「…ぐっ、正邪までもがやられてしまったのか」
ガーリックは苦渋の表情を浮かべた。自分の部下が一人残らずやられてしまった事など初めてだからだ。
「ドラゴンボールは残り2つ!仕方がない、私自らが集めてきてやろう」
そう言いながら立ち上がるガーリック。玉座の横にある机の上には、今までに集めたドラゴンボールと、シュネックの入ったガラス瓶が置かれている。そしてドラゴンボールをふところに仕舞おうとした瞬間、何者かの気配を感じて振り返った。
「何を願うつもりだ?賢者とあろうものが随分と俗らしいことだな」
ウスターがゆっくりと歩いてくる。ガーリックは顔だけをそちらに向けたままじっとしている。
「ウスター、もう来てたのね」
続いて、霊夢がウスターの横に並ぶ。いよいよ、ガーリックは彼女らを睨みつけたまま身体ごと振り向いた。玉座の前には階段があり、その上に立つ。
邪悪な気がビンビンに放たれており、その実力は一筋縄ではいかないレベルにあるとすぐに分かった。
「惜しいぞ博麗の巫女に魔人ウスター!お前たちほどの者がこんなちっぽけな世界のためになど戦いおって」
「勘違いするな、俺はただお前が気に入らんだけだ。手下に全てやらせて自分からは動かん愚か者が。地獄を見せてやる…」
「ほざけ小童ども。そんなにドラゴンボールを返してほしければ、力づくで奪ってみるがいい。ほうら、ボールはここにあるぞ」
「…その横にあるのは…!」
その時、霊夢はボールと一緒に置かれている丸いガラス瓶の存在に気付いた。その中に、虫のように小さくなったシュネックが閉じ込められている!
「そうだ、シュネックだ。コイツも奪ってもいいぞ?奪えるのならば、な」
ガーリックは机の上のボールを指差した。それを見た霊夢は、スキを見てボールとシュネックを奪い返そうと飛びかかった。
しかし、ガーリックはそちらへ目を向けると、素早く腕を振り回し、霊夢を弾き飛ばした。霊夢は下の階段に叩きつけられ、猛烈な勢いで階段を転がり落ちた。
「いてて…」
「うおおおお!!」
後を追うように、ウスターもガーリックへ向かって攻撃を仕掛けた。が、ガーリックの腕がウスターの頭を掴み、それを階段へ向かって叩きつけた。ウスターも霊夢と同じように階段を転がり落ち、元の場所にまで無理やり戻されてしまった。
「付け入るスキがないわ…!」
「ムグハハハハ!!私はここから一歩も動かんぞ。どうした?はやくボールを奪って見せろ」
「霊夢よ、二人で同時にかかるぞ」
「ええ、私もそうしようと思ってたとこ」
霊夢とウスターは、左右へ走り出した。猛スピードで位置を入れ替え、残像が混ざり合って完全に見分けがつかなくなってしまう。
二人が思った通り、ガーリックでさえもどっちがどっちか見分けられないでいる。
(今だ!)
そして次の瞬間、二人は同時に飛び出した。ガーリックの両サイドから攻撃を仕掛ける。
「…フッ」
だがしかし…ガーリックは両腕を広げると、全身から強烈な衝撃波を発した。霊夢とウスターはガーリックに触れることなく、衝撃で吹っ飛ばされてしまう。
「何だと!?」
「だけど、まだまだ!」
驚く二人だが、地面に着地するとそのまま蹴り、すぐにもう一度飛び出した。そして攻撃を仕掛ける。だが、またしてもガーリックは二人の攻撃をそれぞれ片腕ずつで防ぎ、階段の下へはじき返した。
それでも二人は諦めずに突撃する。
「でりゃあああ!!」
「ムグハハハ…ハーッハッハッハッハッハ!!!」
しかし、全ての攻撃がことごとくガーリックに防がれてしまう。高笑いを響かせるガーリックは迫るウスターの拳を掴み、霊夢の足を掴み、振り回して激突させた。
「うげ…!」
「ぎゃっ!!」
そして階段に叩きつけ、元の場所へと投げ返す。
「どうやら何度やっても奪えないようだな。面白くない」
「ぜぇ…ぜぇ…怪物め…!」
「キリがないわ…」
「ではそろそろお前たちを殺して、残りのボールを集めに行くか」
ガーリックは両手を上にかかげ、そこに気を溜め始める。深い青色のオーラが溜まり、それは大きなエネルギー弾として形を取り始める。
その膨大で洗練された気は、邪悪さも凄まじいことながら圧倒的な威力を誇っていることは明白だった。それを見た霊夢とウスターは、驚愕しながら、その場から動くことができなかった。
「魔族に逆らった愚か者どもめ、ここを墓場に眠るのだ!!」
放たれたエネルギー弾は、真っすぐに二人へ向かう。もうダメか…と思わず目を瞑る。
「『南無三砲』!!!」
「何だと…!」
その時、どこかから放たれて来た紫色の気功波が、ガーリックのエネルギー弾を相殺した。土埃と強風が吹き、霊夢たちは思わず顔を逸らした。
「貴様が…カカロットか?」
「だったら何だというんだ?図体ばかりデカいナリしやがって」
「カカロット!!」
霊夢が上を見上げながら言った。カカロットは地面に飛び降り、着地した。その髪は逆立っており、紫色のオーラを纏っている。
「フルパワー滅越拳…あの南無三砲を撃って大丈夫だったの?」
「俺がこの一年どれだけ修行したか…もうあんな技で極度に消耗することは無い」
「ほう、ではその修行の成果とやら、見せてもらおうか」
ガーリックはカカロットを見下ろしながらそう言った。
「じゃあお前に見せてやる。限界を超えた俺のパワーをな!」
力を溜め始めるカカロット。ガーリックも何が始まるのか、と黙って見つめている。
カカロットの身体に纏っていた紫色のオーラがより一層大きくなり始める。更には全身にスパークを纏い、逆立っていた髪がさらに激しく逆立った。
「ハッ───!!」
あまりのエネルギーによってカカロットの周囲がクレーター状にへこんでしまった。その中心で、カカロットはにやりと笑った。
「これがフルパワー滅越拳の限界を更に超えた滅越拳…『限界突破滅越拳』とでも呼ぼうか」
「…ほう」
明らかに、以前よりもパワーが増していると思った。
「あの野郎…完全に俺を越えやがったかもしれんぞ」
ウスターがぼそりとそう呟いた。
「行くぜ!!」
カカロットは駆け出し、ガーリックへ攻撃を仕掛ける。渾身のパンチを放つが、ガーリックの太い腕に阻まれてしまう。だが負けじと強力な突きや蹴りを連続で放つ。
そのたびにガーリックは腕を使って防いでいく。速すぎる攻防はあたりに衝撃を散らし、電気のようなエフェクトが発生していた。
「所詮はその程度か!」
今度はガーリックがカカロットへ腕を伸ばし、その首元を掴んだ。
「今だ、お前ら!」
「!?」
だがその瞬間、カカロットは首を掴まれたまま体を上にあげ、腕をがっちりと抱きかかえるように固定すると足でガーリックの胴体を腕ひしぎ十字固めの要領で締め上げた。
そのまま体重をかけ、ガーリックの巨体を押し倒し、床へはりつけた。
「コイツ…!」
「分かったわ」
その瞬間、霊夢とウスターが飛び出し、机の上にある四星球とシュネックが封印されたガラス瓶を手に取り、急いでその場から離れた。
カカロットもガーリックから腕を放し、空中で回転しながら階段の下へと戻る。
「シュネックさん!」
霊夢はガラス瓶を床にたたきつけて割る。すると煙がボワンと立ち込め、中からシュネックが現れた。
しかし、その途端にゴホゴホとせき込み、その場に座りこんでしまう。
「あの封印は老いた体に応えたようだ…後は頼むぞ若い衆たちよ…」
「ええ、シュネックさんはそこで見てて」
霊夢はシュネックの背中をさすると、手を離し、立ち上がった。
「…そんな老いぼれの手助けなどしおって」
「さァ、キサマはどうする?」
ウスターがそう聞いた。
「ふん、お遊びはここまでだ。この私の本当のパワー、見せてやろう」
ガーリックは着ていた道着の上を掴み、強引に破って脱ぎ捨てた。筋骨隆々な肉体が露わになり、気の量が若干増えたような気がする。
「…来るぞ!」
次の瞬間、ガーリックが突風のような気合と共に三人の目の前にまで迫った。真ん中に居たカカロットに頭突きを喰らわし、横に居た霊夢とウスターにラリアットを喰らわせる。三人が後ろへよろめいたのを見ると、瞬時に彼らの背後へ廻り、カカロットには背中でのタックルをぶつけ、霊夢とウスターの後頭部を肘で殴りつけた。
「ぐあ…」
巨体に見合わないとんでもないスピードから繰り出されるトリッキーな連撃を前に、カカロットたちは成す術もなく攻撃を受け続けてしまう。
「これでも喰らえい!!」
右手にエネルギーを溜め、それを体の向こう側へ引くことでさらに威力を込める。
そして、体勢を崩している三人目がけて、特大の気功波が発射された。
一応、資料としてカカロットの髪型の変化具合を描いたものをのせておきます。右側から、「通常~滅越拳発動時」→「フルパワー滅越拳」→「限界突破滅越拳」の順です。
【挿絵表示】
そういえば今気付いたんですが、いつの間にか前回のあらすじと霊夢による次回予告をすっかり忘れてましたね…