もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

167 / 551
第167話 「この世で一番の悪魔だった」

フリーザは腹を押さえながら後ずさり、ブロリーを睨みつけた。ブロリーは相変わらず白目を剥き、筋肉質で大柄な体を揺らしながらゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「デヤアァ!」

 

そして一気に間合いを詰め、フリーザの首を掴むと空中で振り回し、思い切り地面へ叩きつけた。地面が振動し、砕けて巨大な谷ができる。両者は取っ組み合いながらそこを落下していく。

 

「ぐっ…!」

 

何とかしてブロリーの手を解こうとするフリーザは、首を掴む腕を闇雲に殴りつける。しかしブロリーはそれをものともせず、もう反対の腕で反撃のパンチをお見舞いした。吹っ飛ばされるフリーザは降ってくる空中の岩に激突し、何とか踏みとどまる。

しかし、全身に緑色のバリアーを纏ったブロリーが突進を仕掛けてくると、フリーザは石ころのようにもう一度吹っ飛んでいく。息を切らしながら、追撃を放とうとするブロリーを目で追おうとするが、既にブロリーは背後に移動しており、至近距離からのエネルギー弾の炸裂を受けた。

 

「ぐああああッ!」

 

フリーザは体から煙を吹きながら宙を舞う。何とか態勢を立て直そうとブレーキをかけ、ブロリーを探して辺りを見渡す。

 

「い、いない!?」

 

だが周囲を見ても、後ろにも下にも上にも、ブロリーの姿は見えない。

その時だった。背後の壁が爆発し、なんとそこからブロリーが飛び出してきた。フリーザが気付いた時にはもう遅く、ブロリーはフリーザの顔を掴み、そのまま高速で飛んで反対側の壁に叩きつけた。

 

「カカロットと親父の痛みを思い知れ…!」

 

壁に出来た巨大なクレーターの中心で、ブロリーはフリーザの顔面をグリグリと岩に押し付けた。

 

 

その直後、谷の中で巨大な爆発が起こり、緑色のオーラが空に向かって噴き出した。ボロボロになったフリーザが打ち上げられ、地面に落ちる。谷の中からブロリーがゆっくりと登ってきて地面に降り立つ。

 

「もう終わりか?」

 

「ぐ…こんなはずでは…」

 

そう問いかけたブロリーと、震えながら立ち上がろうとするフリーザ。

 

「この悪魔が…お前を地獄へと堕としてやる」

 

ブロリーはジャンプし、フリーザの背中の思い切り踏みつけた。

 

「ぐはあッ!!!」

 

ただ落下の威力だけでなく、気の推進力やブロリー自身のパワーも加わっているのでフリーザを襲った衝撃とダメージは想像を絶するだろう。

血を吐き、絶句するフリーザを、今度は上空からエネルギー弾を撃って炸裂させ吹っ飛ばす。すかさずそこへ高速で飛んでいき、頭突きを食らわす。そして回し蹴りを繰り出して遥か彼方へ飛ばした。

ブロリーはその方角へ向けて疾走し、地面に横たわるフリーザを蹴り上げた。

 

「ぐおあぁっ…」

 

そしてもう一度エネルギー弾を食らわせ、爆発させた。

その後もブロリーはただ無意味にフリーザに攻撃を加え続ける。そう、この時のブロリーは知る由もなかった。自分が先刻のカカロットと全く同じ過ちを犯していることに。

 

「きえええい!!」

 

フリーザは額に血管を浮かばせるほどのパワーを腕に込めると、渾身の光線を手の平から発射した。扇状に広がるそれは容易にブロリーを包む。大量の粉塵が巻き上げられ、地面も扇状に吹き飛んでしまうほどの威力だった。

しかし、エネルギーが過ぎ去ると、全く無傷のブロリーがニヤリと笑いながら立っていた。それを見たフリーザは唖然とし、固まってしまう。

 

「何なんだ、今のは?」

 

そしてフリーザの頭を掴んで持ち上げる。

 

「ここがお前の死に場所だァ!」

 

トドメを刺そうと、ブロリーは右腕を振り上げた。この一撃で頭部を叩き潰せば、流石のフリーザも死ぬだろう。ブロリーは握る拳に憎しみから来る力を込めた。そして、その拳を振り下ろす。

だが、その時だった。フリーザはブロリーの拳を受け止めた。そして全身から青いオーラを一気に爆発させると、その全身の筋肉が肥大化する。それは、フリーザが最終形態の時に見せた100%フルパワー状態の時のものと似ていた。

 

「な、何…!?なんてやつだ…!」

 

ブロリーはさらに上がるフリーザの気を感じて恐れおののき、じりじりと後ずさる。フリーザは白目の無い青い目を見開き、唸るような不気味な声を漏らしている。

 

「ウガアァッ!!」

 

正気はないようだった。フリーザのパンチがブロリーの腹へ突き刺さる。痛みに怯むブロリーだが、上空へ飛び上がって距離を取る。そして拳を前に突き出し、急降下して攻撃を仕掛けた。

その一撃はフリーザの顔面にヒットする…が、フリーザが前へ一歩踏み出すとブロリーは止まってしまい、発せられた衝撃波に撃たれて吹っ飛ばされる。

 

「バ、バカな…コイツはまだ進化するというのか…!」

 

逆転に次ぐ逆転、その更なる逆転…どちらかが先へ抜きん出れば、もう片方がそれを追い越す。

フリーザの攻撃は、その有り余るパワーに頼った力任せな攻撃だった。だが、それでもブロリーにダメージを蓄積させるには十分すぎた。

 

「あぐ…う…!」

 

フリーザの打撃が次々とブロリーにヒットしていく。ブロリーは圧倒的なパワーに完全に押され、成す術もなく岩壁に叩きつけられた。その後もフリーザは攻撃の手を休めず、ブロリーごと岩盤を掘り進んでいく。

 

「あがあああッ!!」

 

そして、フリーザのトドメの一発とでも言わんばかりのエネルギー波が迫る。両腕を前に構え、何とかその攻撃を受け止めようとする。

 

ズドン…

 

いざその攻撃を受けると、あまりの重さにブロリーの足が地面にめり込み、土を削りながらどんどん後ろへずり下がっていく。やがて両腕だけでは抑えきれなくなり、上半身全体で抱き込むようにして防ごうと粘り出す。

 

「ウオオオアアアアア…!!」

 

雄叫びを上げながら出せる全ての力を込めつつ、それをエネルギー波へ変えて胸から一気に放出するブロリー。それはフリーザの攻撃を少しずつ押し始め、やがて爆発を起こして相殺した。

が、ブロリーは疲労を隠しきれず、息を切らしながら膝をついた。そして次の瞬間、前方の爆炎を切り裂いて飛び出してきたフリーザの飛び蹴りが顔面にヒットし、ブロリーは後ろへ倒れ込んだ。さらに追撃を浴びせようとしてくるフリーザに対し、手から細かいエネルギー弾を連続で放つブロリー。しかし、フリーザはそれを受けつつもはじき返しながら突進で接近し、頭突きをブロリーの胸に浴びせた。

 

「ぐあああああッ!」

 

痛みに悲鳴を上げるブロリー。しかし、歯を噛み締めて唸りながら拳を振るう。それはフリーザに当たるが、フリーザは不敵に笑うと顔面に拳が当たったままさらに前へ踏み出し、反撃のカウンターパンチを叩きつけた。

 

(…!まさかコイツ…)

 

ブロリーは今のフリーザの動きを見て、まさか正気に戻っているのではないかと疑った。しかし、次の瞬間に獣のように叫びながらブロリーに猛攻を仕掛ける様子を見て、考えすぎか、と思った。

だがそう思ったところで、ブロリーにはもうフリーザに勝てる見込みは無かった。フリーザは倒れるブロリーを見ながら上空へ上がると、胸や頭部の紫色の半透明な体の部位を発光させ、その光を放とうとした。

ブロリーは立ち上がって避けようとするが、足が言うことを聞かない。苦しげな表情を浮かべながらフリーザを見上げる事しかできない。

 

(すまん…カカロット…親父…そして仲間だった皆…俺もここまで、か…)

 

「させるかァァ!!」

 

しかし、その時だった。カカロットがそう叫びながらどこからか飛び出し、フリーザを背後から羽交い絞めにした。フリーザは振りほどこうともがくが、カカロットはびくともせずに離れない。

 

「カ…カカロット…!?生きてたんだな!?」

 

確かに、先ほどフリーザから受けた胸への一撃は致命傷だったはず…。それは間違いではない。カカロットは超サイヤ人を維持する気力を失って黒髪の普通の状態に戻っており、胸には痛々しい傷がそのままになっている。

 

「へへ…確かに死にそうだが、まだ死んでも死にきれねぇんだよ…!自分の死に方は自分で決める!!」

 

フリーザは後ろへ肘を向け、カカロットの傷口を殴る。カカロットは苦し気に血を吐き出し、力が緩みそうになってしまう。

しかし、何かを決めたように目を見開くと、なけなしの気を振り絞ってもう一度超サイヤ人に変化し、そのパワーを発揮した。

 

「ブ、ブロリー!今のうちにお前の最高の攻撃を叩きこめ!!」

 

「何だと…!しかし、それではカカロットが…」

 

「構うな!どうせもう長くはない…やるんだ!お前の全てをかけた全力なら、コイツを倒せるかもしれねぇんだ!!」

 

「ッ…ハアアアア…!!」

 

ブロリーは感情ごと唾を呑みこむと、手を後ろに引いて構えた。そこへ周りが緑色に染まるほどの大きな気を集中させ、それを急激に縮めて圧縮し、手の平で握りこむ。そして振りかぶった腕を回し、渾身のエネルギー弾を投げ飛ばした。

そのエネルギー弾は粒のように小さかったが、込められた気の量は尋常ではないだろう。その弾が高速で空中でカーブし弧の軌道を描きながら、カカロットに羽交い絞めにされたまま動けないフリーザに迫る。

 

(これでいい…フリーザを倒せるのなら…!)

 

「一緒に地獄へ行こうぜ、フリーザよ…」

 

カカロットは目を潰り、エネルギー弾が空を斬りながら飛んでくる音を聞いていた。

 

「バーカ」

 

しかし、突然耳にあざ笑うようなフリーザの声が入り、ビクッとした。その直後、自分の身体が意志に反して浮かび上がり、前へ投げ飛ばされた。

 

「え?」

 

目の前には、すぐ数センチのところまで迫っていたブロリーのエネルギー弾。カカロットは理解した。自分はフリーザによって投げ飛ばされ、盾にされたのだと。

それに呆気にとられたのは、ブロリーも同じだった。もうカカロットへ向かう攻撃を止めることはできない。

 

(アイツ…やっぱり素面だった…!!)

 

緑色のエネルギー弾はカカロットの胸に当たると、その途端に巨大化し、緑の炎を吐きながら地球を揺るがしてしまうような大爆発を起こす。放った本人であるブロリーですら腕で顔を守り、爆風で後方へ吹っ飛ばされそうになる。

 

 

 

…爆発が治まると、ブロリーは周囲を見渡した。冷たい風の音が鳴り、火照った自分の体を冷やす。

 

「確かに、今の一撃がまともに当たっていれば、オレ様もただではすまなかっただろうな」

 

ゆっくりとした足音と共にフリーザの声が聞こえた。ブロリーが恐る恐るそちらへ振り向くと、ほとんど無傷のフリーザが立っていた。

 

「だが、キサマはオレ様の芝居にまんまと騙されたという訳だ」

 

「カ…カカロットは…!」

 

「今ので粉々に消し飛んで死んだぞ。オレ様が殺したんじゃあない…キサマが殺したんだ!」

 

「お、俺が…!?」

 

「その通り!サイヤ人であるキサマが、あのサイヤ人を殺したのだ!」

 

フリーザの放った蹴りが、避ける間もなくブロリーの顔面に当たる。鼻血がふきだし、倒れようとするブロリーへフリーザの連続攻撃が浴びせられる。

 

「だがこれこそサイヤ人じゃないか!仲間同士で殺し合うのもサイヤ人の習性なのだからな!」

 

遠ざかる意識の中、ブロリーの戦意は無くなった。

 

(俺が…殺した…カカロットを…。やっぱり、俺が…この世で一番の悪魔だったんだ…)

 

わずかな期間で知り合った幻想郷の人達や、霊夢やその娘のシロナに何と言おう。彼らが悲しみ、自分に向ける怒りの顔が容易に想像できる。

 

「さようなら、このフリーザ様にここまで闘った最初で最後のサイヤ人!!」

 

ブロリーの髪が黒に戻り、体の筋肉が急激にしぼんでいく。通常の状態へ戻ってしまったブロリーは、もはやトドメを刺されるのを待つだけだ。

フリーザは両目をカッと見開き、そこから2本の光線を発射した。

 

 

 

「綺麗じゃない弾幕ねぇ」

 

「…!?」

 

その時だった。ブロリーの耳元で、そう呆れたような声が聞こえた。ブロリーの体が何者かに抱きかかえられ、そのまま空を飛ぶ。光線は今までブロリーがいた場所に当たり、爆発を起こした。

 

「…誰だ貴様は?」

 

フリーザは怪訝な顔でそう尋ねた。

 

「誰でもいいでしょ?ま、名乗るとすれば…博麗霊夢、っていうのよ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。