もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第226話 「ドクター・ライチー」

ブロリー、スカッシュ、ピッコロの3名はゴースト戦士として現れたフリーザとクウラを再び撃破し、宮殿の奥の方から感じるライチーらしき気を目指して進んでいた。

しばらく進むと、広間のような場所へ出た。その中心にはドーム状のやぐらのような、不思議な構造物が建っており、その下に赤黒い球が無数に敷き詰められていた。

 

「ライチー、ここにいるんだろ?」

 

「ふっふっふ…サイヤ人…よく来たな、待っておったぞ」

 

無数の球からあふれ出た煙のようなオーラが一か所に集まり、人の姿を形作る。それは座禅を組んで座った姿勢のまま浮かんだ老人となった。長い口髭を垂らし、その頭部には膨れたようなコブがいくつも見られ、左目は真っ赤に染まると同時に肥大化していた。

目の前のいびつな人物はゆっくりと口を開く。

 

「わしこそがドクター・ライチー。わしの計画通り、サイヤ人がわざわざ殺されにここまで来おったわい。やはりサイヤ人は戦いにしか興味のない、おつむの軽い野蛮な民族じゃ…」

 

その言葉に怒りを感じたブロリーがにらみつけると、ライチーは両腕を上にあげ、転がる球から恨みの気を集め始める。

 

「恩を仇で返された我らツフル人の恨みを思い知るがいい…!たとえ神がサイヤ人の悪行を許しても、わしは許さんぞ…」

 

「何を言う…俺たちサイヤ人を奴隷のように扱ったくせによ…。……!」

 

その時、ブロリーは自分で今言ったセリフの違和感に気付いた。おかしい…自分には、かつてサイヤ人がツフル人に奴隷と扱われていたという知識など無かったはずだ。なのに、まるで自分がその当事者であったかのような言葉が勝手に口から出たのだ。そういえば、先ほどから自分の様子がおかしいことに、あらためて気づく。あの時、不思議な夢を見てからだ。たまに、まるで別人の意識が頭に入り込んできて、自分の体が自分のものではないような感覚に陥っていた。

 

「盗人にも三分の理、とはよく言ったものだ。思い返せばずいぶん昔の事だな…」

 

 

…サイヤ人との戦いで圧倒され、ついにツフル人は全滅の危機に陥った。だがそんな中、ツフル人きっての科学者だったわしが、恨みのエネルギー念波増幅装置「ハッチヒャック」を完成させたのじゃ。それはサイヤ人によって無残に殺されたツフル人の恨みの念波を集めエネルギーを増幅し、それを生命体へと進化させて次々とゴースト戦士を生み出してサイヤ人を絶滅させるという究極のマシーンであった。他の科学者も同様にサイヤ人へ対抗する兵器をいくつか作っていたようじゃが、このハッチヒャックには敵わないだろう…。

だがわしにはサイヤ人に殺されたツフル人の恨みの念波をハッチヒャックに集めさせる時間が無かった。サイヤ人の脅威はわしの身辺にも迫っていたからだ。わしはハッチヒャックを作動させて宇宙船に積み込み、共に脱出を図ろうとした。だが発射の直前、わしは…!

今思い出しても口惜しい…わしはサイヤ人に殺されてしまったのじゃ。しかし、わしの強烈な恨みの念波まで回収したハッチヒャックだけの宇宙船が惑星プラントを飛び出し、宇宙の墓場に難着した。そしてやがてハッチヒャックは暗黒惑星に流れ着き、そこで作動し続けたのじゃ…

 

 

「ナメック星に現れたモンスターも、フリーザたちも、全てハッチヒャックが作り出したゴースト戦士だったのじゃ」

 

「ということは、一度死んだお前もゴースト戦士だということか?」

 

「その通り。このわしこそが究極にして最強のゴースト戦士だ。ふははははは…夢にまで見た、サイヤ人を絶滅させる瞬間が訪れたのじゃ!!」

 

ライチーは不敵に笑いながらそう言うと、座った姿勢のまま飛び出し、猛烈な勢いでブロリーへ突撃を仕掛けた。ブロリーもそれを迎え撃とうと、拳を振りかぶって接近してゆく。

しかし、ライチーは自分の周囲にガラスのようなバリアーを生み出し、同時に赤い恨みの波動を全方位に放った。それを浴びたブロリーは思わず腕で顔を守りながら後ろへ吹き飛ばされる。だが何とか空中で踏みとどまり、床へ降り立った。

 

「くっ…!」

 

「貴様のパワーではこのバリアーを破ることはできん。ハアアアアアッ!!」

 

ライチーはバリアーを纏ったままブロリーへ突進し、ブロリーは両腕でそれを受け止める。両者は周囲に激しいスパークを巻き起こしながらギリギリと力を込めあう。

 

「確かに、サイヤ人はお前たちツフル人に恨まれてもしょうがない事をした…!だが、デストロンガスとかいうものを使って他の星の生命を苦しめてもいい理由にはならない…!何故、被害者であったお前が…ある日突然すべてを奪われる気持ちが理解できないのだ…!!」

 

ブロリーはライチーを蹴り飛ばす。そして渾身のパワーでパンチを繰り出すが、やはりバリアーに阻まれてライチーには届かなかった。

 

「ふん、サイヤ人風情が知ったような口をきくな。サイヤ人を殺すために、他の星の人間がどれだけ苦しもうがわしにはもう関係のない事だ!サイヤ人を皆殺しにできるのならわしはどんな手段でも喜んで取ろう…」

 

「なにィ…!?」

 

「ここでキサマを始末すれば、残るは地球に居るふたりのサイヤ人で最後だ…」

 

それを聞いたブロリーは出せる全力のエネルギーを解き放つ。全身から放たれるオーラは天を衝くほどの巨大さと鋭さを誇り、ライチーにも無数の槍の如く襲い掛かる。

 

「地球のサイヤ人…?シロナとサザンカの事か…!!」

 

しかし、ライチーに対しブロリーの攻撃はやはり通らない。

 

「ふははははははは!!無駄だ無駄だ!!いくら気を高めようともわしのバリアーは破れんぞ!」

 

「ウオオオオオオオオオオ!!!」

 

ブロリーは渾身の拳の連打をバリアーに浴びせる。一発一発を放つごとに周囲の空気が振動し、衝撃波を発生させている。

ライチーはどうせ自分に直接ダメージを加えることはできないと高をくくり、バリアーの中の安全域で高笑いしていた。

 

「地球に手は出させない!!」

 

しかし、ブロリーがそう叫びながら放った一撃がバリアーに当たったとたん、その箇所に大きな亀裂が入った。

 

「な、なにッ!?」

 

驚くライチーだが、すぐにその亀裂を修復しようとその場所に意識を向ける。

 

ドン!

 

その時、どこかから飛んできた紫色と黄色のエネルギー弾がバリアーに当たった。ライチーがその飛んできた方向を見ると、そこには腕をこちらへ向けたスカッシュとピッコロがいた。

 

「デヤアアアッ!!」

 

ふたりの攻撃はバリアーに対してちっとも有効打を与えることはできなかったが、ライチーの注意がそちらに逸れた瞬間、叫びと共に放ったブロリーの拳が亀裂に命中した。

 

バリイィン…

 

一撃はバリアーを粉々に破壊した。そのまま伸びる拳が、ライチーの頬を捉え、めり込んでいく。ブロリーが殴り抜けると、ライチーは物凄い勢いで吹っ飛ばされ、ハッチヒャックに激突する。

 

「が、がはっ…お、おのれ…」

 

口から怨念の煙を吐き出しながら悶えるライチー。だが、ゆっくりと顔を上げ、ブロリーを凶悪な目つきで睨め上げると、一気に跳躍し上空へ飛び上がった。

 

「わしがこの程度でやられるか!!」

 

両手をブロリーへ向け、そこから2発のエネルギー弾を放つ。

しかし、ライチーがその攻撃を放った時には、既にブロリーは胸の前で合わせた手の間にひとつの気弾を作り出していた。そしてカッと目を見開くと、その気弾から柱のように伸びる気功波が発射された。

それは容易にライチーの攻撃を打ち消して飲み込み、ぐんぐんと迫ってゆく。

 

「そ、そんな…!」

 

気の柱はライチーを包み込み、背後の宮殿の壁を突き破りなおも彼方へ突き抜けてゆく。

 

「おのれサイヤ人め…おのれぇぇええ!!」

 

ライチーは断末魔の悲鳴を上げ、圧倒的なエネルギーに晒されて跡形もなく消し飛ばされた。パラパラと天井から石材の欠片が落ち、煙が舞う。

 

「ハァ…ハァ…」

 

ブロリーは息を切らし、膝をついて座り込む。あそこまでエネルギーを放出しながらの戦いはなかなか肉体にこたえたようだ。しかし、そうしなければライチーには勝てなかっただろう。

 

「やったなブロリー!」

 

そう言いながらスカッシュとピッコロが近づいてくる。

 

「これでナメック星の…いや、宇宙全域に設置されたデストロンガスは活動を停止するはずです」

 

「そうか…。それよりもすまなかったな…君の事を疑っていて」

 

「いえ…先ほどの申しましたように信じられなくて当然です」

 

ピッコロはそう言いながら手を差し出す。ブロリーはその手を取り、ゆっくりと立ち上がる。

 

「サイヤ人どもめ、こっちを見てみろ!」

 

しかし、その時だった。どこかからライチーの声がとどろき、ブロリーたちは後ろを振り返る。

そこには高らかに天へ向けて両腕を上げるライチーと、緑色に発光する怨念増幅装置ハッチヒャックの姿があった。

 

「そ、そうか…奴自身もゴースト戦士ならば…」

 

「その通りだぁ!ハッチヒャックが健在な限り、わしは何度でも復活できる!だがもう貴様らはハッチヒャックを破壊することなどできんぞ…なぜなら、今ここで死ぬからだ!」

 

ライチーの背後に佇んでいるハッチヒャックが、不気味な笑う怪物の顔のように見えた…。

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