もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第211話 「伝説のヴァンパイア」

「ゴルゴン様、緊急事態です!!議事堂の紫外線照射装置が何者かによって止められてしまいました!このままでは、じきにペペロン女王が動き出してしまいます!!」

 

「なんだと…!?」

 

配下の吸血鬼からそう報告を受けたゴルゴンは驚愕と焦りがない交ぜになった顔になり、慌てて背中の翼を広げて空へ飛び上がった。

 

「あの女の仕業か!一刻も早く、議事堂へ向かい女王の解放を止めるのだ!」

 

「私たちも行くわよ」

 

「はい、お嬢様…」

 

「おい、私の獲物を獲るなよな!」

 

「まったく、世話の焼けるわね…」

 

「私も戦えはしないだろうが、結末を見届けてやるぜ」

 

ゴルゴンとその姉妹達に続き、レミリア、咲夜、スカーレット、パチュリー、魔理沙も続いていくのだった。

 

 

 

「うふふふふ…きっとゴルゴンは連れて来たあの連中を使って女王を抹殺するつもりだったようだけど、遅かったようね…。議事堂は吸血鬼にしか出入り口を開けられない仕組みになっていたようだから、ひそかに別の吸血鬼共も改造手術をしておいてよかったわ」

 

オートは電源を破壊した紫外線照射装置の残骸を蹴飛ばし、十字架の上に縛られて横たわるペペロン女王を見下ろした。

 

「起きなさい化け物」

 

女王はギロリと目を見開き、視線だけをオートへ向けた。血走った紅い瞳のするどい眼光に睨まれたオートは思わずビビって後ずさってしまう。

 

「ふ、ふふふ…魔力は衰えていないようね・・・むしろ10年前より増大してるわ」

 

人間の女の髪や、吸血鬼が苦手とするニンニクの葉などを編み込まれた鉛の鎖の施錠を外し、ペペロン女王の首、両足を順々に開放していくオート。右腕の鎖を外し、最後に左腕に取りかかろうとした瞬間、議事堂の壁を破って何者かが飛び込んできた。

 

「あら、少し遅かったわね」

 

「やはりキサマかドクターオート!!」

 

突入してきたゴルゴンはそう怒鳴った。そしてそのまま滑空し、オートを真っ先に始末しようと彼女に襲い掛かる。当然オートにとってゴルゴンに本気で襲い掛かられてはさすがに勝ち目は無く、いきなりの容赦のない突撃に怯んでしまう。

 

「は、はやく起きなさい、このバケモノ!!」

 

そしてオートが焦りながらそう叫んだ瞬間、横たわっていたペペロン女王の体から眩い魔力の閃光が放たれた。部屋中が真っ赤に染まるような光に、ゴルゴンは動きを止めて腕で顔を覆う。

丁度その時にやってきたゴルゴンの兄妹とレミリアたちは、今まさにペペロン女王が復活する瞬間を目撃した。

赤い閃光が治まった後には、一本の柱のようなものが突っ立っていた。いや、それは柱ではない…身長が4メートルにも及ぶ巨大なヴァンパイアがそこに居たのだ。

 

「あれが、ペペロン女王…」

 

巨大な身長の割には細身でスラっとした体格に、腰まで届く長く綺麗な黒髪。肩の出た黒いドレスを身にまとったその姿は、まさに女王と呼ぶにふさわしいほどに美しかった。レミリアとスカーレットはペペロン女王の姿を見て自分たちに似た面影を感じ取り、咲夜やパチュリー、魔理沙はその妖艶な雰囲気に魅了されかけた。

左腕の施錠が解除されないまま強引に起き上がった所為か、左手首から先は無理やり切断されて、縛られていた十字架に置き去りにされていた。次の瞬間、女王は背中から巨大で平べったい腕のようにも見える奇妙な形の翼を目いっぱい広げ、細長い針のような牙がびっしりと並んだ口を大きく開き、咆哮を轟かせた。

 

「アアアアアアァ────ッ!!」

 

女王は眼下に並ぶレミリアやスカーレット、ゴルゴンたちをざっと見渡す。

 

「えらそうに見下ろしてくれるなァ…腹立つな、コラァ!!」

 

その時、スカーレットが真っ先に飛び出してペペロン女王に攻撃を仕掛けた。腕に魔力を集中させ、それを振るって殴りかかる。

 

フッ…

 

「き、消えた…!?」

 

だが、忽然と女王の巨体がその場から姿を消してしまったのだ。スカーレットの一撃は空ぶり、大きな隙が晒される。

その直後、上から大きな影が落ちてきたことでスカーレットは気付いた。女王は自分の真上に寝た体勢のまま浮かんでいると。

 

「…やば…」

 

次の瞬間、不気味な笑みを浮かべた女王の腕の一振りがスカーレットの背中に命中した。強烈な一撃を受けたスカーレットは体を折り曲げながら床に激突し、全身が埋まってしまう。

 

「お、終わった…」

 

ゴルゴンがあまりの呆気なさにそう呟いた。めり込んだスカーレットの体は一撃によってグチャグチャに潰れてしまっており、彼女はピクリとも動かない。

 

「はははは…!見てたわよねゴルゴン!お前が連れてきた頼みの綱も一撃でこれよ!流石はペペロン女王…それ以外の吸血鬼が相手では圧倒的すぎるわね」

 

「いや、待ちなさい…相打ちよ」

 

ペペロン女王の解き放たれたパワーを見てそう喜ぶオートに対し、女王は静かにそう言い返す。

 

「何ですって?」

 

「叩き落とす瞬間、踵蹴りを受けた…この者、やるわよ」

 

そう言いながらオートへ顔を向けたペペロンの頬は打撃を受けて大きく陥没していた。これは同時に、スカーレットクラスのパワーを持つ吸血鬼たちがかかればペペロン女王を傷つけることができるのを示していた。

 

「かかれ───ッ!!」

 

ゴルゴンがそう合図しながら飛び出すと、その兄妹たちも一斉に女王へ攻撃を仕掛けようと飛びかかっていく。それを迎え撃つ構えを取りながら吠える女王。

 

「私たちも…!」

 

「はい、お嬢様…!」

 

続いてレミリア達も女王へと向かっていく。

ゴルゴンの蹴りは女王の両腕をすり抜けて顔面にヒットし、女王は目を瞑って後ろへよろめく。続いてゾーラの撃った念力が連続でヒットし、カルボの爪の一撃が首筋を切り裂き、ナーラの吐いた火炎が女王に振りかかる。

 

「グ…ア…!」

 

「はっ!」

 

咲夜の投げたナイフが無数に女王の背中に突き刺さり、パチュリーが魔法で生み出した緑色の雷撃が女王に命中する。さらに、レミリアが妖力で作り出したピンク色の槍、グングニルが女王の腹を貫いた。レミリアは槍を引き抜き、女王はよろよろと後ろへ下がってバランスを崩す。

 

「すげぇ!全員でかかればこんなもんか!」

 

魔理沙が感嘆の声を上げる。

 

「やれやれ…わかっていないようね」

 

そんな彼女らを見てオートは呆れ気味にそう呟く。

 

「やりなさいペペロン女王!」

 

「クックック…」

 

その時、女王が受けたダメージが即座に回復し、傷一つない元通りの姿に戻ってしまう。そして一番近くにいたゴルゴンを蹴り飛ばし、ゾーラたちを腕の一振りで弾き飛ばす。彼らは分厚い壁に叩きつけられ、その場に倒れ込む。

 

「ぐ…!」

 

続いてレミリア達に背を向けると、背中に刺さったナイフたちが女王の念力を受け、独りでに抜け落ちると今度はその切っ先を咲夜に向け、一斉に放たれた。

 

「咲夜、避けろ!」

 

「カハ…!」

 

しかし、不意の反撃に対処できず、何本かのナイフが咲夜の体に突き刺さってしまう。

 

「咲夜!!…ハッ!?」

 

レミリアは、既に背後に接近していた女王が攻撃を構えているのに気付き、後ろへ飛びのいた。が、離れたと思った矢先にまた背後に女王がいるのに気付き、今度は横へ飛んだ。だが、そこにも女王は先回りしており、指の長い大きな手で恐る恐る振り返ったレミリアを掴み上げた。

 

「うぐ…」

 

「握りつぶしなさい、女王!」

 

オートの命令を受けた女王は握る力を高め、レミリアを潰さんとする。

だがその時、いつの間にか迫っていたゴルゴンが、手元に作ったオーラの剣を女王の腹に突き立てた。そこは先ほど、レミリアがグングニルを突き刺せた柔らかい箇所だ。それは彼女以上のパワーを持つゴルゴンであれば、もっと容易に致命傷を与えられるはずだ。

 

ガキン…!

 

「な…!」

 

しかし、先ほど槍が刺さった箇所に、剣は刺さらなかった。だがゴルゴンはめげずに剣で連撃を浴びせる。女王はうっとおしい虫を払うように、平手でゴルゴンを突き飛ばした。

 

「なんでさっきは通った攻撃が効かなくなってるんだ…?」

 

と、魔理沙が呟いた。

 

「お、おそらく…女王固有の能力…”順応”だろう…」

 

「順応…?」

 

「女王はどんな過酷な環境に置かれようとも、ものの数分でその環境に適応してしまうのだ。灼熱の火口に居ればその身体はどんな高熱にも耐えるようになり、極寒の氷山に居ればその身体は熱を逃がさぬよう進化を遂げる。”順応”だ…まさか、それが戦闘にも作用するとは…。女王は一度傷ついた箇所は修復すると同時に硬質化させているのだ、一度行った攻撃はもう通用しないぞ」

 

一方、レミリアは女王のパワーで体を絞められ限界が近づいていた。強力な不死性を持つ吸血鬼と言えど、全身を修復不可能なまでに破壊されたり、脳に深刻なダメージを追うと絶命してしまう。女王の大きな手は完全にレミリアの小さな体を覆い尽くしており、潰されればひとたまりもないだろう。

 

「ぐ、ぐあ…あ…!!」

 

「いいわよ女王!先にそのチビから始末しなさい!」

 

だがその時…

 

「『ライエムドアクス』!!」

 

突然何かが女王の肩へ叩きつけられた。肩から胴体までかけて深く斬られ、レミリアを掴んでいた右半身がだらりと垂れさがる。解放されたレミリアは慌ててその場を離れ、何が起こったのか確認した。

女王の背後には緑色のオーラで形作られた巨大な斧があった。それを肩に担ぐようにして振りかぶっているのは、いつの間にか復活したスカーレットだった。

 

「お前、あの両親どもの親…なんだってな、さっきはよくもやってくれたなおばあちゃんよ…今度はああはいかないぞ」

 

「オアアアア───ッ!」

 

再び、スカーレットとペペロン女王はぶつかり合う。

 

「いいわよ…邪魔者はとことん殺しなさいペペロン女王…私の野望実現の為に!」

 

 

ヒートアップするペペロン女王との戦い…女王の暴走を止めることができるのだろうか!

 

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