もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第209話 「永遠に幼き者たち」

敵自身が使う能力を利用し、見事サーモスとの試合に勝利した咲夜。しかし、短時間に使用しすぎた自分の能力のクールタイムと受けた傷によって体力をかなり消耗していた。

 

「お嬢様たちは…?」

 

改めて他の面々が戦っている方へ目を向けると、咲夜が自分の戦いに集中している間に驚くべき光景が広がっていた。

 

 

数分前…

 

「ふっふっふ…どうですかな、魔法使いのお嬢さん」

 

氷や炎、雷が無数に重なり合ってひとつのドームを作り上げていた。そしてその中心には、仁王立ちをしたまま一切動かずに全ての攻撃を受け続けるツーナスの姿があった。

 

「この鋼の肉体の前には、どのような魔法も意味を成さないのだ」

 

ツーナスは地面を蹴って走り出し、驚異的なスピードで一瞬にしてパチュリーの目の前に接近した。そしてにやりと笑うと、突き出した拳から強力な拳圧の衝撃波を放ち、パチュリーが防御する暇すら与えずに吹っ飛ばした。

 

「ぐっ…なんてヤツなの…!」

 

「レディーを直接殴る訳にはいかないのでね、これでいかせてもらう」

 

吹っ飛ぶパチュリーに走りで追いつきながら、もう一度拳からの衝撃波で攻撃を加える。パチュリーは闘技場の壁に激突し、コンクリートの破片に埋もれてしまう。

 

「おっと…やり過ぎてしまったかな、彼女自身の肉体の弱さを考えると既に重さで潰れてしまったかな?」

 

うんともすんとも言わない瓦礫の山を見て、ツーナスは呟く。

 

「だが、私のような限界を超えた肉体さえ持っていればそうはならなかった。どんな炎も跳ね返し、冷気にも耐え、砲弾の爆発にさえものともしない私のような肉体があればな!わはははははは!!」

 

彼の高笑いが周囲に響き渡る。確かに、ツーナスの体は超人を超えるレベルで強靭だ。腕の一振りで衝撃波を発生させるほどのパワーとスピードを備え、パチュリーの魔法を集中的に受けてもダメージひとつ負わない。

 

ガシッ…

 

「ははははは…!…え?」

 

「ふーん。でも、ヴァンパイアには敵わないんだろ?」

 

その時、ツーナスの背後から忍び寄っていた謎の影が、その手で彼の頭を掴んだ。

 

「何者だお前は…!」

 

ツーナスはその腕を掴んで振りほどこうともがくが、彼よりも強いパワーで押さえつけられビクともしない。

 

「ヴァンパイアさ」

 

するとその影はツーナスを空中へ持ち上げ、大きく振りかぶった。そして腰を引いて足を踏み出し、渾身のパワーでツーナスを投げ飛ばした。

それは戦闘を開始していたレミリアとゴルゴンに向かって一直線に向かっていき、ツーナスは二人が武器を打ち合っている真横の地面に激突する。

 

「なに!?ツーナス!?」

 

それを見て注意が逸れたゴルゴン。対してレミリアはその隙を逃さず、妖力とオーラで作った槍でゴルゴンの胸を貫いた。

ツーナスは地面をバウンドして再び遥か彼方まで吹っ飛び、貫かれたゴルゴンはもはやレミリアなど眼中にない様子でツーナスがぶっ飛んできた方向に向き直る。

 

「よう、面白い事やってるじゃないか」

 

「ターゲット”α”…!」

 

「スカーレット…!」

 

そこに居たのは、ゴルゴンらはターゲットαと呼んでいる、レミリアたちの姉に当たる最強の吸血鬼…実の両親にかけられた呪いによって名前を失い、”ただのスカーレット”となった吸血鬼。

 

「なんでアンタがここに…!」

 

レミリアが驚きの声を漏らす。スカーレットの四肢には破壊された拘束具と千切れた鎖がついたままで、まるでどこかから無理やり逃げ出してきたかのようだった。

 

「ふ…ははは…ふははは…はーっはっはっはっは!!」

 

その時、ゴルゴンはおもむろに笑い出す。戦いを終えた咲夜と、自力で瓦礫の中から這い出てきたパチュリーと魔理沙も、レミリアとスカーレットと一緒になって困惑する。

 

「やはりアナタだけは我々の手に余るようだな!出て来い」

 

スカーレットがそう言うと、どこからともなく無数の蝙蝠が出現し、それは3か所に集まっていき、ついには3人分の人影へと変化する。人影はみな少女か少年のように小柄で、背中から吸血鬼特有の蝙蝠の翼を有していた。

 

「我が姉弟たちだ。長女はこの私、ゴルゴン」

 

「弟のゾーラ」

 

「その下のカルボ」

 

「末のナーラといいます」

 

ゴルゴンを含めた4人の吸血鬼たちはそう自己紹介する。

 

「…どういうつもりだ?」

 

「我々はお前たちを歓迎する。改めて、ようこそ…ヴァンパイア王国へ」

 

さっきとは打って変わった態度に、ハテナマークが頭上に浮かぶのを隠しきれない。

 

「ふふふ…実はな、お前たちをこの王国へ連れてきたのはある頼み事があるからだ。とくに、そこのαにはな…」

 

ゴルゴンはαと呼んでいるスカーレットを見た。

 

「頼み事ですって?」

 

「単刀直入に言う。この国に君臨する暴君、『ペペロン女王』を、その手で抹殺して欲しい」

 

それを聞いた一行は唐突な殺しの依頼に困惑し、黙ってしまう。しかし、ゴルゴンは真剣なまなざしでレミリア達の顔をひとりひとり見渡す。

その静寂を最初に破ったのは、スカーレットだった。

 

「おいお前、ゴルゴンとか言ったな?この私をあの程度で拘束できると考えるとは愚かであったな」

 

「そのようだな…アナタのパワーを見誤っていた」

 

そう言うゴルゴンは心なしか嬉しそうだった。

 

「さっき、私が捕まえられてる部屋から強引に抜け出したとき、城の中でとてつもない…巨大すぎる魔力を感じた。だが、不思議とそれを異様と感じることはできず、まるで大地に根付く地脈の流れのように自然だった…」

 

「α、アナタが体験したその魔力の根源こそ、暴君たるペペロン女王の気だ。このヴァンパイア王国は4000年の歴史を持つ、ペペロン女王が造った国だ。当然、彼女の力が、生命力が、その礎としてみなぎっている…」

 

 

───ペペロン女王は少なくとも今から5000年前からは存在していたとされている。この地球に暮らす人間と姿こそ似ていれど根本から異なる”魔族”のような生き物だった女王は常に一人ぼっちで仲間を探しながら生きていた。

だがある時、自分が暮らしていた洞窟内に棲んでいたコウモリたちが、自分の持つ魔力の影響を受けて魔族化していることに気が付いた。女王は自分の血液をコウモリに分け与えると、コウモリたちは見る見るうちに人型へと変化したという。これが、我々ヴァンパイアの一族のルーツだと言われている。

しかし、ペペロン女王をもとに発祥したヴァンパイア一族は、他の動物や人間たちには受け入れられなかった。そこで女王はヴァンパイアたちだけが安心して暮らせるヴァンパイアたちだけの王国を作り上げることに成功したのだ。

 

 

「それが、ヴァンパイア王国の始まりだと言われている。この国の国土に、かつての女王の栄光のエネルギーが染みわたっているのは当然だろう。時にレミリアよ…何故、自分は500年以上も生きているのに肉体は幼いままそれ以上成長しないのかと疑問に思った事は無いか?」

 

レミリアは腕を組む。

 

「確かに…私はある時で成長がピタッと止まり、以後この姿のままだ。それはそこのスカーレットも同じはずよ」

 

「ああ…私もある時を境に成長しなくなった。ま、そこのレミリアよりも年上の姿だがな」

 

「そうか…それを聞いてやはり確信した。実は私も、ある時に肉体の成長が止まった。それは私の姉弟たちも同じこと。そしてそれこそが、王家の呪いであり、ペペロン女王の直系の血を引く証なのだ!!」

 

「な、なんですって…?」

 

「じゃあ、レミィとスカーレットもゴルゴンの妹に当たるってこと?」

 

「いいや、レミリアと我々は血のつながりこそあれど姉妹ではない。ただ、本来ならば我ら兄妹の長男であり次代国王となるはずだった男が、キサマらの父親だったという事だ」

 

「私の…父親が…」

 

「ペペロン女王直系の血を引く我々は、決して『ペペロン女王が王国を造った時の年齢』以上の外見に成長することができない。女王の当時の年齢以下のあるタイミングで、死ぬまで永遠に成長が止まるのだ。我らは決して女王を越える力は持てないようになっている…」

 

「お嬢様の容姿が幼い理由に、そんな背景があったとは…」

 

「成長が止まる時期に個人差はあるがな。私とそこのα…いや、スカーレットはかなり長く粘れた方だ。吸血鬼の500歳は人間でいう30歳程度にあたり、私は1000歳を迎えた。女王以外の一般的な吸血鬼の寿命にもうすぐ達するだろう」

 

「そんなかわいい見た目でおばあちゃんって事か…だったらレミリアも人間でいえば私と同じくらいってことだろ~?」

 

魔理沙がからかうようにレミリアを肘でつっこくる。

 

「でも、先ほどの話を聞いた限りですとそのペペロン女王が何故暴君と称されるのか、私には理解できませんね…民の事をよくお考えになる、よい女王様のように思えますが」

 

と、咲夜が疑問を口にする。ゴルゴンやその姉弟たちはその瞬間に口をつぐみ、暗く沈んだような顔でうつむいた。そう質問した咲夜が少し気まずく感じてしまうほどだった。

 

「では話そう…全てが狂ったあの時の事を…」

 

ゴルゴンの口から語られる、王国に起こった事件とは…!?

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