もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第23話 「新たな魔族!その名は鬼人正邪!!」

「カァアアア!!」

 

宮殿の丸い屋根の上にまで移動した霊夢とニッキー。ニッキーの放つ青く半透明なエネルギー波を避け、前へ駆け出す。

霊夢は自身の周囲へ無数の赤色の気弾を生成させた。

 

「何ですって!?」

 

驚くニッキー。霊夢はその無数の気弾を全て放った。今までの弾幕勝負で培ってきた技術や戦法と、新たなに習得した気の応用を適合させた攻撃だ。

 

「アンタ達は弾幕ごっこってしたことあるかしら?」

 

間髪入れずに襲い掛かる気弾の嵐を見て、ニッキーは思わず見惚れた。

 

「美しいわ…」

 

巨大な打ち上げ花火を見ているようだ。様々な色の弾幕が、波紋のように押し寄せて来る。

しかし、ハッと目を覚ます。

 

「って、見惚れてる場合じゃないわ!こんなの避けれるわけないじゃない!!」

 

ニッキーは全速力で走り出した。自分の背後を、気弾がどんどんとかすめていく。屋根の上から飛び跳ね、別の屋根の上へと着地する。

 

「良い気になるんじゃないわよ小娘!ハァァァ…!」

 

ニッキーの眼が怪しく光った。そしてふとももから突き出していた棘のような部位を両手でつかみ、それを思いきり引き抜いた。そこに現れたのは二本の剣であった。

その剣を振り回し、迫る気弾を切り裂いた。

 

「いぃ!?」

 

驚く霊夢。ニッキーはそのまま気弾全てを斬り払いながら霊夢へと近寄っていく。

 

「ちぇああ!」

 

見事な剣さばきが霊夢へと繰り出される。この剣技は、あの魂魄妖夢にすら匹敵するかもしれない…と思った。

二本の剣はブオン…と音が聞こえるほど、素早く振り回される。霊夢が伏せて一撃を避けると、ちょうど後ろにあった屋根の上の石造の飾りが真っ二つに切断されてしまう。

 

(でも、何とかならないって事は無いわ)

 

霊夢は空へ飛びあがった。

 

「にがさないわよ!」

 

同じくそれを追うニッキー。

 

「はっ!」

 

霊夢は全身から衝撃波を発する。ニッキーは吹っ飛ばされ、下方へ向けて落下していく。すかさず霊夢はそれを追い、強烈な蹴りを背中へ浴びせた。

 

「ぐあはぁッ!?」

 

痛みに目を見開きながら、さらに上空へ突き飛ばされた。霊夢も移動する先へ先回りに、迫ってくるニッキーを両手を合わせた拳で、もう一度振り下ろし叩きつけた。

ニッキーは物凄い勢いで下へ落下し、塔の屋根に激突してそのがれきに埋もれてしまった。

 

「…よし」

 

霊夢は小さくそう呟いた。

 

 

 

一方、カカロットと交戦中のジンジャー。

 

「ヌウウウウ…!」

 

ジンジャーは腕をクロスさせて気合を込める。そして両腕の肘にある棘のような部位を掴んで引き抜くと、ニッキーと同様に二本の剣を作り出した。

 

「ハハハハハ、切り裂いてやるッ!」

 

「ケッ、その程度の剣で何を喜んでやがる」

 

ジンジャーの繰り出す剣撃を、軽くかわしていくカカロット。しかし、しゃがんで避けた瞬間、自分の髪の毛の一部がバッサリと斬りおとされた。

 

「死ねェッ!!」

 

渾身のパワーで放たれた剣の突き。これはさすがにカカロットでも避けきれず、当たってしまえばジンジャーのその言葉通り死が待っているだろう。

が…

 

ピシッ

 

カカロットはジンジャーの剣を素手で受け止めた。指で剣身を掴み、ジンジャーが動かそうとしてもビクともしない。

その身体には紫色のオーラが纏われており、髪の毛が逆立っている。このフルパワー滅越拳を発動した時のパワーは以前の3倍近くにまで高まっていた。

 

「な、何だと…!」

 

ジンジャーは剣から手を離し、宙へ飛びあがると、特大のエネルギー波を放った。

しかし、カカロットはそれをさらに高くまで跳躍して避けた。カカロットが動いた軌道に、紫のオーラが筋のように残っている。

 

「これで終わりだ、『華光玉』!!」

 

かつて美鈴から覚えた技を放つ。七色に輝く圧倒的なエネルギー波は、容易にジンジャーの攻撃を打ち消した。そしてジンジャーが避ける間もなく、その小柄な体を包み込んだ。

 

「ウワアアアアア!!!」

 

華光玉はジンジャーを飲み込んだまま壁を突き抜け、半壊した隣の塔の屋根があった場所へ着弾した。そこでさらに強い爆発が起こり、塔が完全に崩れ落ちた。

壊れた塔の瓦礫の中からジンジャーの腕が顔を出したが、すぐに力なくグッタリと動かなくなった。

 

「ふん、口ほどにも無い…さてと」

 

カカロットはガーリックとシュネックが居るであろうテラスの方を見た。

 

「そんな…三人衆がこんなにもあっさりと…!」

 

上から戦いの様子を見ていた正邪は、慌ててガーリックの元へと走り出した。

 

 

 

「ムグハハハハハハ!!」

 

ガーリックの邪悪が笑い声が響き渡る。その目の前には、彼によって痛めつけられたシュネックがよろよろと立っていた。血が流れる肩を押さえ、ハァハァと息を切らしている。そして次の瞬間、ガーリックのパンチがシュネックを殴り飛ばした。

 

「実に気分がいいぞ!こうしてお前を殴れるなんてなぁ!」

 

吹っ飛ばされた方向へ先回りし、シュネックの足を掴んだ。そのまま強靭な肉体から発揮される腕力でシュネックを振り回し、床へ叩きつけた。

 

「ドラゴンボールに龍神のパワー!!どれもこれもお前が持っていても…宝の持ち腐れなのだアアアアア!!!」

 

地面をバウンドし、シュネックは倒れ込んでしまう。ガーリックはそれを見下ろす。その手には小さなガラスの瓶が握られていた。

 

「私がお前を封印してやる!お前が居なくなれば、もはやお前のボールさえも奪う事は簡単だろう」

 

「キサマ…」

 

その時、ガラス瓶が光を発した。シュネックは光に包まれ、ヒュルヒュルと瓶の中へ吸い込まれていく。

瓶の中には、虫ほどに小さくなったシュネックの姿があった。

 

「ハハハハ、そこで一生暮らすがいい」

 

拳でガラスの壁を叩きながら何か言っているシュネックだが、当然外には何も聞こえず、瓶も中からは決して割れることは無い。ガーリックはシュネックを無視すると、笑いながら玉座に腰を下ろした。

 

「ガーリック様!」

 

その時、正邪がシュタッと彼の目の前に現れ、跪いた。

 

「鬼人正邪か。一体どうしたというのだ?」

 

「大変で御座います、ガーリック三人衆たちが全員やられてしまいました」

 

「何だと!あの三人衆がか?」

 

ガーリックはそう言うと目を閉じた。三人の気を探ろうとするが、やはりどこにも感じられない。確かに正邪の言う通り、やられてしまったようだ。

 

「むむむ…」

 

「私めにチャンスを下され!そうすれば私めがニッキー殿たちの仇を取ってまいります!!」

 

「…やめておけ、お前では奴らには決して勝てない。…いいや、勝てる方法が一つだけあったな」

 

「は…本当ですか?」

 

「『アクアの水』だ!」

 

ガーリックは懐から、先ほどシュネックに見せてやったアクアミストの瓶を取り出した。玉座のわきに置いてある封印の瓶の中からシュネックが必死に何かを呼び掛けている。

 

「アクアの水…?」

 

「我が魔族に伝わる特別な水だ。ふたを開け中身を放てばそれは霧となって分散し、吸った者は魔族へと生まれ変わる…だが、霧になる前、液体の状態のまま飲んだらどうなるのか?さぁ、これを飲めばお前は強くなる」

 

正邪へアクアの水の瓶を渡した。

 

「ふたを開けたらすぐに口を付けて飲むのだ。弱いお前が力を得るにはそれしかない」

 

ごくりと唾をのむ正邪。シュネックは瓶の中から必死に辞めさせようとしている。

が、正邪は少しだけ悪そうな顔でにやりと笑うと、早速瓶に口をつけ、中の水を少し飲んだ。

 

「むぐッ!?」

 

その時だった。彼女の周囲を柱状の光が立ち上り、赤いスパークのようなオーラを纏った。

 

「うおおおおおおおお!!?」

 

湧き上がる強烈な力の前に、正邪は思わず叫び声をあげる。腕や足に血管が浮き出、その耳が大きく尖る。目の周りに赤い縁取りの模様が現れ、目が獣のように鋭く変化していく。

 

「さぁ、これでお前も立派な魔族の仲間入りだ!」

 

光が消えると、そこには完璧な魔族と化した正邪が立っていた。その身体から発せられる気は、かつてのガーリック三人衆以上かもしれない。

 

「ふふふ…これならば勝てるぞ、絶対に!!」

 

正邪はそう呟くと、目にもとまらぬスピードで駆けだし、敵の元へと急いだ。風でガーリックの服がはためき、シュネックは瓶の中で焦った表情を浮かべていた。

 

 

 

「ガーリックとやらはどこにいるんだ?」

 

入り組んだ宮殿内を歩いているカカロット。どうやら迷ってしまったらしい。ガーリックは気配を消しており、それを探ることが難しいのだ。

 

「…誰だ?」

 

と、その時、上から誰かが飛び降りてきた。床に着地し、ゆっくりと顔を上げる。

 

「クックック…この私の恨み、今こそ晴らしてやる…!」

 

「誰だ貴様は?」

 

「忘れたとは言わせんぞ、私は執念深いのだ!!」

 

正邪はそう言うと、カカロットへ飛びかかった。拳を振りかぶり、思い切りパンチを繰り出す。

が、カカロットはそれを難なく避け、続けて繰り出される攻撃も次々と避けていく。

 

「知らんな、誰なんだお前は?」

 

「オラ!オラ!!私はお前に復讐することだけを思って生きてきたのだ!食べ物の恨みは恐ろしいのだ!!」

 

「食べ物の恨み?ああ、思い出したぞ!お前は去年会ったな…俺の肉を奪おうとしたやつか」

 

正邪の大振りのパンチが大きく空ぶった。目の前からカカロットが消えており、正邪は驚いた。

その直後、背中を蹴られた。前によろめき、後ろを振り向くと、カカロットが腕を組んで立っていた。

 

「少しは強くなったようだが、滅越拳を使うまでもない」

 

正邪は目を血走らせて逆上し、もう一度襲い掛かった。

が、カカロットに足をかけられ、回転しながら転んでしまう。すぐに起き上がり反撃に出るも、カカロットの身ごなしについていけずに、顔面にパンチを喰らってしまう。

 

「キィィイイ…許さん!!ハッ!!!」

 

その時、正邪は体に気を込めた。すると、筋肉が膨れ上がり、その身体がみるみる巨大化していく。肌の色までも赤く変色し、かつての面影はほとんどなくなってしまう。

 

「でやあッ!!」

 

新たに得た力でカカロットに襲い掛かる正邪。だが相変わらず全ての攻撃を両腕で受け止められ、胸を蹴られて後ろへ吹っ飛んだ。

 

「おいおいその程度か?所詮は妖怪如きが俺に勝てると思うなよ!」

 

片手を正邪へと向け、そこから強力なエネルギー波を放つ。

 

「そんな…!魔族の力を得たはずの私が…!!」

 

目の前に迫るエネルギー波が直撃する。正邪はそれに押されるようにして宮殿の壁を突き抜け、天界の遥か彼方へと吹き飛ばされてしまった。

 

「馬鹿ヤロウが…」

 

アクアミストの力を借り、大幅にパワーアップしても正邪ではカカロットには勝てなかったのだ。確かに、以前のカカロットであれば今の正邪には勝てなかったかもしれない。だが悪の魔族の力を借りた時点で、この一年修行を積んだカカロットには及ばないのだ。

 

「…待ってろガーリックとやら!この俺がお前をぶっ倒してやるぜ!!」

 

ガーリックの手下たちを全て倒したカカロット、そして霊夢とウスターは、いよいよガーリックの居る玉座まで向かうのであった。

 

 




クリスマスに投稿している時点で、もう人生終わってるのでは?

ちなみにキャラクターの声のイメージですが、

カカロット
【挿絵表示】
(CV:野沢雅子さん)
博麗霊夢(CV:小清水亜美さん)
ウスター(CV:朴璐美さん)

あたりのイメージです。
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