もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第194話 「Blood」

「おぐ…ッ…!?」

 

須藤の胸に激痛が走る。ゆっくりと下を見ると、青っぽい色の半透明の腕が須藤の胸を貫き、背中から突き抜けていた。

中身が拳に押し出されて背中から流れ落ち、砕かれた背骨が軋んでいるのがわかる。

 

「僕の幸福は邪魔させない…誰であろうと!」

 

須藤の胸を貫通していた青い腕は消え、立っている支えを失った須藤はその場で倒れ込んだ。謎の影はそれと確認すると、すぐにその場から立ち去ろうとする。

 

ガシッ…

 

「なに!?」

 

だが、須藤はすぐに気絶し…いや、絶命してもおかしくないほどの傷を負いながらも立ち上がり、背を向けた影の腕を掴んでしがみついた。

 

「こ、コイツ…!」

 

「この三等警部須藤黒助を相手にするときは…この地に住まう全ての人間の正義を相手にする事と思え…!!」

 

須藤は腰に下げていた短刀を抜き、それを影目がけて振り下ろした。

…しかし、短刀は影の腹を斬る寸前のところでピタリと止められ、そこから1ミリも動かせない程の強い力で固定された。

 

「な…」

 

短刀へ目を向けると、自分の胸を貫いたのと同じような青い半透明の手が刀身を握り、止めていた。その手は鋭い刃を素手で握りながらも、切り傷ひとつついていない。

 

「既に風前の灯火となった命でなお、僕に一矢報いようとするとは…その精神力だけは素晴らしい。だが、もう何もしなくてもお前は死ぬ…残念だったな」

 

影は素早く後ろへ飛びのき、そのまま家の外へ出る。須藤は消えゆく意識の中、歩き去っていくその人物の背後に、もう1人謎の青い人型の影が揺らめいているのを見た…。

 

 

 

 

一方その頃、命蓮寺にてマミゾウと対面しているシロナ。

 

「異能を持つ人間…?」

 

「ああ。人間でありながら人間を越えた能力を持つ人間…が黒幕じゃ。儂も独自に調べ上げているのじゃが、どうにも奴の足取りひとつ掴めん。例え儂が黒幕の正体を掴んだとしても、この幻想郷では妖怪が人間に手を出すのはご法度…博麗の巫女を除いてな。だからお主が腰を上げるのを待っておった」

 

「何か、手だてはあるの?」

 

「もちろん。何か、例えば…そうじゃな、黒幕が手にしていた道具だとか、服の一部だとかがあればそれを頼りに正体を掴めるじゃろう。そういう能力を持った奴を知っておるんでな。儂も手伝おう、共にそういう証拠を見つけ出そうではないか」

 

「…ええ」

 

 

翌朝、さっそくシロナとマミゾウは何か手がかりを探しに、昨日化け狸が殺された現場へと向かった。あそこは須藤に頼んで立ち入り禁止にしてもらってある。

しかし、シロナはいまいちこのマミゾウという女の事を信用できなかった。このマミゾウは今は人間そっくりに化けているが、何を考えているのか分からない。

 

「儂の事が信用できんかね?」

 

「え?」

 

「ほっほっほ…お主は分かりやすいのう。両親と同じじゃな」

 

「父ちゃんとお母さんのこと、知ってたの?」

 

「当然じゃよ、儂はあの二人に稽古をつけてやったこともあるんじゃからの」

 

と、その時、例の家がもう少しというところで、何やら人だかりができていた。シロナは何かとてつもなく嫌な予感がして人だかりの中を潜り抜ける。

 

「通して!」

 

だが、それを抜けた先には、家の玄関先で横たわる…須藤黒助の亡骸があった。その胸は大穴があいて真っ黒になり、地面を乾いた血で染めていた。

 

「そんな…須藤さん…」

 

シロナは震える足取りで須藤の元へ向かい、膝から崩れ落ちた。

 

「嘘…でしょ…?」

 

しかし、須藤は何も言わない。地面に突っ伏した顔は血で汚れて見えない。そこへ、後ろからマミゾウが近寄ってきて、シロナの肩に手を置いた。そして、家の中に未だ転がっている化け狸の死体を見た。

 

「見ててね、須藤さん…私が必ず、犯人を捕まえて…償わせるから」

 

最後にシロナは須藤の手を握った。

…シロナはその時、ふとした事に気が付いた。

 

(この須藤さんの手…右手は開いているのに、左手だけ固く握りしめたままだ…)

 

もしやと思うと、シロナは握られた左手を無理やり開いた。

 

「こ、これは…!」

 

「なんじゃ、どうかしたのか?」

 

「マミゾウ…これを見て」

 

シロナにそう言われたマミゾウが、開いた左手の中を見ると、そこには銀でできた服のボタンのような物があった。

そう、これは須藤が最後の力を振り絞って黒幕にしがみ付いた時、何とかこれが証拠になればとむしりとったボタンだったのだ!須藤は死に瀕しながらも、黒幕へ近づける重要な手がかりを残していった!

 

「これがあれば…」

 

「ああ…黒幕の正体が掴める!」

 

大丈夫よ、黒助さん…貴方の真実へ向かおうとする意志は、確かに伝わった。だから、お疲れさま…安らかに眠ってね。

 

 

 

────

 

「この持ち主を、お前さんの能力で特定してもらいたい、できるんじゃろ?」

 

「ま、できるにはできるけどさ、そんな事の為に私を呼んだって訳?」

 

命蓮寺のマミゾウの部屋に来たマミゾウとシロナの前に、茶髪をツインテールにした女性が座っている。ピンク色のブラウスに黒と紫のチェック柄の短いスカートといういかにも外の世界かぶれのような服装だった。

 

「姫海棠はたてよ…」

 

はたては胸のポケットから黄色い携帯電話のような機械を取り出した。

 

「シロナちゃん…だっけ?君があの博麗霊夢の娘だってのは噂で聞いてるわ。でもね、あまり妖怪に貸しを作らない方がいいわよ、いつか頭からコリコリ食べられちゃうわよ」

 

「何者?この人」

 

シロナは気に入らない顔をしながらはたてを指差した。

 

「私は鴉天狗よ。さて、これが例のヤツね」

 

はたてはそう言うと、機械のカメラ機能で銀のボタンの写真を撮った。

 

「それでどうするの?」

 

その時、はたての背中から黒い翼が生え、耳がとがり、目の色が変わる。人間に変化していたのを解いたのだ。

 

「私の能力ってのは”念写”…このカメラに対象に関するキーワードを入力するとそれにちなんだ写真を撮れるの。他にこういう撮りたいものの一部でもあればもっと話は早いわ」

 

机の上に置いたはたてのカメラの画面を3人で覗き込む。すると、なんと見ている前でその画面が暗くなり、砂嵐のように荒れ始めた。

 

「おおっ!」

 

「見てて、映るわよ」

 

やがて画面は安定し、暗い部屋の中のような場所が写る。画面は部屋の中を見渡し、ひとつの大きなソファを写した。そしてカメラはそのソファの後ろを回り、横からの視点にかわる。

すると、そこにはまだ暗くてよく見えないが、明らかにソファに座っている何者かの姿が映し出された。はたてはすぐにそこでシャッターを押し、念写に成功する。

 

「よし撮れた!」

 

3人はその写真を改めてまじまじと見つめる。

 

「男…か…」

 

「おお、見るのじゃ!確かに、この男の服の袖のボタンがひとつ千切れてなくなっておる!」

 

「それにこの部屋の窓はガラスでできているわ。そして外側からすだれでも下ろしているのかしら、細かい光が射してる」

 

「そうじゃのう、外に写る景色で場所を特定することはできんかったが、ガラスの窓で外にすだれをかけている家を探せばこの人物がいる場所にまでたどり着ける!」

 

「…ん?」

 

その時、シロナは違和感に気付く。今、この画面の写真に写る人物の姿が、少し動いたような…。

シロナは見間違いかと思って目をこする。そしてもう一度見てみるが、それは見間違いではなかった。明らかに写真の中の男はゆっくりと動いている!

 

「な…まさか…!この写真の男、動いているような…!」

 

「何じゃと!?」

 

マミゾウとはたても画面をのぞき込むと、やはり男はゆっくりと動いてこちらに振り向いているようだ。

 

「何者かはわからないが…キサマら、僕を見ているな!?」

 

パキ…

 

画面の中の男がシロナ達に向けてそう言葉をかけると、次の瞬間にははたてのカメラに半透明の小さな結晶が付着していた。

それは彼女らの見ている前で見る見るうちに大きくなり、やがてカメラを覆い尽くしてしまう。

 

「こ、これは一体…?」

 

「離れて!」

 

シロナがそう叫ぶが、結晶は勢いよくはじけ飛んだ。シロナは咄嗟にマミゾウとはたてに飛びかかって押しのけるが、飛んできて砕けた結晶の破片が全身に突き刺さった。

 

「お、お主大丈夫か!」

 

マミゾウが駆け寄ると、シロナは頬や腕や足、腹に刃物のような結晶が刺さってはいるが命に別状はない。しかし、この出血とダメージではしばらくはもう動けそうにない。人並みに気を抑えていたシロナは咄嗟に気を上げての防御が間に合わず、衝撃をモロに受けてしまったのだ。

 

「ひどい傷ね…私たちを庇って…」

 

「ぬう…参った、せっかく黒幕に大きく近づいたというのに…」

 

「しょうがないわ、私も乗りかかった舟よ…一緒に犯人を捕まえましょう」

 

「…そうじゃな。儂の可愛い部下をたぶらかして挙句に殺した落とし前をつけさせなきゃ我慢ならん。シロナはこの寺に置いていって、儂らだけでも黒幕の元へゆくのじゃ!」

 

 

 

 

一方、人間の里のどこかにある建物の中。椅子に座っていた男は立ち上がり、裏口から立ち去る準備をしていた。

 

「あいつら…誰だかは知らないが僕の居場所に感づいたな。そうなったらここにはいられない…少し予定が早まったが、残る標的を始末しに行くか」

 

「残る標的って、誰の事かしら?」

 

が、男は背後から聞こえた女の声を聴いて立ち止まった。恐る恐る振り返ると、そこにはあの八雲紫がいた。部屋の中にあるちょっとした棚の上に優雅に腰かけている。

 

「くっくっく…お前が直々に出向いてくるとは思っていなかった。妖怪の賢者、八雲紫よ」

 

「あら、人間なのに私の事を知っているのね、以外だわ」

 

「少し調べればお前の存在は浮き彫りになる…そこそこ力のある妖怪を懐柔させればお前の名前なんて簡単に引き出せたからな」

 

「そうなのね。では、私はここまで人間と妖怪の均衡を崩したお前をここで止めなければならない。ねえ、”キヨヒロ”」

 

その紫の言葉を聞いた男は、明らかに動揺したそぶりを見せる。

 

「キヨヒロ、それが貴方の名前ですのよね?」

 

「…その通りだ。お前は何も手を出さずにただ静観していればよかったものを…僕の素性を知るお前をここで始末させてもらう」

 

その時、キヨヒロの背後に青いぼんやりとした影が現れ、それはどんどん濃くなって実体となっていく。人間にもロボットにも見えるような外見のそれはまるでキヨヒロ自身の分身であるかのように、彼の横で立って紫と対峙するのだった。

 




ジョジョパロの台詞やシーンがちょこちょこあります
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