もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

168 / 552
第168話 「でも、負けてあげない」

「…誰だ貴様は?」

 

フリーザは怪訝な顔でそう尋ねた。

 

「誰でもいいでしょ?ま、名乗るとすれば…博麗霊夢、っていうのよ」

 

霊夢は抱えたブロリーを置きながらそう言った。

 

「ハクレイレイム?知らんな、地球人の名前など」

 

「今知ったじゃない。っていうか、カカロットはどこ?」

 

フリーザとブロリーにそう尋ねる霊夢。ブロリーは顔をしかめながら下を向き、フリーザは笑いながら腕を組んだ。

 

「ふはははは!カカロットはそのサイヤ人に粉々に吹き飛ばされて死んだところだ!」

 

「…ブロリーさん、本当なの?」

 

立ち上がったブロリーは申し訳なさそうに小さく頷いた。

 

「カカロットはフリーザを捕まえて、自分ごと攻撃するようにオレに言った…しかし、俺の攻撃が当たる寸前でフリーザに投げ飛ばされ、そのままカカロットだけが喰らって死んだんだ…」

 

パシィン…

 

と、その時、霊夢はブロリーの頬へ平手打ちをぶつけた。音が広範囲にわたって響き、ブロリーの頬に赤い手形がついて腫れ、口の端から血が流れる。

ブロリーはよろよろと後ろへ下がり、放心したようにまた座り込んだ。

 

「これでその事はチャラにしたげる!」

 

(あの地球人…これまでの奴らと根本的に何かが違う…どういうことだ)

 

その様子を見ていたフリーザはそう思った。今のビンタ一発に、ブロリーをダウンさせることのできる威力が込められていたとは思えない。如何に頬を腫らせたとしても、それはブロリー自身にとっては大したダメージにならないからだ。

つまり、ブロリーはその一瞬に発せられた霊夢の気迫やオーラだけで圧倒され、腰を抜かしてしまった…とも考えられる。

 

「そしてフリーザ…アンタには多くは語らないわ。ただ、この一言だけを送る。”許さない”」

 

「ほう?まさか、勝てると思っておるのかね?このフリーザ様に」

 

「さァね…でも、負けてあげない!」

 

霊夢が格闘の構えを取ると、その時目つきが変わった。しかし、その表情はこれから怪物のようなフリーザと戦うにしては不思議なほど清々しく、微笑みすら浮かべていた。

 

「愚かな事だ!」

 

フリーザは一瞬にして霊夢の前に移動し、拳の一撃を繰り出した。が、霊夢は消えるようにして躱し、フリーザのサイドから飛び蹴りを仕掛けた。フリーザも同様に消えるようにそれを避け、肘打ちを繰り出す。

霊夢は下へ寝そべるようにスライディングしてそれを躱すが、フリーザは足を踏み下ろし、それが霊夢の顔面に当たる。

 

「…『霊力開放』!!」

 

霊夢はそう叫ぶと、全身から霊力を赤い気として放出しつつ纏い、フリーザを吹っ飛ばした。空中を拘束で舞うフリーザに追いつき、回し蹴りを繰り出す。

しかし、フリーザはそれを腕で受け止めると、目から衝撃波を放って反撃する。霊夢は両腕を前に構えて何とか衝撃に耐えるが、フリーザは何度も同じ攻撃を繰り出し、徐々に霊夢を追い立てていく。

 

「波あああああッ!!」

 

霊夢は攻撃の合間を見計らい、両腕を広げて全身に気を込める。その気を両手に集中させて握りこみ、フリーザへ投げつける。フリーザは飛びながらそれを回避し、霊夢へ迫っていく。霊夢もフリーザに突撃を仕掛け、両者は互いに衝突した。

赤いオーラと青いオーラが火花となって飛び散り、その中心ではふたりのパンチが互いの顔面を捉えていた。その衝撃で互いに反対側に吹っ飛ぶが、フリーザは咄嗟に霊夢の足に自分の尻尾を巻きつけ、振り回して投げ飛ばした。

 

「く…まだまだよ!」

 

霊夢は空中で踏みとどまると、全身に纏う赤いオーラを体から分離させ、ガラスのように透明で鋭い刃へと変じさせた。先ほどのカーボネドとの戦いでも使用した技である。

 

「『夢想霊刃』!!」

 

それを一斉に放ち、フリーザを斬りつけるように飛ばす。フリーザはそれらを避けきろうとするが、何発かの刃は体を掠り、切り傷ができる。

 

「…小癪な!」

 

フリーザは炎のような青いオーラを纏い、霊夢に迫る。霊夢は無意識に頭をガードしようとしていたが、それをあざ笑うかのようにフリーザは腹部へと蹴りを突き刺した。

 

「がはっ!」

 

霊夢は唾を吐き、身体を九の字に曲げる。フリーザは追撃として肘打ちを霊夢の後頭部へ当て、下へ向けて吹っ飛ばした。

 

「ぶっ潰れろ!!」

 

フリーザは指先に紫色のエネルギー弾を作り出し、ボンと巨大化させる。スパークを纏うその球を霊夢に向かって投げ飛ばす。

間一髪受け身を取って地面へ着地した霊夢はその攻撃の接近にハッと気付き、両手で受け止めようとした。しかし、霊夢のパワーではフリーザには及ばず、グングンと押されてしまう。

 

「むううう…やああああああッ!!」

 

その時、霊夢は全身に気を込めた。その全身から柱のような気が空へ立ち昇り、フリーザのエネルギー球を相殺した。

 

「なに!?」

 

それを見たフリーザは動きを止め、気の柱の直撃を躱した。

やがて柱は空へ登り切ると消えていき、すると地面に出来たクレーターの中心に霊夢が立っていた。上着の巫女服が破れ、さらしを巻いた上半身が露わになっている。さらに、どうも様子がこれまでと打って変わって違う。体からは緩やかな赤いオーラに混じって青い線のような気が立ち上り、髪はまばらに逆立ち、目は閉じていながらも鋭い視線がこちらに刺さってくるようだ。

 

「何なんだ…ヤツの変化は…」

 

フリーザがそう言いながら怪訝そうに目を細めた。

 

「いくぜフリーザァ!!」

 

夢想天生を発動させた霊夢はフリーザに向けてそう怒鳴りつけると、地面を蹴って飛び跳ね、一瞬にして接近した。そして鋭い蹴りを繰り出し、フリーザはギリギリかがんでそれを避ける。

 

(速い…!)

 

そう思った瞬間、いつの間にか繰り出されていた霊夢のパンチを顔面に受けた。霊夢は後ろへ仰け反るフリーザの腕を掴んでもう一度引き寄せ、強烈な頭突きを叩きこむ。さらに追撃として膝で顎を蹴り上げた。

 

「ふん!」

 

しかし、その攻撃をものともしないフリーザは連続で突きを放った。一瞬にして何発もの拳が霊夢を襲うが、その全てがまるで霊夢を透けるようにして当たらなかった。フリーザは自分の目を疑った。それに動揺したスキを突かれ、霊夢の蹴りが胸に当てられる。

 

(馬鹿な…今の感じは何だ!?攻撃が透けたぞ!)

 

フリーザは蹴りを交えた連撃を浴びせるが、やはり霊夢には当たらない。

 

「どこに打っているんだ?」

 

背後から聞こえた霊夢の声を聴いてギョッとした。次の瞬間、背中で炸裂したエネルギー弾により吹っ飛ばされた。

何とか空中で止まるが、また背後から霊夢の突進を受け、前のめりに倒れ込んだ。

 

 

「す、すごい…」

 

戦いの様子を見ていたブロリーは、思わずそう呟いた。その時、自分のすぐ真横にエネルギー弾の流れ弾が飛んできて爆発した。

 

「おっと!」

 

吹き飛ぶブロリーの先にやって来たのはブルマだった。ブルマはブロリーを受け止めると、地面に立たせた。

 

「危ないから離れてた方がいいわよ」

 

「あ、ああ…。それにしても、あれは本当にあの霊夢か?言っては失礼かもしれんが…この間までの霊夢はそこそこのパワーはあるようだがまるで覇気が無かった…俺がいない数か月の間に何があったんだ?」

 

ブロリーはふとブルマにそう尋ねた。

 

「いや、あの人が何かやり出したのは二日前よ」

 

「えっ!?」

 

「ま、正確には2年ね…精神と時の部屋って言う1日で1年分の修行ができるところがあってね、そこで私と霊夢さんで入ったのよ」

 

「そんなところが…」

 

「でね、初めは互いに組手をしたりして一緒に強くなってたんだけど、だんだんと差が開いてついには私じゃ全く太刀打ちできなくなってね…それからはずっとひとりでやってたわ。地球人の中でも超天才といわれたこのアタシが2年でここまでなのに、あの人はアタシが足下にすら及ばない次元にまで到達したのよ。何というのかしら…天才という域すら超えてしまっているような気がするし…まさに別次元の人間なのよ」

 

 

「ふっ!」

 

フリーザは渾身のパンチを繰り出すと、霊夢はこれまでと同様に攻撃を認識できない程の速度で避けようとした。精神と時の部屋での修行で自在に夢想天生を扱えるようになった霊夢。

しかしその時、フリーザのパンチは急激に加速し、避けようとしかけた霊夢の顔面を捉えた。

 

「が…!」

 

殴り飛ばされる霊夢を見て、フリーザは嬉々として追撃を仕掛ける。

 

「ははははは!!少しその気になって攻撃すれば面白いように当たるわ!」

 

「う…」

 

そう、夢想天生は敵の攻撃を避けることに特化した究極の防御術だが、霊夢自身を大きく上回るパワーを持つ相手には通じない、ということは月夜見王との戦いや、ウィローとの戦いで経験済みである。

 

(やはりこれじゃ厳しかったか…だったら)

 

フリーザの打撃攻撃を喰らい続ける霊夢は、大ぶりなアッパーを受けたタイミングでわざと大げさに吹っ飛び、地面に激突した。フリーザは腕を組みながら霊夢の前に降り立った。

 

「地球人にしては流石だな!よく頑張ったと褒めてやりたいところだ」

 

それに対し、霊夢は肩を押さえて立ち上がりながら言った。

 

「…最後に、聞きたい…。お前は今すぐにこの星から立ち去り、金輪際二度と悪さをしないと誓えるか?」

 

「はぁ?何を言ってるんだキサマは!嫌に決まってるだろう!キサマを殺し、この地球を消し飛ばしてくれるわ!もうこの星を売りつける事などどうでもよくなったからな」

 

「それが聞けてよかった」

 

霊夢はそう言いながらにやりと笑った。

 

「…何が言いたい?」

 

「たった今、お前は私がさらなる力を発動させる条件を満たしたんだ。それと同時に、お前の敗北が決定した」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。