もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第202話 「ヒートアップ」

「あの吉弔はな…!ヤツが持っていた最後のパワーストーンに取り込まれて合体した存在なんだ!邪魔者をこの畜生界まで来させて、その隙にヤツが地上を制圧する算段なんだよ!」

 

「な…なんだと…!?」

 

驪駒から吉弔八千慧の正体と真意を聞いた勇儀は青ざめた。

 

「お前らはまんまとヤツの策に乗っちまったわけよ…」

 

八千慧は、まずは饕餮の持つパワーストーンが黒星の者として目覚め、続いて驪駒の持つストーンが奪われて目覚めたと言った。だが、実際には3つのパワーストーンが同時に目覚めていたのだ。饕餮と驪駒のパワーストーンは彼らの手元から離れ、ふたつは合体して今シロナ達が戦っている黒星の者となった。

しかし、問題は吉弔の持つパワーストーンだった。

 

「アイツは畜生界じゃ一番性根が悪い…絶対にストーンを手放したくないので、アイツは自分の体内にストーンを埋め込んでいたんだ」

 

結果、体内でストーンが目覚めた八千慧はその瞬間から黒星の者に取り込まれてしまった。八千慧と一体化した黒星の者は600年前に襲撃した幻想郷を再び蹂躙するべく、現在の地上の様子を観察した。その時、ちょうど地底には”シロナ”と”スカー”という名の煩わしい強さを持つ者がいることを知った。黒星の者は地底と畜生界を繋ぐ穴を作り、ふたりをそこへおびき寄せて自身の3分の2の力で始末し、その間に地底を荒らし尽くした八千慧と合体した残り3分の1と合流して完全な力を取り戻し、幻想郷へ乗り込もうとしているのだ。

 

 

「ねぇスカー…さっきは調子よかったけど…」

 

「ああ…どうやらコイツ…」

 

シロナとスカーは、先ほどまで黒星の者に対して有効打を与える方法を知り、優勢であった。しかし、黒星の者も言葉は話せないとはいえ、知性がないわけではない。少しずつ、戦ううちに”慣れ”を見せ始めていた。

 

「バアアアアッ!」

 

分身を通じた攻撃は黒星の者に対してダメージを与えることができたが、それは時間が経つにつれてだんだんと効果を示さなくなっているのにシロナとスカーは気付いていた。

 

「チイイ…!」

 

スカーは分身に電撃を当て、それを黒星の者にも通そうとするが、黒星の者にはほとんど効いていなかった。そして続けてシロナが分身ごと殴ろうと拳を放つが、今まで手ごたえがあった攻撃がまるで通用しない。

 

「コイツ、べらぼうに強いわ…!」

 

黒星の者は爆音のような衝撃波を発し、ふたりを吹っ飛ばして岩壁に激突させた。そして、さらに顔にあたる中心部分から黒い色をした特大の火炎を吐き出した。

ふたりは飛んでそれを避けるが、見ていた勇儀はわなわなと震えた。

 

「今のは…死んだ戦友の得意だった技じゃないか…!あの声の衝撃波も、火炎放射も…!」

 

勇儀がかつて黒星の者と戦った際、共に戦いそして散っていった鬼の仲間たちが得意としていた技を、黒星の者は使用して戦っていた。黒星の者は戦った相手の技をコピーすることができる。

 

「くっそォ…!」

 

悔しそうに拳を固める勇儀だが、目の前ではシロナとスカーが苦戦を強いられていた。ふたりは黒星の者が地面から発生させた黒い棘のような物体に動きを遮られている。そしてその間に、黒星の者は目の前に黒と紫が混ざった色をしたエネルギー球を作り出していた。

 

「ガアアアアアアアアアッ!!」

 

そして、雄叫びとともにそのエネルギー球をさく裂させ、放射状に広がる強力な破壊光線を発射した。シロナとスカーは避けることもできず、それの直撃にあい、身を焼くような圧倒的な邪気の波に取り込まれた。

 

「強すぎるヨ…!!」

 

「これは…私たちだけじゃ、勝てない…誰か、他に強い人を…連れて来なければ…」

 

ふたりはそう言いながら敗北を実感する。黒星の者は最後に光線の威力を強め、辺り一帯に大爆発を引き起こす。それは離れた場所から見れば巨大なドーム状のエネルギーが見えるほどの規模で、正しくそれが治まった後には黒星の者以外は跡形もなくなっていることだろう。

…やがて全てが静かになると、巨大なクレーターの中心で佇む黒星の者は眼だけで笑みを浮かべる。そして、地底世界にいる自分の残る身体の一部と合流するために、この畜生界を後にするのだった。

 

 

「…ふう、一難は去ったようだな」

 

シロナはその声によって我に返った。目を開けると、自分とスカー、勇儀、そして驪駒と饕餮が地面に寝かされていた。続いて上を見上げると、そこには見慣れた顔があった。

 

「魔理沙!!」

 

「はっはっは、あんまり遅いから地底へ行ってみたら、萃香のやつがシロナ達は懐かしい畜生界に行ってるって言うからよ…。だが、ありゃ一体なんだ?今地底を荒らしてるヤツと何か関係があるのか?」

 

「その言い方だと、やっぱり地底の都は…」

 

「ああ、酷いありさまだった。何か、黒っぽい亀みたいな龍…あれは吉弔か?が暴れてて、今妖怪が総出で食い止めようとしているところだ」

 

「私たちがさっきまで戦ってたのは、その地底で暴れてるヤツの片割れなのよ。今、私たちを始末できたと思ってもう片方と合流しに地上へ行ったのよ…」

 

「あれほどの圧倒的な妖力と邪気を持ってただの片割れ…だと…?」

 

「うん…ヤツは強い。今のままでも厳しかったのに、完全な力を手に入れた黒星の者は私たちじゃ絶対に勝てない」

 

「じゃあ、どうするつもりなんだ?」

 

「強い助っ人が必要ね…。心当たりはあるから、行くよスカー」

 

シロナがそう言うと、スカーも起き上がる。

 

「ふん、ワタシがオマエに言われて付き添うなんて癪だガ、いってやるヨ」

 

 

 

 

「ふーん。それで、僕の手が借りたいってわけかよ?」

 

「だから最初からそう言ってるでしょ?」

 

シロナが畜生界を抜けて三途の川を渡って幻想郷へ帰還し、足を運んだ先は人間の里にある刑務所の面会室だった。そして、ガラス越しにシロナと対面するのは…あのキヨヒロであった。

人間の里に薬物を蔓延させ、さらに自分の復讐として数多くの人間の命を殺めたが、最後にはシロナ達の活躍により倒された男だ。

 

「残念ながらそれは断るぜ。誰がお前の頼みなんて聞くと思うん…うわっと!!」

 

キヨヒロがシロナの頼みを断わった瞬間、彼女の拳がガラスを叩き割り、その向こうのキヨヒロの顔面に向けて飛んできた。が、キヨヒロは間一髪のところでかわした。

 

「テ、テメェ何しやがる!?」

 

だがシロナは問答無用で次の一撃を構え、放った。

 

ガシッ!

 

しかしキヨヒロもやられっぱなしではない。咄嗟に、自らが自在に操れる強力なパワーを持った化身、「ケミカルロマンス」を浮かび上がらせ、その腕でシロナの拳を掴んで止めた。

 

「む!」

 

さらにケミカルロマンスの持つ、触れた物体や場所に爆発する結晶を発生させる能力を発揮し、シロナの拳を大きな結晶で覆い尽くしてしまった。

 

「まだ爆発のカウンドダウンは開始していない。だがお前がこれで大人しく帰るのならば結晶は解除してやる…。さぁもう帰れ!僕をここへ叩きこんだのはお前だろ?」

 

「…」

 

シロナは少し考え込んだ。その時、騒ぎを聞いた看守たちがドタドタと走りながらこの面会室に向かってきているのがわかった。

 

「…だったら、貴方が私と一緒に来てくれるのなら、貴方を釈放してくれるように私から頼んであげるけど」

 

「なんだと?それは本当か?」

 

「おい巫女さん、何の騒ぎだ!?まさかキヨヒロが…」

 

看守が慌てて面会室に入った時には、既にその場にシロナとキヨヒロの姿は無かった…。

 

「なんだヨ、心当たりのある助っ人ってその男の事かヨ」

 

スカーが空を飛びながら、要石に乗っているシロナに憎らし気にそう言った。キヨヒロはシロナと一緒に要石にぶら下がるようにして雑に乗せられていた。するとキヨヒロの背後からヌッとケミカルロマンスが出現し、スカーと顔を合わせる。

 

「その男、ではない。キヨヒロという名前があります」

 

「ケッ、ワタシにとっちゃいちいち人間の名前なんテ、覚えてられるかヨ」

 

「そろそろ地底世界への入り口よ。旧都じゃ、もう既に完全な力を取り戻した黒星の者がいるはず…。これ以上被害が拡大する前にヤツを仕留めるのよ!」

 

シロナはキヨヒロとケミカルロマンスを助っ人として迎え、先ほどは敗北してしまった黒星の者へ再戦を挑もうと地底世界へ突入するのだった…。

 

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