もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第195話 「Party Poison」

キヨヒロの背後に現れたその像ともいえる人型の分身は、移動してキヨヒロの前に立って紫と対峙する。

その姿は、青を基調とした細い女性体に、目は青いグラスに覆われ、胸や腕には赤いラインが入った金色の鎧のようなものを纏っている。

 

「『ケミカルロマンス』。僕はコイツをそう呼んでいる」

 

ケミカルロマンスと呼ばれたキヨヒロの化身は、拳を振りかぶると目にもとまらぬスピードで紫に向かって殴りかかる。

しかし、紫は身をひるがえしてスカートを広げると、次の瞬間にはその場から消え失せていた。その場が奇妙なほど静まり返る。

そして、その直後に何もない空間から突然、妖気で作った槍のように鋭いエネルギー弾がケミカルロマンスの胸に向かってくる。だがケミカルロマンスも咄嗟に後ろへ下がり、キヨヒロの前に立つ。今度は紫に対して連続でパンチを放つ反撃に出るが、紫は自分の体を中心から半分に割って分裂し、それを避けた。続いて放たれた回し蹴りを、紫は再び体をくっつけつつ自分で作り出したスキマ空間の中に入ってやり過ごす。だが、その蹴りで生じた波動は先にあった棚に命中すると、その棚はバラバラに破壊された。

 

「流石にやるな」

 

「そっちこそ」

 

ケミカルロマンスは前へ駆け出すと同時に紫に対して拳による殴打と蹴りの応酬で攻撃を仕掛ける。その連撃は紫でさえも見切るのが精いっぱいなほど速く的確に繰り出されていた。その内の一撃がどうしても避けきれず、紫は床に作った隙間の穴から道路標識を出現させて伸ばし、それで一撃を防いだ。

 

「くっくっく…」

 

だが、それを見たキヨヒロは不敵に笑う。

その瞬間、紫の標識にパンチが当たった箇所から半透明の結晶が生え始めた。

 

「な、なに…!?」

 

その結晶はすぐに巨大化し、その尖った先端が紫の頬に触れた。

そして、結晶は勢いよく爆発するようにはじけ飛んだ。

 

「くっ…!」

 

その威力もさることながら、同時に飛び散ったナイフのような結晶の欠片が紫を襲う。紫は咄嗟に腕を振るって光弾を放って相殺しようとするが、そのうちの数本は防ぎきれずに自分の腕に刺さってしまう。

 

「これが僕のケミカルロマンスの能力!拳で叩いたり手で触れた場所から麻薬物質の含まれた結晶を生み出せる!そして、その結晶は一定時間が経過すると爆弾のように炸裂する…」

 

紫は腕に刺さった結晶の破片を引き抜く。そしてその破片に妖気を纏わせ、自作の槍に変じさせて一気に放った。

が、キヨヒロは自分の近くにまで戻したケミカルロマンスに床を思いきり殴らせ、その瞬間に伸びてきた巨大な結晶が壁として使って攻撃を防いだ。

 

「しかしな…僕のケミカルロマンスの力はこんなもんじゃない。これから見せるのが、ケミカルロマンスの真の能力!」

 

紫はキヨヒロとケミカルロマンスから発せられる並々ならぬ気を感じて警戒する。

 

(ここは人間の生活圏…この私がここで本気で戦えばそれはただではすまない。だが敵が何をするつもりであろうと…今からあの人間と化身を共に私のスキマの中へ引きずり込む!その中でなら、私は自在に動ける…全力で敵を叩ける!)

 

紫は真っすぐにキヨヒロを見つめると、スキマの中に消えた。そして万が一、気配を悟られている可能性を考えてキヨヒロの周囲をグルグルと回ってかく乱させ、その背後から飛び出した。キヨヒロの背中へ向けた右手にスキマを出現させてそのまま彼を中へ放り込もうとする。

 

パキパキ…

 

「え…!?」

 

だがしかし、紫の右腕からあの結晶が突然生え、見る見るうちに巨大化していく。結晶は右腕とそして肩まで覆い、その直後に炸裂した。

 

「な、何故…私は触れられていないのに…!」

 

右胸から右腕にかけてを吹っ飛ばされた紫はその場に崩れながらそう言った。キヨヒロはそんな彼女の目の前の床を思いきり踏む。

 

「これがケミカルロマンスのもう一つの能力…」

 

紫は立ち上がろうとするが、何故か体の自由が利かない。自分の能力でさえも発動することが出来なくなっている。

 

「さっきお前の腕に刺さった結晶の一部が溶けて体内に入り込み、流れている…一気に多量の麻薬を取り込んだお前はしばらくまともに動くことはできない。実体を持つ妖怪であれば効くのは実証済みだからな…」

 

ケミカルロマンスは手刀を作り、その先を紫の胸に向ける。

 

「ここでさらばだッ!八雲紫!!」

 

「ここじゃ、この建物にあの男はいる!」

 

「!!」

 

そして手で紫の胸を貫こうとした瞬間、外からマミゾウの声が聞こえると、キヨヒロはケミカルロマンスの腕を制止させた。

窓を外から覆うすだれの向こう側には、マミゾウとはたてがこの家の前にいた。

 

「アイツら…もうここへ来やがった…!」

 

キヨヒロは紫の方を見ると葛藤する。

 

(今ここでコイツと外のふたりを殺すか?いいや、コイツはともかく外の奴らは警戒してこの中に入って来ない…僕がケミカルロマンスを操れる射程距離の事を考えれば、僕も家の外へ出なければならない…そうすれば他の第三者に僕の姿を見られてしまう…それだけは避けたい…)

 

 

一方、マミゾウとはたては家の前にやってきたは良いものの、中で未知の敵が待ち構えていることを考えると思い切って殴り込めないでいた。

 

「どうするの?」

 

「…いや、敵はここまで素性がばれることを嫌っているようなヤツじゃ…今この瞬間にも儂たちの存在に気付き逃走の準備をしておるかもしれん」

 

ドゴッ!

 

その時、家の中から何かがぶつかったような鈍い音が聞こえた。

 

「つまり、敵に余裕を与えてはならんということじゃ!ゆくぞ!」

 

マミゾウとはたては思い切ってドアを窓を破壊して家の中へ突入する。

…しかし、そこにあったのは、全身を既に真っ赤に変色した結晶に覆われた、八雲紫の姿だった。

 

「な、何じゃとオォ!?」

 

次の瞬間、結晶はこれまでにないほどの大きな爆発を起こしながら破裂した。巻き起こる突風は刃物のような破片を共に吹き飛ばし、マミゾウとはたてに襲い掛かる。

 

 

「くっくっく…これで邪魔者がまた減った。予定が早まってしまったが、そろそろ僕の復讐の総仕上げといこうか」

 

家の裏口から外へ出ていたキヨヒロは、ケミカルロマンスの怪力を利用して目にもとまらぬスピードで移動しながらある場所を目指すのだった。

 

 

 

 

一方その頃、ケミカルロマンスによる謎の遠隔攻撃を受けて大ダメージを受けたシロナは、未だ命蓮寺に寝かされていた。全身の結晶の破片が刺さった箇所に包帯がまかれていることから、マミゾウたちは最低限の処置をシロナに行った事がわかる。

その時、何もない空間に突如としてスカーが出現する。機嫌が悪そうに両足を組みながら寝そべるような体勢で宙に浮かぶスカーは下のシロナをじっと見つめる。

 

「全部見てたけどヨ…なんでコイツは自分から進んで汚れにいくのかネェ…」

 

そしてシロナを左わきに抱えるようにして抱き上げると、勢い良く飛び上がって天井を破って外へ出る。

 

「こんなばっちぃ状態のコイツ殺したって面白くなイ…ワタシが治せるところへ連れていってやるヨ」

 

スカーはシロナや魔理沙、人間たちを観察しながら過ごすうちに、迷いの竹林という場所にあるという永遠亭という場所の存在を知っていた。そこでは八意永琳という医者がいることも。

スカーはそこを目指して空を飛んで移動を開始するが、その途中でシロナは目を覚ました。シロナはスカーの服の袖を掴み、小さな声で言う。

 

「待って…スカー…!」

 

「なんだオマエ、起きたのか?」

 

「私を…あの男のところへ連れていって…!」

 

「は?何言ってんだオマエ!そんな状態で戦うつもりかヨ?」

 

「もちろんよ…早くしないと、もっと死ぬ人が出てくるわ…」

 

スカーは空中で止まり、シロナの頭を掴んでぶら下げた。シロナの身体はスカーにとっては何ともないくらい軽く、今手を離せば今の弱ったシロナでは死に至るだろう。

文字通りスカーに生死を握られたシロナは苦しげな表情でスカーと目を合わせる。

 

「もっと死ぬ人が出てくる、だト?オマエは本当ににアホだヨ!他の奴を助けるといってモ、自分が死んだら意味ねぇだろうガ!どうしてオマエは自分の事を気にしないんだヨ!?」

 

「ただ…私が戦えば助かる人たちがいるって思えば…安いもんだなってさ…。多分、あの須藤さんも同じ気持ちで…警察であり続けたんだと思うから…」

 

弱々しくも真っすぐな光を持ったシロナの目に圧倒されたスカーはバツが悪そうに顔を背けさせ、再びシロナを脇に抱えて空を飛ぶ。

 

「チッ…どうなってもしらないからナ!」

 

(おかしい…今、ワタシの頭の歯車が…前にこんなことあったような…?)

 

スカーはわずかに感じた違和感を押しのけると、例の男…キヨヒロの姿を探す。

 

「…いた!あそこだ!」

 

眼下の裏路地を急いだ様子で小走りで移動する男の姿があった。スカーはそこへ急降下して降り立つと、男が向かう先へまわり額から電撃を放って威嚇する。

 

「おいシロナ、黒幕の男に会えたヨ」

 

ついにシロナは、人間の里に薬物を蔓延させそれが原因となる多くの死者を出し、警察の須藤を殺害した男…キヨヒロへとたどり着いた!

 




ケミカルロマンスはスタンドのようなものと思っていただければいいです
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