もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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~前回までのあらすじ~
盛り上がりを見せる決勝戦。強引にパワーを解放したウスターと、カカロットがぶつかり合う。禁断の技、「南無三砲」を放ち相手を追い詰める!
しかし、二人は気を大量に消耗したとはいえまだ決着は付いてはいない。最後は体と体でぶつかり合う二人だが…!?


第17話 「幻想郷のドラゴンボール!」

「優勝は俺のものだー!!」

 

ウスターの勝利宣言が、会場に響き渡った。

カカロットは気を失ったまま、ピクリとも動かない。審判が言った通り先に勝利を宣言した者が勝ち…優勝はその言葉通り、ウスターに決まった瞬間だった。

 

「決まりました!!優勝はウスター選手です!!!」

 

観客席からの歓声と、カラフルな花吹雪が舞台上へ届けられた。

 

「カカロット!しっかり!」

 

控室から出てきた霊夢が、倒れたままのカカロットを起こそうとする。

 

「う~ん…あ!俺は負けたのか…」

 

「いえいえ、カカロット選手も素晴らしかったですよ!できる事ならば、二人を一緒に優勝にさせてあげたいくらいです」

 

目覚めたカカロットへ審判もそう声をかける。起き上がったカカロットは、霊夢の肩を借りるようにしてウスターをチラリと見た。射している太陽の光がまぶしく、背中しか見えないが、まだこんな強いやつが居たとは驚きだ。魔界…と言っていたか、そこは幻想郷にある場所なのだろうか?

 

「残念ながら、優勝は一人きりね」

 

カカロットがそんな事を考えていると、紫が審判の言葉にそう返しながら降りてきた。その手には青い星マークが埋め込まれたオレンジ色の球…ドラゴンボールが握られていた。

 

「紫様!」

 

審判は跪いた。

 

「優勝は貴方ね、ウスター。では優勝賞品であるドラゴンボールを授けるわ」

 

紫はウスターへドラゴンボールを差し出した。西日を受けて輝くボールは、さながら空に浮かぶ星のような光を放っている。

ウスターはそれを無言で受け取ると、どこか腑に落ちないような表情を浮かべた。

 

(…俺は試合に勝ちこそはしたが、一瞬とはいえ気を失った…!気を失う事はルール無用の戦場であれば死を意味する。つまり、本当はあの時点で…俺は負けていたのだ…)

 

自分にカカロットの南無三砲が命中した後、一瞬とはいえ気絶してしまった事を思い出した。それをウスターのプライドは許さなかったのだ。

 

「どんな願いにでも使うといいわ」

 

「…ああ」

 

 

やがて、幻想郷一武道会はウスターの優勝で幕を閉じた。観客たちは帰り支度を初め、ぞろぞろと会場を後にしている。

 

「では、私たちは外で待ってますよ」

 

聖と寺の仲間たちが、控室で着替えているカカロットと霊夢にそう言った。部屋の隅では、ウスターが腕を組んで目をつぶっている。

 

「ええ、わかったわ」

 

霊夢がそう言い、聖たちは部屋を出る。すると、紫がどこからともなく現れた。

 

「…んで、なんでアンタがこんな武道会なんて開催したわけ?」

 

「なんで、って?」

 

何気ない様子で質問した霊夢だが、その鋭い目はしっかりと紫を見据えていた。はぐらかそうとする紫だったが、もう今の自分ではこの霊夢には到底かなわないと思い、白状する。

 

「簡単よ、霊夢とカカロットが幻想郷の枠を超えるぐらい強くなったから。その実力を見てみたいって好奇心が3割、そしてドラゴンボールを誰かに使わせたかったが7割ってところね」

 

「誰かに使わせたかった?そういえば、そもそもあのドラゴンボールって何なのよ?今まで聞いたこともなかったわよ」

 

「本当は霊夢にあげたかったんだけどね…カカロットの力とそこに居る魔人ウスターの参戦は、私としたことがイレギュラーだったわ」

 

紫はやれやれと肩を落としながら言った。

 

「実はあのドラゴンボール…」

 

紫がそう続けて言おうとした時、その表情が険しくなった。霊夢とカカロットが不思議に思い、隅に居たウスターも思わず飛ぶように立ち上がった。

 

「なんだ…この気は!?」

 

「このたびは勝手な事をしてくれたな八雲紫よ」

 

突如として辺りを覆うとてつもない気配。ウスターでさえ汗をかき、紫が珍しく狼狽している。

すると、突然彼女らの前に大きな扉が出現した。その扉がガチャリと開き、中から見知らぬ二人組が現れた。どうやら男女のようだが、1人は深い緑色の肌をした老人で、もう1人はオレンジ色の道士服のようなものを着た女性だった。ただならぬ気配を発しているのは、どうやら老人の方らしい。

 

「おや、初めましてだな博麗の巫女よ」

 

緑の老人は霊夢を見ると少し頭を下げながらそう言った。背がでかい…2メートル半くらいあるんじゃないか?その額にはナメクジやカタツムリのような触角が生えており、体には赤い文字で「賢」と書かれた黒いローブのような服を着ている。

 

「あ、アナタ誰よ…?」

 

「うむ。わしの名はシュネックという。幻想郷の賢者であるが、決して表立つことは無いのだ」

 

霊夢はそれを聞いて驚いた。

 

「巫女よ、このお方は幻想郷をおさめてきた7人の賢者の内、最も賢く強いんだ」

 

横についていたオレンジの道士服の女性がそう言った。どうやらその女性と霊夢は顔見知りであるらしい。女性は名を摩多羅隠岐奈といい、少し前には季節を狂わせる異変を起こした黒幕でもあった。

 

「ちょっと摩多羅、貴方はなんでここに来たのよ?」

 

「うるさいぞ八雲、シュネックについて来いと言われたからだ」

 

小声で言い合いを始める紫と隠岐奈。どうやら二人の仲はそれほど良くは無いらしい。

 

「あのドラゴンボールは幻想郷の賢者のうち、最も力のある7人が1つずつ管理している秘宝だ。一つ一つに強大な神力が宿っており、その力はどんな願いも叶えることができる」

 

「おい」

 

ウスターがそばまで歩み寄ってきて言った。

 

「さっき八雲紫は誰かに使わせたかったと言っていたが…それはどういうことだか説明してもらおうか」

 

「うむ、いいだろう。少なからずドラゴンボールに触れてしまったお前たちには話す義務もあろう。私の長い身の上話にもなるが…よく聞いておれ」

 

─…今から500年ほど昔、私の故郷を異常気象が襲ったのだ。その時、我が父はまだ幼かったわしと弟を生き延びさせるために遥か遠方へ逃がしたのだ。しかし、事故によりわしと弟ははぐれて離れ離れになり、気が付いたらこの幻想郷という地へ迷い込んでしまった。後から知れば幻想郷を外と隔てている「幻と実体の境界」は忘れ去られた者を呼び寄せるらしい。つまり、もうわしの故郷の同族、そして弟も死んでしまったのかもしれぬ。

わしはこの地で何年も暮らしながら、幻想郷の隅々まで見て回った。面白い事も惨い事も、良い人や悪い人と知り合う事もたくさんあった。わしはそんな様々な色を持つ民を内包するこの地が好きになった。幻想郷を管理する賢者たちを見て、何かしてやりたいと考えた。

そこで思いついたのが、わしの故郷に伝わる願いを叶える秘宝、「ドラゴンボール」を作ってやることだった。わしは記憶を頼りに、一つの大きな龍玉を作り出した。しかし、ドラゴンボールが願いを叶えられるようになるには龍の依代を作り、封じ込めなければならない。わしには龍を作り出す技術は無かった。

だがそんなある時、わしは知ったのだ。この幻想郷に伝わる龍神という存在を。険しい修行と道のりを越え、龍神に会いに行った。そして打ち解けたわしは龍神をドラゴンボールの依代の化身として封じ込めることができたのだ。

丁度その頃、妖怪たちは外の世界の人間の科学が発達したことにより自分たちの力が弱まり、最悪の場合消滅してしまうのではないかと考えるようになったという。わしはそんな彼らの元へドラゴンボールを持ち込み、好きに願いを叶えさせた。

ちょうどその時、ドラゴンボールで博麗大結界は作られたのだ。

 

「じゃあ、幻想郷はドラゴンボールで成り立ってるってことなの?」

 

霊夢がそう聞いた。

 

「その通りだ。そしてこのシュネックこそ、龍神が初めて心を許した存在であるのだ」

 

と隠岐奈が返す。

 

「だが問題はその後だった。龍神は呼び出すたびに幻想郷を崩壊させかけるほどの天変地異を起こしてしまうので、わしはドラゴンボールを7つに分け、最も力ある賢者7人に託した。こうなれば龍神を呼び出すことは難しくなると考えたのだ。しかし、この地で生きる正しい者のささやかな希望とさせるために作ったドラゴンボール…求める者が有れば各々の賢者の試練を超えた者にのみ与えることが許されておる」

 

「だったら、紫が勝手なことしたっていうのはおかしくないかしら?一応今回のはちゃんとした試練っぽかったし…」

 

「確かに、その点では問題は無い。だがな…ドラゴンボールの存在を多くの人間や妖怪に周知させたのが問題なのだ。こうなれば色々な者が私利私欲の為にドラゴンボールを求めるかもしれん。さらには幻想郷すら脅かすとんでもない連中すら呼び寄せることに…」

 

「???」

 

首をかしげるカカロット。彼だけは話を飲み込めていないようだ。

 

「そうでもしないと誰もドラゴンボールを知ることはなかったわ」

 

紫が開き直ったように言った。

 

「おい待て、ならばドラゴンボールは7つ全て集めないと願いを叶えることはできないというのか?」

 

ウスターが思った疑問を口にした。先ほどのシュネックの話を聞く限り、ドラゴンボールは元は1つだった物を7つに分割したらしい。ならば、それを全て集めないと元の効果は得られないのではないか?

 

「心配はない。強大すぎる龍神の力ゆえか、わしのドラゴンボールは1個だけでも願いを叶えることは可能だ。その際はボールに『幻龍玉よ願いを叶えたまえ』と声をかけるがよい。だが、その所有者だった賢者の力を大きく超える願いは不可能だがな」

 

それを聞いたウスターは無言で目を閉じた。

 

「そして八雲紫よ。何が目的であったのだ?」

 

シュネックは真剣な面持ちでそう紫に問いただした。恐らく、この紫の答えが先ほど発言した「手放したかった」に繋がるのだろう。

 

「分からない?ここ最近で幻想郷は様々な危機に見舞われたわ。月からの侵攻、オカルトボールの出現、四季異変…。それらの影響を更に深く調べるためには、誰かにドラゴンボールを使わせたかったのよ。もし正常に使う事が出来なければ、ドラゴンボールの龍神が気を損ねているって事だから」

 

「そのためにわざわざあんな武道会を開いたの?」

 

「理由はさっき言った通りよ」

 

「…まあいいだろう。今回の事は大目に見てやる」

 

シュネックはやれやれといったように指でこめかみをかいた。

 

「そうだ、カカロットとか言ったか」

 

「え?俺か?」

 

「お前は戦いで傷を負ったようだな。骨も折れておる。近寄るがいい」

 

カカロットは言われるがまま、シュネックのそばに寄る。すると、シュネックはその両手をカカロットに向かって掲げる。するとその手に淡い光が生まれ、辺りを照らした。すると、何という事だろうか、包帯で処置されたカカロットの腕や足などの傷が見る見るうちに治り、以前と同じかそれ以上にまで回復してしまった。

 

「すごい!体が治った…」

 

「ほう、面白いな。お前は傷を治すと強くなるのか。エネルギーが鋭さを増したぞ」

 

「…本当だ」

 

カカロットは傷を治してもらったとたん、前よりも力が湧き上がってくるのを感じた。

 

「不思議な者たちよな。これだからこの地で暮らすのはやめられん」

 

シュネックはそう言うと、隠岐奈がもう一度開いた大きな扉の中へと消えてゆく。

 

「さらばだ」

 

そう言い残すと、隠岐奈と共に完全に消えていった。

 

「叱られちゃったわ。まぁ、そう言う訳で…」

 

紫も自分で開いたスキマの中へと消えた。

残された霊夢、カカロット、ウスターは唖然としていた。

 

「…とりあえず、解散しましょうか」

 

「そうだな」

 

二人が帰り支度をしようとすると、ウスターが話しかけてきた。

 

「おいお前たち」

 

「何よ、アンタもまだ何か文句あるの?」

 

(さっきの決勝戦だ…俺は気を失った…この魔界最強の戦士であるウスター様がだぞ…!)

 

「さっきの話を聞いて使う気が失せた。お前たちにやる、持っていくがいい」

 

ウスターは羽織ったマントの中から四つ星のドラゴンボールを取り出すと、それをカカロットへ向けて投げた。それをキャッチすると、怪訝な顔で見返す。

 

「お前…」

 

「ふん、勘違いするなよ。それに俺はこんな形式で固められた戦いはそもそも向いてないのだ。次は一対一、ルール無用の殺し合いで決着を付けようか」

 

素早い動きでその場からいなくなってしまったウスター。

 

「…出るか」

 

二人は外で待っているはずの聖たちの元へと歩いてゆくのだった。

この幻想郷は広い。まだ見ぬ強敵が各地にたくさん居るはずだ。この武道会でそれを痛感したカカロットは、夢見憧れた地上の世界へ、さらに思いをはせるのだった。

 

 

 

☆キャラクター戦闘力紹介☆

参考

一般成人男性 5

一般成人女性 4

子供(10歳) 2

ミスター・サタン 6.66

一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上

大妖怪クラス 80以上

ピッコロ大魔王 260

地球の神 280

 

 

カカロット 125(通常)→136(通常 激戦と回復でパワーアップ)

博麗霊夢 75(平常時)→77(激戦でパワーアップ)

ウスター 304(通常 激戦でパワーアップ)

 

武道会を終えたカカロット、霊夢、ウスターの三人。原作におけるピッコロがラディッツ戦の前と後で戦闘力が変化している(重りをつけた状態で322→329)ことから、この三人にも激戦を経てのパワーアップを当てはめてもいいはずだ。

カカロットは激戦を経てかつ、サイヤ人特有の回復パワーアップで合計11プラス。霊夢は微妙ながら2アップ、ウスターは4アップとしたい。

 

 

八雲紫 290

摩多羅隠岐奈 290

 

天空璋から出演、隠岐奈。紫とは面識があるようだ。だが仲はあまりよろしく無いようで、あえば嫌味や皮肉を言い合う。7つのドラゴンボールを所持する幻想郷の賢者上位7名のうちに紫と共に入っているその実力は、以前推定した紫と同等の290としたい。

 

 

シュネック 1500

 

幻想郷最強の賢者にして、幻想郷のドラゴンボールの創造主。その正体はいわずもがな、ナメック星人である。彼の弟とは誰であるのか、ドラゴンボールに詳しいあなたならきっと分かったはずだ。

さて、そんなシュネックの戦闘力は、ラディッツと同等の1500としたい。まず、ナメック星人の大人の龍族の戦闘力が500~2500である。龍族の中でかなり鍛え込んだ者で3000を超え、戦闘型のナメック星人で10000程度、ネイルで42000である。とりあえず龍族の範囲の中間あたりだ。

さらに、地球の神が神に成るための修行で悪の心(ピッコロ大魔王となる)を分離させた際、ナメック星人の同化(推定5倍パワーアップ)と逆の作用が働いたと考えられる。分離後の若い状態のピッコロ大魔王が260で、同化倍率を加えると1300となる(神様はその後も修行で衰えるどころか260から280まで強くなった)。それよりは強そうとみると、やはり1500程度が正しい。

その戦闘力は現時点での幻想郷では最強。他の妖怪などとは違い、既に全身レベルの気の開放をしている。

 

 




~次回予告~
よっす、私は霊夢よ。何やかんやあって賞品のドラゴンボールを手に入れた私たち。いよいよ願いを叶える瞬間が来たのだけれど…
次回、「幻龍玉よ願いを叶えたまえ!」、絶対見なさいよね!

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