで行く。

 

「ベジータが既に死んだと聞いた時…いや、地球で暮らし始めた時か…俺が望んでいた復讐とは何だったのかと思うようになった…なんと小さな事だったのだろう、と。そんなダメな父親である俺だが、最期だけは…父親らしいことをさせてくれ…」

 

いよいよ制御装置へとたどり着くと、パラガスは震える腕を上げ、拳を構えた。

 

「今だけは、サイヤ人の未来とか…フリーザとか…どうでもいい…。たとえお前が悪魔と呼ばれようと…全宇宙を敵に回そうと…ブロリー…!俺だけは、いつまでもお前の味方だ」

 

その拳を振り下ろして叩きつけ、制御装置を粉々に破壊した。装置はバチバチと火花を散らすと、やがてそれも消え、完全に機能を停止した。それと同時に、横たわるパラガスは二度と顔を上げることは無かった。

 

 

「この星ごと…消えて無くなれッ!!」

 

フリーザがカカロットとブロリーを地球ごと消し去ろうと、巨大な眩いエネルギー弾を投げつけようとしたその時だった。ブロリーが大口を開け、天を揺るがすような巨大な咆哮を轟かせたのだ。

 

「…ウオオオオオオオオオオオオオオアアアアア…!!!」

 

怒りの叫びではなく、哀惜の慟哭…。たったひとりの肉親であったパラガス、そして唯一仲間として呼べたカカロットの死がきっかけとなって、今まで奥へと押し込んでいた…人生で募り募っていた感情を声とともに解き放った。

 

「な、なんだ…何が起こっているというのだ…あのサイヤ人に…!」

 

ブロリーを中心にして、周囲全てを照らすような緑色の閃光が波紋状に放たれる。額に装着されていたが機能を失った制御装置は壊れ、枷の無くなったブロリーは変貌する。

髪の毛はさらに激しく逆立ち、青混じりの金から緑混じりの金へ色を変える。目はグルリと白目を剥き、全身の筋肉が膨れ上がり、身長までもが巨大化した。以前とは比べ物にならないほどに鋭く大きな黄金の気を纏うその姿は、カカロットのような超サイヤ人とは一線を画していた。

 

「ギ…!」

 

ブロリーは溢れ出るパワーを感じ取るかのように喉を鳴らし、息を切らしながら肩を落とした。

 

「キサマは…!?」

 

その様子に驚いたフリーザはそう呟きながら後ずさった。ブロリーはゆっくりと振り向き、フリーザを指差して口を開いた。

 

「…フリーザ…俺はお前にとっての、悪魔になってやる」

 

「…ふ、ふは…ふはははは!すこし大きくなったくらいで図に乗りやがって!どうしても覆せぬ実力の差というものを、何度でも見せつけてやるわ!ハアッ!!」

 

フリーザは全身から青い気を放出しながらブロリーに向かって飛びかかる。しかし、ブロリーは冷静にそれを見据えると、足を少し開き、腕をぐっと引いて構えた。

 

「1秒で死ね!サイヤ人!!」

 

その間にも目を見開いて必殺の一撃の繰り出したフリーザ。さあ、これであの忌々しいサイヤ人が…それも最後の一匹が死に絶える。何十年もの間、煩わしく自分に盾つき続けてきたサイヤ人はこの時を持って滅ぶのだ。

 

…否。

 

フリーザの放った腕の一振りを、上体を横へ傾けてかわすブロリー。そして体をひねり、全身の力を乗せつつ丸太のような腕から撃ち出される渾身のパンチのカウンターを発動し、それをフリーザの鳩尾に深くめり込ませた。

 

「おご…!」

 

フリーザは目玉が飛び出すほどに強い衝撃を受けた。口から血と唾液を吐き出し、鳩尾に刺さった拳が背中を盛り上げる。突き抜けて貫通した衝撃波が後ろへ向かって飛び、遠くの山を砕く。

ブロリーはガクガクと震えるフリーザの耳元で呟いた。

 

「言っただろう?俺はお前にとっての悪魔になると」

 

 




カカロット
【挿絵表示】
(CV:野沢雅子さん)
博麗霊夢(CV:小清水亜美さん)
ウスター(CV:朴璐美さん)

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