もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第231話 「記憶兵器」

私の名前はシロナ、そう…シロナ。性別は女で、医者に言われたことが正しければ歳は14になるらしい。

どうやら大事故にあったらしい私が目を覚ましたのが2年前で、その時に人間としての何もかもを忘れちまった私は2年間のリハビリを受けていた。私を助けた上、これまでに世話を焼いて私をここまで教育し直してくれたのが、この女…ミル・フィーネだ。コイツが何者なのかわからないし、私が巻き込まれたって言う大事故の詳細すら知らないまま…

 

(なんで私はここにいる!?)

 

シロナの見ている前で、ミルの細くしなやかな右腕が帯状に伸び、尖った指先を先端にしてぐるぐると渦を巻くようにして変形し、彼女の身長程もある大きなドリルを形作った。

 

「な、なな何なのよ…!身体から銃生やした野郎と、ミルの腕が武器の形に…!!」

 

「ですからさっきも申しましたでしょう?あの殿方たちは私を狙ってやってきた人造人間ですって」

 

ミルは腕のドリルを人造人間のディロフォとモノロフォに対して向けながら、じりじりと警戒する。

 

「おうおう、いつも『記憶兵器』の人間はやることが同じだなぁ」

 

「いつでも俺らと戦うときはああやって自分の体を武器の形にしてやがる」

 

ふたりの人造人間はにやりと笑いながらそう言った。

 

「な、なんでアイツらがミルを狙ってるのよ~…!?」

 

「それも言いましたわよ、奴らのような人造人間を始末する役目を負った人間が、『記憶兵器』と呼ばれ…つまりそれがこの私だからに他なりませんわ」

 

「ディロフォ、俺はガキの方を…」

 

「じゃあ俺はミルをやるぜ」

 

人造人間は体内に内蔵した銃器を露出させながらふたりに迫る。

 

「シロナ…貴女の命を救ったのはこの私。ですから、私を手伝いなさいな」

 

「やなこった!そんな訳の分からないケンカに巻き込まれてたまるもんですかってんだ!」

 

身をひるがえして一目散に逃げだそうとするシロナだが、進もうと思っていた方向の足元に無数の機関銃の弾丸が撃ち込まれ、その場で足が止まってしまう。

 

「おおっと、行かせねぇぜ」

 

「くっそ!」

 

シロナは襲い来る弾丸を避けながら部屋の外へ逃げていき、モノロフォもそれを追いかけていく。

残されたミルとディロフォは未だに武器を構えたままにらみ合っている。

 

「さぁピンチだぜ、ミル。せっかく助力を仰いだあのガキにも逃げられちまった」

 

「ふふっ、貴方たち低級な人造人間はいつも画一的な考えをしますのね。それも当然ですわ…貴方たちは製造される段階で、敵である私たちに余計な感情を挟まないように…私たちを常に弱い者と見下す思考回路を組み込まれる。記憶兵器はひとりで何体もの人造人間を破壊してきた猛者ばかりだといいますのにね」

 

「何をごちゃごちゃと…すぐに終わらせてやるぜ!」

 

ディロフォは半分に切り開いた頭部から伸びる砲身から赤いレーザー光線を発射した。ミルはそれを見切り、前へ飛び出すと腕のドリルを回転させ、盾のように使う。すると光線は簡単にはじかれてしまい、ミル本人には届かない。

 

「な…!?」

 

「『記憶兵器』の人間は、それぞれが違った武器の形状に自らの体を変じさせて戦う…私の操るのは”ドリル”!『削砕の螺旋(ミル・ドリルブレイカー)』ですわ!」

 

螺旋状に高速回転するドリルを振りかざし、ミルはディロフォへ攻撃を加える。勢いを付けた突進とドリルの破壊力が合わさり、ミルは一撃でディロフォの体に大穴を穿って破壊してしまう。

 

「うげはァ…!?」

 

そのまま上半身と下半身とに分かれたディロフォは床に散らばり、カクカクと痙攣した後ピクリとも動かなくなった。人造人間のディロフォは駆動を停止したのだ。

 

 

 

「うわああああああ!?」

 

一方、逃げ出したシロナであったがもう一体の人造人間、モノロフォに捕まってしまっていた。抱きかかえられてしまい、モノロフォの腹を蹴って脱出しようとするが、その足を掴まれた。

 

「ぐお!」

 

そして小さな自分の体はいとも簡単に持ち上げて振り回され、壁に思いっきりぶつけられる。壁がひび割れ窓ガラスは砕け、シロナ自身も既に傷を負い頭や顔から血を流している。

 

「はははは!まだだ、まだまだ!タフなガキよォ、もっと俺を楽しませてくれよ!」

 

「な、なんて力よ…勝てる気がしない…!」

 

「もう一回しようぜ、そしたらもう殺してやるからさ…」

 

「やれやれですわね、シロナ」

 

その時、自分の戦いを終わらせたミルがやってきて口をはさんだ。白いローブを袖に通さずに肩に羽織り、相変わらず高飛車な態度で腕を組みながらシロナを見下ろすように見つめている。

 

「貴女はおバカなりに平時のパワーを出せばいいですのに…何をやってらっしゃいますの?」

 

「け…そんなこと言ったってよ…」

 

「つまりは見た事もない敵には恐怖で委縮してしまうと…そういうことなのかしら?」

 

「何ですって…?」

 

シロナは歯を噛み締めながらミルを睨み返す。

 

「ねぇ人造人間、何をしているの?はやく続きをやりなさいな」

 

「はっ、お前の協力者だろ、助けなくていいのか?」

 

「それなりに肉体も強靭で戦う術も持つのに、いざ相手が未知で強そうだったら手が出せなくなるイキったガキを助ける、とおっしゃいました?それこそ下品ですけどその子風に言うと…『やなこった』」

 

「て、テメェ…!」

 

まるでシロナを挑発して炊きつけるようなセリフをわざと吐くミルと、それに気付かずにまんまと怒りのボルテージを上げていくシロナ。怒ったシロナは自分の足を掴んでいるモノロフォの手を掴み、離させようと力を込める。

 

「無駄だぜ、俺の力は絶対に離れねぇ」

 

そう言いながら余裕の笑みを浮かべるモノロフォ。

 

「ふん…ぬぬぬぬ…!!」

 

しかし、シロナが額に血管の筋を浮かべるほどに力を込めると、ミシミシと機械の手の関節が音を立てながら反対の方向へ曲がっていく。

 

「なっ…!」

 

「ぬあああああッ!!」

 

そして一気にモノロフォの手を開かせると同時に勢い余ってその腕をもぎ取ってしまう。予想外の出来事に動揺して大きく後ろへ体をのけぞらせるモノロフォ。

 

「ウラアアアアアア!!」

 

シロナはそんな彼の顔面へ拳を叩きつけ、渾身のパワーで殴り抜けた。モノロフォの頭部が砕けて破壊され、そのまま勢いよくぶっ飛んでいき床を転がる。

 

「そ、そんな…こんなガキに、人造人間が…」

 

そして最後にそう言い残すと、ガクリとうなだれ、動かなくなった。

 

「なによ…今の力は…」

 

シロナはモノロフォの手を無理やりこじ開けてほどき、殴った時に発揮したパワーの感覚の余韻を感じながら自分の手を見つめた。自分が車にぶつかられてもビクともしなかったときも驚いたが、それ以上の驚きだ。突然自分に何倍もの不思議なパワーが湧き上がって来たのだから。そしてシロナは、この力に微かな覚えがあった。

シロナの困惑する様子を、まるで値踏みするかのように眺めていたミルだったが…

 

「…!シロナ、気を付けなさい!」

 

「え?」

 

ミルがそう叫んだ矢先、シロナの視界の外で先ほど倒したかに思われたモノロフォが起き上がり、今にも襲い掛かろうと構えていた。

 

「きぃえええええ!!」

 

「…世話の焼けますこと」

 

反応できなかったシロナはモノロフォの襲撃を喰らう寸前だ。とその時、ミルは再び自分の腕を巨大なドリルへと変化させ、それを駆使してモノロフォを攻撃した。一撃を受けた機械の身体は今度こそバラバラに破壊され、完全に機能を停止した。

 

「た、助かったわ…どうもありがとう」

 

「…いいえ、大したことじゃありませんわ」

 

「それにしても、それ何なのよ?どういう仕組み?さっき言ってた記憶兵器ってやつ?」

 

シロナはドリルと化したミルの腕を指差してそう言った。そのままそれに触れてみると、その変形した腕には確かに皮膚と肉の下で血が通っているが柔らかいようで堅牢な、不思議な質感だった。

 

「人造人間を破壊して倒すには、一瞬のうちに強い力でバラバラにしないといけない。そんな時、私のドリルは大いに役に立ちますの。”記憶兵器”とは武器の事ではなく、それを扱う人間の総称。私が扱うのはドリルですが、他にもハンマーや斧、カッターナイフなど物を破壊することに特化した道具を模した者もおりますわ」

 

「ふーん、でもさ、さっきは私のパンチでも結構効いてたみたいだけど?」

 

「そう、それですのよ。我々はこんな芸当ができるとはいえ、あくまで人間にすぎません。記憶兵器の力を借りなければ人造人間に勝つことは難しいでしょう。ですが、シロナ…貴女は記憶兵器にならずとも、奴らを格闘や気の力で破壊することができますのよ」

 

「へぇ、だから私を助けて手伝わせたかったってわけね」

 

「そういうことよ。それで、手伝ってくださるのかしら?」

 

ミルは真剣な眼差しでシロナに問う。確かに、ミルは自分を助けてくれたし、これまでいろいろと世話になった。自分のこの得体の知れない力で、彼女の仕事をサポートできるというならやってやりたいのが本心だ。

しかし、それと同時にもう一つの疑問が沸いてくる。

 

「…さっき、ミルは人造人間が人の世に災いをもたらそうとしている、って言ってたわね?一体、何を企んでいるの?」

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