もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第227話 「サイヤ人の神」

「その通りだぁ!ハッチヒャックが健在な限り、わしは何度でも復活できる!だがもう貴様らはハッチヒャックを破壊することなどできんぞ…なぜなら、今ここで死ぬからじゃ!」

 

その時、ライチーの背後に佇んでいるハッチヒャックが、不気味な怪物の顔のように見えた。

ハッチヒャックのガラス張りになっているカプセルのような部分の中に溜まっていた緑色の液体がコポコポと沸騰したかのように泡立ちはじめ、外部へ向けて飛び出た管から気体があふれ出す。緑色の煙のようなエネルギーはどんどんと集まって凝縮されてゆき、一瞬にして巨大なエネルギー弾を生成した。

 

「なっ…!」

 

「見せてやろう…怨念増幅装置ハッチヒャックの力を!!喰らえぃ、『リベンジャーカノン』!!」

 

リベンジャーカノンと呼ばれたエネルギー球は今にも発射されようとしている。

 

「お前らここからすぐに離れろ!!」

 

ブロリーはスカッシュとピッコロを突き飛ばす。そして自分もすぐにこの場所から離れようと足を踏み出すが、右足を前に出そうとしたとき、異変に気付いた。

 

 

 

 ボ ッ…

 

 

 

「…!!」

 

自分の右足が無くなっていた。いいや…というよりも、なんとブロリーの右半身が跡形もなく消え去ってしまったのだ。

文字通り半分になってしまったブロリーは何をする間も与えられず、その場に倒れ伏した。

 

「ブ、ブロリー…」

 

スカッシュが信じられない言った顔でそう静かに呟いた。ブロリーを中心に大きな血だまりができていき、彼自身もピクリとも動かない。

ハッチヒャックのリベンジャーカノンは、まったく音も立てずにブロリーを絶命させてしまったのだ。

 

「ふふふふふ…わははははははは!!これで最も厄介な超サイヤ人を始末することができた!!サイヤ人絶滅まで、あと一息じゃ!!………ふう」

 

ライチーは一通り笑い終えると、ため息をつきながら腕をだらりと垂らす。そして揺れるようにしてスカッシュらの方へ向き直り、更なる野望と復讐に燃える目で睨みつけた。

 

「…今ここに宣言する。わしは地球に暮らす残るサイヤ人を根絶やしにし、我々ツフル人の悲願を達成して見せる!!そして、二度とサイヤ人のような悪魔の民族が誕生しないよう、ハッチヒャックの力を振るい…全宇宙の人間を絶滅させてみせる!!!」

 

ライチーが恐ろしい野望を叶えることを宣言し、スカッシュとピッコロはもう終わりだと思った。もう誰も、この恨みと憎しみに支配され、身も心も”吐き気を催す邪悪”と化したライチーを止めることはできないのだと。その憎悪の波は宇宙の全てをのみ込んでも止まりはしないだろうと。

 

…その直後に起こった光景を見るまでは。

 

突如として、何もない空間から雷が落ちた。その着弾地点から一瞬にして巨大な大猿が立ち上がり、大きく口を開きながら剛腕を振り上げ、そしてそのまま腕を振り下ろす。

かつて、大猿化したサイヤ人に殴られたことが直接の死因となっていたライチーは、そのある種のトラウマを呼び起こされて動くことができないところを、ハッチヒャックごと手の平で叩き潰された。大猿は、今度は腕を勢いよく振り上げると、破壊されたハッチヒャックの内部に溜まっていた緑色の液体が飛び散り、全身がねじれて千切れたライチーが転がった。

 

「ウルオオオオオオアアアアアアアアアア!!」

 

その大猿はブロリーの声と非常に似た雄叫びを上げた事から、ブロリーが大猿に変身した姿であると確信できる。しかし、明らかに異常であった。普通の大猿であれば、体毛は黒く目は真っ赤だが、今の大猿ブロリーは人間でいう髪の毛にあたる体毛が金色に染まっており、目の色も超サイヤ人を連想させるような緑色だ。

ブロリーが雄叫びを上げ続ける横で、グチャグチャの上半身のみとなってしまったライチーは、ハッチヒャックも完全に破壊されてゴースト戦士としての復活もできない状態であったが、何とかゆっくりと地面を這い、ハッチヒャックの内部からこぼれた緑色の液体が流れる場所までたどり着いた。

 

「待ってて…皆…僕が今…」

 

ライチーは集めた怨念の念波が蒸留されて溜まった液体をその舌で舐め、体内に取り込んだ。

 

カッ

 

次の瞬間、ライチーの体が眩い緑色の光に包まれたかと思うと、大猿ブロリーの目の前に巨大な髑髏が出現する。その髑髏は全長10メートルを超えるサイズになったはずの大猿すら優に見下ろせるほど巨大で、その下からぐんぐんと大木のように伸びる脊椎に押されて空高く登ってゆく。

脊椎の両側から伸びる肋骨が、まるで空から降り注ぐ巨大な無数の槍のように地面に突き刺さり、大地を抉りながら形成されてゆく。この宮殿は当然その衝撃に耐えられるわけもなく、ガラガラと崩れてしまった。

 

 

 

一方、銀河パトロールたちは戦っていたモンスターたちが一斉に活動を停止したことから、ブロリーたちが中で本体を倒したものと思い、宇宙船に乗って宮殿へ向かっていた。

だがその時、乗り物の中に居ても分かるほどの巨大な地震が発生し、無数の地割れが発生する。

 

「な、なんだ!?」

 

大地にできた深淵から緑色の光があふれ出し、中から超巨大な腕が飛び出し、続いて山かと見紛うほどの何か巨大な怪物が這い上がって来たではないか。

 

「ォ ォ ォ ォ …」

 

「あれはいったい何なんだ!?」

 

「撤退ーッ!!撤退せよーッ!!」

 

大型宇宙船よりも十数倍以上もでかい髑髏の眼孔に宿る緑色の光が、窓越しに銀河パトロールたちを一瞥する。しかし、その怪物は彼らには興味を示さず、そのまま這いずるようにしてその場を去ってゆく。

 

「あいつら…くそっ!」

 

「あっ、ちょっとジャコさん!?」

 

部下の制止も振り切り、ジャコは宇宙船から無理やり飛び出して崩落した地面の中へ向かって飛んでゆく。

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

──────

 

 

もしも、サイヤ人にも神というべき存在が必要であれば、私がサイヤ人の神となろう

 

サイヤ人が力を欲するたび、私は神として、サイヤ人の思うがままに力を与え続ける

 

そうしなければ我が民族は滅び去る…我がサイヤの民族は滅びてはいけない

 

この宇宙が存在する限り…

 

 

 

 

 

 

「…は…!?」

 

ブロリーは目を覚ますと同時にガバッと跳ね起きる。慌てて辺りを見渡し、強烈な頭痛を覚えて頭を押さえる。

 

「目が覚めたか」

 

ジャコが壁に寄りかかり、腕を組みながらそう言った。ブロリーの周りにはジャコの他にスカッシュとピッコロがいたが、彼らはおそらくブロリーが目を覚ましたのに気付いてたった今目覚めたということが察せられた。

 

「ここは…?」

 

ブロリーが眠っていた場所は、自分の宇宙船のベッドの上だった。

 

「何があったんだ?ライチーは…どうなった?」

 

「その前に、アンタこそ何があったんだよ?身体の半分が吹っ飛んだのに、いきなり大猿になったらそれが元通りになっちまった…」

 

「え?」

 

ブロリーはいまいち自分に何があったのか飲み込めていないようだった。

 

「順を追って話しましょう」

 

ピッコロが口を開く。

 

「まず、ブロリーさんはハッチヒャックの放つ攻撃を受けて右半身が跡形もなく消し飛び、その場に倒れました。しかし、その数十秒後に…特異な姿の大猿となって復活し、ハッチヒャックごとライチーをその手で潰しました。その直後です…ライチーもまた巨大化し、宮殿を破壊し地面を崩落させるほどの大きさを誇る”何か”へと変貌したのです。ブロリーさんは大猿の姿のまま私たちを崩落から守り、地上へ脱出しました。そして人間の姿へ戻った時、ジャコさんが宇宙船で私たちを回収してくれました」

 

「…そうか…。また、夢を見ていたような気が…する」

 

「またか?」

 

「知らない場所で、知らない女性が俺の体を大猿の形に作り直していた…。今なら、たぶん分かる気がする…あれは…サイヤ人の神に違いない…」

 

ブロリーはそう言いながら、斜め上を見つめた。

 

「…やっぱり病気だな」

 

「ところで、ライチーは今どこに?」

 

ブロリーがそう聞くと、ジャコが無言で宇宙船の窓の外を指差した。外を覗き込むと、遠く離れた場所に、何か巨大な物体が見えた。それは普通の惑星よりもずっと巨大で、大きな魚のような形をしていた。だがよく見ると、それは手足を備えた人間のような生き物であると分かる。肋骨が皮膚を突き破って連なっており、短い手足は役に立たないのかぶら下がっているだけ。そして向こう側の先端には、小さな頭蓋骨が頭部としてくっついている。

 

「あれがいきなり地面から這い上がって来たんだ…この世の終わりかと思ったぞ」

 

「あれはいったいなんだ?デカすぎる…」

 

「恐らく、大猿となったブロリーさんに潰され、ハッチヒャックをも破壊され復活できなくなったライチーはハッチヒャックを取り込んで融合したのでしょう…。その結果、どうしようもないほど膨大に蓄積されていた恨みのエネルギーによって異常なほどの巨大化を果たし、暗黒惑星をコアとして取り込み、宇宙へ…」

 

「…だが、いろいろと不完全なようだぞ。あばら骨は突き出て、手足は使い道がないほど小さく、何をするでもなくただああやって宇宙を泳ぐだけ…まぁ、デカい分スピードがスピードだから…万が一、他の星にぶつかればその星はただじゃ済まないだろうな…」

 

「倒せないのか?」

 

「我が銀河パトロールも、あらゆる兵器を使って攻撃を加えているが、やはりあの大きさと質量だ…ビクともしない上に、ヤツ自身も相当の戦闘力を持っているようだ」

 

ピピピ…

 

「おっと通信だ」

 

ジャコは端末を取り出す。

 

「ジャコだ。ああ…ああ…え?…うむ、分かった」

 

「何だって?」

 

「奴はただ泳いでいるわけではない。ある方角へ向かっているらしい」

 

「…その方角の先には、一体何があるんだ?」

 

「北の銀河。そこにある…”地球”だ」

 




進撃の巨人のロッド・レイスが巨人化したくだりが元ネタです。


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