もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第218話 「ファイナルラウンド」

一気に議事堂へとたどり着いたシロナは、真っ先にペペロン女王へと向かう。レミリアとフランに喰らいつこうとしていたその顔面に拳をめり込ませる。反応しきれなかったほどのスピードを持った一撃を受けた女王は何が何だか分からないままぶっ飛ばされ、頭から床に激突する。

 

「シロナ!!」

 

レミリアとフランがシロナの名前を呼ぶ。シロナはふたりに振り返ってにっこりと笑った。だがその時にもうひとつ、ズタズタにされたままピクリとも動かないゴルゴンの姿が目に入る。

 

「ギシャアアアアアア」

 

ペペロン女王は声を上げながらむくりと起き上がり、シロナと対峙する。シロナは巨人のような大きさと威圧感の女王を見上げ、睨みつける。

 

「シロナちゃん…パチュリーたちが助けてくれたのね?」

 

「でも不思議ね…シロナからパチュリーと魔理沙の気配を感じる…それに、私たちと同じ吸血鬼の気も…」

 

レミリアとフランはやってきたシロナを見てそう言った。

 

「ゴルゴンさん、貴方の腕は私を生かしてくれました。どうか、安らかに…」

 

息絶えたゴルゴンに弔いを言葉をかけるシロナ。一方、実の娘である彼女をも殺したペペロン女王は怒りに満ちた顔でシロナを睨んでいた。「人間の分際でこの私を殴りやがって」…とでも言いたげな顔だ。

 

「シャアアアアアアアアア!!」

 

そして、シロナに向かって鋭い爪を伸ばした腕を振りかざした。だが、シロナはサッと横へ体を傾けてそれを躱した。呆気にとられる女王は驚きながらシロナに目線を向ける。

 

「遅く…なってやしない?女王」

 

女王はさらに怒り、強力な蹴りを放つ。今度の一撃はシロナに命中した。バキンというとんでもない音が響き、蹴りはシロナの首を綺麗にとらえていた。

 

「いいや、遅いというよりも…弱くなってない?アンタ」

 

しかし、その一撃はシロナに対してまったく効いていなかったのだ。シロナは平然と腕を広げて女王に軽口を叩くのに対し、蹴りを入れた方であるはずの女王の足はへし折れて曲がっていた。

 

「アギ…!」

 

(そうだ…いつもと同じだ。幻想郷で妖怪を倒すのと同じだ。ただ…敵を殴ってやればいい!!)

 

「ウラァ!!」

 

シロナの放った拳の一撃は、痛がっていた女王の横面にヒットする。そのパンチの威力は、衝撃波が女王の顔を突き抜けて反対側の壁を破壊してしまうほどだった。それを受けた女王も回転しながら吹っ飛び、顔面から床に突っ伏した。

女王は慌てて顔を上げ、追撃の蹴りを放とうとしていたシロナを見て口から衝撃波を撃った。しかし、シロナはそれを受けても何ともない様子で蹴りを放ち、女王の胸にめり込ませた。

 

「ウゴ…!」

 

「す、すごいわ!あの女王を倒せるほどにシロナが強くなって戻ってくるなんて…!でも一体、どんな方法を使えばここまでの力を手に入れられるの…?」

 

レミリアが戦いを見ながらそう呟いた。

 

「パチュリーが、魔理沙が、ゴルゴンが…私に生きろと言ってくれた。そしてお前を倒せと!」

 

シロナは立ち上がった女王の顔を両手でつかみ、そのまま顔面へ強烈な膝蹴りをお見舞いした。大理石のように白く硬化していた皮膚が砕けて割れる。

とその時、議事堂へ咲夜と魔理沙が戻って来た。

 

「戦いはどうなってる!?」

 

「咲夜!魔理沙!」

 

「すごいわ、前より進化して強くなったはずの女王を、シロナちゃんが圧倒してるのよ!」

 

「ところで、パチェは来てないの?」

 

レミリアにそう聞かれた魔理沙と咲夜は、視線を下へ向けた。

 

「パチュリーは死んだよ。シロナを蘇生させるために全部を魔力を使っちまってな…」

 

「そんな…」

 

シロナは腕から一発のエネルギー弾を発射し、女王の体に直撃させる。爆発の威力で後ろへ吹っ飛ぶが、女王はつま先を床に食い込ませてなんとか最小限に留めた。しかし、女王が前を向いた時には、既に目の前にはシロナの拳が無数に分身したようにも見えるほどの速度で迫っていた。

 

「…ウラウラウラウラウラウラウラウラ…!!」

 

シロナの拳の連打が容赦なく女王を襲う。顔面、首、肩、胸、腹、足…女王の体を徹底的に破壊していき、全身の硬い鎧のような皮膚が砕けて剥がれ落ちていく。

 

「ウラァ!!!」

 

最後、シロナの回し蹴りの一撃が女王の後頭部へヒットした。その瞬間、バチバチと何かが壊れるような音が聞こえ、直後に女王は叫びながら吹っ飛ばされ、ズシンと音を立てて床に突っ伏した。全身のところどころの皮膚が割れて剥がれた姿の女王は倒れたまま目を閉じ、ピクリとも動かない。

 

「ふう」

 

「や、やった…シロナがペペロン女王を倒したぞ!」

 

「待って!本当にヤツは倒されたの?」

 

「気は感じなくなってるよ」

 

シロナは横たわる女王に目を向けながらそう言った。

 

「レミリアさん、ごめん…パチュリーは私を助けるために魔力を使い果たして、それで…」

 

「仕方ないわよ…きっと、本人もそれを望んだのでしょう」

 

そう言うレミリアだが、その表情には隠しきれない悲しさや寂しさの色が見えた。レミリアとパチュリーは互いに愛称で呼び合うほど仲のいい友人同士で、その付き合いは恐らく何十年来のものだったのだろう。

 

「…キュオオオオオ」

 

「…なッ!?」

 

だがその時、その場にいる全員の耳に不思議な音が鳴り響いた。音叉を鳴らしたときのような鋭い音だ。シロナ達は一斉にその音が聞こえてくる場所に振り返る。そこには、四つん這いになって起き上がりつつあるペペロン女王がいた。女王はまだ敗北を認めてはいなかったのだ。

しかし、その身体はさらなる異形へと化していた。

 

「キュオオオオ…キュオオオオ…」

 

全身の硬質化した皮膚はすべて剥がれ落ち、まるで人体模型のように赤い筋肉がくまなく露出している。だが、腕や足、背中や頭と至る箇所から骨が変質し形を変えた突起が突き出しており、その姿はこれまでのペペロン女王とはほぼ別の怪物へと変貌していた。その原因は、シロナの攻撃によって女王の脳に手術で取り付けられた機械が破壊されたことにあるだろう。

その機械はペペロン女王の能力の上限を引き上げ、さらなる力を生み出させていた。しかし、それが破壊されたことでその上限はどこまでも伸び続けることになってしまい、その結果さらなる女王の順応能力の進化を促したのだろう。

 

「うぐ…!頭が…!!」

 

「耳が痛い…!」

 

その時突然、その場でレミリアとフランが頭を押さえて苦しみ出した。

 

「どうしたんだ!?」

 

ふたりはその場にへたり込みながら女王を指差した。シロナや魔理沙、咲夜にはあの女王の発する声がただの高音に聞こえるが、レミリアとフランにとっては超音波のように脳内に響いているようだった。

そして、シロナは感じ取った。この城のこの場所へ向かって、大量の気の反応が一斉に向かってきているということに。

 

「なんだアイツらは…!」

 

この議事堂に他の吸血鬼の集団が乱入してくる。だがその誰もが暴走したペペロン女王のように牙を剥き出して爪を強張らせ、正気ではない様子で唸っている。

 

「ドクターオートのヤツめ…女王の他の吸血鬼にも改造をしてやがったのか…」

 

女王は超音波を使って同じ性質を持つ改造ヴァンパイアたちを操って呼び寄せたのだ。

 

「ウオオオオォォォ…!」

 

集まった吸血鬼たちは女王の命令の声を聴くと、一斉にシロナ達へ襲い掛かる。シロナはそれを迎え撃ち、次々と殴り飛ばして撃退してゆく。しかし、ただでさえ強力な力を持つのにオートによって改造されさらに強くなった改造ヴァンパイアが相手では、魔理沙や咲夜たちは防戦一方であった。

 

バリバリ… ドン!

 

だがその瞬間、どこからか飛んできた雷撃がヴァンパイアたちに命中した。魔理沙たちを苦戦させていたヴァンパイアは一撃で倒され、吹っ飛ばされていく。

 

「スカー!来てたのか!」

 

しれっと戦いに参加していたスカーを発見した魔理沙がそう言った。

 

「ああ。あの化け物を倒したんだロ…だったらこんな雑魚どもに構ってる暇はなイ。シロナとあの化け物がタイマン張れる状況をワタシらで作ってやんだヨ」

 

スカーは額に静電気を迸らせ、次の瞬間に雷撃でシロナに群がるヴァンパイアたちを攻撃する。スカーは左手に持った左腕を振るいながらさらにヴァンパイアたちを殴り飛ばし、注意を引いてゆく。

 

「スカー、ありがとね。…これが最後の戦いって訳なの、いくよ…ペペロン女王!」

 

「オオオオオオォォォォォ!!」

 

シロナは親玉のペペロン女王へ最終決戦を挑むのだった。

 

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