幻想郷一武道会を終えたカカロットや霊夢たち。聖たちと合流して、懐かしの命蓮寺(のあった場所)へと帰って来たのだった。
部屋の中で円をかくように座った彼らの中央には、青い四つ星マークが埋め込まれたドラゴンボールが置かれていた。そう、優勝したウスターが今回の勝利を気に喰わなかったため、半ば無理やりに譲られたのだ。
「どうしよう、これ」
霊夢が呟いた。
「俺の願いはもうない。霊夢を倒せたからな」
カカロットがチラリと霊夢を見ながら言った。
「寺を直すのに使ってもいいぞ。壊したのは俺だしな」
「よろしいのですか?」
と、聖が聞く。
「ああ…」
「すみません、ありがとうございます。…それで、これはどう使えばいいのでしょう?」
「確か、『幻龍玉よ願いを叶えたまえ』って呼びかけろって言われたわね」
「じゃあ、呼び出しましょうか。コホン…幻龍玉よ、願いを叶えたまえ!」
聖がそう叫ぶと、ドラゴンボールはゆっくりと点滅を始めた。その点滅のスピードがだんだん速くなり、やがてまばゆい光を放った。光は柱のようになって空へと昇っていき、やがて長い体を持つ龍のような形へと変わっていった。
「ハアアアアアア…!!」
龍は体を蛇のとぐろのように巻いた状態で一軒家ほどの大きさが有る。青い体表に丸っこい頭を持ち、その目はオレンジ色に光っている。
「これが…ドラゴンボールの龍…!」
霊夢たちは顔を光から腕で遮りながら驚愕した。
シュネックが言っていた通り、ドラゴンボールは元は一つの大きめの球で龍神が宿っており、それを7つに分割して今の大きさになったという。本来ならば龍神の大きさはこの程度ではないハズなのだが、7つに分割されたのに伴い、それぞれもかなり小さく弱体化している。
「八雲紫の試練を越え四星球を手に入れし者よ。願いを言え、どんな願いも可能な限りでこの四星龍が叶えてやろう」
周囲に響く低い声。
「私の願いは…破壊されたままの命蓮寺を直してはくれますか?」
「…容易い事だ」
四星龍と名乗った龍は命蓮寺のあった場所の上に移動し、そこで輪を描くようにグルグルと回り始めた。すると、何もなかった場所に突如木材や鉄材が出現し、目にもとまらぬスピードで聖輦船を作り上げた。そしてその舩はぐにゃりと形を変え、以前あった通りの寺へと戻っていった。
「すごい…」
数秒の出来事だった。
これがドラゴンボールの力か…と霊夢は驚いた。
「願いは叶えてやった。ではさらばだ」
龍はそう言い残すと、再び眩い閃光を放ち、シュルシュルとボールの中へ戻っていった。するとボールはその輝きをだんだんと失い、石のように黒ずんでしまった。
「どういうこと?」
「…この分ではもう使えなさそうですね」
おそらく、もうボールは使えないだろう。以前は感じた神聖な雰囲気も、もう何も感じられない。
「はー…」
霊夢はため息をついた。
「これからどうしよう?」
「とりあえず武道会に出るという目標は達成されましたし…」
「…俺は一人で修行にいく」
「え?」
「当然だろう。このままじゃ俺は最強にはなれない…他の奴らに追い抜かれちまう。天龍やお前…そしてウスターにも」
カカロットは立ち上がると、歩きながら少し離れた。
「俺はもっと高みを目指す。見ただろう、あのシュネックを…あんなようなのがきっとゴロゴロいるはずだ」
「それなら私も博麗神社に戻ろうかしら。もちろん修行は欠かすつもりはないけど」
「それが一番いいでしょう。もう私から教えられることは何もないので…それぞれの道をゆくといいですよ」
はてさて、ついに命蓮寺での修行を終えた霊夢とカカロット。二人はこれからもそれぞれのやり方で修行を重ね、さらに強くなっていくだろう。
カカロットはまだ見ぬ強敵を求めて、旅に出るのだった…。
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翌日。
「ふわあ…もう朝か」
朝、目を覚ましたカカロット。近くの水辺で顔を洗い、朝飯を求めて歩き始める。
ここはあの妖怪の山だ。デカい獣くらいいても不思議ではないはずだ。
「いたぜ」
カカロットは物陰から巨大な熊を見ていた。立ち上がれば5メートル程はあるだろうか、滅多にみられない程の大きさだ。
あれならば今日の朝と昼まではもちそうだ。
「ちぇりゃあああ!!」
「…!?」
気配を感じた熊は驚きながらカカロットの方へ振り向くが、飛びかかって来たカカロットの一撃を脳天へ喰らい、後ろへ倒れ込んだ。まるで大岩が落下してきたかのような衝撃が響き、さらに追い打ちを仕掛けた。
猟師の鉛玉よりも強烈な攻撃を受けた熊はさすがに絶命し、動かなくなってしまった。
「よしと…」
熊の後ろ脚を持ち上げ、引きずりながら寝床へ持ち帰る。
そして気を使って火をおこし、そこへ熊をかけるのだった。
「む…!」
その瞬間、カカロットは何かの気配を感じ、後ろを向いた。すると、何か素早い影が襲い掛かって来た。その攻撃を寸での所でかわす。
「チッ、外したか…」
現れた何者かは、ボロ布のマントを纏い、笠のようなものを頭にかぶっており顔は見えない。前にかかげた手には鋭い爪が伸びていて、今の攻撃を受けていたらさすがに危なかったかもしれない。
「誰だ貴様は!」
「ふん、知らないのかこの私の事を!」
「知るものか」
「まぁどうでもいいだろうな。ともかく、私は腹が減って死にそうなんだ…その熊は有り難く食ってやるからよこすがいい!」
その人物は再びカカロットへ飛びかかった。爪を生やした手による素早い突きを繰り出す。カカロットは相手の実力を見極めるように攻撃をかわしていく。
そして、体を横へズラすと、相手に足を引っ掛けた。
「うわっ!」
敵はゴロゴロと地面を転がった。
「やるな…お前」
だが、すぐに起き上がると、再び攻撃を仕掛けた。
「遅い!」
しかし、先ほどのやり取りで敵の実力を把握したカカロットは、その顎を思いきり殴り抜けた。敵の被っていた笠が吹き飛び、その顔が露わになる。
「鬼…!?」
カカロットは後ろへ倒れ込んだ敵を見てそう呟いた。
黒い髪に赤や白色が混じっており、その額からは鬼のような2本の角が生えていたからだ。その敵は白く鋭い歯をむき出し、口から流れ出た血を手で拭った。
「…違うか」
「今のは油断した!これからが私の本気だ!」
一瞬だけ鬼かと思ったが、どうやら違うらしい。勇儀や萃香ほど気迫が無いし、何より弱そうだ。
かかってくる敵の攻撃を全て手で受け止め、もう一度顔面へパンチを食らわしてやる。
「くそっ…!この鬼人正邪様を怒らせたこと、いずれ後悔させてやるからな!」
自らを鬼人正邪と名乗った少女は顔を押さえながら素早い逃げ足でその場から去っていった。
「ふん、雑魚が…」
カカロットはそう吐き捨てると、いつの間にか焼き上がっていた熊にかじりついた。
しかし、彼はまだ知らない。この鬼人正邪との出会いが、自分をとんでもないやつとの戦いに巻き込んでいくという事を…。
さぁ、その相手とはいったい誰なのか…!
今回は短めです。