「オレの見立てでは、テメェのその頑丈な外殻は金属質!ならばオレの発する高圧電流はよく通るよなぁ?」
「ぐああああああああ…!!」
ネイズは体内に存在する発電板から電気を発生させ、全身へ流すと同時に手で触れているダイザーの肉体にも電流を流す。外部からの衝撃には絶大な防御力を発揮するダイザーだが、内部から駆け巡る電撃には成す術もなく焼き焦がされていく。
「キシシシ…」
「ぐ…くそ…!!」
一方、スカッシュを捕らえたドーレはその筋骨隆々な腕で細いスカッシュの首を締め上げていた。さらにもう片腕によって両腕を背中で固定し、関節を破壊しようと引っ張り続けている。
「ほうれ、早く抜け出さんと肩と首の骨が砕けちまうぞ」
細身でありながらとてつもない怪力と戦闘技術を持つスカッシュでも、ドーレの肉体による拘束はそう簡単に解けそうになかった。
だが…それでも、ふたりは絶命のピンチに置かれながらも、心の中には微かな余裕を保つことができていた。それはカーボネド四天王としてコルド大王やフリーザに従って戦っていたころのような慢心から来る余裕ではない。
──『感謝する。この激戦の最中、いつ脱ごうかと考えていた…界王星特製のとても重たい上着を斬ってくれたことに』
「あの時の…戦いに比べれば…ッ」
──『いつだって大人になろうと必死に日々を生きてる、子供の血の方が熱いのに』
「あの時の熱さに比べれば…!」
「「別に大したことァ無ェ!!」」
ふたりは同時にそう叫んだ。
スカッシュはドーレの腕に噛みつく。驚いて痛がるドーレであったが、その力は緩まなかった。
「へっ、そんなんじゃオレは力を緩めねぇぜ…」
しかし、スカッシュは噛みつくこと自体は攻撃としてなかった。狙いは、そのままの状態で口内に全身の気を集中させ、それをエネルギー波として炸裂させることだ。
スカッシュが口内からエネルギー波を撃ち出すと、ドーレの腕が熱と衝撃に包まれる。
「うおおおお、なんだあああああ!?」
ドーレの肘から先の腕が粉々に消えてなくなっていた。彼の苦痛の悲鳴が響き渡る。スカッシュは口の端からプスプスと煙を出しながら距離を取った。
「テメェもしぶとかったがそろそろお終いだ!一気に電圧を強くしてトドメを刺してやる!」
ネイズはダイザーに流す電流をさらに強くすると、ダイザーの体が見えなくなるほどに眩い電撃に包まれる。
「キシシシ、あと何秒もつかな?」
「お前がな」
「え…!?」
ダイザーが静かに呟いた言葉を聞いてネイズが困惑した瞬間、ダイザーを包む電撃の球の中から、何か無数の石の礫のような物が高速で飛び出してきた。銃弾の如き礫はネイズの全身へ直撃し、その全てが肉体を貫通した。
「バ、バカな…何故…!」
ネイズは果てる直前、確かに見た。解除された電流の中で立つダイザーの胸や腕など一部の外殻が剥がれて無くなっているのを。
「俺の殻を内側から剥がして射出した…いくら石ころほどに砕いたとはいえ、オレの自慢の質量を持つ外殻があの速度で襲い掛かってはどうしようもできまい。ま、再生して元に戻るまで半年もかかってしまう技だがな…」
全身を撃ち抜かれたネイズはズルリと崩れ落ち、地面に倒れ込んだまま二度と起き上がることは無かった。
サウザーはネイズがやられたことに驚きながら後ずさるも、すぐに苛立ちの表情を浮かべてダイザーたちへ向かって歩いていく。
「ぐおおおお…オレの腕を…よくもおおおお!!」
吹き飛んだ腕を押さえながら苦痛にうめくドーレ。
「おのれ…ゾイソーとナンプラーだけでなく、ネイズとドーレまでも戦闘不能にするとは…どうやら私は貴様らを甘く見ていたようだ」
サウザーは両腕に気で作った剣を纏う。
「だが、もうオレは容赦はしないぞ、覚悟するんだな…」
「ふん、カーボネド四天王を甘く見るなよな…かつてはあのフリーザに一目置かれてんだ、ま…フリーザが死んだもんで今じゃアタイらの身分は無いけどね」
「なに?今何と言った…?フリーザ様が死んだとか聞こえたが…」
「そのまんまの意味さ、フリーザは地球って星で1年も前に死んでんだよ」
「な、なんだと…?」
サウザーは一変して、目を見開いた驚愕の表情を浮かべる。さらにその様子を見たダイザーは初めから思っていたある疑問を投げかける。
「その反応…まるで絶対の信頼を置くボスを失ったかのような顔だが、さっきお前の仲間は『自分はフリーザ軍とは違う』と言った…どういうことだ?クウラ機甲戦隊とは何者なんだ?」
「ふはは…フリーザ様が倒されたことはハッキリ言って驚いたが、別に我々は困りはしない。この際だから教えてやる、良いかよく聞いておけ…クウラ機甲戦隊とは、その名の通りクウラ様の為に存在する戦闘集団だ。ちなみに、フリーザ様は我々が従事するクウラ様の弟であられたのだ」
「な…フリーザに兄貴…いや、コルド大王にもう1人息子がいたのか…!」
「無数の人材からなる巨大な軍隊を従えるフリーザ様とは異なり、クウラ様は自分が認めた精鋭だけを集めた少数チームのみを動かしていらっしゃる。それが我々クウラ機甲戦隊だ」
基本的に、コルド大王とフリーザは親子として共に動くことが多くある。1年前の地球での戦いも、部下をほとんど失ったフリーザの復讐のために、コルド大王がカーボネド四天王と自分の軍隊をフリーザに貸すという形で大規模な軍勢を作った。
対して、フリーザの兄であるクウラは大勢の軍を組むことは好まず、基本的に自分と数名の部下のみで行動し、フリーザや父のコルド大王ともほとんど会わず、連絡も取らない。
「と、おしゃべりはここまでだ。お前たちにはここで死んでもらう…ゆくぞ!」
サウザーはもう一度気の剣を作り出し、それを振りかざして襲い掛かる。ダイザーとスカッシュは迎え撃とうと構えるが、次の瞬間に聞いたことのある声を聞いて立ち止まった。
「やめろサウザー!」
サウザーも動きを止め、声がした方に向いてひざまずいた。
「あ、アイツがフリーザの兄とかいう…クウラって奴か…」
クウラは崖の上からこちらを見下ろしていた。ダイザーとスカッシュはクウラから発せられる圧倒的すぎる殺気を感じて動くこともできず、叫びたくても声が出せない状態が続いた。
(や、ヤバい…こいつはヤバい…!フリーザやコルド大王以上のヤバさを感じるぜ…!)
そして、クウラの尻尾の先には何かが巻き取られており、それがふとこちら側へ揺れた瞬間、ふたりはそれがピクリとも動かないブロリーであると気が付いた。そう、ブロリーが首を尻尾で掴まれ、ぶら下げられているのだ。
「ブロリー…!!」
「このサイヤ人は貴様らの仲間か?」
クウラがそう問い、ふたりの反応を見るとそう確信する。
「受け取れ」
クウラは動かないブロリーをダイザーに向かって投げた。それを受け止めようと前に出て腕を差し出すダイザーだが、次の瞬間、なんとクウラが戦闘不能に陥っているブロリーの体へ何発ものエネルギー弾をぶつけ炸裂させたのだ。
死体蹴りともいえる行為に晒されたブロリーは全身から煙を上げながら少し離れた場所へ落下した。
「ふははははは…次は貴様らがこうなる番だ」
クウラは冷酷に笑った。
─10分ほど前…
「お前は…フリーザの兄だというのか…!?」
「だったら…何だというのだ?そう言う貴様は、フリーザの配下のサイヤ人ではないようだな…しかし、こんな場所にまで低能の猿野郎がのさばっているという事実は無視できない…ここで死んでもらおう」
クウラはブロリーに対してそう言い放った。次の瞬間、クウラは前に向けた指先から細い光線を放った。
が、ブロリーはなんとかそれを躱しつつ上昇し、上からクウラへ向けて細かいエネルギー弾を連続で発射する。
「ふ…」
クウラは全身にオーラを纏い攻撃を弾き飛ばしながらブロリーへ向かって飛んでいき、ブロリーの顔面へ拳を叩きつけた。
「ぐは…!」
地面へ向かって吹っ飛ばされるブロリー。アスファルトを砕いて地盤にまでめり込み、その全身が埋まってしまう。
だがクウラはこれだけで攻撃を辞めなかった。ブロリーへ完全なるトドメを刺すために、その心臓へ狙いを定めて光線を撃とうと構える。
カッ
「うおおおおおおおおおおお!!!」
「なにっ!?」
その時、待機を揺るがすような咆哮と共に砕けた地面の中から緑色の気が津波のように流れてきた。クウラは思わず攻撃の手を辞め、その波動を腕でガードした。
そして次の瞬間、飛び出してきたブロリーは一瞬でクウラの元まで近づき、その顎を蹴り上げた。クウラは突然の反撃に対して反応が出来ず、上へ吹っ飛ばされる。ブロリーは追撃のパンチをお見舞いしようとするが、クウラも負けじと蹴り返してその場を脱した。
「なんだ…急に動きが変わった…?」
ブロリーが顔を上げてクウラを睨みつける。その瞳は黄色く染まり、黒髪も若干逆立っているように見える。
「ウオオッ!!」
そして短い咆哮を上げると、両手を前に出しそこへ緑色の巨大なエネルギー弾を作り出す。それを投げようと構えるが、それでもクウラは焦らなかった。
「なるほど…サイヤ人としては異常すぎるほどのパワーを有しているようだな…。しかし、それがどうした?」
「デヤアッ!!」
ブロリーはクウラへ向けて極太の気功波を発射した。それは雷のようなスパークを纏いながら一直線にクウラに迫る。
が、クウラは一歩も動くことなく、ただ冷静に拳を後ろに構え、気功波に対してパンチをぶつけた。
「サイヤ人如きが、我が栄光の一族に歯向かおうとは、片腹痛いわ!」
ブロリーの攻撃はいとも簡単にはじき返された。ブロリーも思わず驚き、唖然としてしまう。
そして超スピードでブロリーの背後へ移動したクウラは両手を合わせた拳を叩きつけた。
「が…!」
気を失い落下していくブロリーの背中を蹴りつけ、そのまま地面に激突させる。さらにそれでも飽き足らず、トドメの一撃として指先からの光線で彼の背中を貫いた。
ブロリーは短いうめき声をあげ、動かなくなった。
「…死んだか」
クウラはブロリーの心臓が止まったことを確かめると、その首に尻尾を巻きつけて持ち上げ、クウラ機甲戦隊が向かわされた街の方へ移動を開始した。